蒼い空と時計ヅラ   作:月時計

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「ここではリュミエール聖騎士団隊員ドンキホーテについてもう少し掘り下げられる」

 ドンキホーテと合流してから少し、私は一度面談をする事になった。

 

『バスの中での習慣を少しはやっておいた方がいいと思ってね』

 

「そうであるか! ならばいつもの通り面談をしようではないか!」

 

 ドンキホーテはヴェルギリウスの面談と違って私との面談は嫌ではないみたい。

 

『そういえば聞きたかったんだけど……リュミエール聖騎士団にいる間は何をしていたの?』

 

「おお! よくぞ聞いてくださった! では当人の清く! 正しく! 高潔な冒険談を聞かせようではありませぬか!」

 

 ~リュミエール聖騎士団本部、医療室~

 

 ドンキホーテはデリフォード、メリッサベルと別れた後シャルロッテ達に連れられてここ、リュミエール聖騎士団の医療室で治療を受けていた。

 

「……はい、これで大丈夫ですよ。高所から落下したらしいですが幸いにも骨折などはありません」

 

「……かたじけない」

 

「落ち着いたでありますか?」

 

「う、うむ……」

 

 謎の空を飛ぶ船で移動し、耳や角の生えた人間から治療を受け、今目の前にいる幼い少女からは実力者の気配がする。

 

 如何に勢いで生きているドンキホーテでも、ここが都市では……少なくとも知っている区ではない事を察していた。

 

「その、其方らに聞きたいのだがここは一体どこであるか?」

 

「ここは自分とセワスチアンの所属するリュミエール聖騎士団の本部であります」

 

「リュ、リュミエール()()()()!?」

 

「おや、知っているのですかな」

 

「いや、知らぬ! 知らぬが……」

 

 ドンキホーテは12人の囚人の中でも誰よりもフィクサー(便利屋)に憧れる囚人だった。

 

 そんなドンキホーテがこれほどの規模のフィクサー協会及び事務所を知らない筈がない為、ドンキホーテがここを全く未知の場所と理解するのに時間はかからなかった。

 

 だがそれはそれとして聖騎士団という甘美な響きをドンキホーテは聞き逃さなかった。

 

「そのぉ、リュミエール聖騎士団とは一体どのような事をしている者達なのであるか……?」

 

「よくぞ聞いてくれたであります!」

 

 シャルロッテはそう言うと良い感じの箱の上に立ち仁王立ちをする。

 

「リュミエール聖騎士団は「清く、正しく、高潔に」をモットーとした、力なき者を救済する騎士団なのであります!!」

 

「…………!!!」

 

 後光が見えていた。

 

 ドンキホーテはフィクサーに憧れていたが悲しいかな、都市という世界は余りにも善の正義を持つには厳しい世界だった。

 

 だがここは、正義を掲げ、弱者救済を目指し、あまつさえそれを志す者がこれほどまでに多くいるというのか!! 

 

「ド、ドンキホーテ殿!?」

 

 気が付けばドンキホーテは仰向けに倒れていた。

 

 それどころか涙まで流していた。

 

「────―、見ていますか……ここに正義はありました……っ!!」

 

「感動しているようであります……」

 

「その! すまないが其方らの活動をもう少し知りたいのであるが!!」

 

「それでしたら、どうでしょうお嬢様、ドンキホーテ殿をリュミエール聖騎士団の見習いとなっていただくのは」

 

「爺や?」

 

「ただ言葉で私達の事を語るのは容易い事ですが、私の見た限りではドンキホーテ殿はリュミエール聖騎士団のモットーに沿った志を持っているご様子。それでしたら一度私達と行動を共にするのが早いかと」

 

「ほおおぉぉぉぉ!!! よ、よよよよろしいのであるか!?」

 

 シャルロッテは何かを考えるとドンキホーテに向けて一つ問う。

 

「そうだ、ドンキホーテ殿は確か人を探しているのでありますね?」

 

「うむ、当人の所属するリンバスカンパニーの仲間達とその管理人であるダンテ殿を見つけなければならないのだ」

 

「それなら、ドンキホーテ殿をリュミエール聖騎士団の極秘任務、リンバスカンパニー隊捜索の特別臨時隊員として貴殿を起用するというのはどうでありますか?」

 

「そうですね、少々屁理屈ですが、それであればドンキホーテ殿は組織を抜ける事無くリュミエール聖騎士団に所属する事が出来るでしょう」

 

「で、ではそれで!! それでお願いしまする!!」

 

 ~現在~

 

「そうして! 当人はリュミエール聖騎士団の隊員となったのである!」

 

『そうだったんだ、それじゃあその鎧もその時に?』

 

 私はドンキホーテが未だ着続けている鎧を指した。

 

「うむ! これは当人がリュミエール聖騎士団の臨時隊員として活動する事が決まった時に支給して貰ったのである!」

 

 ~リュミエール聖騎士団 装備保管室~

 

「シャルロッテ団長! 戻っていらしたのですか!」

 

「少し良いでありますか? 新しい団員に合う鎧を支給しなければならないのでありますが」

 

「団長自らですか、わかりました。では採寸を行うので貴方はこちらに」

 

「うむ!」

 

 意気揚々とついて行くドンキホーテを見送ったシャルロッテはセワスチアンを見る。

 

「爺や、どう思うでありますか?」

 

「そうですね、まずドンキホーテ殿の言葉に嘘はないと思われます。ですが何かを隠しているのもまた事実かと」

 

「何を隠してると思うでありますか?」

 

「実力、素性、演技でしょうか。素性は当然でしょう、自らを守る為でもあるでしょうし私達を信じすぎない事も大事な事です」

 

「実力もでありますな、少なくともドンキホーテ殿はただの騎空士ではないと思うであります……では演技とは?」

 

「ふむ……これは断定出来るものでは無いのですが……ドンキホーテ殿の、言ってしまえば大袈裟な所作は誰かを演じているのではないかと」

 

「素性を隠す為でありますか?」

 

「いえ、あれは素性とは別の目的があるように思います。ですが決して悪意のあるものでは無いでしょう、あの方の正義感は本物のようですし問題は無いかと」

 

「ふおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」

 

 そこまで言った頃、部屋の奥からドンキホーテの声が聞こえ、程なくして重鎧を身に纏ったドンキホーテが戻って来る。

 

「おやおや、随分と重装備ですね」

 

「当人の思い描く騎士といえば! 分厚い鎧を身に纏い!! 正義を掲げ弱き者をその身で受け止め救う事となれば!!」

 

「ドンキホーテさんのランスは思い出があるようなので、上からコーティングをするようにしました」

 

「これでドンキホーテ殿も我がリュミエール聖騎士団の団員でありますな!」

 

「リュミエール聖騎士団の団員……! ふっふ~んふふふ~ん♪」

 

 感涙したドンキホーテはうきうきと鏡を眺め様々なポーズを取っていた。

 

「それではドンキホーテ殿、お嬢様と一度手合わせなどは如何ですかな?」

 

「ふふふ~、ん? 手合わせであるか?」

 

「うむ、貴殿のランスを見たのでありますが、大小さまざまな傷がついていたであります。ただ振るっただけではつかないような色々な経験をしてきたとみて、騎士としても一度手合わせをしてみたくなったのであります!」

 

 シャルロッテは剣を手に取ると地面に刺す様に持ち、その小さくて大きな威厳を映し出した。

 

「おお! 騎士たるもの決闘は受けなければ!!」

 

 ドンキホーテもランスを持ち準備万端と言った様子だった。

 

「では、訓練場に向かいましょう」

 

 セワスチアンの案内に従い訓練場に向かうとそこにはちらほらと他の団員達が訓練をしていた。

 

「シャルロッテ団長! お疲れ様です!」

 

「お疲れ様であります、少し訓練場を借りたいのですがいいでありますか?」

 

「は、はい! 勿論ですが……団長がここを訪れるのは珍しいと感じたもので……」

 

「新しく入った団員と手合わせをしようと思っているのであります、失礼するであります!」

 

 そう言ってシャルロッテは訓練場に入って行くと、そこで訓練をしていた団員達はにわかにざわめき出す。

 

「シャルロッテ団長だ……」

 

「団長がどうしてここに?」

 

「さっき聞いたけど、新人と手合わせをするらしいぜ」

 

「マジか? 羨ましいような、ご愁傷様なような……」

 

「そこは羨ましいだろ! ……って、新人ってあいつか?」

 

 そして遅れて入ってきたドンキホーテに団員達はまたざわめき出す。

 

「見た事ない奴だな……ヒューマンか」

 

「随分と重装備だな……それになんだあの槍?」

 

「デカいな……あれでまともに動けるのか?」

 

「ドンキホーテ殿、準備はいいでありますか?」

 

「うむ! いつでも良い!!」

 

「では、僭越ながら私が審判を務めさせていただきます」

 

 セワスチアンが両者の間に入ると審判としての判断を行う。

 

「リュミエール聖騎士団団長! シャルロッテ・フェニヤ! いざ参るであります!」

 

「リュミエール聖騎士団 ドンキホーテ!!! いざ、参る!!!!!」

 

 ドンキホーテはランスを構えると愚直に突進する。

 

 それに対しシャルロッテは軽やかにランスを避けると返す様にドンキホーテを斬りつける。

 

「ふぅんっ!!」

 

「!」

 

 それに対しドンキホーテはランスの軌道を無理矢理曲げ、シャルロッテの大剣を弾き返す。

 

「うおぉマジか!」

 

「あの新人どんな筋肉してんだ!?」

 

 小柄な上に重装備なドンキホーテが見せた動きは多くの団員を盛り上げた。

 

「はっ!」

 

 今度はシャルロッテが先手を仕掛ける。

 

 自身の背丈を利用し低い軌道からの切り上げがドンキホーテを狙う。

 

「甘いのである!!」

 

 それに対しランスを斜めに構えると滑らせるように切り上げを受け流し、そのまま体を一回転させながらランスを突き刺す。

 

「なんの!」

 

 シャルロッテは高く飛び上がり突きを躱すとそのまま上段からの縦斬りを狙う。

 

 ドンキホーテはそれを後方へ飛ぶことで位置をリセットすると、訓練場は闘技場かと思う程の歓声が沸き上がる。

 

「あの新人団長と渡り合ってるぞ!」

 

「一体どこでスカウトしたんですか団長!!」

 

 歓声が沸き上がる中、シャルロッテは思案する。

 

「(ドンキホーテ殿、思っていた通り強いでありますが……鎧を着ているのとは違う鈍さを感じるであります……手加減しているのではく抑圧されている……?)────―ッ!」

 

 再び繰り出された突きを躱し意識を目の前に戻すとシャルロッテは連撃を放つ。

 

 それを一足で避けると三度二人の位置が戻る。

 

 そしてドンキホーテが足に力を溜めると突然声を張り上げる。

 

「走れロシナンテ!!」

 

 その目は爛々と輝き今までの突撃とは違う勢いにシャルロッテは迎え撃つ決意をする。

 

 その剣を上に掲げると魔力の力か、剣が淡く輝き始める。

 

「リュミエールの名の下に! ブリリアントムーン!!!」

 

 シャルロッテは自分ごと剣を縦に回転させ突進し、ドンキホーテを迎え撃つ。

 

 走り続けるドンキホーテは、ふと足下に違和感を覚えるとドンキホーテは片方の靴ひもが切れている事に気が付いた。

 

「あっ!!?」

 

 恐らくシャルロッテの連撃を避けた際に切れたのだろうと思わずランスを手放し靴紐を抑える。

 

「えっ!?」

 

 突然ブレーキをかけランスを手放したドンキホーテだったが、既に回り始めていたシャルロッテが止まる事も出来ず。

 

「ぐふぅぁぁぁぁ!!!!??」

 

 腹部に凄まじい勢いで突撃したシャルロッテは、ドンキホーテを壁まで吹き飛ばし気絶させてしまった。

 

「や……やってしまったであります……」

 

 ~現在~

 

『そ、それって……!』

 

「い、いや!! 当人は気絶してしまったがその間ロシナンテを外す事も無かったため問題は無い!」

 

『……ならいいけれど、グラン達もいる以上ロシナンテについては今まで以上に気を付けること!』

 

「うむ……肝に銘じまする……」

 

「ダンテ、規定の面談時間を過ぎていますが」

 

『あ、ああごめん。それじゃあドンキホーテ、ちょっと雑談みたいだったけど面談はここまでにしようか』

 

「うむ! それでは当人は部屋に戻りまする!」

 

 ドンキホーテは意気揚々と部屋に戻っていくのを確認するとファウストは部屋の前で立ち続けていた。

 

『……あれ、ファウストは面談しないの?』

 

「その予定でしたが、グランから報告があったのでそちらを優先します」

 

『報告?』

 

 ファウストは一枚の写真を私に見せて来た。

 

「囚人を一人、発見されたそうです」




 白竜騎士団 ひよこ班 ドンキホーテ
 ──────────────────────────────
 白竜騎士団 ドンキホーテ!! 正義の為にこの剣を振るおうぞ!!! 
 ──────────────────────────────

「ようしここまで!」

 憧れの白竜騎士団に入って、入団試験の為ひよこ班として訓練生になった子供は基礎訓練としてひたすら筋トレをして、ばてた状態で走らされていたんだ。

「はぁっはぁっ……ふぅ!」

 入団試験には筆記試験や面接があって子供は難しい顔をしていたけど、単純な分子供にはこっちの方が性に合っていたんだ。

「おっ! ドンキホーテはまだ走れそうだな?」

「も、問題ないでありまする……!」

「ぼ、僕はもう……限界です……」

「シンクレア君! 諦めずに立ち上がるのである!! 班長についていけば当人達は必ずや輝く騎士になれるであろう!! ……ゲホッゲホッ」

「あーあー、そんな声を張るから……ほら、水!」

「か、かたじけない……」

 水を飲んだ子供は長く息を吐くとようやく一息つくの。

 ずっと基礎訓練ばかりをやっていて同じ班の仲間からは少しずつ不満が漏れたりもしていたけど、

 子供はずっと目を輝かせていたの。

 そしてそうやって鍛えた努力は思わぬタイミングで発揮されたの。

「はぁっ!!」

 白竜騎士団の最終試験の登山中、骸の魔物が自分達を襲い掛かった時子供は恐れずに魔物達を切り伏せていったの。

「皆! こっちである!!」

 受験生たちを先導する子供はまだまだ技術は未熟だけど……

 その姿は他の受験生を鼓舞するには十分だった。

「よかった……ここまでくれば……」

「うむ! では当人は班長達の助太刀に向かうのである!」

「はぁ!? 正気か!? 俺達受験生がいった所で何が出来るんだよ!!」

 受験生の一人が怯えた声で抗議する。

「何ができるかはわからぬが……当人は騎士を目指すのである!! 誰かを守るのが騎士であろう!!」

 子どもは毅然とした態度で吼えた。

「当人は行きまする、怪我をした者は治療を!!」

 そう言うと子供は剣を構え、魔物達へ向かって行ったんだ。

 守られるのではなく、守る為に。

次は誰を探そう……

  • イサン
  • 良秀
  • ムルソー
  • ホンル
  • ヒースクリフ
  • イシュメール
  • ロージャ
  • シンクレア
  • ウーティス
  • グレゴール
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