「永琳」
「何?」
「客来たぞ」
客を案内して俺は寝る。一番楽なんだもん、寝てたいよね。なんて思ってると、今度は俺に客。鈴仙に呼ばれて行ってみれば、ぬえがいた。詫びなら寅丸のせいで受取拒否だ。文句なら寅丸に言え。あいつの金、多すぎるんだよ。邪魔っつーか、俺からすればそんなに使い道ないし。さてぬえはと言うと、とりあえず客間に案内して座ったらもう何も言わない。なんでやろか。
「…あのさ」
「何?」
「聖と星になんか伝えたでしょ」
「…どゆこと?」
「最近妙に星が金持たせるし、ここに行けって言うから…どっちかに言ったんでしょ!」
「そんなことはない!俺だって色々あるんだ!大体、命蓮寺に行くと監視が5体来るんだぞ。そんな何回も行けるか!」
「あ、あとお仕事の依頼ね。読んで」
「あっくそ帰せねえ」
「とにかく。私の立場もあるんだから、あんまり言わないで」
こいつ…俺を殺した回数1位に君臨してるくせに、なんてクソみたいなことを…ぶち殺すぞこいつ。とは言え仕事は仕事。依頼書を読むと、これまた気の遠くなることが。筆跡からして聖さんではないが…聖の人形が五体。馬鹿だ。馬鹿げている。しかし大きさについては何も言われていないので。ぬえも知らないらしいし…腰あたりの大きさで作るか。あっちで手入れはやってくれるだろうしな。
「職場見学〜」
「一瞬だぞ」
「ゆっくりやってよ。見学者がいるんだからさ」
「…鈴仙、ナイフあったよね?」
鈴仙に持って来させたナイフで岩を削り始める。一回だけゆっくりやってやるからそれ以上はもう黙ってろ、と言う意味合いも兼ねて。さて俺の得意なことと言えば、なかなかに人の造形を覚えるのが早いということが挙がる。はずだ。ポージングとかの案が欲しいのだが、その手合いのものはないらしい。ので仕方なくお嬢様みたく綺麗に座っている聖白蓮を作ることにした。
「ほれ、作れたぞ」
「ん…あ、本当だ」
「多少は見ろや、てめえが見てえって言ったんだろ」
「え〜…そんなこと言っていいの?蒲柳がどれだけ強くてもさ、蒲柳の恥ずかしいことを忘れさせることはできないんだよ?」
「黙れ。少なくとも永琳なら喜んで聞くだろうが…」
「んじゃ言ってくる!」
足でぬえを抑えながら削り始める。岩を投げ、切り刻み、そのまま形を作る。完成、聖さんの人形だ。さてあと三体だったか。ちゃっちゃと作るとして、ぬえに運ばせれば寅丸と会うこともないだろうから、うん。今回は俺にとってめちゃくちゃいい話になるな。良いことだ。早速斬り終え、ぬえに持たせる。素材はなんと言っても石なので、そこら辺は勿論頭に入れて運ぶことだ、とも付け加える。
「ふーん…蒲柳は来ないんだ」
「寅丸の詫びとか言って渡してくる金銀が嫌なんだよ。多すぎるし…」
「あ、そういうことか。私に任せといて!」
「…久しぶりに聞くけど、お前がそんな張り切ってるの」
「諸行無常、盛者必衰。それ以外ならなんとかして見せるからね」
「約束だもんな」
「じゃ、行くぞー!」
永琳に出先を伝え、家を出る。何やら永琳の懐疑的な声が聞こえたが無視だ。そのまま歩みを進め、命蓮寺。ぬえが俺に待つように言って先に入ったのを見て。さて流れでついてきたがどうしようか。今すぐ聖さんの人形を置いて帰るのではダメだろうか?ダメなのだろうが。くそっ、俺の逃げ場がない。ぬえも、かなり強いはずの妖怪だ。それこそ、俺の家に自力でたどり着く程度には。
「蒲柳さん!」
「寅丸」
「お礼の件なのですが…」
「おっ」
「都合の良い妖怪としてお扱いください!」
「おいぬえ」
「いやいや、頼らなければ何もない、ってことなんだよ?これは改善されたというべきでしょ」
「手始めに俺に金を渡そうとしているこいつは?」
「…私の無理なことに、星の意見を曲げるが追加されるかも」
「盛者必衰に並ぶのかよこいつの恩義は」
「なんで受け取ってくれないんですかぁ」
今日はぬえ経由で聖さんに戻させよう。そうすれば全額戻せる。仮にぬえが渡しに来てもそれを拒否すれば終わりだ。どうにも今回は俺に損がなさそうだ。うし、じゃあちょこっと受け取って、ぬえに後で渡して、聖さんに戻す。これで良いだろう。じゃあ聖さんの人形も渡したし、帰るか。ぬえを連れて。少し歩いてぬえに渡された金を押し付ける。依頼された分の金を除いて、これは余計だからと押し付ける。なんかこいつ受け取らねえな?
「いやほら、私からのお詫びもあるし…」
「そういうの良いから」
「え〜?でもなぁ〜」
「受け取ってくれよ」
「…昔みたいに頼ってくれたらな〜考えなくもないな〜?」
「…姉さん、受け取ってよ」
「よし来た!」
そう言って俺から金を取ったぬえは満足そうに命蓮寺へと行った。あいつまさか、これがやりたかったから寅丸を言いくるめなかったわけじゃないだろうな?…やばいな、今後が心配だ。監視用の因幡を抱き抱え、帰路。面倒なことがいちいち多いが、まあ仕方ない。そろそろ空を飛ぶ方法を身につけるべきか。妹紅に炎の扱い方とか教えてもらったほうがいいかもしれんな。
「お、てゐじゃん。最近見なかったけどどうした?」
「お兄さんに良いこと話そうねって。その子、女の子ウサ」
「…それ、永琳は?」
「知らないウサ」
「バラすなよ??」
永琳「知ってるに決まってるでしょ」