逸般通過元特殊部隊系お巡りさん5人組 作:ヴァルキューレ警察学校
『準備よし』
右耳にかけた無線のイヤホンからフブキの報告が流れた。
裏手へ回り全ての窓を確認したところ、窓部の至る箇所に罠が仕掛けられていたのを発見した彼女らは、突入予定の裏手口において多量の爆薬等を使用した罠が設置されていると予想。
鍵をピッキングしサイレントで入った途端罠が発動して小隊全滅は避けたかった。
そのためミラーガンで扉の内側を確認したいところであったが、ミラーガンを差し込む開口部がなく確認が出来なかったため、次点で候補としていたC2でドアと罠ごと吹き飛ばして間髪を入れずフラッシュバンを投入し突入する方法で突入することにした。
音は相当発生するため気づかれていることが前提のエントリーであり、激しい銃撃戦が発生する可能性が高い。
だがキリノの積極的な関係の構築を努めたチームは今や信頼し背を預け合えるほどであり、であるがため彼女らの作戦遂行能力は極めて高く、そしてその程度で躊躇するほど柔ではない。
ユナが盾を持ち拳銃を構えながらドアの右側に立ち、その後ろにはフブキが後方を警戒しながら後ろに立つ。
扉の逆サイドにはトモハが立ちその後ろにキリノとチヨが続き、チヨもフブキと同様に後方を警戒している。
キリノが身振りで閃光手榴弾を投げ入れる準備をするようトモハに、身振りで指示を出し、C2の起爆スイッチを握った。
とてつもない爆音と共にドアが開いたと同時に、ドア一面に仕掛けられていたトラップがさらに発動。
その爆発により、ドアが弾け飛んだ。
その爆発に圧力はいくらキヴォトス人であっても痛みで暫くは動けないほど。
そのような規模であっても、C2の起爆に巻き込まれない位置に控えていた彼女らは一切動揺せずに、トモハが閃光手榴弾を室内に投げ入れ閃光手榴弾が起爆したと同時に盾を持つユナが一番最初に突入と同時に、ユナが盾の脇から構えていた8号ヴァルキューレ正式拳銃を3発発砲。
9mmHP弾3発は、狙いにくい盾の脇からIRレーザーを使用してのサイティングにも関わらず寸分違わずに、小部屋の向こう側の廊下で短機関銃を腰ダメで待ち構えていた機械種族の男の顔面に綺麗にクリーンヒット。
余りの痛みと拳銃弾の着弾の衝撃でのけぞった所を、盾をち先陣を切ったユナの真後ろにくっつく勢いでエントリーしたチヨがさらに追撃でライフルで射撃し、今度は頭頂部に3発を命中させた。
髪の毛がある種族なら、着弾の衝撃でその部分だけ禿げる事が確定していただろうが、幸運にもその男は機械族で髪はないので、頭頂部のみっともない十円ハゲは回避できたのだった。
その代わりにあまりの痛みで悶絶はしているようだが。
部屋内の待ち伏せがいない事を確認し、一番最初の小部屋の掃討が終了した。
「KSPDだ!銃を捨てろ!手を挙げながらこっちに来い!」
頭部分に拳銃弾3発と小銃弾3発がぶち込まれれば流石のキヴォトスの住人といえどもその痛みは強烈であり、抵抗の意思は空の彼方へ吹っ飛んでいたのだった。
痛みに耐えながら大人しく銃を手放して手を挙げながらにじり寄ったその男を、キリノが腹這いにさせて手を後ろに回させプラスチック製の簡易手錠をかけた。
『容疑者1名を確保』
報告を無線で行うと元の場所に戻り、全員が突入準備を整えた事を確認すると息を合わせて廊下へ突入と同時に発砲音が響く。
廊下の右サイドから犯人らが銃撃を仕掛けてきたのだ。
だが彼女らは動揺せず、一番被弾するであろう一番の先頭で突入したユナが防弾盾で銃撃を防ぎ、拳銃でカバリングファイアで頭を抑える。
そしてユナにピッタリくっつくほどの勢いで突入したトモハが正面の廊下を警戒、次に突入したフブキが応射をしながら壁の影へ隠れる。
「痛っ!」
「チヨ、後方の警戒維持!」
キリノはこのまま突入すると小隊の邪魔になると判断して突入を取りやめ部屋の出入り口から右サイドの銃撃に対応する事とし、チヨにそのまま後方の警戒維持をするよう指示した。
右サイドからの3人の犯人からの銃撃に対応していた彼女らに、更なる犯人の増援が来た。
キリノらからみて正面の廊下へ向かって走ってきた2人の容疑者は、角を曲がり銃を向けたと同時に頭に強い衝撃を受け仲良く気絶した。
正面を警戒していたトモハが、無警戒にも身体を曝け出した容疑者に的確に頭部分に命中させたのだった。
「容疑者2名ダウン」
その間にも右側の容疑者3名とのの銃撃戦は続いている。
キリノが索敵をしようと頭をうっかり出した1人に的確に3発の5.56mmJHP弾を命中させ、フブキがユナの拳銃のリロードの時間を稼ぐためにカバリングファイアをした際に偶然で当てた1人を無力化した。だが、容疑者側も追加で5名が来ており、現時点のまま打ち合いを続けるとこちらの弾薬がなくなってしまうと考えた。
今彼女らが突入しているのは容疑者の拠点であり、数の上でも補給の面でも有利であるため、キリノが銃撃戦を続けながら打開策を出すしかなかった。
それは戦力を二分し、遊撃させて右サイドの容疑者を挟撃するというものであった。
『これではジリ貧になる、先に廊下をクリアしよう。ユナは現在地を維持。トモハはフブキと共に廊下を迂回、右サイドを掃討。後方は外の公安局に任せてチヨは12時方向の廊下を警戒』
『了解』
『了解しました』
『りょーかいっと』
ここでもけだるそうな返答をしたフブキが、そうとは思えないような動きで中腰になりながらトモハの後ろにつき、彼女の右肩に左手を置き右手でライフルを構えながら二人で警戒し進んでいく。後方を警戒したチヨが振り返りユナとトモハ、フブキらの後方安全を確保するため前方の廊下を警戒、キリノはユナと共に継続して右サイドの銃撃戦に対応したのだった。
キリノはフブキらが廊下の角を無事に曲がり、フブキが後方の警戒のために背中合わせで進んでいくのを確認すると右サイドから相変わらず撃ってくる容疑者らに眉をしかめる。
KSPDのSWATは射撃能力が平均して極めて高く、全員が顔面に三発当てるというような狙撃手のような芸当を当たり前のようにする集団だ。
つまり身体をさらせばほぼ必中の弾丸が飛んでくるわけだからたまらない。しかもうっかり顔や頭を見せれば一周で打ち抜けれ昏倒するのは、先に無力化された二人を見ても明らかだった。
つまり。銃だけを壁から出して適当に撃つ、いわゆるブラインドファイアだった。
それが銃弾がなくなれば後退して撃つという、どこの桶狭間かと聞きたくなるようなことをし始めたのだったから厄介であったのだ。
銃本体を狙おうにも、跳弾やどこに飛んで来るかわからないめくら撃ちで、狙うのすら難しかった。
そのような状況であるからこそ、戦力を二分し迂回させて無力化が最善の手であった。
一方のトモハとフブキは廊下を警戒しながら進んでいたところで、廊下の向こう側からとは別の発砲音を聞きとった。
今も公安局捜査員と打ち合っていると思われる正面方向の部屋であった。
『フブキ、この廊下一帯のドアにドアジャマーを』
『トモハりょーかい』
フブキがジャマーを取り出して仕掛けては前進して、次のドアをしかけては前進を繰り返す。
トモハとしては、敵がいると思われる部屋から出てこられると厄介だと考えたからだった。
もちろん後ろのフブキを信用していないわけではない。SWATとしてやっていけているのが何よりの証明である。
だが、いかなるSWATとも言えども、一気に襲われればひとたまりもない。こちらに気が付かれて容疑者が一斉に出てきたとして、フブキは一度に3人くらいであれば無力化はできるし対処もできる。もちろんトモハもできるが、それ以上となると被弾の1発はするし、それ以上ともなると数に押され対処が難しくなる。
もちろん他の仲間がいれば問題ないのだが、今は二人のみのため万全を期する必要があったのだ。
そして、キリノたちが撃ち合っている右サイドにでる廊下の角まで到着すると、トモハはここで無線を入れる。
『キリノ隊長、3カウントでフラッシュを投げ入れる。注意を』
『了解、こちらもフラッシュを合図で投げ入れる』
現在チヨが正面廊下を見ており、そして正面方向廊下に面したドアには簡単に開かないようドアジャマーを設置し後方からの奇襲をなくしたため、フブキは再度トモハの肩に手をかける。
その感触を確認したトモハは一瞬だけ顔をのぞかせて索敵した後、フブキに左手で手榴弾を持つようなハンドサインで指示する。
そのハンドサインはいつもの訓練で多用する、フラッシュバンの投擲を指示するハンドサインだった。
フブキは右手でライフルを持っているため、左手で黙ってベストからフラッシュを取り出し、いつでも投げれるようピンを口で加えて引き抜く。
『3』
『2』
『1』
『Initiate』
トモハの合図とともにフブキが左手でフラッシュバンを下手に投げる。
そのフラッシュバンは角から容疑者が固まっていると思われる方向へ投げ入れ、一度壁に当たった後さらに転がっていき、そのフラッシュバンは結果的に犯人の近くに転がった。
さらにトモハが開始の合図をコールしたと同時にキリノもグレネードランチャーでフラッシュバンを発射。
次の瞬間、バカでかい音ともに爆光が犯人たちを包んだ。
訓練でバカスカフラッシュを投げ入れてまくって慣れているキリノらとは違い、犯人らはフラッシュに慣れていない。
目がくらみ、思わず耳をふさごうとして銃を取り落とした5人の容疑者に対して、フブキとトモハが角からライフルで射撃。
わずか数秒の間に5人の容疑者を無力化したのだった。
『容疑者5名無力化』
『了解、そちらに合流する』
キリノが出入り口から身を晒し先行、チヨが後ろに控え、後方に盾を持ったユナが後方を警戒し一列で移動しトモハ、フブキと合流したのであった。
そうして彼女らは、遂に各部屋のクリアリングを始めたのだった。
公安局長のカンナは突入していったSWATを案じながらも、正面における戦闘の指揮をとっていた。
SWATが突入した直後の爆発音は、銃撃戦が激しい正面側からでも聞こえたほどどでかい音であり、何しろ地面が揺れるほどであった。それに彼女は肝を冷やしたが、直後に無線からの容疑者1名無力化の旨の報告が直ぐに上がってきた事で、彼女らが無地であることが窺い知ることができた。
更に暫くすると、無線で次々と容疑者無力化の報告が流れてくる。
そして待ち望んでいた情報がカンナの無線から流れてきたのであった。
『23A、容疑者2名無力化。公安捜査員2名を保護』
だが突入した捜査員は4名であり、まだ2名は残っている。
かれこれ正面での銃撃戦は1時間半を超えているが、SWAT の彼女らには正面と裏を押さえて欲しいとお願いされているがこちらの手持ちの銃弾も少なくなっている。
SWATの装甲車に積まれていた銃や弾薬を貸してもらいはしたがが、相手の方が多く撃ち返してくる。
弾薬の量で言えば相手側が多いのだろう。
暫くすると左側部屋の窓からの銃撃が、眩い閃光が見えたと同時に止んだ。
『20A、容疑者6名を無力化』
彼女らが部屋に突入していくたびに迸る閃光と同時に止む銃撃に、この事件が収束していると感じるほどであり、鮮やかな制圧であった。
そしてまた暫くすると、一番最初に捜査員が落ちたという地下部分に彼女らが突入するという事が無線から流れてきた。
そして暫くすると、銃撃戦の音が建物の中から聞こえたかと思えば直ぐに止み静寂に包まれた。
中からのキリノらからの容疑者無力化の確保報告が中々来ない。
何かあったのだろうかと思い、いざとなればカンナが先陣を切って突入する事を考え始めた頃のことであった。
『20A、容疑者3名を確保。公安局捜査員2名を発見、違法薬物の大量接種の症状あり、至急救急車を要請。コード4』
「な・・・・・・」
カンナは絶句する。勿論公安局の捜査員が違法薬物に手を染めていたというわけでは勿論ない。容疑者の手中に落ちた捜査員2名は容疑者らに証拠隠滅と称して多量の違法薬物を飲み込ませられたのであった。
いくらキヴォトス人であっても毒物、薬物には無力であった。
多量のオピオイド系薬物を摂取させられた彼女らは、今や生死の境を彷徨っている。