「姫と会うの?」
「姫様が興味を持ったの。ほら、早く」
と言うわけでチラ見しかしてない姫と会うことに。俺はアレだが。月の姫ってなると…うーん。なんも思いつかない。竹取物語の原本読んだことあるくらいしか出て来ないわ。内容も覚えてないし。いやでも、輝夜姫が確か月の姫じゃなかったか?うーん、そう考えたらそうとしか思えなくなってきた。いやでも確か最終的にアレどうなったんだっけ?帝が月の使者全滅させたんだっけな…
「こちらが姫様よ」
「貴方が蒲柳なの?」
「はい、そうです」
「私が貴方のことを××に尋ねる度に嬉々として説明するから、どんな色男かと思えば…子供じゃない」
「おっし切っても良いよな」
「じゃ、私は仕事があるから」
「××もこんな子供と同居するなんて…母性?」
「お前ほんっと…はぁ。」
「名前は…八意蒲柳。なんかどっちも苗字みたいね」
「それは俺もそう思う」
どうやら姫様は俺の武勇伝らしきものが聞きたいらしい。とは言え、特にこれと言って話すものは一切なく。それどころかマージで記憶にないので、痛みに慣れたことを示す芸しか持たない俺は姫様のお気に召すかどうか。と言うかアレか。月の奴らはみんな八意のことを××って呼ぶのか。もっとこう、俺に優しい発音をしてくれんか。なんなら俺が名前つけてやろうか。
「良いわね。じゃあ私たちで××の名前作りましょ」
「…でも俺八意についてはほとんど知らないんだよな」
「名前なんて体を表さなくても良いのよ。例えば…そうね、ニイザンとか?」
「いやいや、姫様の御付きだぞ。そんなよくわからん名前よりなんかこう、それっぽい名前をだな」
「そうねぇ…賢いんだからそれを名前に入れたいわね」
「賢者」
「ありきたり。」
なんだこの姫様…まあ良い。堪えるようなことでもないし、むしろ姫ってこんなフランクなのねと思ってしまう。助かるが。さて。今俺は姫様と謎の仕切りを通して相対している。向こうからこっちが見えて、こっちからは向こうが見えない。状況はこんな感じ。マジックミラーみたいなものだろう。科学の力様々だ。と言うわけで。月に降り立つ時チラリと見えた姫様の見た目と言動が食い違っていることにかなり差を感じているわけだが。
「…貴方の知ってることで何かないの?」
「投げやりだな…んー、思いつかん。八意の知ってることも綺麗な変な人としか」
「綺麗ねぇ…そうだ、もういっそ××に決めてもらいましょう」
「綺麗だけだと名前が絞りづらいな。綺麗、賢い、あと二つ欲しい」
「…私自慢の付き人」
「俺の帰る場所」
「きもっ」
「でも実際あいつがいなかったらまた死に戻ってたし」
ただただ、今は八意に感謝を。常に感謝の気持ちを持って接する。無理。やっぱ自然体がいいよね、人間。そうして八意の名前は八意に任せるべきと言う意見とともに、条件が出揃う。綺麗、博識、自慢の付き人、安心感。良し、迎えにきたら八意に伝えようか。それまでは世間話と行こうじゃないか。実は私何回も死んでまして…最後に死んだ時は変なのに下半身すりつぶされた痛みで死にました。
「いまゾッとしたわ。え、何それ…男なら痛いんじゃないの…?」
「正直言って、内臓食われた時の方が痛かった。それ以外はそんなに。」
「えっ、えっ…え、痛覚って鈍くなるのは聞いてるけど、生まれたばっかで鈍いの?」
「精神は身体を支配するってね」
「じゃあ大人の姿になってみなさいよほら早く」
「きゃいんっ」
「…××に大人まで成長させて貰えば?」
「出来るの?」
「××は薬学も詳しいのよ。××以外の薬学を修めた者をいくら集めても、××には敵わないでしょうね」
そうとなれば。迎えにきた八意に頼むとしよう。となると八意は自分の名前を考えながら薬を作ると言うことを仕事と同時並行で作らなければならないと言うことか。…もしかして、八意が怒ったりするんじゃないかな、これ。いや普通に考えても怒るわ。仕事してたら仕事追加されてるんだもん。普通怒るよね。いやでもあいつ普通じゃねえしな…姫様伝で頼んでみるか、一回。そうすれば怒らないだろ、多分。
「つーわけでよろしく頼みます」
「良いわよ。貴方が大人になってどんな色男に成長するか楽しみ」
「言っておきますけどね、期待通りにはならんと思いますよ」
「まあ意外と私のタイプかもしれないし」
ポジティブシンキングと言うやつだろうか。よくわからんな。まあとにかく、だ。なんとかなる、なんとかならなくてもどうにかなる。どうにかならなくともなるようになる。これぞ真のポジティブシンキングってね。世間話はまだ続き、ひと段落を見せる頃にタイミングよく八意が迎えに来た。その八意へ矢継ぎ早に話し始めたのは姫であった。成長する薬、俺が聞き取れる言葉の範囲内で自分に名付けしろ、とまあよくできたものだ。
「成長、ね」
「八意の話じゃここは老いるのが極端に遅いんだろ?それじゃ、刀を振るうのもかなり遅くなると思ってな。」
「本音は?」
「依姫と斬り合いをしてみたい。木刀でも可。」
「なるほどね。名前は別として、成長させるのは明日にでも出来るわよ」
「マジ?」
「副作用として、体の痛みが一日中酷いけど。」
痛みなら耐えられるから別に問題はないと豪語した後、夕飯を作って食べて布団に入る。最近、ようやく毛布を脱した。八意にねだって買ってもらった敷布団だ。毛布より厚みがあって多少はマシ。それでも八意が寝ているものよりかなり寝心地は悪い。本当に悪い。八意の寝床は最高級…ではなく自作らしい。その為八意はとても気持ちよさそうに寝ている。羨ましい限り。
「…これが?」
「成長する薬よ。」
「注射か」
「錠剤に出来るわけないでしょ」
八意「…今考えたらこの薬にDNAを改変させる能力を付けたら…」
永琳せんせは便利なお薬屋である。