【書籍版1巻2/20発売】貞操逆転ハードモード異世界を鋼メンタル冒険者が生き抜く   作:風見ひなた(TS団大首領)

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第97話「鋼メンタルでドラゴンの里をひっくり返し抜く」

「なんだオラァン!」

 

「犯すぞオラァン!」

 

 僕の宣言に反応したメスドラゴンたちが、ビキィと青筋を立てながら一斉に地上から舞い上がってくる。元から反乱軍としてこちらに向かっていた連中に加えて、民間人も加わってそりゃもう里じゅうを敵に回す勢いだ。

 

「ユウジ、大丈夫なのか……!?」

 

 ホウキでゴンドラに横付けしたアミィさんがさすがに青い顔でこちらを見てくるが、もちろん勝算はある。というか、こいつらから注目を集めるためにわざわざこんな宣言で挑発したんだから。

 

 僕は引き続き言葉を続ける。

 

「もちろん君たちにも言い分はあるだろう! 君たちの種族のオスが10代のうちにしか生殖能力がないということは理解している! だが、そのうえで僕に若様を預けてもらいたい! この子にはもっと重要な仕事がある。たくさん勉強して立派な指導者となり、君たちドラゴンを100年先にも生き残らせるという仕事が! それは君たちと交尾して子供を成すよりも大切な仕事なんだ! 僕の元でなら、貴重な経験を積ませられると信じている!」

 

「ふざけんなー! 交尾させろ交尾!」

 

「産ませてよぉ!!」

 

「ウチらは若様が生まれたときから、若様の子を産むことを夢見て生きてきたんだぞ!!」

 

 僕の説得に対して、口々に不満を口にするメスドラゴンたち。

 

 ……いや、なんというか……さすがにドラコが哀れだよ。

 以前にドラコにお前がちやほやされてるのは種馬ならぬ種ドラゴンだからだと言って叱ったけどさあ、あれ挑発交じりだったんだよ。まさか本当にそうだなんて思わないじゃない。

 こいつら本気でドラコと交尾するつもりで育ててきたのかよ。

 

 というか、このままだとマジで里じゅうのドラゴンとセックスさせられるところだったの? エロ同人CG集とかに「世界中で勃起できる男は俺だけ! ヤリまくりハーレムライフ!」みたいなテーマの作品あるけど、冷静に考えて地獄だろこんなの。それはハーレムではなくて赤ちゃん製造工場だよ。

 

 そんなドラコはウルウルと瞳を潤ませながら「先生……!」と感極まった様子で僕を見下ろしている。はいはい、お前は僕が守ってやるからちょっと待ってろ。

 

「我々が生きていない100年後のことなどどうでもいい! 若様は今しか子作りできないのだぞ! 若様が今から10年の間に種付けして回れば、どれだけのドライグを増やせることか! 子供が生まれないことの方がよほどドライグにとって損失ではないか! それをどうしてくれるのだ!」

 

 僕たちの後ろを飛んでいたピンドラが、メスドラゴンを代表するかのような反論と共に突っかかってくる。

 明日より今日なのじゃあ!って感じ。

 視野が狭い考えだが、まあそれも一理はある。

 「ドライグの未来とかどうでもいいから今すぐその子とセックスさせろ!」って本音が顔に出てなければなおよかったな。

 

 その反論は当然予想されて然るべきだ。そして僕にはそれを解決する秘策がある。

 

「もちろん、僕にはドラコが種付けしないことの埋め合わせをする用意がある!」

 

「ふぅん、どうやってだ? お前が若様の代わりに里のメスの相手をしてくれるとでもいうのか! 人間のオスなどこちらからお断りだがな! ……なかなかいい体をしてはいるが! ふぅん! ふぅん!!」

 

 ジロジロと舐め回すようにこちらを見てくるピンドラの言葉に、ウルスナとアイリーンがその視線を遮るように前に出た。別に減るもんじゃないし、気にしないんだけどな。

 しかしこいつもバカな奴だ。僕の体なんかより、これからもっといい思いができるっていうのに。

 

「僕がとんでもなくエロい絵を描いて、定期的に君たちにプレゼントしよう! そりゃもうすっごくエロいぞ! 一目見ればアガリを迎えたオスでも勃起すること間違いなしだ! それを見た里の男たちに、君たちの相手をしてもらえば人口問題は解決する! ドラコが相手をする必要はないはずだ!」

 

 そう、これが僕の秘策。

 ドラパパもきっとこれに気付いていた。だからこそスパイス1年分だなんて破格の対価を提示したんだ。アガリを迎えたオスドラゴンを生殖可能にする絵、それは万金を積むに値する。

 ドラパパが提示した大金こそが、僕にあのスケッチの真価を教えてくれた!

 

「ハ! 何を言うかと思えば……! いいか、人間! 20歳を超えたオスが勃たなくなるのは種族の本能なんだよ! そういう風にできているんだ! 絵ごときでどうにかなるものか! 大体貴様がそんな絵を描くだと? 誰が信じられるものか! それなら今すぐここに見せてみるがいい!」

 

 その言葉を待ってたぞ!

 僕はこの場において最良のチートスキルを発動させる。

 

「【最高のプレゼン体験】! こういう絵だ、とくと御覧(ごろう)じろ!」

 

 それは僕の言葉を聞いた相手の脳内に直接イメージを送り込んでプレゼンするスキル。

 僕がこれまで描いてきた自動車のスケッチが、ドラコのテレパシー能力を経由して直接里のすべてのドラゴンたちの頭に送り付けられた!

 

 直後、

 

『エッッッッッッッッッ!!!!!!』

 

 文字通りに地面を揺らすほどの大声が、里じゅうから沸き上がった。

 

「エッロ!? な、なんだこれは!? とんでもなく卑猥なイメージが頭の中に直接湧き上がってくる!? おい人間、貴様私たちに何をした!」

 

「言っただろ、これはプレゼンだ! 僕がこれから君たちのためにこういう絵をあげよう! だからドラコは僕に預けてくれ!」

 

「ふざけるな! こんな絵ごときが若様の代わりになるものか! もういい、貴様のようなバカは生かす価値もない! この場で焼き尽くしてくれるわ!!」

 

 叫びと共に口を大きく開け、口の中にブレスの光を溜め始めるピンドラ。

 すかさずアイリーンがピンドラに向かって半球状のバリアを展開するが……。

 僕たちを取り囲むメスドラゴンたちが、四方八方からブレスを吐こうと口を開いている。

 まずい、逸らすことを前提にしているアイリーンのバリアでは多方向からの一斉攻撃は防げない。

 

「……ダメか……!」

 

 僕のプレゼンは、メスドラゴンたちには通じなかったらしい。

 これこそが問題を根本から解決する妙案だと思ったのだが。

 所詮エロで解決しようなど、ふざけた話だったのか……!?

 

「くたばれ、人間!」

 

 ピンドラの口から発せられたブレスが僕たちを焼き尽くそうとした、その瞬間……。

 里から巨大な影が舞い上がり、ピンドラと僕たちの間に割って入った!

 仁王立ちするように体を広げ、身をもってブレスを防いだのは……目が覚めるような蒼い翼を持った美しいドラゴンだった。

 

 いや、どちら様!?

 ここまでの話でこんなドラゴン一度も出てきてないよ!?

 

「この人間を害させはしない! 俺の命に代えても!」

 

 涼やかなイケメンボイスだなあ。どうやらオス竜のようだ。

 

「なっ……。なんだ貴様! オスの分際ででしゃばるんじゃない!」

 

「いいや、下がるものか! この人間はドライグの希望! ……見るがいい!!」

 

 その言葉と共に、オスドラゴンは空中で下半身を突き出すポーズをとった。

 そこに屹立していたのは……あまりにも立派な男性器だった! 20歳を越えたら勃起しないはずのドラゴンペニスが、今やギンギンにフル勃起してこの里がある山のように猛っている!

 

「な、なんてこと! 里一番のイケドラ、ブルース様の御逸物が勃起している!」

 

「アガリを迎えて以来、私たちがあんなに誘惑してもピクリともしなかった肉竿が!」

 

「チンポが勃った! チンポが勃った!」

 

 じゅるり……とメスドラゴンたちが口の端から涎を垂らした。

 

 そんなメスたちに構わず、ブルースさんとやらはぐぐっと拳を握り込んで力説する。

 

「俺は感動した! この人間が描く絵こそはドライグの意識の中に共通して眠る美の女神だ! 俺たちオスの肉欲を再び衝き動かす神域の美学だ! それをこんなところで失わせるわけにはいかない! 俺たちに生殖能力を取り戻させてくれる、このお方こそドライグの希望だ!」

 

 自動車って女神って扱いなんだ……。

 なんか希望だのこのお方だのと祀り上げられているのを他人事のように感じながら、僕はオスドラゴンの演説を見守った。いや、あまりにもアホらしすぎて思わず客観的になるわ。なのに頭の上ではドラコがうんうんと熱心に頷いているし。なんなの。

 

 ぽかんと見守る僕をよそに、ブルースさんは股間のマウンテンを隆々と漲らせながら里に向かって声を張り上げる。

 

「オスたちよ、勇気を出せ! 俺たちの希望をメスたちの反乱なんかで失わせるな! ドライグの未来を守るために今こそ勃ち上がれ!! 俺たちは用済みなんかじゃない、まだ戦えるんだ!! 子作りができるんだぞッ!!」

 

「「「オオオオオオーーーーーーーッッ!!!」」」

 

 ブルースさんの呼びかけに応えて、眼下の里から無数の雄叫びが上がる。

 次の瞬間、何十体ものオスドラゴンたちが僕たちに向けて殺到してきた!

 

 僕にはドラゴンの年齢は見てわからないが、かなりデカいのや立派な鱗の個体もいるから、老若を問わず様々なオスが混在しているのではなかろうか。

 彼らは僕を守るようにぐるりとゴンドラの周囲に集うと、親しげに声をかけてきた。

 

「素晴らしい絵だった! あれを我らに献上するとはまことか!」

 

「ホッホ、やるのう小僧。ワシを50年ぶりに猛らせるとは……!」

 

「絵画ごときに(うつつ)を抜かす人間を馬鹿にしていたが……目から鱗が落ちましたよ! エロすぎる! 竜生観変わった!」

 

「人間……いや、先生! どうか俺にもあの絵を描けるようにご教示いただけないか!」

 

「先生!」「先生!」「エロの大先生!」

 

 いや、僕はドラコの先生であって君たちの先生ではないんだけど。

 最後のは何? パソコンの大先生みたいな言い方やめてくれる?

 そしてなぜか頭上のドラコがすっごい誇らしげな顔をしている……!

 

 それにしてもオスドラゴンたちには僕のプレゼンが通じてよかったな。

 やっぱED治療のありがたさは同じ男性の方がよくわかるよね。

 

 しかしこれ、メスドラゴンVSオスドラゴンって流れになるの?

 オスはメスよりも弱いっていうし、大丈夫かな……。

 

 そんなことを思っていた矢先、この状況に顔を見合わせていたメスたちの一部がささっと僕たちの側へと寄って来た。

 

「私、反乱軍いちぬーけた! 若様の種をもらえるっていうから支持したけど、他のオスでもいいもん!」

 

「あっ、ずるい! 私も! 私もそっちに移る!」

 

「夫とまた子作りできるなら若様にお味方しない理由がありません!」

 

「ブルース様~♥ 貴方の側にお味方しますから、ぜひ今夜お相手を♥」

 

「実は私、子供より大人の方が子宮キュンとくるんだよね……特殊性癖だから言い出せなかったけど」

 

「へえ、アンタも? 実は私もおじいちゃんの方が好きでさ~。ウチら仲間だね!」

 

「いやジジイはないわ」

 

「あ゛?」

 

 現族長派、まさかの大復活!

 一部が寝返ったら、雪崩をうつように次々とこっちに寝返ってくるじゃん。

 

 どうもあの大臣、ドラコの種を分けるって約束で仲間を集めてたみたいだな。

 それが他の男性も生殖可能になるとわかって、前提が崩れたという感じか。

 まあそりゃドラコ一人に相手させるとかそもそも無理筋だし、他のチンポがあればそっちに(なび)くのが出て当然だよね。

 

 というか……。

 

「え? え? みんな現族長派につくの? ……やっぱ私もそっちにつく!」

 

「私も私も! そっちの派閥の方が強そう!」

 

 中には大臣派の方が数が多くて強いからという理由で反乱軍に与した奴もいるみたいだ。

 こっちの派閥が盛り上がってるとみるや、即座に寝返っている。

 ドラゴンって強さを最重要視する誇り高き種族って聞いてたけど、強さ至上主義って要するに長いものには巻かれろってことなんだね。誇りはどこいったんだよ。

 

「き、き、貴様ら~! 新王様に忠誠を誓うという言葉はどうした!?」

 

 ピンドラは節操のないかつての同志たちにぷるぷると震えているが、

 

「新王(笑)」

 

「弱いトップに忠誠を誓う価値なんてないよね~」

 

 こっちに寝返ったメスドラゴンたちはプークスクスと笑うばかりだ。

 

「ユージーン、宮廷の方を見ろ。あっちでも盛大に寝返りが起きてるぞ!」

 

 ウルスナに言われて目をやれば、僕たちを見つけて取り囲もうとしていたドラゴンたちが真っ二つに分かれて戦闘を始めていた。

 片方の派閥の後ろにはオスドラゴンらしき個体が数体飛んでおり、メスドラゴンたちがそれを庇うように展開している。

 どうやら宮廷に詰めていた反乱軍を説得しにいったオスがいるようだ。その説得を受けて現族長側に再び寝返った連中が、反乱軍との内紛を始めたと……。

 

 

【説明しよう!

 我々の価値観で言えば、これまでいくら誘っても「もう私たち子供作れない年齢だし~」とすげなくされてきた美女たちから「こっちについたらナマでエッチさせてあ・げ・る♥」と胸チラされ、喪男たちが大興奮で寝返った状況である!

 さらに「ロリ姫様と子作りさせてもらえるって言われたけど、正直ロリは好みじゃないんだよな~」と内心思っていた連中も全員寝返る始末!

 戦場は真性ロリコン VS BBA専の争いという地獄の様相を呈しつつあった!】

 

 

「く、くそっ! 変節漢どもが! おい、私の周囲に集まれ! 火力を集中させろ、今すぐこの人間を焼き尽くせばそれで終わり……あれ?」

 

 瞳に怒りを滾らせるピンドラは仲間へと号令をかけるが、誰も集まってこない。

 

 気づけば僕たちの周囲はあっという間に現族長派で埋め尽くされていた。

 大臣側につこうという気概のある連中もいたのだが、ピンドラが号令をかける前に現族長側に集団で囲まれてボコボコにされてしまっている。人間体に戻った状態でぐるぐる巻きに縛られ、頭から麻袋を被せられてはもはや身動きのしようがなかった。

 

「えっと……」

 

 ピンドラはドラゴン状態のまま手揉みすると、ドラコに向かってへこへこと頭を下げた。

 

「わ、私の裏切ったふりがうまくいきましたね若様! すべては若様を安全にここまでお連れするための演技だったのです! このコモモは最初から現族長を支持しておりましたよ! 若様の忠実なる家臣、コモモを今後ともよろしくお願いいたします~!!」

 

「やれ」

 

「あ゛あ゛ーーーーーーーーーーーっ!?」

 

 ドラコの冷徹な一言で、ピンドラは現族長派ドラゴンたちによってたかってしばき倒された。

 判断が遅い!

 裏切るなら即座に裏切らないと。あいつならそうするよ。あいつって誰だっけ? まあいいか。

 

 ふう……これで肩の荷が下りたな。

 後は反乱が鎮圧されるのを高見の見物で待っていればいいだろう。

 現族長派の方が圧倒的多数派になったようだし、時間が解決してくれるはずだ。

 

 やれやれとゴンドラの中で腰を下ろすと、周囲にオスドラゴンが集まって来た。

 どしたん、やたらとキラキラとした瞳を向けてくるんだけど。

 

「では先生! 早速作品の制作をお願いします!」

 

「俺! 俺! 俺を優先して!」

 

「私はあのちっちゃくて可愛いコが好みです! お尻がよく見える構図がいいな!」

 

「へっ、粗チン野郎はこれだから……やっぱあのバイーンとした重厚なラインに勃起してなんぼだろ!」

 

「ぼく、あのでっかいコがいい! すごい大きな荷台があるやつ!」

 

「人間は光りモンが好きなんじゃろ! 金か? 宝石か? ワシを優先してくれたらコレクションから好きなモンを分けてやるぞ!」

 

「先生!」「先生!」「エロスケッチ先生!」

 

 まだ見ぬ女神(自動車)に股間を滾らせたオスドラゴンたちから熱烈なオファーを受け、僕はひきっと頬を引き攣らせた。

 

「ええと……その話は反乱が終息してから落ち着いてしようか」

 

「イェッフーーーー!!」

 

 里のどこに潜んでいたのか、オスドラたちは続々と集まってワッショイワッショイと先生コールをしてくる。

 えっ、もしかしてこの人たち全員に最低でも1枚は描かないといけない感じ?

 

 ……ちょっと早まったかな……。




 そう、これが僕の秘策。
 ドラパパもきっとこれに気付いていた。だからこそスパイス1年分だなんて破格の対価を提示したんだ。アガリを迎えたオスドラゴンを生殖可能にする絵、それは万金を積むに値する。
 ドラパパが提示した大金こそが、僕にあのスケッチの真価を教えてくれた!

ドラパパ「えっ!?」
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