「貴方と言う者は今この世で一番の大罪人。更に死ななくなったのだから、こうして罰を与えに来ました」
「どうでも良いけど妻に会いたいから…後日さ、紙に書いて送ってくんない?別に石板でも良いんだけどさ」
「はぁ…」
なんかでかいため息つかれた。まあそんなこんなで要約すると、お前死なないし死んでも死に戻りであの世に来ないから前世ならぬ全世の罪に加えて輪廻の輪を乱しまくった罪があり、もし死ねば地獄フルコースを強制的に三十回を1セットとして60セットやっても罪が浄化されないくらいの罪状らしい。いやだな、俺もこの体質には辟易してましてね?自覚とは関係ない?あ、あぁ…そう…
「…それで?俺の罪は?俺あんまり頭良くないから簡単に」
「…あー…貴方が今までした行動。それによって生じた記憶とあなたの体に出来た傷。全てを貴方の体に顕現させます」
「つまり?」
「今までの苦しみが復活します」
「…え」
「では行きます。上上下下左右左右BA」
「ばっ」
その瞬間、一歩歩こうとした足に力が入らずに倒れる。途端に頭に衝撃。馬に蹴られたような鈍い痛みが走り、蓬莱の薬で再生する。次は腹を何かで貫かれたような感覚。全てが僅差のような感覚で襲いかかって来る。何度も何度も、気持ち悪い感覚に襲われ、平衡感覚がおかしくなり、前に進もうとしても地面に向かって顔を埋めに行っている感覚が薄れてきた頃。記憶も全部取り戻して、吐瀉物に埋まった顔を取り出す。
「終わったようですね」
「げぼっ…ぺっ!」
「貴方には鬼だった時期があった。それが死に戻りで無かったことにされましたが、その姿も貴方です。受け入れなさい」
「ゔぇ…ちょ、鏡ないの?」
「小町」
「え、私の鎌のこと言ってます?そんな綺麗に写るかな…」
俺の顔を見る。酒呑童子のようなツノではない。どちらかと言えばヤギが近いか。頭の形に沿ったツノが俺のデコから生えていた。撫でると確かにここにある。閻魔になんて恨み言を言おうか。妻に俺と認められなかったらどうする。俺はあいつがいなかったら発狂するんだぞ。いや、まあ…それを考えるのはこいつらの仕事ではないか。しかしまあ、力が湧いて来る。この姿で乱暴していた頃も思い出す。ただ、それ以上に吐きそうだ。
「…俺の妻に俺だとわかってもらえなければ、どうすりゃ良いんだ?」
「それも含めて罰です」
「…血統の証明とか」
「知りません」
「鬼ってツノが力の根源なんでしたよね」
「そうですね」
「…妻に渡して来るわ」
「小町」
「え、良いんですか??」
走り去ると、いつもの景色。竹林を目指して走り、我が家へ帰る。よくよく考えればこの刀が俺の証明だし、なんなら居合彫刻すれば俺の証明だろう。顔も…変わったと言えば変わったが…うん。デコの分どっかに皺寄せが起こったってことだろう。気にせず永琳の元へ。鈴仙にはぎょっとされた。しかし永琳見当たらないな。輝夜はいたが。まさか俺と同じような…はないか。
「なぁ鈴仙、永琳知らない?」
「そ、そもそも誰ですか…っ」
「…蒲柳だよ」
「嘘ですね。波長からして別人…蒲柳さんをどうしたんですか?その刀はどうやって奪ったんですか?返答次第では…」
まず鈴仙がわからないか。それなら仕方ない…待たせてもらうとしよう。縁側に座り込み、岩を持って彫り始める。鈴仙の監視付きで。永琳の像を掘り出し、横に並べる。どうして俺がこんな目に。ただよく分からん体質のせいで何度もやり直していただけだろう。俺は何も悪いことはしていないはずだ。多分、おそらく。悪いことといえば、酒呑童子と出会った次の時代だ。その時は暴れに暴れた。でもそんくらい。
「なあ鈴仙、俺がツノ折って永琳に渡したら重いか?」
「いやそもそも貴方蒲柳さんじゃないので」
「短時間でこんなに彫刻できる奴そんなにいないと思うよ?」
「妖怪なら、或いは」
「あれこれ逃げ道ない感じかな…」
「あ、お師匠様帰ってきた」
そういえばなんだが、鈴仙はテイに倣って永琳を師匠と呼ぶ。どちらかと言えば先生のようなものではないかとも思うが、まあ今はそんなことは些細だ。永琳が俺を俺とわかってくれるかどうか。今はそれが何よりも優先されることで、いや万が一にも億が一でも無いと思うが、もしも永琳が俺を俺と分からなかったら、多分俺は存在ごと消える。妖怪だからね。メンタル死ぬと体も死ぬ。
「鈴仙!蒲柳は!?」
「いえ、まだです…けど、自称が」
「自称…?」
「この鬼です」
そう紹介されて永琳はどう思うのか。頭に沿ったツノを外したい。そのまま永琳に押し付けて元の姿に戻すようにも頼みたい。そんな思いの中、永琳の返答を待つ。ゆっくり歩いて、俺をじっと見る。何をどうすれば俺がこうなるのかは、閻魔様に聞いてほしい。
「…人が妖怪になるなんて、有り得るのね」
「えっ?」
「お、お師匠様!?」
「…姿だけでも元に戻すような薬を作りましょう。鈴仙、人間に変身できる因幡を何人か見繕ってくれる?」
「え、でも波長が…」
「人は変わることがあるの。それよ」
「えっ…」
「やっぱ永琳は最高だ!」
「あら嬉しい。じゃあ…元の姿になったら、もっと夫婦らしいことをしましょう?」
「…鈴仙ってば、分からなかったの?」
「姫様!?」
「私、一目でわかったわよ。確信を持ったのはこの像ね。ほら、お尻がちょっと」
「それは俺の好み関係ないんだわ」
輝夜「ちなみにあの刀はそもそも所有者の許可もらえないと使えない代物よ。」
鈴仙「えっ」
永琳「持ち主は私よ。量子印で許可を」
鈴仙「量子印って何ですか?」
輝夜「永琳にしか出来ない、永琳の存在証明」