「あのぉ」
「まあまあ入ってけ」
「あ、すいません」
「よっ」
「蒲柳さん…早く帰りますよ!お師匠様が今鬱なんですからね!」
「どれくらい?」
「首に紐つけてもがいて死んでを繰り返してます。矢文送った後からずっと」
そりゃいかん。急いで支度をして急ぐ。永琳の死に続ける姿なんてのはな、あれだ。輝夜が髪のセットにあくせくした挙句癇癪起こして月に帰るとか言い出すよりもレアだぞ!今までに二回あった。というわけでさっさと帰る。確かに何やら騒がしく感じる。永琳が死に続けている場所は俺たちの部屋らしい。ちょっと待って?ん?俺の部屋で死に続けてるの?ちょっと待って、床とか大丈夫だよな!?
「汚れてる!!」
「そっちですか!?」
「はぁ…とりあえず永琳降ろすぞ。つーかめちゃくちゃ高えな」
「床下2メートルですよ」
「色々と間違ってるのはさておき、え、2メートルも上なの?ウチってそんなに天井高かった?」
「あ、はい。50メートル」
嘘つくな。鈴仙を肩車して…え、お前空飛べるの!?何だよそれ…ムカつくから紐切ってやろ。いやそうじゃん。俺斬撃飛ばせるんだから普通に斬ればよかったんだわ。永琳の体が重い音と共に落ちる。永琳が目を覚ますまで待つとしようかな。こういう時人はどれくらい眠るのだろうか。永琳が起きたら永琳に聞こうかな。やっぱり永琳待ちか。鈴仙には席を外してもらい、じーっと待つ。
「…起きてんなら目開けろやばーか」
「何よ。別に良いでしょ」
「お前ほんっと…布団の上で首吊りはやめようぜ?」
「え?」
「色々と漏れ出てて臭いから」
「…あっ」
永琳の貴重な粗相だぞ、喜べ。俺は喜べない。だって俺の布団の上だし。永琳が必死に掃除し始めたが、ちょっと新しいの買った方が早いだろ。何やってんの?どうやら永琳はその布団に執着するようだ。鈴仙に話をして、今日は別の布団を用意することになった。その間、輝夜は因幡と戯れていた。こいつの布団と俺の布団変えてやろうかな?いや流石にダメか。永琳がこっち見てくるし。何、なんなの。怖いよ。
「いだっ!?」
「他の女によそ見しないの」
「噛むなよ…」
「やっぱり胸は小さい方が…切除…」
「お前悪化したな?そうだろ?そうだと言え。ほら。言えよ。」
「愛がさらに強くなっただけよ」
「悪化してんじゃねえか…」
「それはそうと、関係ないけど、貴方には微塵も」
「言えよ早く」
「自分の整形やってくるわね」
…まさか胸を切除するの!?自分で!?…いやいやいや、待てよ待て。そもそもなお前、この幻想郷、胸でかい奴が少ねえんだから仕方ねえだろ!?あ、おい待て鈴仙。何でダメージ受けるんだ。少ないって言ってんだろ。あーもう、鈴仙をフォローすると永琳に噛まれる。あっちこっち悪化してんじゃねーか。もう嫌だ。霧雨魔理沙の家に後2日はいるべきだった。いやでもそしたら永琳が暴れるか。
「…で、なんだこれは」
「枕よ」
「枕…なのか?」
「ええ。」
まさか…いやいや…まさかな…チラリと永琳の胸を見る。良かった、切除してない。つまりこれは枕だ。永琳お手製らしい…耳を近づけてみる。うん、やはりだ。脈打ってる。いや脈なのかわからないが、何やら一定のリズムでトントン鳴っている。持っていた時に感じていた妙な感覚の正体はこれか。でな、何だこれ?まだ枕って言うのか?流石にもう無理だろ?枕以外しかありえないんだけど?
「私の脈と連動して脈打つ枕よ」
背筋が凍る感覚。これは暗に、『私は貴方の脈と連動して脈打つ枕を作れる』と言われているのだ。いや待てよ、もしもさっきの整形がこれを作るための心臓に何かすることだとすれば、俺のはない。寝てる間にされてないとも限らないが、いや流石に永琳でもその辺は線引き出来ているだろう。出来てるよね?出来た?…俺が永琳の上で寝てた時とか、細工されてないよな…?
「ちなみに私の分もあるから」
「作りやがった…さっきの整形は何やってたんだ?」
「お尻を大きくしてたわ」
「それは大変だ、今すぐ元に戻しなさい」
「分かったわ」
「ついでに枕捨てろ!」
「嫌」
このアマぶち殺す…のは置いておき。やはりそろそろ、俺がデカ尻好きだと言う誤解をどうにかして解かなければならんだろうか?えー…否定すればするほど怪しまれるからなぁ。鈴仙は特に。てゐは…そう言えばあいつ最近見ないな。どこ行ってんだろ?まあ多分程よくほっつき歩いてるだろう。ちなみに俺は最近てゐの正しい発音を知った。輝夜伝だが。
「んで、輝夜の枕は?」
「私の枕は普通の枕よ。永琳と同じにしないで」
「…強制的に脈打つ枕にされた側の気持ちを汲んでくれ」
「いやーしかし、貴方って大きいお尻が好きじゃなかったのね」
「そういやお前が噂の発祥だったな」
「まあ、良いじゃない。困るわけでもないでしょ?」
困るんだよ。例えば永琳とか、永琳とか。後永琳とか。要はあいつ単体が結構厄介なんだよ。今日の一件で多分一つネジが飛んだぞ。そのせいで脈打ってんだからな枕が。怖いよな本当に。ちなみに鈴仙はもがく永琳がトラウマになったのか、部屋に篭りっぱなしである。布団は撮りに行くしかないか。くっそ…こんなことになるんだったら霧雨魔理沙の家にお邪魔するんじゃなかった。失敗…まあ、失敗と言えば失敗だ。
「蒲柳…」
「何だ永琳」
「温泉、興味ない?」
「…まさかお前…掘ったのか…!?」
お燐「御夫婦の温泉旅行は受け付けてないからねー」
てゐ「…家族は?」
お燐「そもそも全部受け付けてないから」