蒼い空と時計ヅラ 作:月時計
この戦いにグランは苦戦していた。
何故? 敵が強いから?
違う、今までも途方もない存在と戦って来たが仲間との力でどうにかしてきた。
相手が未知の敵だから?
違う、未知の敵と戦うなど何度だって経験してきた。
では、自分自身だから?
新たに仲間になった団員ダンテ(正確には彼の言葉を代訳したファウストの言葉だが)が言っていた。
彼の世界では大罪とねじれという存在がいるのだと言う。
彼は自分達にもわかるようにかみ砕いて説明してくれた。
曰く、彼の世界では心に大きな揺らぎ(心が折れたりする事らしい)が起きると怪物に変化してしまう可能性があると。
曰く、怪物はねじれと呼ばれ、星晶獣の様な不可思議な力を使うと。
曰く、ねじれになれなかった
グランは一度大罪と戦っていた、ポート・ブリーズで起きた事件で名状しがたい化け物達と。
それ故心のどこかで油断していた、自分達でもなんとかなる程度の敵だと。
では……黒く染まり、ぼやけているとはいえ自分の姿を模したこの大罪は一体?
「ぐっ……!」
「グラン!!」
剣が交差した瞬間腹部に蹴撃が入り、ビィが悲鳴を上げる。
自分と全く同じ姿で、自分と全く同じ技を使う。
だというのにその力は自分より優れている。
これ程やり辛い事があるだろうか……
『マズい!! 嫉妬ファウストがEGOを使ってくる!!』
ダンテから明らかにいつもと違う音がする、確か大声というか、彼の感情が高ぶった時は大体あんな音を出していた気がする。
「……!」
それは長く戦って来た経験のお陰だった。グランは突進してきた嫉妬大罪グランを押し返すと大きく下がる。
だが既に遅かった、嫉妬大罪のファウストはウェディングドレスの様な美しい姿になるとグランに迫り──────
「これも受けてみよ!!」
いつの間にかグランの傍に移動していたドンキホーテが変わったデザインのハンマーで嫉妬大罪ファウストを吹き飛ばした。
その姿は魚を模したスーツを身に纏っていて、鏡が割れる様な音がした瞬間いつの間にか元の姿に戻っていた。
「あ、ありがとう……ドンキホーテさ────―」
「あ──────あああぁ」
ドンキホーテの様子がおかしい、いつもなら元気よく「うむ! 大事は無いか!」とでも返してくれるだろうに、頭を抑え苦しそうにしている。
「ドンキホーテさん! 大丈夫ですか!?」
あのままでは相手の標的になってしまう、グランは彼女を守る為前に出ようとするが。
『やっぱり不安定のEGOを使うとダメだ……! 全員退避!
「グラン、ロゼッタ、退避!」
こんな状況でも思わず珍しいと思ってしまう程、大声を出したファウストの声に反射的にグラン、ロゼッタは後方へ退避する。
その瞬間、嫉妬大罪のグラン、ロゼッタ、ドンキホーテは隙を見せたドンキホーテに一斉に飛び掛かる。
やられるとグランが考えた次の瞬間、ガラスの割れる音が聞こえ──────
『……ぶっ潰せ』
ノイズがかったドンキホーテの声と共に、嫉妬大罪達が
頭のない、巨大な手を持つ魚が金色の髪を被っていた。
「ドンキホーテさんが──────ねじれてしまいました……!?」
「いいえ、あれはEGO侵食です」
「エゴシンショク……ってなんだ?」
「詳細は後程説明しますが、今は味方の判別がついていないと思ってください」
その怪物は嫉妬大罪達を巨大な手で三人纏めて握り潰すと、大きく上に振りかぶり──────
『……』
地面に叩きつけた。
それも、一度や二度ではない。何度も、何度も、何度も叩きつけ、最後の叩きつけが終わると嫉妬大罪達は一様に血走った目玉とそれを覆う赤いナニカになって死んでいた。
「ぐぅぅ……」
いつの間にか、元に戻っていたドンキホーテは苦しそうに呻いていた。
『やっぱり不安定なEGOも使わない方が良さそうだ、精神の消耗が酷いし侵食後も後遺症が残っているみたい』
「と、当人は大丈夫でありまする……」
「とはいえ、お陰で四対一になったわ。後は私達に任せて」
『■■■■■■■■■■■──────』
あれは嫉妬大罪の断末魔だったのだろうか、けれど自分達を倒すのに同情はいらなかった。
危なかった……まさか嫉妬大罪が現れるなんて。
幸い、EGO侵食したドンキホーテがグラン達を狙わなかったお陰で勝てたけどこちらに狙いが向いていたら確実に敗けていた。
それに不安定なEGOを使うデメリットも把握できた、結果だけ見れば収穫は多かっただろう。
「ドンキホーテさん、大丈夫ですか?」
精神力が下がっているドンキホーテにルリア達が寄り添っている。
しばらくすればドンキホーテも持ち直すだろう。
『ファウスト、大丈夫?』
「問題ありません」
「こっちも大丈夫よ、急いで根を張るわ」
嫉妬大罪との戦いの直後だというのにロゼッタはイサン探しを再開してくれる。後で何かお礼をしようかな……
ロゼッタが再開し、ドンキホーテが回復してきた頃。
「──────見つけたわ、着いてきて」
森の一部が自然と開き始め、簡易的な道が生まれた。
「ようし! 今度こそイサンを助けようぜ!」
「うむ! 当人も準備万端! イサン君を取り戻そうぞ!!」
暫くして……
着いたのは一際大きな木、その中はくり抜かれており中から上を見上げれば階段がどこまでも伸びていた。
『この先にイサンが……』
「皆、行こう」
「! 待ってください! 星晶獣の反応です!」
「何ですって?」
星晶獣……私が思い浮かべたのはポート・ブリーズでの騎空士をねじれさせた少女の姿をした星晶獣だ。
もしかしたらイサンも……
私達はルリアの言葉に従い、慎重に木の中を登っていった。
「この木……オイラ所々部屋でもあるんだと思ってたんだけどよぉ……」
「階段しか無いわね」
半分ほど登った所だろうか、ルリアが一度足を止めた。
「あ……星晶獣の反応が消えました」
「まさか、イサン君がまたどこかに行ってしまったのではあるまいか!?」
『……とりあえず登ってから考えよう』
そして、私達が登りきると頂上は簡素な床板を張られていた。
床板には大きな葉が敷き詰められており簡易的なベッドの役割も模していた。
そこにはイサンが横たわっており、静かに目を閉じていた。
「イサン君……! まさか間に合わなかったのであるか……管理人殿、時計を回してくだされ……!」
「……」
ファウストはイサンの鼻をむんずとつまむ。
「──────ぶはっ……!」
『寝てただけみたいだね』
「……はぁ、はぁ……! ダ、ダンテ!」
苦しそうに起きたイサンは私を見ると嬉しそうに顔を綻ばせた。
「ダンテ……息災なりや?」
『私は大丈夫だよ、それより。一体何があったの?』
「……鏡の王とは邂逅せり?」
『会ったよ、直接襲ってはこなかったけど……』
「……私は鏡の王によりてこの島に攫われたり」
~少し前、無人島~
鏡の王は私を囚へども、それ以上何も行わず。
「其方……その風貌ねじれの特徴と一致すれど、何故この空の世界に存在す……」
「ねじれ……? ああ、成程……私の様な者の事を指すのですか……」
鏡の王は後ろより少女の姿をした星晶獣を連れてきたり。その少女は私に近寄りたれど襲い掛からず、まるで観察するようなり。
「私には母の御意向はわかりませんが母は何故か貴方の事が気になっている様で……貴方に暴れられては困るのでこのまま寝させていただきます」
「な……何……」
そこから記憶はあらず。
~現在~
『やっぱりあの時の星晶獣が関わってたんだ』
「私達がポート・ブリーズで遭遇した個体と特徴は一致しています」
「あの星晶獣、母と呼ばれているみたいだけど……」
「イサンさんに何もしなかったのよね?」
「ううむ……断定は出来ねど、身体に異変はあらず」
「団長さん達から聞いたけれど、ポート・ブリーズでは触れた人をねじれに変えてしまったのでしょう? 何故イサンさんには特に何もしなかったのかしら」
ロゼッタが気になる事を言ったが、残念ながら今ある判断材料だけでは推測できることは殆どなかった。
『……とりあえず船に戻ろう、イサンを取り戻せただけでも十分だよ』
「はい、一度帰還しましょう」
私達はファウストの声で船へ帰還するのだった。
暫くして……
「イサンなり、紹介は以上なり」
「……それだけか? もっとこう、好きなものとかねぇのか?」
「イサン君は意外とユニィクなのであるぞ、今のも自分の名前と以上(イサン)をかけて……」
「ド、ドンキホーテ譲……」
「色々ありましたけど、イサンさん、見つかって良かったですね!」
『うん、見つかったのは良かったよ』
色々と気になる事はまだまだあるけれど……
「ようし! そろそろ出発するぜ!」
今はイサンを取り戻せたことを喜ぼう。
……ん? 何か忘れてるような……
「……うぇ……はぁっ……はぁっ……」
「だ、大丈夫か?」
「問題……あらねど……」
「急いでティコさんの所へ行きましょう!」
『あ、イサン……船酔い酷いんだった』
次は誰を探そう……
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良秀
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ムルソー
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ホンル
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ヒースクリフ
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イシュメール
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ロージャ
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シンクレア
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ウーティス
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グレゴール