蒼い空と時計ヅラ   作:月時計

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「空の世界に来たドンキホーテの簡潔なあらすじとこの世界でのねじれについて」

『ド、ドンキホーテ?』

 

「ん? その声は──────―」

 

 私がドンキホーテに呼び掛けると彼女は唖然とした表情を見せ────────―

 

「────────────────かんりにんどぬぉぉぉおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」

 

「うるさっ!?」

 

「無事だったでありまするかぁぁぁぁ!!!」

 

『う、うん……そうだファウストを……』

 

 時計を回し、ファウストを生き返らせると同時にドンキホーテがこちらへ飛び込んできた。

 

「貴殿……貴殿? ……はドンキホーテ殿の知り合いだったでありますか」

 

『う、うん』

 

「はい、ドンキホーテさんと私、こちらの管理人は同じ組織の所属です」

 

「そうでありましたか! 改めて自分はリュミエール聖騎士団団長のシャルロッテ・フェニヤであります!」

 

「シャルロッテさん、どうしてここに?」

 

「グラン殿! それについては、先にドンキホーテ殿について話した方がいいでありますな」

 

『ドンキホーテについて?』

 

「うむ! 当人が管理人殿達とバラバラになってしまった時の事でありまする……」

 

 ~転移直後、ドンキホーテ~

 

 ドンキホーテが迷い込んでしまったのはルーマシー群島にある「ルーマシ―の里、蒸し遊」というサウナだった。

 

「うぐっ!?」

 

「な、何!?」

 

「ひ、人が空から落ちて来たであります!?」

 

「お嬢様、私の後ろへ……!」

 

 木々に叩きつけられながら高所から落ち、気を失っていたドンキホーテはその場にいたデリフォード、メリッサベル、シャルロッテ、そしてセワスチアンによって救助された。

 

「見た事ない服装であります……」

 

「このランスに整った装い、そして顔写真……恐らくどこかの騎空団か軍団に所属している人物かもしれませんな」

 

「木々を潜り抜けて落ちたのか、擦り傷が多いですな……」

 

「うぅ……」

 

「あ……目を覚ますみたい」

 

「はっ……! ダンテ……!! ──────ここは何処だ……」

 

「どうやら、お目覚めのようですな」

 

「其方らは……?」

 

「私はデリフォード、こちらはメリッサベル殿とリュミエール聖騎士団のシャルロッテ殿、セワスチアン殿です。それで、貴殿は何者だろうか」

 

「当人はドンキホーテと言いまする、当人はリンバスカンパニーという会社に所属していて……」

 

「リンバスカンパニー……私は存じ上げませんが……」

 

 デリフォードが三人に視線を送ると全員首を振る。

 

「こ、ここは何区であるか? 全く見た事の無い場所であるが早く管理人殿の下へ戻らねばならないのだ! ──────っ」

 

「落ち着くのであります! まだ傷が治っていないのでありますから安静に──────!」

 

「この程度の傷で、正義の歩みを止める事など出来ぬ!」

 

 ドンキホーテはフラフラと立ち上がると前へ進もうとするが身体が悲鳴を上げると膝をつく。

 

「ううむ、これはいけません。一度ちゃんとした治療を受けた方がよろしいでしょう」

 

「だ、だが私は管理人殿を……」

 

「その方を探すにしてもその体では貴方が先に力尽きてしまうでしょう、どうかここは……」

 

「……わかったのである」

 

 そうして、彼らはドンキホーテを連れてリュミエール聖国へ向かったのだった。

 

 ~現在~

 

「そうして当人はシャルロッテ殿達のお陰で完治し、恩返しの為に一時的にリュミエール聖騎士団に加入する事になったのだ!!」

 

「ここに来たのは騎空団の交流が多く、ドンキホーテ殿の仲間の情報が見つかると思って来たのであります」

 

『……』

 

「ドンキホーテ、緊急時とは言え所属を変更するのは──────」

 

「わ、わかっているのである! と、当人も名残惜しいが管理人殿に会えたのなら戻らない理由もあるまい……」

 

 そう言いながらこちらへ来るドンキホーテは物凄く後ろ髪を引かれている様子だった。

 

『ところで、リュミエール聖騎士団って?』

 

「リュミエール聖騎士団という組織について聞いています」

 

「リュミエール聖騎士団でありますか? 我々は、「清く、正しく、高潔に」をモットーにしリュミエール聖王の下に所属する騎士団なのであります!」

 

 ああ、成程。

 

 モットーだけで察しが付く、どうやらこの組織はドンキホーテとすこぶる相性が良いみたいだ。

 

 ドンキホーテは鎧を脱ぐと中に囚人服を着ていたようで私のよく知る姿に戻っていった。

 

 ……名残惜しいのか鎧を手に涙ぐんでいる。

 

「シャルロッテ殿……私は会うべき人に合えた為……当初の約束通りこの鎧は……返す……でありまする……っ!」

 

「い、いや……そこまで惜しむのなら持っていても良いでありますよ……?」

 

『うーん、ファウストどうしよう?』

 

「……都市への帰還までの間なら、人格を使用できない時の為に持っていても良いでしょう」

 

 それを聞いたドンキホーテはいつの間にか鎧を着直しており、

 

「流石ファウスト君であるな!」

 

「おいおい……感動の再開は良いけどよ……あいつ、復活してねぇか……?」

 

 ラカムの言葉に全員がねじれたレスカーに視線を戻すと、いつの間にか蒼いランスを抜き取り起き上がっていた。

 

「ここは自分がもう一度……!」

 

 しかし、ねじれたレスカーは飛び上がる事も無く、ただ私達の方をじっと見ていた。

 

 そしていつの間にか彼の背後に揺れ動く何かが現れた。

 

『あれは……』

 

「何だありゃあ……」

 

「心象鏡ダンジョンです」

 

「心象……」

 

 ねじれたレスカーは踵を返すと心象鏡ダンジョンへ入って行った。

 

「お、おい……入って行くぞ……」

 

「私達も行きましょう」

 

『そうだね』

 

「うむ! 少し人数は心許ないが管理人殿がいるのだ! 何とかなるであろう!」

 

「ど、どうするグラン」

 

「僕達も行こう」

 

「自分も行くであります!」

 

 私達が入ると少し遅れてグラン達も来てくれた。

 

 心象鏡ダンジョンに入ると騎空艇がそこかしこに飛び交うどこかの町だった。

 

「ここは……ガロンゾ島みたいだ」

 

「じゃあ……私達ワープしちゃったんですか?」

 

「いいえ、ここは彼の心象……記憶を再現した場所だと思ってください」

 

「私達の今までの経験からすると一番奥にあのねじれはいる筈である!」

 

「つまり、先に進むしか無いって事だね」

 

 ガロンゾ島を進んで行くと突然停泊している騎空艇の一つから声が聞こえてくる。

 

 

 

『俺の親父はガロンゾ島の人気者だった』

 

 

 

「この声、化け物になる前のあいつの声じゃねぇか?」

 

 

 

『親父はいつも傷を作っては戻ってきて、お袋は心配そうな顔をしていて……でもそんな親父の背中は輝いていた』

 

 

 

『俺も親父と同じ騎空士になるって言ったらお袋は泣いて俺を止めたけど……それでも俺は騎空士になった』

 

 

 

 突然声が途切れると、まるでタイミングを合わせたかのように大罪が押し寄せて来た。

 

「こいつらを倒さなきゃ先に進め無さそうだな……」

 

「皆、行こう!」

 

「管理人殿! 人格を頼みまする!」

 

『あ、それが人格は────』

 

「いえ、ダンテ。試してみましょう」

 

『ファウスト?』

 

「現在都市の人格は不安定ですが、使用した結果までは判明していません。私と貴方だけならリスクを考慮していましたが、今なら鎮圧は容易です」

 

 確かに、実際空の人格を使用できなくなる可能性は否定できない。ここで多少危険を冒してでも何が起こるかを知るのは賛成だ。

 

『わかった、それなら……』

 

 私はPDAに人格牌を二つ装着する。

 

 すると鏡が割れる音と共にファウストは騎空士の姿に、ドンキホーテは青い制服と双刀を手に持った──―W社の人格を纏った。

 

「また変身したのか!」

 

『よし、ファウストは中距離でグラン達の援護、ドンキホーテは……ドンキホーテ?』

 

 ドンキホーテの様子がおかしい、両手に持った武器を眺めて全く動かない。

 

「私は……W社の整理要員で……リンバス社の囚人で……あの列車は……だが私はこの血で間違いなく……?」

 

『ドンキホーテ!!!』

 

「はっ……!!?」

 

 何とか立ち直ったが明らかに動きが鈍い、これは同期化が進んでいない時や人格強化(レベル)が足りない時とは違う……

 

『自我がどっちつかずになっている……?』

 

 今のドンキホーテはW社の人格を被っている、被っている間はほとんど完全にその可能性の人物となる。わかりやすく言えば囚人としてのドンキホーテは一時的に封印されているようなものだ。

 

 だけど今の状態はどっちも表に出ている、囚人でありW社の整理要員……両方の記憶と戦闘技術があるせいで混乱しているみたいだ。

 

 精神もかなり不安定に見える、緊急時ならともかく……今は使うべきじゃないみたいだ。

 

 グラン達のお陰で大罪は倒せた、私は人格を解除するとドンキホーテの傍に寄り肩を貸す……鎧のせいで重い! 

 

『ドンキホーテ、大丈夫!?』

 

「う……何だか……気分が優れぬようだ……記憶も、曖昧である……」

 

 幸いと言うべきか、人格の記憶が残ったりはしていないみたいだ。

 

「おいおい……声の姉ちゃん大丈夫か?」

 

精神が不安定(精神力減少)になっていますね……それに戦闘技術にも影響(攻撃レベル・攻撃威力減少)が出ていました、ダンテ、都市の人格の使用は最後の手段にしましょう」

 

『うん、そうだね……』

 

 次の戦闘ではドンキホーテを休ませよう、そう思いながら奥へ進んで行くとまた騎空艇から声が聞こえてくる。

 

 

 

『俺は騎空士としての才能は無いみたいだった、名前も知らない様な騎空団に入って毎日船の清掃や雑用をやらされていたがそれでも俺は満足だった……いや、満足と思い込むしかなかった』

 

 

 

『いつか見た親父の背中を越えるんだって、ずっと夢を見ていた』

 

 突然、レスカーとは違う声が騎空艇から聞こえてくる。

 

『なあ最近入ってきた新人だけど、いつまで雇ってるんだ?』

 

 

 

『戦闘も出来ねぇ料理も出来ねぇ、掃除も甘いわ雑用も今一つ。ハッキリ言ってあいつは向いてねぇだろ?』

 

 

 

『今は人員が足りないんだ、猫の手でもスライムの手でも借りないとやっていけないさ』

 

 

 

『はぁ……俺らも堕ちたもんだぜ』

 

 

 

『言っていろ、いつかお前達を超える存在になってやる──────そう思っていた』

 

 また、違う声が聞こえてくる。

 

『新しく入った新人だ、レスカー。この船での事教えてやれ』

 

 

 

『よ、よろしくお願いします!』

 

 

 

『そいつは素直な奴だった、俺の言葉は素直に聞いてちょっとした冗談も本気にしちまう「イイヤツ」だった。俺も少しの間だけこの劣等感を消すことが出来た。ほんの、少しの間だけ』

 

 

 

 また声が途切れてしまった。

 

「……なんだか、暗いです……」

 

「……先に進もう、彼を止める為にも……」

 

「はい、ねじれを止める為には最奥まで行き制圧する必要があります」

 

 私達は奥に進む、進めば進むほど敵は強くなっていくがグラン達の力はそれ以上の様で気が付けば最奥の手前まで来ていた。

 

 

『その日が来たのは早かった』

 

 

 

「あ、また声が……」

 

 

 

『どうも新人は天才だったようで、気が付けば戦闘でも、料理でも、全てにおいて俺を上回っていた』

 

 

 

『いつの間にか俺の仕事から新人の教育は消えていた、新人は俺に変わらず接してくるがそれを見た周りの視線は俺を憐れんでいるようだった』

 

 

 

『あいつは天才だっただけだ、そう思ってまた床を磨く日を過ごしているとまた新しい新人がやって来た』

 

 

 

『団長が新人を紹介している中、俺はまた仕事を教えるのかと思い一歩前に出ていた』

 

 

 

『そして団長が名前を呼んだのは、俺ではなく先日まで新人だったヤツだった』

 

 

 

『周りの目はもう、俺を見ていなかった』

 

 

 

 最奥に辿り着くとそこは騎空艇の甲板だった。

 

 グランとドンキホーテ達が武器を構えるとねじれたレスカーは口を開く。

 

『俺は……騎空団になりたかったんじゃなかった……ただ親父の様に誰かの為に、誰かの人気者になりたかった……』

 

『だけど、人気者どころか誰かに疎まれる、どれだけ努力しても、それを見られなければただの……!』

 

「来るであります!」

 

 ねじれたレスカーが翼を広げると無数の砲台が顔を見せる。

 

 ラカムとグランが前に出ると武器をそれぞれ構える。

 

 私もファウストに指示を出す。

 

 次の瞬間、無数の砲台から無数の砲弾が放たれる。

 

「そうらよっ!!」

 

 ラカムとグラン、ファウストがそれに合わせるように攻撃し砲撃を落としていく。

 

「もうその手は効かねぇよ!!」

 

「皆さん! 私が落とします!」

 

「ルリア……わかった!」

 

『え?』

 

 ルリアが手を前にかざすと胸のあたりが輝き始め……グランもルリアに手を添える。

 

「始原の竜、闇の炎の子……「汝の名はバハムート!!」」

 

 二人が手を天に挙げると天を貫く様に巨大な黒龍が飛び出し、ねじれたレスカーを異常な太さの光線が焼き尽くした。

 

『マジ……?』

 

 ねじれたレスカーはその威力を恐れたのか地面へ潜ってしまう。

 

「あ、また潜っちまったぜ!」

 

「皆離れてくだされ! ここは当人が……」

 

 ドンキホーテが何か思いついたのか、私達を後ろへ下げると四つん這いになり────―

 

「やい!!!!!!!!! 当人はここでありまするぞ!!!!!!!!!!」 

 

「うひゃあっ!?」

 

『!?』

 

 地面に向かって叫んだドンキホーテの凄まじい声量に全員が耳を塞ぐと、地面から苦しそうに飛び出したねじれたレスカーがバタバタと地面を転げ回っていた。

 

「な……成程な……音で叩き起こしてやろうって訳か……ただ先に言って欲しかったけどな……」

 

「と、当人は狙いをこちらに向けて迎え撃とうとしていたのでありますが……」

 

『と、とにかく今がチャンスだ……!』

 

 空も地中も封じられた中ではどうする事も出来なかったのか、全員でねじれたレスカーを叩きのめすと──────

 

 

 

『ああ──────もっといい道があっただろうに──────』

 

 

 

「あ、見てください! 景色が……」

 

 心象が揺らめき、徐々に空間が崩れていく。

 

 そうして気が付けばポート・ブリーズに戻ってきており、レスカーも元の姿に戻っていた。

 

「元の姿に戻ったでありますか?」

 

「うん、そうみたいだ」

 

 ……今までのやり方であれば心を持ち直させたり、外部要因であるモノリスを操作したりする必要があったんだけど……

 

『問題を解決できたと思っていなかったけど、このねじれは制圧するだけで元に戻るみたいだね』

 

「恐らく、都市に由来するねじれとは違うものだと推測されます」

 

『そういえば、今回彼がねじれたのもあの星晶獣っていう女の子が原因っぽかったし……』

 

「はい、ですが現状は限りなくねじれに近い何かとしか言えませんね」

 

 こうしてポート・ブリーズでの事件を解決し、ドンキホーテとも合流出来て収穫の大きかった一日だったが同時に謎も増えた日だった。

 

 暫くして……

 

 

「それでは! 自分はこの辺りで戻るであります!」

 

 シャルロッテはやる事がまだあると言い、ドンキホーテが名残惜しそうにしていた。

 

「当人は……っ! リュミエール聖騎士団を脱退しても其方らの志は胸に深く刻むでありまする……っ!!」

 

『元々こっち側なんだけど』

 

「また何かあればグラン殿達の下へ駆けつけるであります! それまで暫しのお別れであります」

 

「ありがとう、シャルロッテさん」

 

「シャルロッテ殿ぉぉぉぉぉ……!!!」

 

 まだ泣いているドンキホーテを引っ張って、私達はグランサイファーに戻る事になった。

 

「では、まだ当人とファウスト君以外行方不明なのであるか!?」

 

『うん、何とか早く見つけたいけど……』

 

「うむ……しかし当人はリュミエール聖騎士団にいる間、皆の事はとんと聞かなかったのである」

 

『予想はしてたけど、やっぱりそう簡単にはいかないか……』

 

「まあ気を落とすなって! これでもオイラ達結構顔が広いんだぜ?」

 

「きっと、他の仲間の人達も見つかりますよ!」

 

 ビィとルリアが励ましてくれる。

 

『二人とも、ありがとう』

 

「あ、今ありがとうって言ったか? へへっおいらも少しだけわかってきたぞ!」

 

 悩んでいても仕方がない、今は新しい仲間が出来てドンキホーテも見つけることが出来た。もっと前向きになろう。

 

「そろそろご飯の時間だぜ! オイラのおススメのメニューを教えてやるぜ!」

 

「ほほう! それは是非食べてみたいでありまするな!」

 

「ダンテさんも一緒にお話ししましょう!」

 

『わかった、今行くよ』

 

 囚人達にねじれに星晶獣……

 

 心配事が多い冒険だけど、ほんの、ほんの僅かな欠片だけ、私はこの旅を楽しみにしていた。

次は誰を探そう……

  • イサン
  • 良秀
  • ムルソー
  • ホンル
  • ヒースクリフ
  • イシュメール
  • ロージャ
  • シンクレア
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