槍と大斧とが火花を散らす。
エルとダイスとの勝負は一進一退だ。敵は無尽蔵のタフネスを誇る。
きれいな一撃を入れても、ちょっとやそっとでダイスの勢いはとまらない。
「イェス!イェス!イェス!」
「うるさいねェ!」
エルは槍を収納貝に入れて無手になって構えた。
「おまえ…馬鹿にしてんのか?」
「喜びなよ。私の本気を見せてやる!」
ダイスは大斧を振り上げ、地面に叩きつけた。
ドガァァァン!!
金属の床が大きくへこみ、衝撃でアリーナ全体が揺れる。
「どうだァ!?この一撃を見ても…!!?」
目の前のエルが掻き消えた。
それは残像だったのだ。
エルはすでにダイスの背後にいた。
「…遅い」
「なっ……!?」
エルは六式を自在に操る。
細身の女性とは思えない動きで、エルは大斧の猛攻をすり抜ける。
「バケモンか!!海賊のくせに六式だとォ!?」
「まだまだ序の口、あたしの本気はこれからだよ!!」
― バサバサァ!!! ―
エルの背から6対、12枚の真っ白な翼が現れる!!
「ヒトヒトの実 モデル幻獣種『大天使』!あたしの本気を見せてやる!」
「!!?」
翼を広げたエルの姿は、まるで神話の守護者。
「
ダイスは大斧を両手で握りしめ、筋肉を盛り上げた。
同時に、その身を覆っていた黄金がうごめき始め、形を変えてゆく。
溶けた金塊のように大斧へとまとわりつくと、武器は圧倒的な質量を得て巨大化した。
「だが、おれも…地獄の特訓で鍛えられたんでなぁ!」
「いいねぇ!そうじゃないとつまらないからね」
ダイスが大斧を振りかぶる。
アリーナ全体を割るほどの威力を持つであろう一撃を繰り出す。
それでもエルは動じない。
「”神速”」
それは、大天使の姿で剃を使うと可能な技。剃を超える速度でエルの姿が消える。
次の瞬間、ダイスの胸元に白い閃光が走った。
「“
剃と指十本の指銃との複合技だ。
まるで、虎の牙のような衝撃波がダイスの胸を貫き、巨体が吹き飛ぶ。
大斧が手から離れ、床に突き刺さる。
「ぐっ……がはっ……!お、おれの……大斧が……!」
エルは静かに着地し、翼をたたむ。
「武器が大きいだけじゃ勝てないよ。まぁ、あんたのタフネスには呆れたけどね…」
それでもこの技には耐えられまい。
胸に穴を穿たれ衝撃波が背中に抜ければ、さすがにね…
ダイスはそのまま意識を失った。
***
ゴールドアーマーを纏ったタナカさんは、ヌケヌケの実の能力でサンジを翻弄した。
「するるるる~」
あっちから現れたかと思えば、こっちから。地面、壁、あらゆるところから顔を出す。
「― さァ、わたしをつかまえられますかァ!」
二丁拳銃を連射する。弾はサンジをかすめていった。
「ヌケヌケ野郎!わざと外してやがんのか!」
サンジはいらだった。
「これもショーですからねェ~!たっぷり、いたぶってから…殺してやるよ!」
「うるせェ!」
サンジは壁を抜けて現れたタナカさんを攻撃した。しかし、蹴りは壁に穴を穿つだけ。
「!」
「無駄だよ。私はどこでも抜けられる。君の死角を突くのは容易い!」
壁、地面、天井。
あらゆる場所からタナカさんが現れて、銃を撃ってはまた消える。
サンジは高速ステップでかわし続けるが、攻撃はまったく当たらない。
「野郎!」
おれが…スピードで負けている!?
「動きが単調になってきましたねェ?ショーはもりあげないと!するるるる~」
「…」
タナカさんはサンジの動きを揶揄して笑う。
サンジは心を落ち着かせ、攻撃しながらタナカさんを観察する。
***
重火器の多くは、魚人柔術による海水を浴びて使い物にならなくなっていた。
ジンベエと黒服たちは激しい格闘戦を繰り広げていた。
バカラは黒服たちの間を歩きながら、彼らに軽くタッチした。
五人、十人と…。
「バカラさん?なにを…」
怪訝な顔をする黒服たち。だが、すぐに彼女がラキラキの実の能力者である事を思い知ることになった。
グラッ……!
近くにあった黄金の飾り柱がいきなり根本から崩れた。
黒服たちは逃げる間もなく柱の下敷きになってしまった。
「なにやってんだ、あの女…」
「味方をアンラッキーにしてますよ?」
チョッパーとブルックは首をひねった。バカラは背中を向けている。
これは、チャンスだ。
「この距離ならイケる!!」
キャロットが右手を突き出し左手を添える。指を窄めて狙いを定め…
「エレクトロッ!!」
右手の指先から電撃が迸る。
電撃はバカラをとらえるはずだった…。しかし、黒服がこちらに襲い掛かろうと脇から電撃の軌道に入った。
そいつがバカラを庇う恰好となり、電撃を受けて感電する。
「あら?ラッキー」
バカラはしれっと言ってのけた。なんて女だ。
「どうなってるの…?」
「ラキラキの実の能力は、他人の運気を吸い取るだけじゃないの。それを自分の運気に変えることが出来る。つまり!今のわたしは…!」
バカラは手にした長剣を投げた。武器を捨てたのだ。
なぜならそんなものは不要だから。
「最強のラッキーガール!無敵って事よ。あんたたちならこれで充分!!」
そうして一枚のコインを指で挟んで見せる。
「?」
「このコイン一枚で倒してあげるわ」
バカラはコインを、キャロットたちに向けて投げた。
「そんなもんでやられるわけけーだろ!」
チョッパーが言い返す。
「さァ?どうかしら……」
転がったコインはというと… ― 乱闘の中の黒服の一人がコインを踏んだ。
バランスを崩した黒服が、弓を構えた別の黒服にぶつかる。そのせいで、矢は逸れてあさっての方向へ。
さらに別の黒服をかすめた矢が地面に突き刺さると、びびったそいつの銃が暴発。
弾は近くにいた黒服の抱えたバズーカー砲に当たった。
― ドウッ!
バズーカーが暴発し、弾は建物の屋上へ。そこには樽爆弾を担いだ大柄な黒服が居た。
― ドーン!
バズーカーの直撃を受けて屋上は大破。そして樽爆弾は…
「「え~~~!」」
キャロット、チョッパー、ブルックが悲鳴をあげた。
ラキラキの実のラッキーガールにかかれば、コイン一枚が爆薬ひと樽になって敵を攻撃するのだ。
― ド~~~~~ン!
「あら、ラッキー」
バカラは爆発の余波で、手元に戻って来たコインをキャッチした。
「反則です!あんなの、どうすれば?」
ブルックも、仲間たちもボロボロ。これではお手上げだ。
「こんなの単なる偶然よ!ラッキーなんてそんなに続くものじゃない!!」
「キャロット…?」
「あの女が運気を吸い取ってるっていうなら、いつかは運もつきるはず!」
ルフィがバカラに触られたときは、丁半勝負に負けて、バナナで滑って転んで壁に激突したあたりでアンラッキーは終わった。
逆に言えばバカラの幸運もいつまでも続くものではないということだ。
「さあて、それまで、あなたたちが保つかしら?」
バカラは余裕の表情だ。すでに黒服たちからたっぷり運気を吸っていた。
「やってやる!…うォおおおお!」
― ドーン!
しかし結果は同じ。
またタライだのカラスだのバナナの皮だの、理不尽な自爆をしてキャロットたちはボロボロのボロボロだ。
バカラは、また手元にかえってきたコインをつかんだ。
「もう限界かしら?まだ運は、たっぷりあるわよ」
バカラ自身は、残った運気の量がわかるらしい。
足りなくなれば、また黒服から補充すればいいわけだ。
下手に近づいても運気を吸われてしまう。
「どうしたら…」
わたしたち…コイン一枚でやられちゃうの?
いやだそんなの!!
キャロットはバカラを睨む。その目には悔し涙が流れていた。
その時、風が…
キャロットの頬を撫でた。
~ キャロット、5分で決めろ!! ~
耳元で誰かのささやく声がした。
「!!?」
この声は…まさか…?
そして物陰から、光る何かが飛び出し宙を舞う。
そして続けて声がする!
― 弾けて混ざれ!! ―
― カッ!! ―
突然そこに、小さな満月が現れた。
キャロットは、迷わずそれを凝視した。
― ドクン! ―
「ガオォォオオォォオオオ…!!!」
「「!!?」」
ブルックとチョッパーが目を見張る。
キャロットがスーロンと化した。
「なにあれ…!?…髪まで真っ白!!」
キャロットの変化にバカラが驚いた。
***
黄金巨神が猛威を振るう。『ゴルゴルの実』の能力に、敢然と海賊は立ち向かう。
「テゾーロ~~~!」
高級エリアにもどったゴム人間は、みずからを肉弾と化して突っ込んだ。
ガンッ!
ルフィの拳が黄金巨神の顎をとらえる。
のけぞった黄金巨神だが、それ自体に痛覚があるわけではない。
今度は巨人の手のひらが、ルフィをハエ叩きの要領で打ち付けた。
ルフィは飛ばされ、高級エリアの出入り口にあるアーチ門が破壊される。
「ハハハ!どうした、もう終わりか!」
「まだだ!」
ガレキの山から抜け出したルフィは、再度跳ぶ。
ギヤ3 ― 両腕を骨風船でふくらませ、さらに覇気をおびる。
「ゴムゴムの灰熊銃!」
武装硬化による両手掌底突き。単純な打撃力では、ルフィの最強の技のひとつだ。
ブンッ!
「……しびれるねェ!さすが十九億の拳…だァ!」
だが、それでも黄金巨神には効かない。
ぶ厚いゴールドアーマーに守られたテゾーロに攻撃は届いていない。
そこにカウンターの右フック ― ルフィは空中で身をひるがえすと、黄金巨神の腕の上を走った。
「うぉォおおおおおおおっ!」
ルフィは黄金巨神の頭部に肉薄した
***
麦わらの一味は何も知らない。
イオリはもちろん知ってます。むしろ主犯格と言えるかも?
なぜなら、数年前からテゾーロたちを鍛えたし… 《え?》
この計画が立ち上がったのは、ルフィの旅立ち前なのです。
原作よりも一味が強くなってるだろうと思っていた。
だからこそ、テゾーロ達を鍛え上げた。
グラン・テゾーロが竣工したのは4年ほど前の事。
テゾーロがユナとであったのもその頃だ。
二人の間に信頼関係が構築されて、ステラと再会したのが3年前…
そこから、計画は動き出していた。
2年前…
グラン・テゾーロとF-RONPは企業同士の協業の契約を結んで現在に至る。
グラン・テゾーロ号のスタッフは、テゾーロに何かあったら、この船はF-RONPに吸収されるということを聞いている。
そして主要スタッフは、テゾーロが表世界から去って愛する人と一緒になると言うことを聞いている。
つまるところそれは、テゾーロが退場した後の確定した未来だった。
「するるるる~!ついていきますどこまでも!!」
「キモティー!」
「アメージング!エキサイティング!!まさかユナ様の元で働けるなんて!!」
タナカさんが、ダイスが、バカラが叫んだ。
「その時は、彼らを倒すつもりで戦って!!」
ユナが全員に向けて言った。
「あんたは麦わらの一味と懇意にしてたんじゃないのか?
「だからこそよ。強者と闘って強くなってもらうのよ。それに…」
「それに?」
「それは何も彼らだけではないはずよ?あなたたちは、F-RONPの一員になるんだから!」
「な、なるほど?」
この船から黄金帝が消えた時…
守るチカラは必要だ。
なにせ、世界最大級のカジノ船。海賊たちの格好の的になるのは明らかだ。
もっとも…
F-RONPのモノになったなら、守りはそれなりに固めるけどね!