転生者たちの終末事件簿~クトゥルフ・ファイル~   作:どくいも

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▼【神来訪】今日の世界、まだ保ってる?【観測14日目】

 

――現場の空気は、ずっと重かった。

 

戦場の熱気とか、湿気とか、そういうものではない。

もっと、古い圧力か何かだった。

 

俺は仮面の学徒団でも下っ端の団員だ。

ちょっとオカルトに齧り、興味本位で入った、特別な特徴なんてなのもない団員。

本物のオカルトに触れた恐怖からか脱退することもできず、かといって、魔導書や魔法の道具に触れるほどの度胸もない。

仮縁面の中でも下位のやつしかもらえず、軽くて簡易儀式しか行えない。

その日、現場に送られた理由も、後処理部隊に欠員が出たからだ。

 

――けれど、その日確かに【世界が終わっている】ということをわかった。

そんな日であった。

 

 

K市郊外・旧医療施設跡地

元々精神病院で、中にいた患者ごと魔改造した贖海派の儀式場であり、そこが俺達が呼びつけられた現場であった。

一口の鉄扉には水でも絵の具でもない白濁した液体が塗られていた。

異臭は感じなかったが、嗅覚が拒否するような感覚がした。

 

まずは幹部たちが先行突入して、5分後には連絡が途絶えた。

そのことに強烈な不安を覚えたが、事前に幹部からは10分後に突入するするように言われていたし、このまま何もせずに帰る気がなぜか起きなかった。

俺の他に三名下っ端がいたが、皆同じ感想のようだ。

 

入るしかなかった。

 

中に入り、廊下を半分くらい渡ったあたりで、音がなくなったことに気が付いた。

それは外のわずかな物音も、仲間の息遣いも。

果てには、自分の足音や心臓の鼓動のような音まで。

世界のスイッチが切り替わってしまったかのようであった。

 

廊下の曲がり角で見えたのは、人の形をしたゲルのようなものだった。

それは、成人男性ほどの高さがあり、まるで立っているかのような造形であった。

動かず、話さない。

が、それはこちらを見ていた。

顔はなく目もないが、確実にそれからは視線を感じた。

 

「……あれは、生きてるんだよな?」

 

その声が仲間のものかどうかすら、確かめる気にはならなかった。

 

下の階に行くと、より状況はひどかった。

広い空間が広がっており、部屋の中心には幾何学模様の陣のようなものが書かれていた。

そしてそれを取り囲むように、人が5人ほど並び立ったまま死んでいた。

 

いや、立つというには語弊があるか。

なぜなら、それらの足は塩のようなものに変わっており、床と一体化していたからだ。

立ったままというよりは、沈みながら終わっていた。

 

床のタイルには黄色の絵の具のような線が伸びていた。

海の絵かとも思ったが、それは違っていた。

それは幕であった、舞台の幕が液体となり床に流れていた。

 

その後も謎の異音に、不気味な地下からの振動。

もはや、仲間の下っ端に声をかけてもまともな反応はせず、屍のようになっている。

それでも、手足だけは何か目的をもって動かされ、何かに操られているようにすら感じられた。

 

そんな光景に自分の精神は限界が来て、仲間に一声かけてきた道を戻ることにした。

せめて少しでも正気を取り戻そうと。

正気でいることが救いだとは思っていないが、それでも正しくあるべきだと。

 

 

「……つまり、今回のは贖海派の仕業ではなかったと?」

 

「ああ、これを見ろ、兄弟団の印だ。

 混ざっている、儀式が形式が混在している」

 

――だが、それは無駄であった。

そこにいたのは仮面の学徒団幹部であった。

 

「それも、形式だけじゃない。

 道具、呼び名、呪術……どれもが混ざったまま儀式が進行している。

 普通なら破綻するはずだが、今回は進んでしまったようだな」

 

「ハスターとクトゥルフの儀式なのに?」

 

「むしろ、だからだろ。

 ……たしか、その二柱は兄弟とかそんな設定があったはずだ。

 それが何の意味があるかはわからんが」

 

――正直、この時の彼らが何を話していたか、ほとんど理解できなかった。

この現場をいて正常に思考できる道理も、思考回路も、正気すら保てるわけがないのだ。

 

「結局、これはどちらのカルトの策略だ?

 単純な結果だけ見れば、兄弟団が贖海派をはめたように見られるが……」

 

「多分、どっちでもない。

 彼らは協力し合って、神を呼びかけたんだ。

 その結果、彼らはああなった」

 

「おいおい、奴らは敵同士だろ?

 それなのにそんなことがあるのか?」

 

「……ありえてしまうんだ。

 信徒の認識そのものが変わってしまっているから。

 彼らは『ハスター召喚の儀式』と『ルルイエを浮上させるための儀式』を同じものとして、共同で演じていたんだ。

 なぜなら、結果だけ見ればその二つは同じことを引き起こし、それに違和感を抱くことができないからね。

 ……そうだろ?【柔狸】」

 

――そして、トドメとばかりにそれは現れた。

廊下の壁や天井が波打ち、震え、滑り込んでくる。

仮面の下から生えた無数の指が、壁や天井をなで、笑っていた。

 

「嗅ぐ、匂う、覚える――夢、贄、祈祷、混ざっている、混ぜられている」

 

男、女、下人に貴族。

ありとあらゆる無数の声が別々に呟いた。

 

「舞台が、沈んだ。沈んだが、上がった。

 海は劇を飲み、劇は海を飾る。

 二つの神が、同じ【椅子】に祭られようとしてる」

 

その声と姿に、意識が遠のく。

なぜ彼らはあの化け物を直視してなお、正気を保てるのか?

なぜ声を交えることができるのか?

 

「椅子が一つ、神が二人。

 なればこそ、信徒はこれを無意識に共同でおこなう。

 神がきちんと競合してくれるように。

 神同士が椅子をめぐって喧嘩するという点で彼らの目標は一致しているからね」

 

「その喧嘩の前準備でこれだけの人が死ぬか」

 

「本番はこれの比じゃないさ。

 規模も、悲惨さも」

 

手足の感覚が遠ざかる。

全身の骨と筋に力が入らなくなる。

意識を保つことができなくなる。

 

「……って、あ。

 やば、きみいたの?やっぱこうなってるか」

 

「これ、柔狸がトドメになっただろ。

 だからちゃんと仮面装着してろと言ってんだ、横着すんなよ」

 

「これも、来るべき日に、仮面が使えなくなった時、終末、のための練習。

 それに、これなら、飛ばす、楽、いいだろ。

 ――ほら、こっちを見ろ、動くな」

 

明らかに人ではない指の塊と印章を最後に、その後のことは覚えていない。

あそこでは黄色の印の兄弟団と贖海派のいざこざがあったとか、両陣営ともにかなりの被害者が出ていたとか、そんな話を聞かされたが、そんなもの言われずともわかっていた。

あの任務の後、あの場にいた下っ端仲間の同僚は見ていない。

病院に入院したとか、別任務でへまをしたとかそんな話を聞いた。

俺自身も、ここのところ任務に出る気力すら失くし、自家に引きこもっている。

 

だがあの日以降、俺は夢を見るようになった。

儀式場のような、劇場のような、教会のような場所に向かって、階段を降り続ける夢だ。

そして降り切る前に目が覚め、翌晩同じ夢を見るのだ。

 

しかし、翌晩の夢は昨日よりも三段下へ進んでいるのが常。

そのたびに、現実の足がどんどん重くなる気がした。

 

そして、最近夢の中の下り階段の終着点がうっすらと見えてきた。

最下層には一人の人影らしきものが見え、それは髭の貯えた老人にも、黄色の外套を被った青年にも見えた。

その時が来たら、夢の外がどうなるかは……何となく察するのであった。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

▼【神来訪】今日の世界、まだ保ってる?【観測14日目】

 

143:名無しの探索者

やった~!!貯金がやっと1億超えたぞ~~!!

それに、ローンも返し終わったし持ち家もできた!

更には前世では到底手が届かなかった会社も変えた!!

まさに人生の絶頂期や~~!!

……これで、人類が絶滅の危機じゃなければな!!!クソが!!!

 

144:名無しの探索者

わいも

今世ではようやく美人な彼女が作れたのに……黄色の野郎が~~!!!!!

 

145:名無しの探索者

今世では後悔しないように努力したのに、こんなことに台無しにされるんなら、早く散財しとくべきだった

 

146:名無しの探索者

ワイの魔導書コレクション

は、世紀末後も役に立つ可能性があるからワンチャンか

 

147:名無しの探索者

正直、今はどんどん物の値段の価値が上がってるからね

水も清潔で安全を保障されてるだけで、500円くらいになるし

 

148:名無しの探索者

↑流石にそれは高すぎ、せいぜい300円くらいや

 

149:名無しの探索者

それでもたけぇよwwww

 

150:名無しの探索者

こんな状況でも、まだ日本の治安がましな方って、マ?

 

151:名無しの探索者

↑マ

 

152:名無しの探索者

>>150 はい

 

153:名無しの探索者

普通に自販機場無事な時点で、かなりね

米国なら州によるけど、基本ヒャッハーだし、よくてロアナブラ

酷いとこだとゾンビサバイバル(末期)だぞ

 

154:名無しの探索者

↑それはちがうよ!

……だって、本当に治安が悪いと生きてるものがいなくなってるしさ!!

 

155:名無しの探索者

内陸→ゾンビサバイバル

沿岸部→おさかな天国

地獄かな??

 

156:名無しの探索者

おさかな天国だと、まだ奴隷とは言え秩序が保たれてるからいいじゃねぇか

酷いとこだと住民がみんな塩化してるとかも珍しくないし

 

157:名無しの探索者

黄色の兄弟団やばすぎぃ!!??

 

158:名無しの探索者

※なお、別のカルトもつられて活性化してる模様

 

159:名無しの探索者

地獄かな?

 

160:名無しの探索者

ははっ、クトゥルフがいる時点でこの世界が地獄なのは明らかじゃないか

せめて、俺らがここに生まれたのだけが幸運だったということで

 

161:名無しの探索者

↑いや、別に日本だって見えないだけで同じ位ひどいからな??

具体的には、地方とか

 

162:名無しの探索者

①全部が海に囲まれてる

②D-6の活動地

③ぼけ老人が多い→夢の交信を受けやすい

むしろ、普通の国より被害がひどくry

 

163:名無しの探索者

元精神病院勤めのワイ

最近の患者が地獄過ぎて即退職する

 

164:名無しの探索者

※なお、その後の元患者は死よりもひどい目に遭ってるものとする

 

165:名無しの探索者

だ、大丈夫

大部分は酒飲んでるのに鬱とか、そういうしょうもないのだから(震え)

 

166:名無しの探索者

それよりも、田舎の宗教とかの方がすごいことになってんぞ

マジでクトゥルフ系ばっかだから、土着宗教とか大体汚染されてるから

 

167:名無しの探索者

一応、それなりの歴史ある神社は保たれてる方やろ

……え?伝承?夢での神託?知らない子ですね

 

168:名無しの探索者

クトゥルフ系ばっか話題になってるけど、黄色の印の兄弟団も大概やぞ

アイツらの場合、劇団や芸能、裏ルートの武器系に関わってるから、表も裏もマジでコイツらのステマだらけや!!

 

169:名無しの探索者

↑もはやステマじゃなくてダイマやぞ(げっそり)

 

170:名無しの探索者

ダゴン密教団の頃の方が100倍マシだったとか思う日が来るとは(遠い目)

 

171:名無しの探索者

というか、ダゴン密教団の方で、贖海派の方は制御できないの?

そも、クトゥルフ系ならダゴン密教団の方が権威とかそういうのあるやろ

 

172:名無しの探索者

↑一応、あそこはキリスト教関係だから……仏教とは、ね

 

173:名無しの探索者

贖海派は、そもそもD-6の裏工作で誕生しちゃた新興宗教だからねぇ

そもクトゥルフを祭ってるとは言え、自分たちが何を祭ってるのかは詳しくはわかってない

そもそも全国に一気に広まったくせに、教義すら統一されてない変態宗教だから……(´;ω;`)

 

174:名無しの探索者

ダゴン妹「何あれ知らんこわ」

クトゥルフ様「何あれ知らんこわ」

 

175:名無しの探索者

>>クトゥルフ様「何あれ知らんこわ」

おいwwww

 

176:名無しの探索者

でも大体正しいというね

 

177:名無しの探索者

※なお、こんなに広まっておきながら、クトゥルフ様がガチ目覚めたら、大体精神波の影響で死ぬ模様

 

178:名無しの探索者

悲しぃなぁ……

 

179:名無しの探索者

というか結局クトゥルフ様の覚醒って、どうなったんだっけ?

ガチなの?そうじゃないの?

 

180:名無しの探索者

↑たしか、寝返り程度だったのに、ガチになったとか

 

181:名無しの探索者

この騒ぎで察しろ(真顔)

 

182:名無しの探索者

前は大丈夫

今はダメ

 

183:名無しの探索者

>>179 元々は人間の防波堤でなんとかできる程度の寝返り予定だったけど、黄色の印の兄弟団のせいでそうじゃなくなった。

ハスターの召還をマジでやればやるほど、クトゥルフ様側もガチにならざる得なくなり、必然、寝起きが悪い&精神波と津波がひどくなる

そして、人類は滅ぶ(白目)

 

184:名無しの探索者

>>183 ひえっ

 

185:名無しの探索者

黄色の印の兄弟団を止めなきゃ(使命感)

 

186:名無しの探索者

↑止まんねぇからこうなってんだろ

 

187:名無しの探索者

そも、黄色の印の兄弟団にしろ、贖海派にしろ、奴らの活動は世界規模だからな

所詮島国のイエローモンキーが頑張ったところで無駄よ

 

188:名無しの探索者

諦めんなよぉ!!!

どうしてそこでry

 

189:名無しの探索者

いや無理

贖海派と黄色の印の兄弟団が夢経由で協力し合ってるせいで、片方潰してももう片方復活させる時点で……ねぇ?

 

190:名無しの探索者

最近の夢とかマジで汚染具合がひどいからな

只の睡眠でも仮面装着必須よ

 

191:名無しの探索者

すいません!!俺はまだ仮面の予備が手に入ってないんですけど!!!

友達を夢汚染から救うにはどうしたらいいですか!!!!

 

192:名無しの探索者

↑D.P.ウェイブ・ピロー買え

あれならまだダゴン密教団製だから、ちょっと深海の夢を見る程度で済むから

 

193:名無しの探索者

深海ミネラル入りサプリでもいいぞ!!

 

194:名無しの探索者

ダゴン密教団が、正義の集団になるとか……マジ??

 

195:名無しの探索者

↑言うて半分俺らが乗っ取ったみたいなもんだからね

 

196:名無しの探索者

いや、正義ではないやろ

それに、クトゥルフが目覚めたら死ぬのには変わりないし()

 

197:名無しの探索者

これ、救いはないんですか????

 

198:名無しの探索者

>>197 ない(断言)

 

199:名無しの探索者

無理

 

200:名無しの探索者

俺だって、信じたくねぇよ!!!

でも、世間的にも掲示板的にも、もう終わりやろこれ

 

201:名無しの探索者

スレ邪神「諦めて試合終了したら?」

 

202:名無しの探索者

イベントもいつのまにか、どう鎮めるかじゃなくて、どう生き延びるかになってるしなぁ(白目)

 

203:名無しの探索者

初期交換アイテム→夢用装備、狂気耐性半用装備

今→地下シェルター、オカルト発電機、メイドショゴス(簡易)

 

204:名無しの探索者

某冥途スキー「うおおおぉぉ!!!人外メイド増産ktkt!!!」

 

205:名無しの探索者

実際、シェルターの増築を無視して、ショゴスメイドの増産に励んでるらしいからな

いや、何やってんだよ

 

206:名無しの探索者

↑一応、ショゴス同士の情報交換とやらで、増やせば増やすほど高性能になるらしいから

一概に間違えともいえないらしい

 

207:名無しの探索者

地味にシェルターの種類も増えてるな

地下シェルターとか海中シェルターとか

……月シェルターは、ムンビ君がいそうだから論外だが

 

208:名無しの探索者

月シェルター、面白そうと思ったら※危険って注意されてる時点で……ねぇ??

 

209:名無しの探索者

幻夢郷ことドリームランドはないんですか?

 

210:名無しの探索者

え?幻想郷?(難聴)

 

211:名無しの探索者

夢関連は、今は無理やろ

少なくとも、贖海派と黄色がドンパチやってる時点で

 

212:名無しの探索者

↑ドンパチはやってないぞ

どっちも意識朦朧となって、互いが互いの宗教をリスペクトしあってるだけやぞ(白目)

 

213:名無しの探索者

ダゴン妹「だから、見捨てる必要があるんですね」

 

214:名無しの探索者

う~~ん聞けば聞くほど最悪なシナジーw

 

215:名無しの探索者

まぁ、要するに俺らは頑張ったけど、この世界の人類は予想以上に愚かだったので滅びました

だから、せいぜい生き残るために頑張りましょう

そういうこった!

 

216:名無しの探索者

↑まだ滅んでねぇよ!!!

……まぁ、8割滅んでるが

 

217:名無しの探索者

8割とは見積もりが甘いなぁ

世界を見たら9割滅んでるやろw

 

218:名無しの探索者

とりあえず、滅ぶ滅ぶ言っても進展しないから、俺はイベアイテムでも稼ぐことにするわ

よし!ようやく棘付肩パッド(オカルト仕様)かえたぞ!!

これで世紀末での略奪は一安心だぜ!!

 

 

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