蒼い空と時計ヅラ 作:月時計
『ふぅ……こんなものかな』
グランサイファーに乗る事になってから3日目、私とファウストは少しづつこの世界を学んでいった。
グランが団長を務めるこの騎空団では、彼の父が残した便りを手にイスタルシアという島へ向かう事が目的らしい。
しかし彼と、彼の仲間達は随分とお人好しなのか未知の先々で色々な人の困りごとを解決しようとする為中々進みが遅いそうな。
精神構造からして
「ダンテ殿、少しいいだろうか」
『カタリナさん』
「昨日渡してくれた書類なのだが────―」
『何か不備があったかな……?』
「……不安そうな針の音だが、ミスがあった訳では無いよ。むしろ丁寧に整理されていて助かっている」
私は現在、グランサイファーで書類仕事を行っている。
バスの中でも指揮に限らず似たような事はやっていたし、ここで彼らの助けを借りるだけなのは忍びないので私に出来る事をしたのだが……案外上手くやれているようだ。
「私が貴殿の所に来たのはファウスト殿から伝言を預かっているからなんだ、「完成しました」とだけ伝えてくれればいいと……」
『そっか、ありがとうカタリナさん』
私は立ち上がると部屋を出て、船のエンジン部に移動する。
グランサイファーはかなり広く、見取り図が無いと未だに迷う程だった。
『えっと、ファウストが言っていたのはこっちだよね……』
「来ましたか、ダンテ」
何とか到着するとそこに居たのはファウストと、船で出会ったアイザックとマキラという二人。
どうやら彼らはエンジニアらしく、ファウストが何をしているのか興味を持ち手伝ってくれているようだった。
「やあダンテ、昨日ぶりだね」
「ども、ダンテさん」
『二人とも、こんにちは』
「ダンテ、先日の会話を覚えていますか」
ファウストがそう言い、私は一昨日の事を思い浮かべる。
~グランサイファーに加入してから一日目~
『そうだ、ファウスト……人格牌の事なんだけど』
私はファウストに人格牌を見せる、それは囚人達の「もしも」の可能性を映し出した長方形の物体で、彼らに人格を被せることが出来るんだけど……
「……これは」
『うん、なんというか……不安定なんだ』
グランサイファーに加入して、一息ついてから色々確認した所人格牌とEGOが明滅していて……なんというか、不安定になっていた。
「……現在私はファウストに接続できないので、これは推測にすぎませんが」
『うん』
「都市で抽出した人格は観測が可能になったものから抽出した者でした。しかしこちらの世界に来た事によりその観測が再び不明瞭なものとなったのだと推測されます」
『じゃあ、空の世界では人格を被せられないって事?』
「被せる事は可能でしょうが、何かしら不備が発生する可能性があります」
だとしたら非常に困る。
これから囚人を探し、元の世界に帰る上で人格とEGOの力は必須だろう。それなのに使えなくなっているというのは凄く、凄くマズい。
「……ダンテ、これから私は解決策を模索します」
『うん……私も色々考えてみるよ』
~現在~
『覚えてるよ、人格牌の事だよね』
「はい、現在囚人達が行方不明な事に加え様々な問題解決に必要な人格牌及びE.G.Oが不安定な状態では危険なので解決策を模索し続けました」
「それでファウスト君がグランサイファーのエンジンを見たいと言って、ラカムの許可を取って隣に何か作っていたんだよね」
「面白そうだったので私達も協力しました」
「そして完成したのがこのメフィストフェレスの疑似エンジンです」
『疑似……?』
「はい、本来メフィストフェレスのエンジンには様々な機能が搭載されています。しかしこの疑似エンジンは人格とE.G.Oの抽出の機能のみ搭載されています」
「エンジンと言ってもグランサイファーには既にあるからね、もう一つエンジンを作っても燃費が悪化するだろうから」
「はい、なのでファウストさんが仰っていた抽出という機能を星晶石で行えるように改造しました」
「メフィストフェレスが吐き出す以外では基本的に狂気という対価を支払っていましたが、偶然ですがこの星晶石という物質にも対価として払うのに十分な力があると発見しました」
『つまり、都市で抽出していた人格が使えないからこっちの世界での可能性を抽出しようって事?』
「はい、緊急時には都市の人格を用いる事もあるかもしれませんが安全を期して基本的にはこちらで人格を抽出し、被る方が良いでしょう。……ではダンテ、こちらを」
そう言ってファウストは私に虹色に輝く石を渡して来た。
『これが……星晶石』
「はい、狂気と同じように対価として支払っていただければ人格を抽出できる筈です」
私は恐る恐る、いつものように人格を抽出してみた。
すると、疑似エンジンは見慣れた動きで人格牌を一つ吐き出した。
……しかしこれは
『虹色だ……』
見事なまでに虹、今まで抽出した人格牌でこんな色は無かった。
「これは……支払った対価の影響でしょうか、ですがそれ以外に問題は見受けられませんね」
私はPDAを通して人格牌を確認してみる。
『「騎空団 隊員 ファウスト」……この世界での可能性みたいだね』
「成功ですね、これから戦闘が行われる際はこちらの人格牌……空の人格を優先して使用してください」
『わかったよ』
その時、船のスピーカーから声がする。
『あー、そろそろ次の島に到着するぞ。各員、準備しといてくれ』
「では、私達はこれでよしなに」
『うん、ありがとう二人とも』
「カチカチという音しか聞こえないけど、多分ありがとうって言ってるのかな? どういたしまして」
「それでは、私達も行きましょうか、ダンテ」
はい、指定書類に関しましては団長ではなくファウストを通して下さい。その方が効率的ですので。
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せわしなく動く船の上。
騎空団に所属する子供は机と向かい合いながら、次の島へ向かう為に必要な物資の確認に勤しんでいたんだ。
騎空士の一人が子供に書類を恐る恐る渡すと子供はそれを一瞥する。
「補給する予定の物資の確認をしましたが……幾つかの修正が必要です」
「はい……」
「現在受注している遠征依頼についてですがポート・ブリーズから出発する商団の護衛任務を通してファータ・グランデ空域内での活動区域を拡大する所までが目標です」
「は、はい! なので遠征に向けて通常より多めの物資を────」
「ふむ、これらの物資は補給内容が全て我々が補う想定をしていますが護衛対象との契約内容では遠征物資の3分の1をあちらで補填する事になっています、それと護衛対象の最終目的地はガロンゾ島ですが直線ではなく道中にアウギュステ、アルビオン、アマルティアを経由します」
「あ……」
「上記の情報を考慮して別添してください。あ、それから今期までに必要な予算をリストアップしたものも提出されていませんね」
別に子供は怒っているわけでは無いけれど、この騎空団に来たばかりの子供の部下は目をぎゅっと瞑っているしかできないみたい。
「短期での活動が主だったので遠征の経験が少なかったかもしれません、それを把握しているファウストが凄いのですよ」
その様子を見た子供は慰めとも言えない慰めをして、書類の一部分を指して誉め言葉を加えた。
それが子供なりの誉め言葉と配慮なのかもね。
「航行予定時間の計算はよくできていますね、各島での滞在時間を3日前後で設定し事前に護衛対象との擦り合わせも行っておいてください」
「わ、わかりました」
子供の部下が慌てて船から降りていくのを確認すると子供は机から立ち上がり、船の点検を行う事にしたみたい。
本来は専用の整備士もいるし、子供がする必要は無いけれど。
本来の役割よりもこっちの方が性に合っているらしいね。
そして依頼が始まると、子供は本来の仕事に向き合うんだ。
「……5体」
「ファウストさん! そっちに2体行きました!」
「問題ありません、護衛対象の保護を優先して下さい」
子供は剣を握ると襲い掛かる魔物を切り払って、片手に持った銃を使って空を飛ぶ魔物を打ち落とす。
子供にとってはどちらも慣れた事だったんだ。
書類を片付けるのも、
魔物を片付けるのも。
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