蒼い空と時計ヅラ 作:月時計
「ようし到着だ! グラン、準備は出来てるか?」
「ありがとう、ラカム」
「時計の兄ちゃんと白髪の姉ちゃんも準備できてるか?」
『大丈夫だよ、ビィ』
「問題ないと言っていますね」
「お二人とも、ここがポート・ブリーズ群島ですよ!」
ここに到着するまでの間ルリアから様々な島について教えてもらった。
ルリアも私と同じようにノートを取る習慣があるようで、彼女のお陰でこの世界の知識が深まったと言えるだろう。
……ただ────────────
~グランサイファー内~
『ルリアもノートを取ってるんだ』
「貴方も日記を書いているのかと聞いていますね」
「はい! 旅の色々な思い出を書いているんです! 良かったら読みますか?」
『うん、是非読みたい……な?』
若き俊英は、気高き白竜の騎士団を率いる。祖国の危機を救うべく、身命を賭して挑む姿は、多くの仲間を惹きつける。その双剣に宿る意志は、国の未来を切り開けるか。
『……』
「……」
「えへへ……少し恥ずかしいですね……!」
~現在~
彼女の文才は何処から来ているんだろう……
さて、ポート・ブリーズ群島は流通が多く騎空団が集まる交流の場となっているそうだ。
ここに来れば囚人達に関する情報が入手できるかもしれないとグランが提案してくれたのだが……
『……全然人がいないね?』
「おかしいなぁ……いつもはもっと活気があるんだけどよ……」
「あ、あっちに人がいますよ!」
ルリアが指した場所を見るとここの住民と思しき人が何やら荷物をまとめているのが見えた。
「すみません、少しいいですか?」
「何だ? ……って、この変じゃ見ない顔だな……騎空士か?」
「はい、僕はグランです。こっちがルリアとビィ、それと──────」
「ああ、ああ。いい、そんな暇ないんだ……さっさとこの島から逃げねぇといけねぇからな」
「逃げる……?」
「まさかまたティアマトが暴走してんのか!?」
「いえ……ティアマトが暴走している訳では無いみたいです……」
「そもそもあの時と違って、嵐が起きてるわけでもねえしな」
「ラカム?」
後ろから声がすると思えば、いつの間にかラカムが私達の所まで追いついていた。
「さっき他の騎空団に聞いて来たんだけどよ、どうもこの島に魔物が出現しているみてぇだ」
「なんだって?」
「けどよぉ、魔物って言ってもここは騎空団が多いだろ? こう言っちゃなんだけど今更魔物くらいでここまでなるか?」
「俺もそう思ったんだけどよ、どうも普通の魔物じゃねぇみてぇだ……なんでも車輪みたいな化け物だとか、枝みたいな化け物だとか……ただ共通してんのは全員そいつを魔物よりも化け物って表現してた事だな」
「車輪……」
『それって……』
私とファウストはある敵の姿が頭の中をよぎった。
しかし……
『こっちの世界で大罪がいるとも思えないけど……』
「ん? どうしたんだ時計の兄ちゃん」
「いえ、何も言っていませんね」
「そうか? オイラにはわからねえな……」
ファウストはこの予想を話すのはまだ早いと思ったみたい。
「それで幾つかの騎空団が討伐に行くみてぇだ、俺達も行くか?」
「勿論、ファウストさんとダンテさんも大丈夫?」
『うん、私達も協力しよう』
「はい、我々も協力します」
「ようし、行こうぜ!」
暫くして……
私達がそこに到着すると、既に騎空団と思う人達がその化け物と戦っていた。
「な……なんだこいつら……!?」
「ひぃぃ……! もうやってられるかよ……!?」
何人かは恐慌状態となって戦闘を放棄していた。
「な、なんだあれ……」
「おいおい……化け物ってのは嘘じゃねぇみてぇだな……」
『ファウスト……あれは』
「……はい、私達の知る大罪と特徴が一致しています」
大罪。
幻想体はまだこうだと言えないけれど……ねじれは人が感情的に淵に追いやられると起こる現象だ。
身体が怪物のように変わり凄まじい力を持つ存在になってしまう。
そして大罪はねじれになれなかった個体……みたいだ。
でも……何か変だ。
『あれは……大罪だけど……私達の知る大罪じゃない、なんとなくだけど』
ファウストは私の言葉に何か推測を行おうとしているけれど、相手はその猶予を与えてくれない。
「来るぞ、お前ら構えろ!」
「……話はあとにしましょう、ダンテ、人格牌を」
グラン、ラカムが武器を構えるのに合わせて、ファウストも前に出る。
私はルリア、ビィと共に後ろに下がって人格牌をPDAに装着した。
するとガラスが割れる音と共にファウストの姿が変わる。
ツヴァイヘンダーを握っていた手は両刃の片手剣と拳銃に。
囚人の制服は緑を基調としたミニスカートにベレー帽をかぶった姿に。
その姿は誰が見ても騎空士だと言えるだろう。
「うひゃあ! ファウストさんの姿が……!」
「変身したのか!?」
「戦闘を開始します」
そして私が指示を飛ばすとファウストは右手に持った剣を振り、大罪の胴体を斬りつけていく。
後ろから狙う敵に対しファウストへ指示を出せば彼女は左手の銃を使って攻撃を押し返した。
「すげぇな、ファウストさん! 俺らも行くぞ、グラン!」
「うん!」
程なくしてグランとラカムも戦闘に参加し、他の騎空団達の力もあって程なくして大罪の数が減ってきたところ……それは現れた。
「皆さん! 星晶獣の気配がします……!」
「何ぃ!?」
ラカムが思わず空を見上げるがそこには何も居らず、つられて上を見た私が前を向き直すと……
『女の子……?』
「あの子から星晶獣の気配がします……!」
その星晶獣と呼ばれた女の子は未だ大罪と戦っている騎空士の傍にそっと近づき、その手を触れる。
すると
「な……何だ……暖かい声が……」
「な、何してんだ……? あいつ」
「ああ……そうだ、俺は騎空士になりたくて……騎空団に入った。だけどそれは決していい生活とは言えなくて……」
「おい、何か様子がおかしいぞ!」
「おいレスカー! 大丈夫か!?」
「あいつら、あの星晶獣が見えてねぇのか……?」
『ファウスト、止めて!』
ファウストが星晶獣を狙って銃を撃つが、その弾はあらぬ方向へ飛んでいった。
「このっ……!」
ラカムもファウストに続いて星晶獣を撃つが
「マジかよ……!」
まるで初めから狙っていなかったのかと思う程おかしな方向に飛んでいく。
駄目だ、そうこうしている内にレスカーと呼ばれた男はうずくまっていって……
「ああ、そうだ……俺は騎空士になりたかったんじゃなくて……親父みたいになりたかっただけなんだ……!!」
間に合わなかった。
ねじれたその姿は翼を持った逆さまの土竜、だがその体は所々機械化していてまるで騎空艇みたいにも見えた。
「人が……化け物になった……!?」
「来るぞ! グラン! ファウストさん!」
ねじれてしまったレスカーは高く飛び上がるとその爪を前に出し、グラン達ではなく私達を狙って突撃してきた。
「避けろぉ!」
ビィの声に合わせて私はルリアの手を取り飛び込むようにその場から逃げる。
私の脚を掠めるようにして爪が通り過ぎ、なんとか避ける事が出来たが……
ねじれたレスカーは翼を広げるとそこから幾つもの穴が空き、穴から砲台のような物が見える。
『!』
私はルリアを引き起こすとグラン達を追い越す様に走り出す。
その意図を察した三人は砲台を迎撃する構えを見せてくれた、
そして私達がグラン達の下へたどり着いた瞬間。
無数の砲弾が襲い掛かる。
「させるかよ!」
ラカムが銃を乱射し、ファウストもそれに合わせるように銃を撃ち砲弾を次々と叩き落していく。
「よっしゃあ! 全部落としたぜ!」
「けどどうする! 想像以上に速ぇぞ、弾が当たらねぇ!」
なんとか地上で戦いたいけれど、ねじれたレスカーはずっと空を飛んでいる。
EGOで何とかできたらいいけれど、EGOが不安定な今使うとどうなるかわからない。
膠着状態になっているとねじれたレスカーは再び爪を前に構えだした。
「また来るぞ!」
全員が突撃に対し構えを取るが、ねじれたレスカーは私達ではなく地面に向かってその爪を突き立てた。
「んなっ!?」
ビィが驚いているとそのまま爪が回転し始め、ドリルの様に地面に潜っていった。
「これは……」
グランが警戒を緩めずにいると突然ルリアのいる地面が揺れ出す。
「きゃっ……!」
「……っ!」
咄嗟にファウストがルリアをグランの方に突き飛ばした瞬間、ファウストを貫く様にねじれたレスカーが飛び出した。
ファウストはその攻撃を避けることが出来ず……
「ファウストさん!」
「クソッマジかよ!?」
腹部を抉られたファウストは口から泡だった血を吐き、地面に投げ捨てられると人格の解除と共に死んだ。
『ファウスト……!』
私が時計を巻き戻そうとするが、それをする暇すら与えられず再び地面に潜ってしまった。
このまま同じことを繰り返されたらどんどん負傷者が出てしまう。
囚人達と違ってここにいるグラン達は蘇らない。
囚人を失い意思疎通も出来ない私は今、本当の役立たずだ。
地面が揺れ、私達はその場から離れる。
幸い全員避けることが出来たがこれ以上は……
「ノーブル・エクスキューション!!!」
その直後、巨大な光の柱がねじれたレスカーを呑み込みねじれたレスカーは咆哮と共に墜落した。
『今のは……』
「リュミエール聖騎士団団長! シャルロッテ・フェニヤ! 助太刀いたすであります!!」
「シャルロッテさん!」
私達の前に現れたのは……レスカーをねじれさせた星晶獣の女の子よりも小さい、妙に長い王冠を被った子供だった。
『子供……?』
「む……なんだか嫌な視線を感じるでありま……頭が時計になっているでありますよ!?」
「おい! あいつ起き上がるぞ!」
ラカムの声により身の程もある程の大剣を構えたシャルロッテは、大きな声を張り上げ予想外の人物に声をかける。
「まずは拘束を!
『え?』
私が驚いている暇もなく、その人物は私達を軽々と飛び越しその手に持ったランスをねじれたレスカーに突き刺した。
串刺しになったレスカーは地面に縫い付けられ、飛び上がる事が出来なくなっていた。
「ふっふっふ……はっはっは!!!」
「な、なんだぁ? あの金髪の嬢ちゃん……」
「私の名は! リュミエール聖騎士団団員! ドンキホーテ! 正義の下にこの槍で裁いて見せようぞ!!」
『ドンキホーテ!?』
そこにいたのは囚人服ではなく銀に輝く鎧を纏い、蒼いランスを手に持ったドンキホーテだった。
騎空団 隊員 ファウストは剣と拳銃を持ったホークアイジータ、ドンキホーテはバウタオーダタイプの重鎧をイメージしてください。