蒼い空と時計ヅラ 作:月時計
ある日の昼、私は気分転換にグランサイファーの甲板で書類整理をしていた。
「よう、ダンテ! 甲板で仕事か?」
『こんにちは、ビィ』
「お、挨拶だな! こんにちは! ……合ってるよな?」
私は頷くとビィは嬉しそうにその場を回った。
「へへっ! オイラもだんだんお前の事がわかってきた気がするぜ!」
「ビィ、ダンテさん、おはよう」
「おはよう! グラン!」
『おはよう』
「ダンテさん、今日はマナリア魔法学院を通るんですが、良かったらマナリア魔法学院を見に行ってみますか?」
『マナリア魔法学院?』
「ああ……マナリア魔法学院っていうのは──────」
ファータ・グランデの中でも最高峰の魔法を学べる場所……
『面白そうだね』
「オイラも少しの間だけど、そこの生徒だったんだぜ! この船にもツバサって奴がいるんだけどよぉ……」
ビィから学院での思い出を聞いていると、話に出ていたツバサという子が焦った様子で船から焦った様子で戻ってきていた。
「大変だ! 団長!」
「ど、どうしたんだツバサ!?」
「ビィか! 烈弩宇威愚の奴らが──────」
「なんだって!?」
「あ! ビィ!」
言うや否や船を飛び出したビィをツバサとグランは追いかける。
『二人共、待って!』
私は急いでファウスト達を招集して、グラン達の後を追うのだった。
そして、マナリア魔法学院。
グラン達の後を追うと制服を着た少年達が、中庭を大人数で占拠していた。
彼らは皆制服を紫色に改造しているようで、一目で不良だとわかる風貌をしていた。
「お、お前ら一体何やってんだ!? ンだよその制服は!」
ツバサが不良生徒達に詰め寄ると彼らは数でツバサを押し出した。
「うお!?」
「ツバサ君……俺達はもう烈弩宇威愚じゃないんだよ……」
「shit……こいつは何の冗談だ?」
私達がこの状況を傍観していると後ろから別の生徒……? なのだろか、白い派手な服装で生徒には見えないけれど……
「ショウ!」
「ショウさん……俺達も宿命夜想曲は辞めたんすよ……」
「What? 一体どういう事だ……?」
「俺達烈弩宇威愚と……」
「俺達宿命夜想曲は生まれ変わるんだよ……この」
彼らは狼をモチーフにした旗を掲げるとどこかからエンジンの音が聞こえてくる。
「「「「「荒狂狩人(ワイルドハント)になぁっ!!!!」」」」」!?
「荒狂狩人だと……ッ!?」!?
「Bad……ふざけた事しやがって……」
『何で「!?」が浮いているんだろう……』
「ふむ……察するに、学び舎の生徒達の反乱ならむ。ならば主犯格居るべし」
「そ、そうだぜ! お前らの頭(ヘッド)は一体誰なんだよ!」
ビィの悲痛な叫びに荒狂狩人の生徒はニヤリと笑った。
「そうだな……お前ら元親友(マブ)にも教えてやるよ」
「俺達の新しい頭(ヘッド)……ヒースクリフさんだ!!!」
『えっ?』
生徒達がバッと割れると、生徒達の中心に一人の男が現れた。
浅黒い肌に黒い短髪、傷だらけの体に手には「Remember」と書かれたバット。
そこには、サングラスをかけたヒースクリフが立っていた。
『ヒ──────』
「ヒースクリフ君!!?」
私達囚人は全員絶句していた。
「ま、まさかダンテの仲間なのか?」
ビィの言葉にファウストは説明する。
「……はい、間違いなく囚人番号7番、ヒースクリフです」
『な、何でこんな事をしてるの!?』
「その声……時計ヅラか」
その声は冷たく、酷く距離を感じる印象を受けた。
「俺はもうテメェの仲間じゃねぇ、大人しく回れ右すンなら見逃してやるよ」
「な、何を言うであるかヒースクリフ君! 私達は全員でリンバスカンパニーではあるまいか!!」
「黙れチビ、テメェの演技に付き合ってやんのも疲れてんだ、その下らねぇ正義ゴッコを辞めて帰れ」
「なっ……」
「ヒースクリフ君! ──―うっ……」
イサンが思わず前に出るが、荒狂狩人の生徒達に押しのけられる。
『様子がおかしい、一体何が……』
「お前ら、その縛られた枷を外す時が来た。欲望を、怒りを増幅させろ。ここからは……狩りの時間だ」
ヒースクリフの一声で生徒達は一斉に学校中に散らばった。
「うわっ!? 何だお前ら……ぐわぁ!!」
「いや、やめてっ!」
荒狂狩人はあちこちで他の生徒達を襲い回っていた。
「ふざけんな!! 烈弩宇威愚を吸収するだけじゃ飽き足らずこんなダセェ真似しやがって!!」
「SoBad……テメェは俺達がシメる必要があるみた──────」
私達は生徒達が散らばった後もその場に居続けるヒースクリフの前に立つ。
「ちょっと、どいてくれませんかね……? まさかアンタの仲間だからって庇う気かよ」
「否定せり」
「当人らの仲間だからこそ、ヒースクリフ君は我々が止めてみせまする!」
「グラン達は生徒達の鎮圧に回って下さい」
「で、でもよ……」
「ビィ、ツバサ達、ここはダンテさん達に任せよう」
「……わかった! お前らここは任せたぜ!」
「……俺らの代わりに戦うってんなら、せめて負けんなよ!!」
グラン達が荒狂狩人たちを止めに走ると、私達はヒースクリフを前にする。
『ヒースクリフ、君に何があったかはわからないけど……』
「……」
『今の君はこんな事をするような人間じゃない。だから、私達が元の道に戻すよ』
「やってみろ、お前達が俺を止められるのならばな──────!!」
暫くして……
私達に叩きのめされたヒースクリフはドンキホーテの一撃で死んだ。
「……」
『確かにいつもより強かったけど……』
「三対一ですからね」
「管理人殿! 時計を!」
『うん』
時計を回すとヒースクリフの血肉が戻っていく。
その過程で、上手く言えないけれど彼から何かが取り除かれた感覚がした。
「う……いってぇ……」
「ヒースクリフ君!」
「うわっ!? お前ら何でここに!?」
『どうやら戻ったようだね』
「時計ヅラ……」
『どこまで覚えてる?』
「た、確かあのねじれを俺らがぶっ飛ばしてから……」
~過去、マナリア魔法学院~
そうだ、俺はマナリア魔法学院に落ちて。
ここの奴らに助けられてたから暫く用心棒見てぇな事してたんだよ。
それで確か……ああ、変な奴が学校に来て──────
~現在~
「そうだ!! あの野郎だ!」
『あの野郎って?』
「ピエロみたいな奴が居たんだよ!! そいつが話しかけてくるとイライラしてきて……クソッ、そっから何も覚えてねぇ!」
「おーい! ダンテ!」
「他の奴らは全員捕まえたぜ!」
『皆!』
グラン達が荒狂狩人の拘束が終わったらしく、私達はヒースクリフから聞いた話を伝えた。
「ピエロみたいな奴ぅ?」
「あ、あの……」
突然、無事だった生徒の一人が手を挙げた。
「そのピエロみたいな人、私見た事あります。確か──────」
「こーんな見た目をしていた……とか?」
「「『「「!?」」』」」
私達はいつの間にか中心にいたピエロに飛び退いた。
「どうも皆サン! 僕は「笑顔の切り札」、以後ヨロシク!!」
「Shit……お前が烈弩宇威愚と宿命夜想曲の奴らを洗脳したのか?」
「ノンノン、洗脳なんかしてないさ。ただちょっと彼らの気持ちを強めたダケ!!」
「あ?」
「彼らは不満だったのさ、色々なものニ。学校、生徒、教師、自分自身にも……僕はそーんな不満を解決するための方法を後押しシタだけ!」
「ンだと!」
「君だって不満じゃないかい? トップに立っていた自分が外に出てみれば未熟も未熟……井の中の蛙だった事がサ……?」
「……はっ、確かに俺は未熟かもしれねぇ。……けどな、それは不満にはならねぇ、こっちはなぁ……今は未熟だけどいつか立派になるって決めてん前向いて走ってンだよ!」!!
何か、ツバサに嫌なものが取り憑きかけていたが彼はそれを跳ね除けてみせた。
「チッ……マジで不満が無いタイプか……」
「笑顔の切り札」は張り付いた笑顔のまま舌打ちをするとふわりと空に浮かび上がった。
「ま、今日はいいや。ホントはママの為に人手が欲しかったんだケド……土台が壊れちゃったし諦めって肝心だかラネ! あ、そうそう……君達の為にお土産を置いておくから楽しんデネ!」
『ま、待て!』
「笑顔の切り札」はそのまま空を飛びマナリア魔法学院から去ってしまった。
「クソが! あのピエロ野郎……利用するだけ利用して紙クズみてぇに捨てやがって……!」
「ヒースクリフ君! 落ち着くのである!」
「……チッ」
「な、なぁ……アイツお土産って言ってたよな……」
「Notgood……嫌な予感がするぜ……」
その時、こことは別の場所から大きな爆発音が聞こえた。
「んなっ!?」
「今の音は……!」
「皆、行こう!」
グランの声で私達は音の方へ向かう事にした。
そこは正門だったようで、大量の魔物達が押し寄せて来ていた。
既に何人かの生徒と教師が集まって正門を守っていたが徐々に押されているようだ。
「こ、こんな魔物の数一体どこから……」
「ミラちゃん!!」
「あ! ツバサ君留学生活はどうかしら☆」
「今それどころじゃないですよ先生!!」
「グレアにアン達も! こっちで守ってたのか!」
「Shit……道理であの騒ぎでも先公が来なかった訳だ……」
「少し前、突然魔物達が群れを成して襲って来たんだ」
「これがアイツの置き土産かよ!」
『私達も加勢しよう』
「ダンテ、人格牌の準備を」
『ファウスト、それと最初に君のEGOを使う。いいね?』
「はい、了解しました」
「あのピエロ野郎の鼻を明かしてやる」
私の声に合わせて囚人達は塀を乗り越える。
「あ、ダンテ!?」
ビィが驚くが私も囚人に引っ張られながら塀を何とか乗り越え、飛び降りた。
「行っちまった……」
「僕達も戦おう、ミランダ先生! 加勢します!」
『準備は良い?』
私の言葉に囚人達は頷くと私は人格牌をセットする。
百は優に超える魔物達相手に空の人格では力不足だ、だからといって都市の人格を使えば彼らの精神力が不安定になる。
なら強引な解決方法を使おう。
私は4人の人格をセットする。
鏡が割れる音と共に皆の姿が変わる。
イサンは体から花が咲き、扇子を構えた姿へ。
ファウストは巨大なハンマーを持ち、ベルトによって縛られ尽くされた姿へ。
ドンキホーテは紅き螺旋の槍を構えた姿へ。
ヒースクリフは茨の巻き付いた大剣を携えた姿へ。
この場において最も強さを信頼できる都市の人格達だ。
『私が道を指し示す、皆! 戦闘開始!』
「……っ……この戦闘には勝利するでしょう」
自我の競合により精神力が下がった彼らを、ファウストのEGOを使って無理矢理癒す。
ファウストの一撃で魔物の多くは私達に狙いを変えた。
「魔物達の勢いが落ちました!」
「このまま押し返せ!」
グランは武器を振るい魔物達を切り伏せていく、その傍ら、塀の向こうで戦い続けている彼らの姿を目で追っていた。
「あいつら、滅茶苦茶強いじゃねぇか!」
ツバサも同じ事を思ったのだろう、何度か討伐依頼を彼らに手伝って貰った事があるが戦う度に姿を変えていた。
それ自体はもう慣れた、だがグランは彼らの強みをこの戦いで初めて知った。
それは対多数。
彼らの戦い方を直接聞いた時言っていた、本来は12人で、5、6人程前に出ながら戦うと。
グラン達は強大な敵と戦う事が多かったが彼らは数の戦いに優れていた。
現に、いつの間にか魔物達の半分以上がダンテ達を標的にしていたのだ。
「皆! この場を任せていい!?」
「Noproblem……団長さんはあの時計達を助けに行きな……」
「この程度なら俺らでもどうにかなんだ! 任せてくれ!」
「ありがとう!」
グランは塀を乗り越えるとツバサは息を大きく吸いこむと生徒、先生たちに叫んだ。
「お前ら!!!! マナリア魔法学院の意地見せてやろうじゃねぇか!!!!」
選出基準は攻撃加重値が2以上あるかどうかです。