永琳せんせの出番だぞ
エッホエッホ
あれから段々と死にまくった。時にはよくわからん妖怪について行ったり、聖徳太子を見てマジもんだ〜と叫んだり、よくわからん妖怪に石投げてから執着されたり。人がヒトやってる時代になればもはや病み期に入り。もうマヂムリ自殺したりと中々に時代を巻き戻った。恐竜に食われたりもして、もはや死ぬのが流れ作業となっていたころ。何やら変な痕跡があった。
「…足跡にしては小さい、よなぁ…?」
後ろから来た生き物に慣れた痛みを感じながら次。気持ち悪い感覚から目が覚め、土の味。起き上がって周りを見渡すと謎の人間がいた。いや、人間じゃない。人間っぽい奴だ。見た感じはどうにも…俺より歳上か。なんだ?と思ってるとなんかジッと見られてる。理由は…多分裸だから。死に戻った時期が氷河期を超えたのかはわからないが、若干寒い。
「…いや寒過ぎ!風が!」
「誰?」
「うわ子供!?」
「服は?」
随分とこっちのこと無視して話すなこの子。中々に気にしない奴なのか…?そう言うタイプって本当にいるんだ…いやそうじゃない、ちゃんと服をもらわないと。へいそこの女の子。なんか服くれない?…あ、女の子服しかないのか。いや良いから。ごめんだけどください。
「寒かった…咄嗟に毛布持ってきてくれてありがと。何でか知らないけど毛布ありがとね」
「…いや…私の下着貸したくなかったから…」
「あ、そっちなのね?」
話を聞けばなんか頭の良い子らしい。まあそれは良いんだ。俺の頭の中では結構やばいことになってるんだ。前に見た足跡。あれは人間の大きさでもかなり小さいと思うのだが…あれ、どうなの?この子が今しゃがみ込んでる足跡だったりして。んなわけないか…
「で、誰?」
「えーとね…」
何だっけ?名前名前…だめだ、断片的なあれこれしか覚えてない…確か、一番最後に呼ばれた名前が…あ、だめだこれ。全然出てこない。頭の良い子に考えてもらうかな。というかアレだ。最後に名前つけられたの多分聖徳太子だ。妖怪なんか俺のこと人間呼びだし。頭文字くらいは出てこないかな…えーと、あ、んー。ないわ。
「名前かぁ」
「そそ、名前。忘れてね」
「…××」
「あぇ?」
「××ね」
「…ごめん、全然わかんない。は、はぅあるさ?」
「違う。××」
「…すまん、全然わからん」
「なんなの?」
こうして、俺と女の子との間に謎の言葉の壁が生じていることを受け入れつつ…さあどうするか。俺の名前は蒲柳になった。ほりゅうらしい。保留っすか…まあ良いけど。蒲柳として生きることになった俺はどうやら色々とすることがあったらしく、アレだ。出生届みたいな何かを書いた。正直言ってなんだこれ?である。名前、住所…はない。その他ほぼ空欄。
「…結果、ここに?」
「まあ、な?なーんかみんな俺のこと避けるし」
「職もないし」
「そーなんだよなぁ。お前は俺のこと避けないよな」
「…だって、会うの多分最後だし」
「えっ」
「知ってる?月に行くの。私が作ったやり方で」
「おー、そりゃ良い。月なら退屈もしないだろう」
「で。来る?」
…一時期の宇宙旅行ブームを思い出す。デカい棺桶に乗って、何をするでもなくただ見て回るだけの旅行だ。だがこの子。えーと。名前が八意しか聞き取れなかったこの子は本当に頭の出来が良く。月に行くのが副産物なレベルで頭が良いらしい。詳しいことはよく知らない。が、まあ行けるなら行くのさ。
「…ところで俺はこのまま行って良いの?」
「あ」
服を買い、着込み、俺だけ厳重な装備。八意曰く、周りには八意のアレコレで通してるらしい。どうやらアレコレで通じるほどこいつは頭が良いらしい。ただこれも八意曰くなのだが、俺は他と違うらしい。らしいが並んで訳がわからん、と言ったところだが残念俺がわからん。もしかして俺八意の子供に見られてたり。いやそんなに身長差があるとは思えんが。
「っ…あれ?」
「着いた」
「もう?」
「ええ。月の裏側なら穢れが限りなく少ないから、私たちも長生き出来るのよ。そこでまた長生きの方法を見つける。」
「…あ、副産物の話?」
「貴方の話を全て信じるとすれば、貴方にとっても悪い話じゃないはずよ。事故で死んだらごめんだけど」
立ってるとよくわかる。八意はどうにも身長がデカい。俺と比べて頭二、三個は離れてる。はて俺はそんなに小さかったのか。八意がブツブツと喋り始めたことを確認。月に来てから体は軽いけど、それ以上に違和感がある。それに慣らすためある程度は体を動かさなければ。今の俺はもしや月面の人間として最適解を歩いているな??
「ちょっと!」
「ぎゃっ」
「貴方はまだ。姫様達が先」
「姫様がいるんだ」
感心しながら見送る。引っ張られた時の強さで少し浮いたが、まあそれは良くて。変な人たちに続いてとびきり美しい姫様らしき者が通る。どうにも楽しい一生になりそうな気がする。姫達が出て行き、次に八意が出る。周りが難しい言葉を言っているのだが、とりあえず八意に引っ張られて外へ。実はこの時点で最近の生涯ではかなり長生きしている方であることは覚えていただきたい。
「…真っ暗だな」
「━━…良さそうね。外して良いわよ」
「うい」
「これからどうするの?」
「八意さん以外に知り合いがおらんのだけど?」
「…え、同居するつもり?」
「流石にまずい?」
「いや、まあ…良いけど」
「ありがとー!」
「…褒められるのは良くあるけど、感謝されるのは初めてね」
「お前マジ?」
そして八意に手を引かれて月に住むことになった。月って何があるの?と尋ねると『まだわからない』とだけ帰ってきた。未知の領域に住むのはかなり無謀では?あとなんか前の方うるさくない?なんかあった?…いやそんなことより、これから住む場所はどうなっているのか。
「…先ずは月夜見様よね」
「誰それ」
「私たちの王よ。出生届は出されてるから…あとはあの方が認めてくれるかどうか。」
月夜見…月の都の王(らしい)。八意を信頼してる奴。
八意…永琳。そういうこと。