イムの娘(いむのこ)~番外編~   作:槙 秀人

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~FILM Strong World~編、完結です。

ほぼほぼ映画そのままですが、
少し辻褄あわなくなってしまったので
本編の『頂上戦争編』の冒頭も少し変更しておりまする。
気になったら確認してちょ!



これだけ言っておきます

 海水の塊の中で、ルフィは沈むことも浮かぶことも出来ず溺れていた。

 

「悪魔の実の能力者には、苦しかろうなぁ…」

 シキは残忍な笑みをルフィに向けた。

 自力で助かる術もなく、頼みのエレキ鳥はショックで失神してしまっている。

 

「…が、若気の至りじゃもう済まねぇぞ!!」

 身をひるがえすと、シキはとどめの攻撃に取り掛かる。

 

「獅子・千切谷!」

 金の鬣が、ぐるぐるとまわる。空の舞台で金獅子のシキが踊る。

 その足捌きから次々と飛ぶ斬撃が放たれ、海水の塊ごとルフィを斬りつけていく。

 海水の塊が斬撃によって霧散して、斬撃により傷だらけとなったルフィは、そのまま落下していった。

 すると意識を取り戻したビリーがルフィを空中でひろい上げた。

 しかし舞い上がる余力はなく、そのまま下の島に墜落した。

 

 シキは、そのあとを追った。

 

 倒れたルフィの背中には無数の傷があった。

 水中でルフィは、とっさにビリーをかばっていたのだ。

 そして今はビリーが身を入れ替えて、出血して気を失ったルフィをかばっていた。

 

「フウッ…!」

 激しい連続攻撃で、さすがに息の上がったシキはゆっくりとルフィに近づく。

 その首を落として死を確実なものにしようとした時、彼の空中群島メルヴィユは最悪の状況に足を踏み入れつつあった。

 

「…なんだ?」

 

 

 

 ~ ~ ~ ~ ~

 

「怪物たちが逃げていく!?」

 王宮で防戦していた海賊たちの前から、メルヴィユの動物たちが次々と走り去っていった。

 

「嵐だ!」

 誰かが声を上げた。

 

 空中群島メルヴィユがむかった東の空域に、忽然と暗雲が広がった。

 島はサイクロンの中に突っ込もうとしていた。

 怪物たちが逃げたのは、嵐を怖れる野生の本能だった。

 

「ぐうっ…、お前ら!海に逃げるぞ!!」

 船長の一人が叫んだ。

 ともかく自分たちの船を守らなくてはならない。

 

 焼け落ちるシキの王宮を背に、海賊たちは我先に海へと駆け出した。

 

 

 

 

 

 あらかたの敵を倒したフランキー、ブルックたちもまた、天候の異変に気づいてサウザンドサニー号に戻っていた。

 

「なんだか、あやしい雲行きになってきやがった」

 怪物も海賊たちも逃げていく。

 先ほど見かけた、たくさんのIQを持っていた村人たちはどこかに避難しただろうか?

 

「ぬ~!はぁ~!いや、まったく力仕事は骨が折れます。あ…!本当に折れたら一大事なんですけどね、私の場合!ヨホホホホー!」 一人でボケとツッコミをかましながら、ブルックが係留ロープを外していく。

 

 王宮は怪物たちに破壊されて炎上していた。

 契りを交わした海賊たちはちりぢりになって逃げていく。

 二十年かけたシキの王国は、その野望と共に散ろうとしていた。

 

 

 

 

 月は隠れ、真の闇が訪れる。

 心配そうな顔でのぞきこんだビリーに、ルフィの小さな声が返った。

 

「飛べるか…?」

 ただ、ひとこと。

 

 ギア2のブースト状態は解けて、ルフィの肉体をその反動の痛みが襲っていた。

 それでも、残された力と闘志を…全身の細胞すべてからかき集める。

 ルフィの覚悟を感じて、ビリーもまた最後の力をふりしぼる。

 

「クォオオオオッ…!」

 声を枯らして鳴くと、自らを勇気づける。

 ナミのために。故郷のために。

 大切なものたちのために!!

 

 契りはなくとも、ふたりの漢は今や盟友となって生死をともにする覚悟を決めた。

 

 

「おおっ─」

 ルフィが立ちあがる。腹の底から声を上げ、そして敵を仰ぐ。

 

「あいつをぶっ飛ばす!おれを…頼む、天まで!」

 サイクロンの兆しが見える雲の中を、ルフィを乗せたビリーがまっすぐに急上昇する。

 

「しぶとい…!」

 いや、それでこそだ!!にやり笑ってシキがルフィを迎え撃つ!!

 

 その時、風の音を裂いて女の声が聞こえた。

 

「シキ─!」

「!?」

 王宮の塔のてっぺんにナミの姿があった。

 

「なにもかも、もう終わりよ!」

 塔の下には、何やら準備を終えたウソップとチョッパーの姿もあった。

 

「無理すんな、ナミ!」

「爆破の準備、できたぞ!」

 

 その言葉にシキは目をむいた。

 

「爆破…だと!?」

「そうよ!工場も、王宮も、島船も!!もう、何も残さない!あんたの計画は、すべて終わりよ!!」

 毅然と言い放つナミに対して、ついにシキは堪忍袋の緒が切れた。

 

「ふざけるなぁ~~~っ!」

 金の鬣が逆立った。

 同時に王宮の島の地盤が、あちこちでめくれ上がった。

 

「貴様らごとき若造に…このおれの二十年の計画を潰せると思うな!!」

 

「ナミさん!?」

 危険を察したサンジが塔に走る。しかし、サンジがいた場所は遠い。

 空中の岩塊が二つ、シキの手の動きにあわせて猛スピードで移動した。

 その落下点には王宮の塔があった。

 

「ビリー!ナミを助けろ!」

 相棒に告げると、ルフィは鳥の背から大きく飛び上がった。

 ビリーは急降下し、落下する岩に追いついた。

 そのとき。

 塔は二つの岩塊に叩きつぶされた。

 

「ナミさん!!」

 サンジが呆然と見上げた。

 だが、土煙の中から一羽の鳥が離脱する。

 ビリーはナミをしっかりと救い出していた。

 サンジが、ほっと安堵の息をついた。

 

「おのれ…!」

「おまえの相手はこっちだ、シキ!」

「!?」

 シキは頭上を仰いだ。

 嵐の雲の中に、突風に巻き上げられたルフィが滞空していた。

 

「骨風船!」

 親指をくわえて、ぷぅっと息を吹き込むとルフィの腕が大きくふくらんだ。

 そうして蓄えた空気を腕から体に、さらに足へと移動させる。

 

 ― ギア3 ─

 

 シキが見たものは、雲を破って天から出現した巨人の足裏だった。

 

「なんだぁ、ありゃぁ…!!?」

 気球のようにふくらんで空中に浮かんだルフィを睨みつける。

 

 ルフィの背後には雷の巣があった。

 

「死に損ないが…!雷に打たれて落ちろ!」

「落ちるのは…!お前だ、シキィ!!」

「!?」

 

「東の海には、行かせねぇ!」

 叫んだ時、特大の雷がルフィを直撃した。

 

「ジハハハハ!バカがぁ!」

 シキには落雷を受けたルフィが黒コゲになったように見えた。

 

「おまえなんかに!」

「!?」

 落雷を受けながら、ルフィは叫び続ける。

 

「仲間も!海も!」

 

「ゴム人間…!?」

 やつは電気を通さない…!!

 シキは慌てて腕をふり、あたりの岩という岩をかき集めて防壁をめぐらせた。

 

「好きにさせるかぁ~~~!!!」

 雷をまとった足をなお天高く上げると、ルフィは踵落としをくらわせた。

 

「ゴムゴムの巨人の雷斧!」

 岩の防壁は、塵になって消し飛んだ。

 唖然と巨人の足裏を仰いだシキもろとも、ルフィは王宮の島を蹴りつけた。

 

 瓦割のように、空中の島が割れる。

 縦横に亀裂が走った。

 シキの王国は…。二十年かけた野望もろともこっぱみじんに打ち砕かれていく。

 

 

 

 

 サウザンドサニー号で脱出の準備を整えていたフランキーが、声を上げた。

 

「お前ら急げ!」

 チョッパーに乗ったロビン、エレキ鳥に乗ったナミが船に戻ってくる。

 

「みなさ~ん!はやくサニー号へ!」

 ゾロとウソップ、サンジも王宮から脱出して、前庭に着地していた母船に乗りこんだ。

 

「ちょっ、ビリー!!?」

 ナミを下すとエレキ鳥は、すぐさま飛び去った。

 

 舵輪を握ったフランキーが叫ぶ。

 

「飛ぶぞ、つかまれ…!風来・バースト!!」

 間一髪、サウザンドサニー号はコーラエンジン全開噴射で、島を離脱した。

 

 

 

 

 東の空から、長い戦いの夜が明けていく。

 サウザンドサニー号は薄明の空を行く。帆ではなく、海賊旗で作ったパラシュートを広げて。

 

 フランキーがシキの王宮に掲げられていた巨人旗を奪って、即席でこしらえたものだ。

 局地的な暴風雨をもたらす偉大なる航路のサイクロンをやりすごして、船はゆっくりと下降していく。

 

 甲板に集まったクルーたちは、空中群島を振り返った。

 

 目の前でおきている天変地異はあまりにもスケールが大きすぎた。

 サイクロンは空中群島を呑み、さらに天へむかって伸びていく。

 淡い朝焼け空を背景に、暗色の雲がふくらんでいく。

 

 幻想的な光景の中で船べりにはりついて目をこらしていた仲間たちは、その時たしかに声を聞いた。

 

 ─ぉおおお…!

 

 この声は

 

「ルフィ…?」

 その時、雲を破って翼が飛び出した。

 ビリーだ。

 

 その背中には、彼らの船長を乗せていた。

 

「いよっしゃぁ~~~!」

「よくぞ無事で!よかったぁ~~~!」

 

「うんうん、本当によかっだぁ~~~~!」

「やったぞ!これで東の海は無事だぁー!」

 

「だが…しまらねぇな、あの姿は」

 ゾロが頭をかいて苦笑を浮かべた。

 

「ああ」

「うん、ほんと」

「ふふっ」

 一服するサンジと涙を隠さぬナミ。そして、ロビンが微笑む。

 

 ギア3の反動で、ルフィは例によって小さくなっていた。

 ビリーの背に乗ったルフィは、サイクロンのまわりを旋回した。

 

 そして敗れた者、金獅子のシキは、まっ逆さまに落ちていた。

 意識はなく、能力者にとっては奈落の底である海に墜落していく。

 そして島は、ゆっくりと崩れ落ちていった。

 

「シキの能力が解除されてるんだわ…!」

 崩壊は、とどめようもない。悪魔の実の能力が途絶えたのだ。

 シキが意識を失ったことの証だった。

 

「なんか島の数が少ないような?」

「確かにな…」

 

 もしかして?

 フランキーとロビンとブルックは顔を見合わせうなづきあった。

 メルヴィユにイオリが居たならば…

 

「そっか、イオリが居たんだっけ。なら心配するだけ無駄よね」

 落ちてくる島の数が少ないのがその証拠。

 シャオたちの住む島も、ほかのいくつかの島も…イオリが確保したに違いない。

 彼女の能力と収納貝があれば、人も島も無事だと思えた。

 

「よかった…」

 ナミの言葉が途切れると同時に、彼女は力なく甲板に倒れ込んだ。

 

「ナミさん!?」

 驚きと心配が入り混じった表情で、皆がナミに駆け寄る。

 

 

 

 

 


 

「島が落ちてくるぞ!」

 監視の海兵が声を上げた。

 

 元師の命令を受けて、海軍本部を襲撃した金獅子のシキの島船を追跡していた中将たち

 ヤマカジ、ストロベリー、オニグモらの艦隊は、空中群島メルヴィユの崩壊に、立ち会うことになった

 

 海兵たちが慌てふためくなか、空にあった島が折り重なって、次々と海面に着水した。

 おこされた波紋が、津波となって海軍艦隊を襲った。

 そこは、さすがに中将率いる歴戦の精鋭艦隊だった。

 津波に対して船首を直角に、巧みな操船によって転覆を回避する。

 

 シキのフワフワの実の能力が解けて自由落下したはずが、なぜか多くの島々が森や平原を含めて原型をとどめていた。

 メルヴィユ諸島は元の海、元の場所に戻っていた。

 

「シキがいたぞ~!」

 海兵が声を上げた。

 

「金獅子のシキを捕らえろ!」

 海に落ち力を失ったシキを捕らえるため、海兵たちが小舟を出そうとする。

 オニグモ中将が、ふと空を仰いだ。

 

 島につづいて落ちてきたのは海賊旗のパラシュート

 そこにぶら下がった宝樹の船、ライオンの船首像は、海軍本部では知られた連中のものだ。

 

「まさかあいつらが、これ全部やったのか…!?」

 海賊、麦わらの一味だ。

 

 シキの回収に人員を割くと、残った艦隊はサウザンドサニー号を狙った。

 

「目標、麦わらの一味!砲撃用意…!」

 着水したサウザンドサニー号は、パラシュートを切り離すと、すぐさま帆をはった。

 砲声が轟くやいなや、海面を突き上げる水柱が乱立した。

 

 すでに落下中に、海軍艦隊の存在には気づいていた。

 ここは逃げの一手だった。

 

「あたらねぇよ、バーカ!」

 ビリーとともに帰還したルフィは海軍の砲撃をからかった。

 

「へへん!驚くなよ、てめぇら!この船の逃げ足に!」

 ウソップ、チョッパー、ブルックの三人は、腰を振りながらお尻ペンペンで海軍を挑発した。さながら勝者の舞である。

 

「よ~し!ぶっ飛べフランキー!」

 風来・バーストをリクエストしたルフィだったが、フランキーはかぶりをふった。

 

「コーラがもったいねー!だから、やんねーよっ!!」

「「「ええええっ~~~!?」」」

 

 海軍艦隊は、ぐんぐん風をとらえて迫ってくる。

 

「やばいぞ!いつの間にか右舷にも軍艦が!」

「オールを出せ!漕ぎまくるぞぉ!」

 造船技術の粋をあつめたハイテク高性能船も、ついに人力に頼るしかなくなった?

 

「いやいや、噴出貝があるでしょう?」

「「「イオリ!!?」」」

 

「それともこれで引っ張ってあげよう?」

 しょうがないなぁ…という感じを強く出しながら、手のひらの上に乗せた小さくしたウエイバー2号を指さし副船長が冗談めかして言った。

 

「…わーったよ!今日は特別だぞ!!」

「「「やったぁ!!」」」

 フランキーが本日3度目の『風来・バースト』を了承して、船長・狙撃手・船医トリオが喜びの声を上げていた。

 

 嵐のような戦いの果てに、仲間たちは笑い声と共に空を駆けた。

 ─それが、麦わらの流儀。

 

 


 

『─そうです。あの麦わらの一味が』

 世界政府の転覆を謀る金獅子のシキ追討命令を出していた部下からの報告を受けた海軍元帥センゴクは、執務室の机に湯飲みをおいた。

 電伝虫の通信に耳を傾ける。

 

 あの『麦わらのルフィ』とその一味が、シキを擁とする島船と空中群島、その全戦力を壊滅させたという。

 海に落ちたシキは目下、捜索中。

 シキのもとに集まった海賊たちは捕縛されて、金獅子の乱はかろうじて防がれたのだった。

 

『現在、情報をまとめておりますので、詳細は追って報告いたします』

 わかった、とセンゴクが応じると電伝虫の通信が切れた。

 

 ”絶対的正義”の墨書を見つめるセンゴクは、ただの勝利ではない複雑な苦味を噛み締めていた。

 

「我々は、何もしていない…か…」

 その言葉には、秩序を守る者としての葛藤が滲んでいた。

 

 

 

 

 

 大海原をサウザンドサニー号が進む。

 順風満帆、海軍艦隊の追撃をやり過ごした麦わらの一味の仲間たちは、戦いを終えてゆっくりと体を休めていた。

 

 サウザンドサニー号の女部屋のベッドでナミは休んでいた。

 病気も何とか回復し、体を起こしていたナミはイオリの事を考えていた。

 

 多くの海賊たちがあの島の居たのだ。イオリが居ても不思議ではないと思っていた。

 だけどあの娘は本当に海賊たちに紛れてあの島に来たのだろうか?

 

 月歩で飛んできた?

 いやいや、あの場所は白々海と同じくらいの高さなのだ。

 それができるくらいなら、空島に行くとき苦労はなかったはず。

 

「でも…」

 ナミは思わず口元をほころばせる。

 

「あの娘なら、なんか出来ちゃいそうなのよねぇ…」

 それでも、問いかけてもまともには答えてくれないだろうと、彼女は苦笑した。

 

 扉が開いてチョッパーが顔をのぞかせた。

 その手には診察カバンを持っている。

 

「ナミ、具合はどうだ?」

 チョッパーはナミの病気の具合を診にきたようだ。

 

「もう大丈夫。倦怠感も感じなくなったわよ」

「そうか、でも念のためもう一度、診察させてくれ」

 チョッパーは診察を終えると、安心したように頷いた。

 

「うん、もう大丈夫だな。あっ、でも少しでも具合が悪いと思ったらちゃんと言うんだぞ?」

「分かってるわよ。ありがとうチョッパー」

「病み上がりだから、まだ無理はしないほうがいいぞ」

「大丈夫。少しだけ、外の空気も吸いたいし」

 ナミはベッドから降りて立ち上がった。

 

「そうか。それならデッキに行こう!みんな喜ぶよ」

 チョッパーは一足先に部屋を出ていった。

 

 部屋の外から仲間たちの声が聞こえる。

 扉の前で立ち止まって、深呼吸をするとゆっくりと扉を開けた。

 故郷と仲間の無事に感謝しながら。

 

 

 ガチャッ

 

「みんな、ナミが起きたぞ!」

 チョッパーの声に、仲間たちは明るい表情で振り返った。

 

「もういいのか?」

「ええ、もうすっかりね。チョッパーのおかげよ」

「え?バ……バカヤロウ!ホメられても嬉しくなんかねぇぞ、このヤローが!」

 口で文句を言いつつ顔は喜びを隠せないチョッパーは、いつものリアクションをかえした。

 

「本当によかった!元気になったところで…すいません、パンツ─」

「やめろ!」

 サンジの音速のダメ出しをくらったセクハラガイコツが、骨格模型のようにカックンカックンしながら、ふっ飛んでいった。

 そこにあるのは、いつものサウザンドサニー号の光景だった。

 ナミは、ようやく心から安堵した。

 

「おい、ナミ!」

「?」

 

「お前これ、どういう事だ!」

 なぜか不機嫌な様子で、ルフィがやってきた。

 音貝を持ってナミに見せつける。

 これ、というのはナミが残した伝言のことだ。

 

「ちょっとそれ!」

「おれ達がシキに敵わねぇとかみんな死ぬとか、くだらねぇ言葉残しやがって!そりゃ、あの時は船ごと落とされたり地面に呑みこまれちまったけどよ!あれは…腹も減ってたし!」

 ナミは慌ててルフィから音貝を奪おうとした。

 

 あの時は切羽つまっていて、そうするしかなかったから、あんな心をさらけ出すような言葉を吹き込んだが、今になってそれを蒸し返されるのはさすがに恥ずかしい。

 

「だから、わたしもそう思って…!あの時は、ああするしかなかったから…!」

「呆れたぞ、おれは!この長いつきあいで、そんなに信用がねぇとは思わなかった。がっかりだ!」

 どうやらルフィは本気で腹を立てていた。

 仲間たちからすれば、自分が信用されていないと感じたルフィが、すねているようにしか見えなかった。

 そもそもルフィは、なぜ怒っているのだ?

 

「おい、ルフィ…お前、なに言ってんだ?」

「何って、なんだよ?」

 

「まさか聞いてなかったのか?」

「ナミは、ああ言うしかない状況だったんでしょ?」

「おれも、そう思ってたぞ…?最後のあれ、聞いたら…」

 

「あれ?最後のあれって、何だよ!」

 どうやらルフィの早とちりなのだと、みんなが気づいた。

 あの時の状況でシキに悟られぬよう、最後に音貝に小声でふきこんだ言葉

 あれは─

 

「むしろ鈍いだれかさんにむけて言ったようなもんなんだけど…」

 がっくり脱力して、ナミはルフィを見た。

 

「もう一度、聞けばいいだろ」

「余計な事言わないでよ!」

「あ、そっか……」

「ルフィ!聞かなくていいから!!」

 

「やだ!もっかい聞くぞ、おれは」

 ルフィとナミの攻防がはじまった。

 しかしルフィはナミの声が吹き込まれた音貝のスイッチを押した。

 

「ちょっと!やめてってば!」

 二人の音貝の取り合いがはじまった。

 

 ─みんなの前から、黙って立ち去ることを、許してください。わたしはシキの一味で航海士をする事にしました。

 

「静かにしろよ!」

「もう終わった事なんだからいいでしょ!聞かなくていいってば!!」

 ルフィは声を聞こうとして、ナミはそうはさせまいと音貝を海に投げ捨てようとする。

 

 ―シキは…たとえルフィたちが逆らっても、絶対に敵わない伝説の海賊。

 

 …みんながわたしを追ってきてくれても、命を落とすことになる。

 

 ルフィとナミの手が重なる。

 

 勢いあまって放り上げられた音貝が、青空にむかって飛んでいく。

 

 

 ─これだけ言っておきます

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 音貝が青空を切るように舞い上がる。

 

 ─かならず、助けに来て

 

 その言葉は、空へと刻まれ、もう誰も止められなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 海底大監獄である『インペルダウン』

 かつて脱獄したその場所へ、20年ぶりに戻って来た。

 

「…ほう、まさかとんだ大物に出会えるとはなぁ」

 

『インペルダウン』に収監されているクロコダイルは少し驚きながらも再収監されたシキへと声をかける。

 

「七武海のクロコダイルか…」

 シキはクロコダイルの名をつぶやくも、看守の誘導に応じて歩く。

 

「カハハハ、あんた程の者が負けたようだな」

 

「お前までいたのか…。ああ、俺は負けた。そうだ喜べ!こんな時代にもお前の大好きな強い奴が居たぞ!!しかも一人は、ロジャー以上のバケモンだ。俺は戦ってねぇから、そいつが誰かは言わねぇけどな!」

 シキの目には、諦めではない “敬意” が宿っていた。

 

 

「へぇ…」

 声をかけられた男はシキの言葉に興味深げに口角を上げていた。

 

 

 

 

 ~FILM Strong World~ おしまい

 




 最後に次作への伏線(?)載せました。

 そもそも次作(次編)はあるのか?

 乞う?ご期待???



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