Villans File   作:Deluta_horidor

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File2:毒を喰らわば皿まで

 

 

 

とあるオークション会場、紳士淑女がひしめく会場を見下ろせるVIPルームに一人の女がいた。長い黒髪で右目には眼帯をしている彼女は反社会的組織【グランドロン】の幹部【多頭龍】の武器商人【夜刀神】である。

 

「…そろそろね。」

 

「予定通りに進めば約15分後に開始されます。お飲み物お持ちしましょうか?」

 

「ええ、お願い。気が利くわね。【アラクネ】。」

 

VIPルームのなぜか金色に輝く豪華な椅子に腰掛ける【夜刀神】の傍らに立つのは同じく【グランドロン】専属の暴力部隊【モンスターズ】の一員【アラクネ】。

【アラクネ】は【夜刀神】の護衛として今回のオークションに同行することなっていた。

 

「そういえば【夜刀神】様、今回のオークションでのお目当てはあるのですか?」

 

「今回は『喰血刀』かしらね。斬った生物の血肉や魂を吸い続けることで500年前から鋭さを保ち続けている妖刀…だとか。アンタもなんか欲しいものがあったら参加していいからね。金ならあたしが出すから。」

 

「お心遣いありがとうございます。ですが今回はお気持ちだけで充分です。業務に支障をきたす訳にはいきませんから。」

 

【アラクネ】は【夜刀神】からの誘いをやんわりと断りつつ、持ってきたワインをグラスに注ぐ。その時【夜刀神】の顔が一瞬険しくなる。視線が一般会場に向けられ、客一人一人を観察し、手元に置いてあった二本の刀を手に立ち上がる。【夜刀神】の様子に気付いた【アラクネ】がそれとなく質問する。

 

「チッ…アイツら…」

 

「【夜刀神】様、何か気になることが?」

 

「ええ。飲み物入れてもらったところ悪いんだけど、あたしちょっと出てくるわ。すぐ戻るつもりだから安心して。」

 

「…お待ちください。今日の業務は貴方様の護衛。私が先に行って見てきます。」

 

突然出ていくと言う【夜刀神】に【アラクネ】は偵察に出ることを伝える。【夜刀神】本人が出向く前に、自分が先に偵察に行くべきとの判断からであった。

 

「東のA番ドア側に仮面した人間数名、あたしと目が合って、うち一人は銃向けてた。あいつら…懲りないもんねぇ。」

 

先程自身と目が合った怪しい人物達について、【夜刀神】は【アラクネ】に警戒するよう伝える。

 

「了解しました。何分で制圧すれば?」

 

「面白そうだからあたしも行く。」

 

「はぁ…わかりました。」

 

今回【夜刀神】に牙を剥かんとしている輩の制圧について【夜刀神】に聞くがあろうことか自分も混ざりたいなどと言い始めたため、半ば諦めつつ返事をしVIPルームを後にする。

 

 

 

 

会場の廊下を歩く【アラクネ】の前に仮面を付けた人間数名が立ちはだかる。そのうちの1人が口を開ける。彼の仮面は取り巻きのそれとは形状が違い、まるでハチのような形状をしている。

 

「すみません。【夜刀神】さんに用があるのですが、通して頂けないでしょうか?」

 

「悪いが【夜刀神】様は取り込み中だ。それに「誰も通すな」と言われているからな。」

 

「そうですか…ならば仕方ありません。」

 

仮面の人間達に向けて一気に距離を詰める【アラクネ】に仮面の男は落胆しながらも銃を構える。同時に【アラクネ】が人間には到底視認することのできない速度で駆け出す。最初に立っていた場所にはコートのみが舞い上がる。

 

「話に聞いてはいましたが…なんという速さ、まさに「怪物」。」

 

仮面の男は冷静に【アラクネ】の突進を見切り、糸を切り刻む。

彼の銃はただの銃ではなく、銃口の先に鈍く光る刃が取り付けられた銃剣であった。

 

「…中々手練れのようだな。それはそうと、名乗りくらいはしたらどうだ?不審者。」

 

「失礼しました。私は【ホーネット】。『傭兵団【Venoms】』の名の元に、とあるリバイバーの収集及び【ハブ】…いいえ、今は【夜刀神】さんでしたね。その『始末』に参りました。【夜刀神】さんは我々【Venoms】の副団長だったのですが…ある日突然組織を抜けました。あることないこと喋られてしまっては困りますからね。」

 

仮面の男は自身を『傭兵団【Venoms】』の幹部【ホーネット】と名乗る。彼は恭しく頭を下げながら自身が来た経緯を話す。

 

「そうか。なおさら【夜刀神】様には会わせられない。悪いがお帰りいただこう。」

 

そんな【ホーネット】を【アラクネ】は一蹴し糸を再び張り飛び込む。

一瞬で距離を詰められ、【ホーネット】はたじろぐがすぐさま平静を取り戻し躊躇なく引き金を引く。ガキン。と音を立て弾かれた銃弾は地面に着弾する。しかし銃弾を弾かれることは折り込み済であった【ホーネット】は銃を持ち直し、手元のナイフと共に【アラクネ】に切り掛かる。銃剣とナイフの同時攻撃を【アラクネ】は再び糸を使い先の銃弾のように弾き返し、空いた土手っ腹に拳を叩き込む。

吹っ飛んだ【ホーネット】は空中で体勢を整え、銃剣とナイフを地面に突き立てて衝撃を殺しつつ着地をする。

 

「加減し過ぎたか…次は本気で叩き込…っ!」

 

「忘れていませんか?今回は私1人では無いんですよ。」

 

【アラクネ】の背後に3つの影が襲いかかる。先程までは影すらなかった【ホーネット】の取り巻き達だった。【ホーネット】1人なら対処可能だったがそれが突然4人に増えるとなると【アラクネ】と言えども他勢に無勢であった。しかし【アラクネ】の表情には諦めなどなく、むしろ微笑が浮かんでいた。

 

「まだ勝ち誇るには早いんじゃないか?」

 

【ホーネット】の取り巻きの1人に素早く糸を巻き付けた【アラクネ】はそのまま振り回して他の取り巻きへと叩きつける。まるで人間鎖鎌かのように叩きつけ、振り回され、あちこちにぶつけられた当人に既に意識は無く他の取り巻きも仲間を攻撃する訳にはいかず薙ぎ払われていった。ひとしきり暴れた後、振り回していた取り巻きを天井まで蹴り上げ糸で磔にしてしまう。

 

「さて、まずは1人。次は…っ!」

 

「同じ戦法をやらせるとでも?」

 

【アラクネ】がもう1人の取り巻きに糸を巻き付けるより早く【ホーネット】が銃を撃ち、それに続いて取り巻き達も拳銃を撃つ。

捌けない程の攻撃ではないが、3方向から弾丸が飛び交う中【アラクネ】は一転して攻められない状態となった。【ホーネット】達は既に【アラクネ】が格闘戦に長けていることを察し距離を取りつつ常に銃での攻撃を行っていく。3人の一糸乱れぬ連携攻撃により地道に、しかし確実に【アラクネ】を追い詰めていた。

 

(このままでは時間の問題か…それよりも夜刀神様の方は!?見失ってしまうようでは護衛失格だな…)

 

防戦一方な【アラクネ】の横を青い閃光が掠める。それは彼女の背後にいた敵の1人にまっすぐ突き刺さり、はるか後方に吹っ飛んでいく。

 

「全く…あたしを無視して楽しそうなことしてるじゃん。」

 

暗闇の中から【夜刀神】が歩いてきた。その右手には赤い鍔の付いた刀が握られており、蒼い左目は【ホーネット】を凝視しながら妖しくゆらめいている。

 

「貴女から始末されに来てくれるとは…【ハブ】さん?」

 

「その名で呼ばないでちょうだい、反吐が出る。あたしはアンタ達の所に戻る気は無い。勿論、始末されるつもりもないー

 

そう言うと同時に【夜刀神】は地面を蹴り【ホーネット】へと一直線に斬りかかる。

 

 

 

 

 

オークション会場ー地下倉庫

 

【夜刀神】と【ホーネット】の戦闘はもはやお互いの生死を賭けた

「殺し合い」へと発展していた。互いの目的のためどちらが先に相手を切り刻むか(強敵との死合)、または刺し貫くか(裏切り者の始末)。刀と銃剣が弾く音のみが響き、倉庫を悉く破壊していく。

 

「そろそろかしらね。あんた達、暴れる時間よ。」

 

「何を言って…っ!?」

 

突如口を開いた【夜刀神】を睨む【ホーネット】の横腹に鈍痛が走る。

意識外からの突然の攻撃に【ホーネット】は反応できず、吹き飛ばされていく。【ホーネット】はすぐさま体勢を整え、自分に突撃した「それ」を見やる。

 

「BRRRRRRR…!」

 

「何故リバイバーが外に…!一体何を…!?」

 

「別に。色々余計なものまで斬っちゃっただけよ。」

 

【ホーネット】に突撃した「それ」は体色の黒いスティルであった。

スティルは【ホーネット】に狙いを定め、息を荒げている。

【夜刀神】は自身の剣でリバイバーを閉じ込めていた檻を切り裂いていた。

 

「ホントはアンタを殺すまで戦りたかったんだけど…あたしの欲しかったものは誰かに盗まれちゃったらしくって。つまんないしオークション毎潰しちゃおうかなって思ったのよ。」

 

そう言うと【夜刀神】は自分の後ろにあるもう2つの檻も切断すると、出口の方へと歩き去る。

 

「ま、せいぜい楽しみなさいな。」

 

【夜刀神】が手を振りながら去ってしまう。そんな彼女と入れ替わるように黒いパキファロとゴヨケンが檻から現れる。

 

「BRRR…!」

 

パキファロが一声鳴くと、翠色の瘴気が迸る。それに共鳴するかのごとくスティルとゴヨケンにも翠色の瘴気が沸き立つ。

 

「本当に貴女と言う人は…とんでもない。」

 

【ホーネット】は去ってゆく【夜刀神】をただ見つめることしか出来なかった。

 

 

 

 

「今日未明、反社会組織「グランドロン」が関わっていると思われる違法なオークション会場でリバイバーが暴れ出す事件が発生しました。リバイバーが閉じ込められていた檻が何者かによって切断されていたとのことで、捜査を進めています。現場にはー

 

 

ラジオから先日のオークションについてのニュースが流れる中、【夜刀神】は【アラクネ】からの報告を聞いていた。

 

「…【夜刀神】様。盗まれた「喰血刀」を追跡した結果、犯人が判明しました。」

 

「ふーん?やっぱり盗まれたんだ、アレ。で、誰なの?盗んだ奴って。」

 

正直盗まれたもの自体に【夜刀神】は既に興味を失っていた。しかし、盗んだ人間がどんな人間なのか、仮に剣士ならばー死合うこともできるかもしれない。そんな期待を【夜刀神】は膨らませる。

【アラクネ】がパソコンからファイルを開き、データを読み上げる。

 

剣部族(トライバル・ソーズ)、血族全てが剣士の組織です。その幹部の1人、最年少にも近い少女。自身の背丈よりも巨大な剣を軽々と振るい、あらゆるものを破壊する。

 

 

 

 

 

 

「ふぅーん。これが「喰血刀」ねぇ?斬った獲物の血を吸って斬れ味を維持する刀…よくわかんないけどヒイちゃんに聞けば教えてくれるかな?考えても仕方ないしこの辺のリバイバーで試そ!」

 

 

 

 

 

 

付いた異名は【震天動地】、その少女の名は

 

ザイル・ソード。」

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