全力で振ってその勢いのまま回転、速度をつけて本命の斬撃を出す。目の前の二人を襲うのは斬撃ではなく真空だ。空気を斬るとはつまりこう言うこと。こう言うのって、理屈じゃないんすよね。と言うか理屈は説明できない。永琳に実演して見せたら、こう…何言ってんだって顔された。わりと全力で振らないと出ないけど、でも出せたので。
「っあ!?」
「きゃっ」
「…どうでも良いけど。戦いに来るのにスカートはどうなのさ」
「そう言うところは気にするのね」
「男ですから」
メイドは気絶したのか全然起き上がらない。俺自身それでありがたいのだが、さっさと刀を仕舞う。居合の構えを取り、目の前の少女に体を向ける。うーん、少女とは似ても似つかないが、昔出会った鬼を思い出す。切ろうとしても握力が足りなかったかなんかで切れなかった覚えがある。まあそもそもあの鬼は堅かったし。どうやって俺を育てた鬼は首に傷つけられたんだ?そいつ人外だろ。
「考え事?」
「ぅわっ!」
「遅い!」
腹に蹴りを喰らう。一瞬意識が飛ぶがすぐに戻す。え、何これ…俺、あれだよ?鬼でも一応動きはわかるくらいには目が良いのよ。なのに、どうも。動きを見切れずに腹を蹴られたって。バカみてえな運動神経してやがる。気持ち悪いな。さてどうするわけもない、近付いて切り落とすか。弾幕とかはよく分からんが、まあとにかく倒せばそれで良きかなだ。
「はぁ…」
「ため息なんて余裕ね!」
目の前に飛んできた少女の腹をノーモーションで切る。そのまま四肢を切り落として終わり。全力で殴って気絶させる。そのままさっさと永琳のところへ行くとしよう。あ、でも鈴仙たち拾った方がいいな。こいつらが入ってきた方向に歩いていればテイにも会えるはずだし。あ、いたいた。背負うか。鈴仙なら…気絶してから三時間くらいで目覚めるから、こっちに走ってきたりしてないかな。
「あ、蒲柳さん!」
「んっ」
「髪の毛切られちゃいましたぁ」
「まじか。永琳に頼んで伸ばしてもらえ」
「はぃ…」
「永琳はどこかな〜」
「あ、あれじゃないですか?」
「…あの、暴れてる感じのやつか」
赤い女と魔法使いの女と黄色と青の女と胡散臭い女が集まって永琳と戦っている。が鈴仙はかなりの疲労、俺自身弾幕は刀しかないし。うーん、永琳に頑張ってもらうとしよう。縁側に座って弾幕を見る。わりと綺麗だ。輝夜も呼んで気分はすっかり花見。とか思ってたら弾幕がこっちに。切り崩して自衛。もしかして弾幕ってこんな感じに流れ弾がありえるのかな?だったらかなり面倒だ。輝夜がうるさいな。
「…私たちも混ざりましょう!」
「俺は空飛べないから」
「え?」
「空に立つときとかも、刀で空間を切ってからなんとか立ってたし」
「…刀を振り始めて何年?」
「万単位かな」
「独学なのよね、これで」
「へっ」
流れ弾を処理しながらの会話だ。かなり面倒だ。恐らくだが胡散臭い奴はこっちを警戒しているようだ。俺も刀に手を置くのだが、流れ弾に関しては多分意識してなさそう。もしくは適当にこっちに飛ばしてるだけか。鈴仙がいたのならば撃ち落とすのも楽だった。鈴仙は今どこかって?寝かせた。髪の毛が切られたことで随分と病んでた。そんなにお気に入りだったのかな。
「終わりまで長そうね」
「そういや知ってるか」
「?」
「俺たちが住んでるここの結界の他に、ここら辺を囲むでけえ結界あるらしいぜ。なんでも隠す専門的な奴らしい」
「誰から聞いたの?」
「俺たち以外で竹林の住人。なのかな?分からん」
「ふぅん…永琳がなんて言うかしらね」
「女とは一言も言ってない。」
「私は何も言ってないけど?」
「そろそろやめようか。永琳がこっちを見始めた」
そそくさと逃げる。逃げようとした足元に矢。あ、これあかん。目の前には何を考えてるのか分からない永琳。頭を掴まれて今の話を根掘り葉掘り聞こうとしてくる。いや、その…結界の外に結界があるって話でして…秘匿性が高いとかなんとか…あ、それを言った人?いやぁ、流石にそこまでは。女じゃないよ。ホントだよ!あ、すみません嘘ですごめんなさい。ほら、敵がそこにいるから話はそれから…ごめんなさい
「つまり、月をすり替える必要はなかったってことね」
「え、ええ」
「ぅわぁ…」
「ありゃ恥だな」
「恥っていうか…姿勢がきついでしょ?」
「関節外してるからそんなにですね」
「うわ気持ち悪い」
「…お相手については後で詳しく聞かせてもらうから」
「俺だって相関図に人を追加したかっただけだって。なんなら、鈴仙が言ってたやつと同じやつだから!」
「なら尚更でしょ!!」
「あの、月は…」
「もう戻したわよ。」
そう言って永琳は俺を連れて寝室へ。押し倒された俺はそのまま頬に永琳の指が突き刺さって行くのを感じながら明日からどうするかを考える。先ほどの奴らの話であればどうにも明日宴会があるらしい。永琳と鈴仙と輝夜を連れて行くのはどうだろうか。提案したら俺を突き抜ける指が喉元にも現れた。どうやら検討する価値はあるらしい。
「そうね…そうね、良いわよ」
「あら嬉しい」
「輝夜の差し金だったの?」
「ええ。正直言ってそろそろ同じ景色は肩が凝ってきて」
「あ、永琳、鈴仙の髪どうする」
「伸びるのを待ってもらうわよ。無理に伸ばしてハゲたら意味ないし」
鈴仙「私の…髪…」
てゐ「…わかんねっ」