健康診断の時だけ健康を目指す人は、常に健康的な生活をしている人よりも早く死ぬ。
「ふぁ〜…永琳〜、どこ〜?」
「ここよ」
「うわっあ!?あ、ごめん潰してた…」
俺が寝ている時に感じていた不安定さはなんと永琳の体だったかららしい。ごめん永琳。なんでそんなまんざらでもない顔してるのさ。つーか俺はよく寝返り打たなかったな。いやでも永琳が夜中起きてて俺を掴んで離さなかった可能性…あるな。つーかそっちの方があり得るな。まあ良い。俺が潰し続けたんならどっか痺れてるだろ。足とか手とか…は?胸?消し飛ばせば治るだろ。
「全く…」
「何よ。私が寝てる上に寝てきたのが悪いのよ」
「いやそれ俺の布団」
「…何?」
「鈴仙」
「惚気ですか?何回目ですか。私もう聞き飽きましたよ」
「ちょ、待って鈴仙」
「嫌です」
待ってよ。ねえ、俺がしたいのは所有権とかの話。モラルとかじゃないんすよ、少なくとも布団に関しては俺が買ったからな。月で。月面ショッピングよ。ムーンショッピングかな。どっちにしろこれは俺のもの。我が物顔で入ってこないで。え?輝夜はたまに永琳の布団に入るの?…知らないよ、それ。最近もやってたの?もう鈴仙呼んでやれよ。仲間外れじゃん。あ、仲間外れなのは俺?…うっせ。
「そう言えば、因幡たちが新しい神社ができたって言ってたわ」
「…行けと?」
「そうねぇ。珍しく喧嘩してるし…」
「わ、蒲柳さんのご飯だけ薬品」
「永琳の服をよく見ろ」
「うわすんごい切り刻まれてる」
「…人前に出れませんよ!?」
「鈴仙が去った後、激しい喧嘩になったのよ」
つまり諸悪の根源はお前だ鈴仙。ま、でも2万年以上どころじゃないレベルで生きてきたんだから…うん。仲違いくらいはある。少し距離を置こう。俺たちの少しがどんなものかは知らないが、少しは少しだ。人里で暇を潰しつつ寝るとしよう。実は寝違えたりしている。なんかうるせえな人里…そうだ、本屋見るか。面白い本があれば嬉しいんだけど。
「…あのぉ」
「んぁ」
「もうそろそろ閉店時間です」
「え、そんなに長くいた?」
本をしまって外に出ると、日は落ちていなかった。何だ全然昼じゃん。昼飯の休憩を挟むから休みにしたのかもしれないが、それを閉店時間と呼ぶのは些かどうなのかとも思う。人里にもう用事はない。元々金があんまりないし。里の外はやはりだだっ広い原野で、広いとも狭いとも言える視界だった。人なら広い、妖怪なら狭い。んー、でも困ったな。意外にも里の外の方が用事はない。当たり前だが。
「帰る…いや蜻蛉返りになるなこれは。一体どうすれば…」
「お前、こんなところで何してんだ?」
「あ、金髪魔法使い」
「長いな」
「えーと…あれ誰だお前」
「霧雨魔理沙。お前は?」
「蒲柳。いや実は妻と喧嘩しちゃってさぁ」
「蒲柳ね…ん?妻?」
「八意永琳。俺の妻。結婚歴千年以上だ」
「へぇ!?」
ただ、俺が知る限り最大の喧嘩をしてきたばかりだ。え?どんな喧嘩か?知らん。まあ、なんだ。ここ数万年喧嘩なしで同棲してたんだから、ま…多少の距離感を考える日かもしれない。個人的には同じ場所で寝ないとか。部屋は分けるとか。風呂入る時に一緒に入るとか言ってねだらないとか。あとは、うん。俺の布団に入って寝ないとか。そういう感じの距離感が欲しいんだよ。少なくとも今は近過ぎる。
「なるほどな…倦怠期か?」
「ない。俺と永琳の間に倦怠期などない。」
「マジかよお前…」
「正直な話をすると、倦怠期を永琳が許さない。それに俺はあいつがいないと生きていけなかったしな」
「大変なんだな」
下手したら神様になってたかも。そんなことを考えてたら霧雨魔理沙がとある提案をしてきた。何とびっくり、一日だけ霧雨魔理沙の家に泊まらないかという提案だった。はっきりと言えるのは、まず間違いなく永琳にバレたら殺される。それを話すと、じゃあ守れや男だろと言われたので仕方なく守ることに。仕方がない、仕方がないねぇ。強要されちゃったら仕方がない、よねぇ。
「じゃ、適当に過ごしてくれ」
「おう」
「…いや待て、そこは私の服が入ってる棚だからその近くに居座るな」
「初っ端矛盾かよ」
「流石に下着の側に人がいるのは…」
「へぇ…そう言えばなんだが」
「なあ今の反応なんだ?お?言ってみろ。言え、ほら」
「…森の中の家とか、湿気で絶対汚いよなって」
魔法でどうにかしているらしい。さて次。霧雨魔理沙はイヘンカイケツをしていると聞いたので新しい神社とやらを知っているのではないか?と思い聞いてみた。知っていた。なんなら凸ったらしい。カチコミしたら博麗の巫女に全部取られたそうだ。可哀想に。撫でたら嫌がられた。バカな、俺のナデナデはあの輝夜を抑えての一位だぞ。因幡調べにはなるが。ちなみに殿堂入りは永琳。
「人とウサギじゃ違い過ぎるっての…あ、そういやお前何日間ここにいるんだ?」
「一日くらいかな。機嫌治ってなかったらここが矢文に襲われる」
「永琳の矢文かよやべえな」
「気付かんか?扉の前にもう来てるぞ」
「嘘だろうわっほんとだ!」
「どれどれ…」
中身としては、これから鈴仙が迎えに来ることとさっさと帰ってこなかったら寸分違わずに矢で神経毒に侵させるぞと書かれていた。やば、俺死ぬ?え、し、死ぬ?…鬼になれば、或いは…待て、もしかしたらその或いはすらないんじゃね?永琳だぞ。相手は月を脳みそにしたら永琳の三分の一くらいにしかならんくらい脳みそのシワ多い奴だぞ。うわまた矢文来た。『女性にシワとか言わないこと』だって。明日、多分死んでるわ。
「脳みそのシワは褒め言葉だろ…」
「文面を見る限りキレてるな…」
「鈴仙がどんなとばっちりを受けるか」
「蒲柳、お前は受けないのか?」
「鈴仙次第」
蒲柳が出て行った後
永琳「…」
輝夜「いつまで待つと思う?」
鈴仙「…三時間、ですかね」
てゐ「んー…3分」