イムの娘(いむのこ)~番外編~   作:槙 秀人

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スンマセン…

今話はほぼほぼ映画のまんまでごぜーます。

とりあえず4人が無事に合流したという事で…





残り4人の状況

ナミとロビンと何故かイオリの名前を叫び、サンジは島をさ迷っていた。

サバイバル生活を始めてから一週間が経過し手持ちのタバコは残り少なくなっている。イライラは頂点に達していた。

 

「大声出すなって…」

 ウソップは何度目かの溜息をついた。

 

 二人が落ちたのは、桜や花々が満開の春島だった。

 

「くそっ!ウソップ、火ぃあるか?」

 マッチをきらしてしまったサンジがそう言うと、花霞のむこうからブーンという羽音が聞こえてきた。

 花の蜜に誘われてきた虫らしい。もちろんこの島に、ただの虫など居やしない!!

 ここの動物たち(昆虫含む)の異常さは、この一週間で身にしみていた。

 飛んで来たのは象より巨大なカブトムシ。甲殻からは燃えさかる炎が噴き出しているようにも見える。

 そして、いきなり炎を吐いた。

 

「ぎゃ~~~~~!」

 悲鳴を上げて、ウソップは脱兎のように逃げ出した。

 

「んナミすわぁ~~~ん!んロブィンちゅわ~~~ん!んイオルィちゅわ~~~ん!」

 虫など無視だと言わんばかりにサンジは巨大カブトムシをものともせずにボコボコに蹴り倒した。

 ちゃっかりその火でタバコに火をつけて…

 

「だから!大声出すなって!!あ゛~~~っ!」

 火炎カブトの上で叫ぶサンジを目ざとく見つけたのは、派手な模様の島鶏だった。

 花畑を走って逃げようやく振りきったと思ったら、その次は桜の幹などひと噛みで伐きり倒してしまいそうな大芋虫が襲いかかってきた。

 サンジとウソップはとっさに崖にせり出した木から垂れたツタに飛びついた。

 勢いあまった大芋虫が崖から下にある島に落ちていく。

 

「ふうっ、あっぶねぇ!」

「サンジ…!上!上!!」

 顔面蒼白のウソップの声に、サンジは上を仰いだ。

 枝の上には、蒼い毛並みのサーベルタイガーがいた。

 どうやら、この樹がねぐらだったらしい。

 ただのサーベルタイガーではない。脚は六本、尾が二つに分かれている。

 ウソップは慌てて、反動をつけてツタから地面に飛び降りた。

 サーベルタイガーは、それを予知していたかのように木から飛び降り回り込む。

 

「サ、サンジぃ~~~!」

 ウソップの悲鳴を聞いて、サンジがすばやくツタをよじ登り、枝の上から助走をつけて飛び上がる。

 そのまま空中前転し、回転に勢いをつける。

 

「煙星!」

 ウソップがとっさに煙幕弾を放った。

 

粗砕(コンカッセ)!」

 視界を奪われたサーベルタイガーの脳天に、サンジが回転踵落としをくらわせた。

 サーベルタイガーの長い牙が地面に突き刺さる。地面に少し亀裂が入った。

 

「よし、よくやった!おれの指示どおり!」

 ウソップが軽口を叩いた次の瞬間、一発の銃弾?が煙幕を貫いてウソップをかすめた。

 

「今度はなんだ!?」

「!?」

 

 煙幕が晴れていくと、桜の枝のあちこちから獣が何頭も姿を現した。野牛だ。

 と、言っても体はウサギほどしかないミニサイズの牛だ。しかし、その頭と角は金属のように硬く進化していた。

 銃声かと思える音を立て鉄砲牛の群れが、枝を蹴って飛びかかってきた。

 軍艦の一斉砲撃に等しい衝撃が、二人を襲う。

 枝がへし折れ、あたりの地面がえぐられる。

 

「「!?」」

 突如あたりを襲った大きな揺れに、二人はたじろいだ。

 鉄砲牛の集中砲火でさっきサーベルタイガーの牙がくさびになって生じた亀裂が広がって崖が崩れ落ちたのだ。

 

「のおわぁああああああああああっ~~~!!」

 二人は、またしても空に投げ出された。

 

 

 


 

 一面の岩雪原を、幼い少女が歩いていた。

 防寒着もなくたった一人で身をふるわせている彼女は、あきらかな命の危機にあった。

 それでも胸に一輪の小さな花をたずさえて、それを必死に守ろうとしていた。

 花を手にしている腕には一列の羽根が並んでいた。

 それは飾りではなく不思議なことに、確かに彼女の肌から一本ずつ生えているのだ。

 もっとも、その羽では空を飛ぶことなど出来はしない。

 吹きすさぶ雪のむこうに聞こえた地鳴りに、幼い少女は顔を上げた。

 

 争っているのは二足歩行の恐竜・越冬ザウルスと、巨大ムカデヘビ・ 蛇足だった。

 

 少女は足がすくんで動けなくなった。

 というか、すでに気絶していた。

 

 ドサッと少女が雪面に倒れた音で、争いに勝った越冬ザウルスは彼女の存在に気がついた。ズシンズシンと地響きを立て、恐竜は気を失った少女の間近に迫った。

 恐竜が少女を喰おうと口を開くと、一陣の旋風がその巨体をひと薙ぎにした。

 途端に肉食恐竜は大きな音をたてて倒れた。

 

 三本刀を鞘に納めると、バンダナを巻いたゾロは雪原に倒れた少女に目を向ける。

 

「よかった!間に合った!」

 六本脚のマンモスデンスに乗ってやってきたのは、チョッパーだ。

 ゾロが少女を抱き上げた。

 

「チョッパー!お前の毛皮、貸してやれ!!」

「そうだな。寒そうだ!…って!脱げるか!!

 

 二人はマンモスに乗ると、また雪原を進みはじめた。

 あの金獅子のシキという男のせいでこの島に落とされて、一週間が過ぎていた。

 鍛錬バカの半袖ゾロと冬島のドラム出身のチョッパーであれば、寒さを凌ぐのは問題なかった。動物語が話せるチョッパーのおかげで、こうしてマンモスにも乗せてもらえたし…。

 

「ん………」

 やがて意識を取り戻した少女は、ぼうっと彼女を抱き抱えていた相手を見た。

 温かそうな腹巻きをした、ちょっと強面の男。

 そして鼻が青い毛むくじゃらの変な生き物が、自分を雪風から守って温めてくれていた。

 

「もう気絶すんなよ」

「!あ…ごめんなさいっ」

 

「お前、こんなとこで何してたんだ?怪物にやられる前に凍え死ぬかもしれないのに…」

 チョッパーがたずねると、少女は口ごもった。

 

 彼女の名前はシャオ。

 メルヴィユには王宮の島の他にもう一ヶ所、人が住んでいる場所があるのだという。

 それが、この島だった。

 

「まぁいい。とにかく早くここを抜けよう!もう何日も雪の中でうんざりしてんだ」

 ゾロの言葉を聞いてシャオが不思議そうに問い返した。

 

「”冬ゾーン”はそんなに広くないから、半日もあれば抜けられるはずだよ?あたしだって家出たの今朝で、夕方までには帰るつもりだったんだもん!あっちだよ!!」

 シャオが指した方角には、小高い山が見えた。

 その下を流れる川沿いに行けば、村があるという。

 

「この一週間、ゾロが言う通りに進んできたよな?」

「…たまたまだ」

 チョッパー君… 何故にゾロの指示に従ったん?

 ゾロの方向音痴は知ってるでしょうに!!

 

 とにかく村と聞いて二人は希望を持った。

 仲間を捜すための情報が手に入るかもしれない。

 

 

 

 

 一方、鉄砲牛に追われて空に落ちたサンジは、気がつくと小舟に横たわっていた。

 痛む体をさすりながら顔を上げて、あたりを見た。

 船は桟橋に繋がれている。

 隣ではウソップが白目をむいて気絶していた。

 

 そこは、湖畔の村だった。

 見上げれば、先ほどまで自分たちが居た春島らしき岩壊が浮かんでいた。

 

 どうやら崩れた崖ごと、この大きな島の湖に落ちたようだ。

 

「こんなところに人が住んでたのか…!?」

 意識を取り戻したウソップが小さく驚きの声を上げた。

 

 ここは自給自足の小さな村のようだ。

 

 周りを見ると、女と老人、子供ばかりが目についた。

 その事が違和感としてサンジの心にひっかかった。

 

「気がついたか、ウソップ」

「ああ…」

 

「この村、若い娘がいねぇ」

「気になんのはそこかよ!?」

 ウソップが呆れたところで一人の中年女性が二人に歩みよってきた。

 

「目ぇ覚めたかい?驚いたよ。空から降ってくるから。よく助かったもんだ!!どこからどう流れついたか知らないけど、これ飲んだらとっとと出ていったほうがあんたらの身のためだよ」

 中年女性は二人に温かい飲み物の入ったカップを渡した。

 

「ありがとう、マダム」

「いやだよマダムだなんて!でも…悪い子たちじゃなさそうだね」

 見ず知らずの若者たちに対していくぶん警戒を解いた女性は、桟橋にしゃがみこんだ。

 

「その腕の羽根は…?」

 マダムの腕には羽根が一列並んでいた。

 一瞬、飾りかと思ったが羽根は確かに彼女の腕から生えているようだ。

 

「これかい?なんだろうね…ここの人間には、なぜか皆にあるんだよ。」

 理由は、だれも知らないという。

 羽根といっても翼になっているわけではなく、もちろん人が空を飛べるわけでもなかった。

 なんの役にも立たないのだという。

 

「へぇ…しかし、ここの村は食い物が足りてるのか?やたら細い人が目立つが」

「ああ、男手も若い娘たちも、みんな王宮に召し上げられちまってるからね。働き手がなくて、やっとこさその日暮らしをしているのさ!ここでとれるのは湖の小魚と、申し訳程度の作物だけだしね…」

 

「なんだそりゃ!ひでぇ話だな!文句言って、みんな返してもらえばいいじゃねぇか」

 ウソップが言うと、女性はとたんにおびえた表情になった。

 

「無茶言わないでおくれ…!シキに逆らったら、わたしらおしまいだよ!」

「シキィ!?」

 あのフワフワの実の金髪男の名前が出てきたことで、サンジとウソップは憤った。

 

 聞けば二十年ほど前、マダムが若い娘だった頃、ここメルヴィユに現れた海賊シキの一味は、村を支配下におくとともに島を空中にすえたのだという。

 

「そうさ。わたしらは、あいつに徹底的に支配されているんだ!それに…」

 言いかけた女性は、いきなりサンジとウソップの頭を舟底に押さえつけた。

 

「わっ!?」

「あんたたち、隠れてな…!」

 声をひそめてそう告げる。

 二人は身を低くして、船の陰から村の様子をうかがった。

 家のむこうから現れたのは、大きなカタツムリ。電伝虫だ。

 

「デっカっ…なんじゃ、ありゃ?」

 なんでも『自走式映像電伝虫』といって、映像を中継できる大出力タイプだという。

 

「あの電伝虫がとらえた映像は、そのままシキの王宮に送られている」

 つまり監視カメラと言う事だ。

 大人の身の丈ほどもある電伝虫は大きな目玉で、村の様子を撮影していた。

 

 もしシキにたてつくような動きがあれば王宮で労働を酷使されている男たちも、酒場で海賊たちの世話をさせられている娘たちも、見せしめに殺すと脅されているという。

 

「シキってやつは、人さらいかよ…!」

「若い娘さんを…!許せん!」

 金獅子のシキの素顔を垣間見たウソップとサンジは怒りをあらたにした。

 

 

 

 

 少女シャオを助けて彼女の案内で村に向かっていたゾロとチョッパーは、いきなり暴れはじめたマンモスの背からふり落とされた。

 

 川べりで前足を高々と上げてほえたマンモスは、パニックに陥った様子で雪原に引き返して逃げていってしまった。

 

「くっ…いきなり何なんだ、あの毛ゾウ野郎…!」

「臭いだよ…!鼻の奥がビリビリするようないや~な臭い。…ゾロは感じねぇのか?」

 

「ダフトグリーンだよ」

「あ?」

 

「わたしたちの村はダフトグリーンっていう樹に囲まれているの!それが動物たちから村を守ってるの。動物はみんな、この臭いが嫌いだから…」

「だろ~なぁ…!!」

 チョッパーは納得という感じで目をショボショボさせた。

 動物にとっては、それほど苦手な臭いなのだ。

 

「鼻栓でもしとけ……行くぞ」

 ゾロは立ち上がった。

 そのダフトグリーンという樹の臭いがするという事は、村が近いということだった。

 

 ダフトグリーンは奇妙な植物だった。

 

 樹高は数メートルほどだが幹はとても太く、それが先細りになっていき、その先に申し訳程度の葉が茂っている。

 

「鼻栓してても臭ってくるぞ…!?」

「ああ、たしかに少し臭ぇな」

 

「あまり吸い込まないほうがいいよ。毒だから」

「そう言う事は、早く言え!」

 息をひそめて三人はダフトグリーンの樹林帯を抜けて、ようやく村にたどり着いた。

 

 家に帰ったシャオを待っていたのは、母親の平手打ちだった。

 

「あれほどダフトグリーンの外には出ちゃいけないって…!どうして、いうことが聞けないんだい!」

 叩いた母親も涙目になっていた。

 この村では危険な動物がうろつくダフトグリーンの外に出ることは、死と同義なのだろう。

 

「だって…!どうしても、ばあちゃんを助けたかったから…!!」

「シャオ…わたしのために危険なまねはしないどくれ…」

 むこうの部屋で床に伏せっていた老婆が、弱々しい声をあげた。ひどく衰弱しているようだ。」

 

「…!?」

 チョッパーは老婆の顔にある緑色の痣に気づいた。

 

「だって…!そのままじゃ、ばあちゃんが…!」

 シャオが祖母を想う気持ちも、母親が娘を案じる気持ちも、どちらもわかってチョッパーは言葉が出てこなかった。

 

「あんたたち、娘の命を助けてくれてほんとうにありがとう!なにかお礼をしたいけど…」

「たまたま通りかかっただけだ」

「そうだよ!こっちこそ道を教えてもらって助けてもらったし…。それよりその病気は?」

 

「ダフトという病気でね。緑色の痣のところが硬直していって動かなくなる病気さ」

 ダフトグリーンの臭いのもとである樹が放つ粒子を大量に吸い込んだり、少量ずつでも長いあいだ吸い続けると症状が現れるという。

 動物が嫌う臭いが人間に無害であるはずがない。

 だがこの島で生きていくためには、たとえ有毒と分かっていてもダフトグリーンに頼るしかないのだろう。

 

「(毒に守られた村…)」

「唯一、治せる薬はIQっていう植物から作られるんだけど…、一輪だけじゃねぇ…」

「それであんなところに、ひとりで…」

 

「ごめんなさい…」

「おまえが悪いんじゃないよ。悪いのはIQを独り占めしちまった、シキのやつさ」

 

「シキ!?」

 チョッパーは声をあげた。

 ダフト病が蔓延しているのも金獅子のシキのせいなのか?

 

「二十年前まではね…この島では、人と植物、動物たちがうまく共存していたんだ。それをあいつが…!シキが、すべて壊してしまった…!!」

「早く行っちゃえばいいのに、あいつら…計略の海へ」

「「?」」

 

 シャオが呟いた『計略の海』という言葉の意味が分からず、ゾロとチョッパーは怪訝な顔をした。

 シャオが汚れた服を着替える間、ゾロとチョッパーは家の外に出た。

 

「チョッパー。あのバアさんの病気、治せねぇのか?」

「見たことのない症例だ。下手に手は出せないよ」

「まぁ、この村にいれば、とりあえず動物どもに襲われずにはすむわけか」

「うん…それを思えば少しは、この臭いも我慢できるよ」

 みんなは無事だろうか。チョッパーは呟いた。

 

「休んだら、また捜しにいこう」

 ゾロは荷物を下ろすと、石積みの階段に座った。

 

「うん。おれもヘトヘトだ」

 チョッパーは、ぺたんと腰を落とした。

 

 ダフト病。

 IQという薬草があるなら、まずそれを手に入れるしかない。

 だがIQはシキが独占しているという。

 

「しっかしマダムはシキの王宮は、いちばん上の島にあるっていってたが…。」

「どうやって行ったもんかな?」

 村のどこからか男が二人、大声で話す声が聞こえてきた。

 

「あ~なんか変だ、体が重てぇ」

「あったり前だ!おまえ、この一週間まともに寝もしないで猛獣とやりあってたんだからよ!!」

 

「(そっか…この人たちも大変だったんだな…)」

 チョッパーとゾロもこの一週間、まともに寝もしないで猛獣とやりあっていた。だからとても眠い…。

 

 ドサッ、ドサッ

 と、荷物が二つ家の前に下ろされた。

 二人の旅人が階段に座り込む。

 

 顔を上げたゾロが、金髪のぐるぐる眉毛の男と目をあわせた。

 

「なんだ」

「てめぇか…」

 見飽きた相手だとばかりに二人がぷいっと顔をそむけた時、チョッパーはびっくりして声を上げた。

 

「サンジ!ウソップ!!」

「おわわっ!?」

 チョッパーの声にウソップが驚いた。

 

 こうして4人は合流を果した。

 

 

 

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