イムの娘(いむのこ)~番外編~   作:槙 秀人

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…してください

 サボテンがまばらに生えている荒野を、一台の大型バイク?が激走していた。

 

「すごいですね~このザリガニさん!車輪を転がして走る知恵があるなんて!!」

 ブルック、フランキー、ロビンの三人が乗っているのは、よく見ればバイクではなく二輪ザリガニだった。

 

「アウッ!俺様デザインのカスタム仕様だ!ザーリー・ダビットソンと呼べ!」

 砂煙を上げて疾走するザリガニバイクの行く先に、岩山に築かれた建物が見えて来た。

 

「なにか見えてきましたね」

「街…か?」

 ブルックとフランキーは目をこらしたが、砂塵が邪魔して良く見えない。

 

「見てみるわ」

 ロビンは、すっと瞼を閉じた。

 彼方に見える街に、ロビンは瞳を咲かせた。脳裏に飛び込んできた光景は、思いがけないものだった。

 

 街には、徒党を組んだ大勢の男たちがいた。

 みな肩で風をきって表通りを歩き、ひときわ目立つ大きな建物に吸い込まれていく。

 

「海賊だわ。すごい数…」

「何か、おっぱじまるのか?」

 フランキーがザリガニバイクのバンドルをきった。

 街ならば、はぐれた仲間がたどり着いている可能性が高い。

 バイクを街に向かって走らせると、突然ザーリー・ダビットソンは両腕のハサミで前輪に急ブレーキをかけた。

 

「!?」

「どわっ!」

 フランキーはエビジャンプで後ろに飛んで逃げようとする二輪ザリガニを、慌てて制御しようとする。

 

「てめー!後ろに跳ねるなって言っただろう!」

「ふるえてるわ!」

 ザーリー・ダビットソンは、何かにおびえていた。

 周りを確かめるが、危険な生物の気配はない。

 三人は仕方なくバイクを降りて、歩いて街を目指すことにした。

 

 

 

 


 

 ルフィとナミはビリーに乗って、空から仲間たちを捜していた。

 

「なんか臭うな?」

「そういえば、ちょっと薬臭いかも…」

 風に混じった妙な臭いを感じたとき、ビリーが突然、動きを変えた。

 

「あれ?どうした!?」

「きゃぁっ~~~!!」

 降下しようとしていたビリーが、翼をひるがえして急上昇した。

 

 そのまま空中の岩礁に避難すると、ぶはぁっと苦しそうに息をついた。

 どうやら息を止めていたらしい。

 

「?」

 ナミは疑問に思って、あらためて岩礁から島を見下ろした。

 

「村だわ」

 カルデラ湖とは別の湖のほとりに、小さな村が見えた。どうやら人が住んでいるらしい。

 

「あの樹は…」

 ナミは村を囲った樹林帯に気がついた。確かプールから見えた景色にも同じ樹が…

 

「シキの王宮の周りにもあったわ!ひょっとして、動物たちはあの樹の臭いが苦手なのかも」

「そうなのか?」

 ナミ言い、ルフィが聞くとビリーはクォッと鳴いて、頷いた。

 

 あの樹木からは花粉のような、なんらかの物質が放出されているのではないか?

 それがきっと、ビリーの苦手な臭いを放つのだ。

 だが、村であれば仲間がいるかもしれない。

 やむなくナミは、ビリーに鼻栓をして強行突破をはかる事にした。

 

「きっと、あの樹で囲われているところは危険な動物たちの来ない安全地帯なんだわ!」

 とすれば王宮の周りにおなじ樹林帯があったことも理由がつく。

 

「じゃあ、みんなもあの村に居るかもしんねぇな!」

「電伝虫にみつからないようにね、ビリー!」

 ナミの言葉にビリーはクォッと応えて、湖畔の村へと滑空した。

 

 

 

 


 

 シャオの村で再会したゾロとチョッパー、サンジとウソップの四人は家の前の階段に座って体を休めていた。

 

「ん……?」

 頭上をよぎった影に、サンジが顔を上げた。

 空を一羽のずんぐりした鳥が飛んでいた。

 

 ダフトグリーンで守られたこの村に近づいてくるとは、あの鳥はこの臭いが平気なのか?

 

 よくよく注視してみると、鳥は背中に誰かを乗せていた。

 人だ!いや!!!彼の目に映ったのは、いかなる女神よりも美しい娘だった。

 サンジの瞳がハートマークに変わる。

 

「んん…ナミすわぁ~~~ん!!!」

 諸手を挙げて回転ステップ。恋のつむじ風をおこしたサンジは上空めがけて飛び上がる!!

 

 ― バリバリバリバリッ! ―

 

 防衛本能を発動したエレキ鳥の放電攻撃をうけて黒コゲになったサンジだが、そんなことで彼の恋のエナジーは燃えつきなかった。

 

「無事でよかったナミさん!この一週間ろくに眠れずに心配してたんだよ~!」

 思いのたけを伝えるとサンジは地面に寝そべり寝息を立てる。

 

「こいつ…マジで寝てねぇから」

 ウソップがそう呟くと、サンジがガバっと起きあがる。

 

「んあ!まだ、ロビンちゃんがぁ!!」

「騒々しいな、てめぇは」

「あぁ!?」

 ゾロが呆れてサンジがキレる。いつもの光景だ。

 

「とにかくお前らも無事でよかった!」

 

「あれ?増えてる!?う~~~~~ん………」

 着替えを終えてから出てくるなり、シャオがまた気絶した。

 

「あら、いつの間にか大所帯になったわね」

 慣れた様子で娘の体を支えると、シャオの母親が姿を見せた。

 さっきは腹巻き男とトナカイだけだったが、四人と一羽も増えていたのだった。

 

「誰だ?」

 

「シャオと、そのお母さんだよ。シャオは、おれとゾロが迷ってたのを助けてくれたんだ」

 

「へー…じゃあ、俺からも礼言わなきゃな!ありがとう!」

 

「やだよ、もともとはシャオがあんた達に助けられたんだ。こっちこそありがとうよ。しかし、中に入って休めばと思ったけど、この人数じゃかえって窮屈な思いをさせちゃうね」

 

「俺たちはいいや。こいつだけ中で休ませてやってくれよ」

 ルフィはナミを指して、シャオの母親に頼んだ。

 

「えっ、いいの?」

「だって、お前地べたで寝たくねぇだろ?俺たちは外でロビン達が来ねぇか見てるからよ」

 

「じゃあ、せめてお茶でも。起きてシャオ」

「・・・んにゃ」

「お隣で、お茶葉もらってきておくれ」

 母親に言われて、シャオは隣の家に走っていった。

 だが、仲間との再会を喜ぶルフィたちは気がついていなかった。

 彼らの姿をとらえていた大きな二つの瞳に。

 

 

 

 司令室のモニターに、映像電伝虫からの中継が受信された。

 

「いました!シキ様」

「あぁ」

 オレンジ髪の娘を見て、シキは不気味に笑った。

 映像で確認した限りでは、連中の仲間もあらかた村に集合しているようだ。

 

「水先案内人なしじゃ、世界を破滅に導けねぇからな!われらが航海士を迎えに行ってくるとするか…!ジハハハハ!」

 いくら王宮から抜け出せたとしても、この空中群島メルヴィユのどこにいようとも、監視網から逃れる事はできないのだ。

 

 

 

 


 

 荒野の岩場に築かれた街の建物は、大人数を収容出来る施設だった。

 広いホールは酒場になっていて、大勢の海賊たちがどんちゃん騒ぎに興じている。

 

「あいつらいねぇな…。しかし、こんなに海賊集めて戦争でもはじめる気か?」

 フランキー、ロビン、ブルックの三人はここでは身を隠すこともなく、大勢いる海賊達の一人としてふるまい、酒場の様子をうかがった。

 

「みんな永久指針を持っているところを見ると、誰かにここに導かれたと考えるのが妥当ね」

 永久指針の針は、すべて上をむいている。

 海賊たちはメルヴィユの永久指針を頼りに、この空中群島の下までやってきた。

 そしてシキのフワフワの実の能力で、船ごとここにやってきたのだろう。

 

 バーテンやコックなど、給仕として働いているのは海賊ではないようだ。

 どこからか連れてこられたのだろうか?

 

「あ、すみません」

 ブルックが通りがかった若い酒場のお姉さんに声をかけた。

 

「パンツ見せてもらってよろしいですか?」

「見せるかぁ!!」

 ブルックはいつもの調子だったが、憤激したお姉さんはセクハラガイコツに、かかと落しを食らわせた。

 

「…?あなた、その腕…」

 飾りかと思ったが、若い娘の両腕には羽根が生えていた。

 

「え?ああ、これ?わたしたち、鳥になりたいんだと思います」

 それは冗談だったのか?それとも、出来ることならここから飛んで逃げたいという願望からなのか?ロビンがはかりかねているうちに、娘は慌ただしく次の注文を運びに行った。

 

「お前ら『麦わら』のモンだろ?」

「あぁ?」

 

「お前らも、シキの親分と兄弟の杯を交わすんだな?」

 地域によっては酒杯を交わすことで、仲間として兄弟同然の深い契りをむすぶ風習がある。

 

「ええ、そのつもりよ」

 メンチを切って乗り出そうとしたフランキーを制して、ロビンが話しをあわせた。

 麦わら一味といえば、メンバー全員が賞金首ということで世界政府の手配書が出回っている。

 船長、そして副船長ばかりでなく配下の者まである程度、業界に顔が知れ渡っているのだ。

 

「そうか。じゃあ『参謀』殿が居るってのは本当だったんだな。」

「「「!?」」」

 『参謀』と聞いて思い浮かぶのは麦わら一味の副船長、イオリだった。

 

 青海に置き去りにしてしまったのだが?まさかココに来ているのか?

 いや、海賊達がココに居るなら彼女の事だ。どうにかしてココまで来ているかも知れない。

 

 しかし目の前の海賊は、イオリがまるでシキの『仲間』になっているような言いぐさだ。

 いったいどういう事なのか。

 

「参謀って、イオリの事?」

「他に誰がいるんだ?」

 

「イオリはシキの親分の仲間になったって事かしら?」

「それは知らねぇ。そもそも俺は姿も見ちゃいねぇ!俺は参謀殿が案内役をしてるって聞いただけだ。」

 

「そう…。もう一つ質問いいかしら?親分さんは、こんなに海賊を集めて何をしようとしているの」

「なにっておめー…とぼけんなよ!新聞見たろ、これ!」

 海賊は折りたたんだ新聞をポケットから出した。そして、シキがやろうとしている事を聞いた。

 

「そんな…!」

 ロビンたちは、そこでシキの恐るべき計画を知ることになった。

 ただ…

 イオリがココに居るかも知れないという事が、彼らに気持ちの余裕を与えていた。

 

 

 


 

 お茶葉をもらいに隣の家に行ったシャオは戻ってくるなり、玄関前で寝そべっていたルフィたちの前を素通りして家に飛びこんだ。

「ばあちゃん!お母さん!大ニュース!」

 

「なんだって!?」

「ほんとだよ!シュウちゃんとこのお父さんが帰ってきたの!」

 シキの命令で労働に駆り出されていた、村の男が一人帰ってきたのだという。

 しかも彼が言うことには、もうじき全員が村に戻ってくるらしい。

 部屋の隅で毛布をかぶって休んでいたナミは、シャオがはしゃぐ声を聞いて目を覚ました。

 

「お父さんとお姉ちゃんに、また会えるんだよ!おばあちゃん!」

「本当かい……?夢じゃないんだろうね………」

 ダフト病に冒された祖母は、難儀そうにベットから身をおこすと笑顔を見せた。

 

「てことは……」

「そう、お母さん!やっとシキがメルヴィユを出ていくんだって!恐い動物もみんな連れて……計略の海へ!」

 

 計略の海。

 その謎の言葉の意味は、すぐシャオの口から言いなおされた。

 

 ─東の海へ!

 

 喜びいっぱいの表情でシャオがその海の名を口にした時ナミは、はっと目を見開いた。

 金獅子のシキが目指すのは、計略の海だ。

 

 ”そうか……東の海は、お前たちの故郷か。たしかあそこは、ここのところ様子がおかしいからな。さぞかし心配だろう”

 

 ”おれの航海士になりな、ベィビーちゃん。”

 

 ”仲間なら、聞いてやれる頼みってものがあるだろう?”

 

 シキが口にし続けた思わせぶりな言葉の数々が、ナミの心によみがえった。

 

 最初は新聞記事だった、

 

『襲いかかる脅威!突如、消えゆく謎の街』

 東の海で次々と街が滅びている。

 何者が襲ったのか、いかにして破壊したのか、すべてが謎だという。

 

(シキが………!)

 すべて金獅子のシキの謀略だったというのか。

 フワフワの実の能力をつかって、メルヴィユの巨大進化生物を東の海に送りこみ、来るべき実戦のテストを行っていた。

 

(東の海を滅ぼす?いったい、何のために…!?)

 シキの目的とは?

 おそらく支配ではない。破壊だ!!

 

「生きる望みが持てるなんて……夢のようだよ」

「ほんとに………一分一秒でも早く、あいつら東の海に行ってほしい……!」

 長い圧政に苦しんでいたメルヴィユの民は、これでようやく救われるのだと肩を抱きあった。

 部屋の隅で、ナミは眠っているふりをするしかなかった。

 左腕のブレスレット──義姉ノジコにもらった贈り物を、ナミは毛布の下で握りしめた。

 

 

 

 

 

「──こりゃおまえ、世界政府と海軍に対する警告……!」

 海賊がフランキー達に見せた新聞には、シキが海軍本部を襲撃した後に残した警告文が公表されていた。

 海賊が金獅子のシキについて語った。

 

「つまり、シキの親分の狙いは…」

「東の海の壊滅!そして世界転覆!」

 世界政府に対するクーデター・革命。そうした言葉で飾られた、要するに仕返しだ。

 今夜、王宮で行われる総会のあと、シキは全軍を率いて、空中群島メルヴィユごと東の海に進軍する。

 そして街という街に、あの凶暴に進化した怪物たちを送りこむというのだ。

 

「そんなことをすりゃ、とんでもない数の人間が死ぬことになる…!」

「気にすんな!ヒヒヒヒ…!世界政府を降伏させるにゃ、東の海の一つや二つ、つぶさねぇとな!!」

 

「まったく、俺たちぁ、すげぇお人に誘ってもらったなぁ!」

「まったくだ!よぅし、もう一度、乾杯!」

 

「おぅ、お前ら麦わらの…!そんなファンキーななりで総会に参加する気かよ?船長にも言っとけ!ビシッとキメろってな」

 見れば酒場に集まった海賊たちは、みな黒ずくめの服を着ている。

 

「ドレスコードね……わかったわ」

 総会会場では正装が義務づけられているらしい。

 

「なんでもオメー今夜はよ!出陣前のデモンストレーションを見せてくれるって話だぜ」

 

「予行演習…?」

「俺たちの目の前で、この島に一つだけある村をつぶして見せるんだとよ!」

 

「ゾクゾクするぜ、実際!」

「ヒヒヒヒ………!」

 海賊たちは残忍に笑いあった。

 

(空の島に、村が…?)

 給仕の娘や、この酒場で働かされている者たちは、その村から集められたのだろうか。

 愉快そうに呑んでいた海賊の頭を、フランキーの腕がつかんだ。

 

「て…てめぇ、何しやが……!?」

「その村ってのは、どこにあるんだ?教えろ!!」

 

 

 

 

 シャオと家族の会話からシキの目的が東の海の壊滅であることを知ったナミは、こっそりと家を出て仲間達のもとにむかった。

 

「来るな、ナミ!」

 だが、事態は風雲急を告げていた。

 村の裏手、高台にある墓地の大きな石舞台に、金色の鬣をなびかせた男が立っていた。

 

「ベィビーちゃん、見っけ」

「シキ!」

 

「つれねぇじゃねぇか、ベィビーちゃん!黙って逃げ出すなんてよ…傷ついたぜ、おれぁ…」

 

「黙れクソ野郎!俺たちを騙してナミさんを連れ去りやがって!!」

「ジハハハハ…!そこまでのいい女、奪うな!ってのが無理な話だ。奪われたくなけりゃしっかり守れ!!もっとも…その女の方が、もう俺から離れられなくなったと思うがな?そうだろ、ベィビーちゃん」

 

「てんめぇ…!」

 怒りで我を忘れかけたコックを制して、船長が前に出た。

 

「おい、舵輪!」

 ルフィは叫んだ。

 

「おれの仲間に手ぇ出して、無事でいられると思うなよ」

「ほう、どうする気だ……?」

「ぶん殴る!」

 ルフィは先陣をきってシキに立ちむかった。

 ゾロ、ウソップ、サンジ、チョッパーも、いっせいに地面を蹴った。

 

「ジハハハハ!殴れるものなら殴ってみろ!」

 石舞台に立ったシキめがけて、ルフィが跳んだ。

 腕をふりかぶってゴムゴムパンチを見舞う。

 ぎゅ~んと伸びたルフィの拳に対しても、圧倒的な経験を誇る老海賊に動揺はない。

 だが、ルフィの最初の右パンチはフェイントだった。

 その手で石舞台のへりを掴むと、伸びたゴムの腕を一気に縮めて加速、本命の左ラリアットをぶりかます。

 

「ゴムゴムの鎌!」

 しかしシキはフワフワの実の能力で、すっと空に上がる。

 

「必殺 火の鳥星!」

 愛用のパチンコ《カブト》で空中のシキをロックオンすると、ウソップが火炎弾を撃った。

 相手の落下軌道を見越した精密射撃だ。

 だがシキは跳んだのではない、飛んでいるのだ。

 空中で姿勢を変えると、火の鳥星をかいくぐって、かわした。

 

「三十六煩悩鳳!」

 続けざまにゾロが飛ぶ斬撃を放つ。

 衝撃波を、シキは両足の義足刀で受けた。

 悪魔の実の力によって両足で体を支える必要がないので、彼の義足は第三、第四の腕として存分に機能を果たす事ができるのだ。

 老いを感じさせない体術、剣術。だが麦わら一味の連係攻撃は、これで終わりではない。

 

「腕力強化」

 チョッパーが跳び、秘薬ランブルボールの七段変形から蹄の一撃を見舞った。

 

「刻蹄・桜吹雪!」

 パワーアップした腕からくり出された蹄パンチのラッシュが、ついに敵をとらえた。

 シキは受けにまわった。

 

「胸肉シュート!」

 蹄の弾幕の援護を受けて、サンジの重い前蹴りがぶちかまされた。

 

「なかなかいいチームだ」

「!?」

 だがシキは、サンジの蹴りを腕一本で受け止めた。

 

「おれに手を出させるとは、たいしたもんじゃねぇか!だが…出した手は、引っ込めるわけにゃあいかねぇぞ」

 足首をひねられたサンジは、空中でぶんぶん振り回された。

 

「まずは、お前からだ!」

 シキがサンジを地面に叩きつけようとした時、傾きかけた太陽の逆光を破って、麦わら帽子のシルエットが飛び出した。

 

「ゴムゴムのロケット!」

 加速したルフィは、まさにゴム鉄砲の弾になってタックルを敢行した。

 背中からくらったシキは、たまらず吹き飛んだ。

 助けられた格好になったサンジは、ちょっと不服そうに眉をしかめて着地する。

 一同は、あらためて集結し敵に向きなおった。

 

 吹き飛びはしたがシキは空中で踏みこらえて、振り返った。

 

「不愉快なやつらだ…!おれと対等にやりあえると思っていやがるとは…。面倒だ!まとめて相手してやる!」

 シキがゆっくりと腕を上げた。

 

「何かする気だぞ……?」

 シキの手首がかえされた直後、一同の足元が揺れた。

 小石がいくつかコロコロと転がっていく。

 突然、地盤がめくれ上がる。

 

 ルフィたちが立っていた高台が、丸ごとフワフワの実の能力によって持ち上げられていったのだ。

 

「獅子威し…地巻き!」

 シキが袖をまくって腕を振りかざす。

 その拳が握られた時、せり上がった地盤は姿を変えて獅子の顔を成した。

 

 土塊の獅子数頭に囲まれた麦わらの一味は、逃げ場を失った。

 ルフィは腰をすえ、ゴムゴムパンチのラッシュを撃った。

 迫りくる土塊の獅子を殴り続けると、さらにスピードを上げて反動をつける。

 

「ゴムゴムの攻城砲!」

 城壁のような敵を打ち砕くには、この技しかあるまい。

 フルパワーの両手掌底突きが、巨大な獅子を地盤ごと抉り、粉々にした。

 ルフィの反撃を突破口にして、空中に浮かぶシキの姿をとらえると、ゾロは口に和道一文字をくわえて三刀流の構えを取り、走った。

 だが敵は、はるか上空に…!!

 ゾロの意図を感じ取ったサンジがサポートにまわった。

 まずゾロが跳び、続いてサンジがバンダナ頭の剣士めがけて跳んだ。

 

「空軍…!パワー・シュート!!!」

 跳躍の頂点付近で、サンジはゾロの踏み台になった。

 二段ジャンプを決めた剣士は、一気にシキに肉薄する。

 

「必殺 アトラス彗星!」

 さらに狙撃手が弾幕をはった。

 分離した多弾装パチンコ弾が、それぞれ曲線軌道を描いてターゲットに襲いかかった。

 

「狙いはいいが…ダメだ!!」

 ルフィたちの連携攻撃も拍子抜けだとばかりに息を漏らすと、シキは弾をかわさずに前に突っ込んだ。

 直後、コンマ数秒前にシキが浮かんでいたところで、アトラス彗星の弾同士が激突、空中爆発する。

 

「三刀流 牛鬼勇爪!」

 破壊力を一点にあつめた、ゾロ渾身の攻撃が放たれた。

 

 ─ ギィンッッッ! ―

 

「!?」

 剣士の顔が驚きに歪む。義足刀があっさりとゾロの攻撃をはじいた。

 

「お前らごとき、殺す価値もないわ!」

 シキは、慌てて次の攻撃にうつろうとしたゾロに出会い頭の一撃を見舞った。

 ゾロは地面に叩きつけられる。

 

 土煙が上がるなか、残った土塊の獅子たちが包囲の輪を狭めてくる。

 

「ぎゃああああっ!」

「くそっ!」

 抵抗を試みたルフィ達だったが、迫りくる土塊の獅子たちの質量の前に、なすすべなくそのまま生き埋めになってしまった。

 ルフィたちを呑みこんだ造りものの獅子達はそのまま、互いにぶつかり合った。

 シキが腕を振るうと一頭一頭が土の柱に変わっていく。

 

「ルフィ!!」

 天変地異のごとき能力に、村から戦いを見守っていたナミは圧倒された。

 土の柱は、蔦のようにからみあいながら天に昇っていく。

 そうして現れたのは巨大な塔だった。

 

 螺旋状にからみ合った土の塔には、呑みこまれたゾロが、ウソップ、サンジ、チョッパーが…。

 

 ナミはすっかり地形が変わってしまった丘に走った。

 太陽が、かろうじて残っていた石舞台の向こうに沈んでいく。

 逆光のなかでナミが見たものは、塔に生き埋めになって気を失ったルフィの顔だった。

 

「…………!」

 

「ジハハハハ…!しばらく土ん中で眠ってもらうぜ!まったく勘違い野郎どもには困ったもんだ」

 

「東の海も……あんたの仕業だったのね」

「あぁ、そうだ」

 

「これ以上…!仲間にも東の海にも、手を出さないで!」

「順序が逆だ。仲間なら聞いてやれる頼みもあると言ったろう?」

 シキはプールサイドで言った事を口にした。

 

「…………!」

 シキは愛用の葉巻きに火をつけた。

 ナミは、あらためて土塊の塔を仰いだ。

 仲間たちは塔に生き埋めになって、気を失っていた。

 

「わたしが、あんたの仲間になったら、東の海を助けてくれるの…?」

「ジハハハハ…!そりゃ、おめぇ…おれは仲間を何より大切にする男だ!仲間の故郷なら、おれは手を出せなくなるってもんだ。」

「………っ」

 

「バカな考えはやめろよ、ナミ…!」

 声をなげたのは、塔に生き埋めになった長鼻の狙撃手だった。

 

「ウソップ!」

 

「まだ意識があったか」

 シキが睨みつけた。

 だがウソップはかまわず、自由にならない体で訴え続けた。

 

「おめぇ、故郷のために、そいつに身を売ろうってんじゃねぇだろうな!おれは許さねぇぞ!なにより、そんなことルフィとイオリが許さねぇ!」

「?」

 シキは一瞬、小首を傾げる。知らない名前が上がったからだが、今は気にする事ではないと、思考の隅へと追いやった。

 

「許さねぇってなぁ、どういう意味だ小僧……!おめぇ、状況がよくのみ込めてねぇようだなぁ!」

 

 シキは大きく手を振り上げ、再び能力を発揮した。

 石舞台の巨岩を浮かべると、塔の上に移動させる。

 もし、ここでシキが能力を解除したなら─

 

「待って!状況なら分かってる…!」

「だったら答えを聞こうか、ベィビーちゃん」

 シキは両腕をかかげて、さもその腕で、じかに巨岩を支えているそぶりをした。

 

「ウソップ…これしか故郷を救う方法がない…!東の海は、わたしが守る。だから、あなた達は安心して旅を続けてね。わたしならだいじょうぶ」

 

「!?バカ言ってんじゃねぇよ!んなこと、いったい誰が─」

 叫んだウソップを黙らせたのは、シキが放った石つぶてだった。

 顔面に直撃を受けたウソップは血まみれになって気を失った。

 

「うるせぇ小僧だよ、まったく。さぁベィビーちゃん、お前の答えを聞こう」

「あなたの仲間になるわ」

 

「なる、か。ほほぉ…」

 

 気に入らないと言いたげなシキの顔を見て、ナミは拳に力を入れる。

 ここで逆らうのはバカのする事。それじゃ仲間は救えない…

 ナミはゆっくりとしゃがみ込み、膝をついて土下座した。

 

「仲間に、してください」

 

「そうか…ジハハハハ!歓迎しよう、有能なる航海士よ!敵わねぇ敵がいると知ることもまた成長だ!」

 シキがナミに何かを投げた。

 音貝だった。

 

「?」

 

「おれぁ、誘拐犯じゃねぇんだ。海賊の世界にも仁義はある!苦楽をともにしてきた仲間たちに、きっちり別れのあいさつを残しておけ!」

「…っ」

 今は…大事なものを救える術に、希望を持たせるしかなかった。

 ナミは音貝をひろい、声をふきこんだ。

 

「わたしは…」

 

「…いい、あいさつだ」

 

 最後に何かを口にしてから、ナミは地面に音貝を置いた。

 

 

 シキが村はずれに目をやり、うながすような仕草で顎を動かす。

 その視線の先には映像電伝虫がいた。

 司令部で、この様子を受信したインディゴは手はず通り行動を開始するのだろう。

 

 

 


 

 シキの所に集まった海賊団の数は軽く100を超える。1つが10~60名の海賊団。

 総勢2~3000名というところだろうか?

 

 村の人数は100名弱。シキの所で働かされている人を加えても200名がいいところだろう。。

 20程度の海賊団をご案内すれば十分だった。

 特に今日のデモンストレーションを楽しみにしている連中を選ばせてもらった。

 酒と料理を準備した館に案内したあと、ある程度酔ってもらったところで縮小して収納貝に入れといた。

 

 シキがナミを連れて行ったところで、村の広場に収納貝から縮小した別館を取り出し縮小解除。

 

 

 さて、デモンストレーションの開始だ!!

 

 

 

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