せっかくだから僕は物理で行く   作:宙の君へ

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たくさんの方に読んでいただいて驚きのあまり大横転してます。

感想も時間があまり取れなく返信出来ないかもしれませんが読ませて頂いてます。ありがとうございます。

皆さん、フィジカルつよつよゴリラ好きなんですかね



P03

経過観察

 

日付 4月9日

 

本日より『番外期生プロジェクト』が開始。全国から身寄りのない子供約1000人を対象にそれぞれに最も適した分野の特化教育を施行。以後、最終試験を通過するサンプルが採れるまで記録する。

 

追記

 

特になし。

 

 

日付 4月16日

 

『プロジェクト』開始から7日が経過。既にサンプル番号001~050番が脱落。158番、356番、745番に人格の発達が確認されたため再教育を実施。やはり適正のある、ある程度幼い子供でなければ特化教育の見込みなし。200~210番までカリキュラムを一段階引き下げ、経過を観察する。

 

追記

 

特になし。

 

 

日付 4月23日

 

前回の記録から7日が経過。前回再教育を施したサンプル達が脱落。101番、250番、666番、750番、800番が非常に高い身体能力を有している事が判明した。以上5名のサンプルを次の段階の特化教育への移行が決定。

 

追記

 

666番のみ生まれつき高い身体能力を持っていたようだ。おそらくギフテッドの類と思われる。そのため本プロジェクトとの親和性が高い可能性がある。

非常に興味深いサンプル個体のため要観察対象に認定。

 

 

日付 5月19日

 

前回の記録から40日が経過。666番のみ一次試験を好成績で通過。今回の試験でこのサンプル個体の視覚機能の異常性を確認。

この異常に発達した視覚機能とギフテッドが合わさる事で常人とは隔絶した運動性を発揮している模様。

以上のことから666番のみ、特別特化教育への移行が決定。

 

追記

 

特になし。

 

______________________________

 

 

 

お堅い学校と言っても、入学式はどこも同じようなもの。横で盛大に居眠りをかましている浅羽の面倒を見ながら偉い人のありがたいお言葉を頂戴し、無事に終了した。

そして昼前。一通り敷地内の説明を受けた後、解散となった。7、8割の生徒はその足で寮へと入っていく。残りは早くもグループを作っていて、カフェに向かう者や、カラオケに向かう猛者も。喧騒はあっという間に過ぎ去っていく。

ちなみにオレは、寮にいく前に強い興味を抱いていたコンビニに寄ろうと思っていた。

しかし、一人は寂しいものがある。

 

「・・・・・・・・」

「さっきからチラチラ見すぎ。なに?」

「・・・・・気付いてたのか?」

「まあね。で?なに?」

「いや、その・・・・・・・」

 

中々ハッキリしない綾小路を見て、浅羽は軽く笑って言った。

 

「あー、はいはい。どっか行く?」

「・・・・・・!」

「行きたいならそう言えばいいのに。どこ行く?」

「コンビニに行きたい」

 

察しのいい友達が出来て良かったと心底思う。

しかし、どうやって自分の視線に気づいたのだろうか。滅多なことでは気づけないはずだが。

 

「んじゃ行くか」

「ああ」

 

何とも不思議な男だ。

 

「・・・・・・嫌な偶然ね」

 

コンビニの中に入ると、すぐさま堀北と鉢合わせしてしまった。

 

「そんなに警戒するなよ。というか、お前もコンビニに用事だったのか」

「ええ、少しね。必要なものを買いに来たの」

「あれ、堀北だ。そっちも買い物?」

「あなたも一緒だったの」

「そう。綾小路がね、子犬みたいな泣きそうな顔で見て来るから」

「あら、見かけによらず演技派なのかしら」

 

堀北がチラリと視線を投げると、そのままフンっと鼻で笑った。

 

「変な脚色はやめてくれ。ん?浅羽は?」

「彼ならあそこよ」

 

コンビニの隅に置かれた一部の食料品や生活品の前で突っ立っていた。

 

「どうした?」

「んー?これ」

「無料・・・・・・?」

 

堀北も合流し、不思議に思ったのか商品を手に取る。歯ブラシや絆創膏と言った日用品が無料と書かれたワゴンに詰められている。

おまけに『1ヶ月3点まで』と但し書きも添えて。

 

「ポイントを使い過ぎた人への救済措置、かしら。随分と生徒に甘い学校ね」

 

それだけサービスが行き届いているということなんだろうか。

 

「っせえな、ちょっと待てよ!今探してんだよ!」

「だったら早くしてくれよ。後ろがつかえてんだからさ」

「あ?何か文句あんのかオラ!」

 

突如和やかな店内BGMをかき消し、やたらと大きな声がコンビニの中に響き渡る。

 

「なになに?喧嘩?」

「どうして浅羽は楽しそうなんだ?」

「私に聞かないで」

 

どうやら会計で揉め事らしい。男同士で睨みを利かせた言い合いが始まっているようだった。不機嫌そうに顔を覗かせたのは、見覚えのある赤髪の生徒。

 

「ちょっと行ってくるよ」

 

二人を置いて件の赤髪の元へ歩いて行った。

 

「どうかした?」

「あ?なんだお前」

 

友好的に話しかけたつもりだったが、どうやら敵が増えたと勘違いしているようだ。

 

「Dクラスの浅羽。なんか困ってんの?」

「ああ・・・・・そういや何となく見覚えがあんな。学生証を忘れたんだよ。これからはあれが金の代わりになること忘れちまってたんだ」

「立て替えようか?」

 

寮に一度戻った後、忘れてきたんだろう。寮までの距離は大したことはないが、昼時ということもありレジには生徒たちが並び始め長蛇の列を形成し始めている。

 

「・・・・・・いいのか?」

「別にいいよ、大した額じゃないし」

「悪いな、世話になるぜ。俺は須藤だ」

「よろしくねー、須藤」

 

須藤の代わりに自分の学生証をレジの機械に通すと、すぐに会計が済んだ。

 

「初対面からいいように使われているわね。彼の従順な下僕になるつもり?」

「そんなんじゃないよ。困ってたから助けただけ」

「彼の風貌、外見に恐怖している、という感じでもないようね」

「恐怖?あんなの可愛いもんでしょ。不良っぽいから?」

「普通の人なら、彼のようなタイプの人間とは距離を置きたがるものよ」

「そうかなー。僕にはあいつが悪いやつには見えないけど。それにあんただってビビってないじゃん」

「あの手の人種を避ける人は、自分を守る術を持たない人が殆どだから。仮に彼が暴力的な行動に訴えても、私なら退けられる。だから下がらないだけよ」

 

綾小路はチラッと浅羽を見た。

『いや、体格差的に無理でしょ』という顔をしている。オレもそう思う。そもそも、退けられるってどういう事だ。痴漢撃退スプレーでも持参しているのか?

 

「買い物、済ませましょう。他の生徒にも迷惑になるから」

「ん。綾小路も買ってきなよ」

「ああ」

 

それにしても本当に不気味な学校だ。生徒個人にここまで金を払って、一体どんなメリットがある?今年の入学者が約160人。それが三学年あるから単純計算しても480人前後の在校生がこの学校にはいることになる。それだけで月に4800万、年間5億6000万の計算になる。いくら国主導とはいえ、やりすぎとしか思えない。

 

「学校に何のメリットがあるんだろうな。これだけの大金を持たせて」

「そうね・・・・・・敷地内にある設備だけでも十分多くの生徒は集まるはず。無理して学生にお金を持たせる必要性があるとは思えない。学生本来の目的が疎かになってしまうことだって十分有り得るはずなのに」

 

これがテストとかで頑張ったご褒美って事なら分からないでもない。成功報酬ともなれば生徒のやる気は上がるだろう。だが、学校側はポイント獲得の条件など一切なく10万もの金を全員に配った。

 

「指図できるような事ではないけれど、極力無駄遣いは避けた方がいいわよ。浪費癖がつくと後で治すのは大変だと思うから。人間は一度楽な暮らしを覚えると、それを簡単には手放せない。目減りした時に受ける精神的ショックは大きいもの」

「肝に銘じておく」

「親みたいなこと言うんだね」

 

キッと切れ長の目で睨まれながら店外へと移動すると、須藤はコンビニの前で腰をおろして待っていた。こちらを見つけると、軽く手を挙げて応える。

 

「やっぱりカップ麺は外で食べるよね〜」

「おっ、お前中々分かるやつだな」

「まさかここで食べるのか?」

「当たり前だろ。ここで食うのが世間一般の常識だ」

 

須藤は当然のように答えたが、オレは困惑し、堀北も呆れたようにため息をついた。

 

「私は帰るわ。こんなところで品位を落としたくないし」

「はっ。何が品位だよ。高校生だったら普通だろうが。それとも良いとこのお嬢様ってか?」

 

須藤は堀北に噛み付いたが、堀北は目を合わせることすらしなかった。それが癪に障ったのか、須藤はカップ麺を地面に置いて立ち上がった。

 

「あぁ?人の話聞けよ、おい!」

「彼どうしたの。急に怒り出して」

 

あくまで堀北は須藤とは話さずオレに聞いてきた。浅羽に助け舟を出そうとしたが、ご丁寧に新しい割り箸まで出して須藤が置いたカップ麺を勝手に食べている。美味そうに食うな。

それが余計に気に食わなかったのか、須藤は掴みかかる勢いで吠えた。

 

「こっち向けよ!ぶっ飛ばすぞ!」

「堀北の態度が悪かったのは認めるよ。でも、お前もちょっと怒りすぎだ。一旦落ち着け」

 

シームレスにキレないで欲しい。びっくりするから。

 

「あぁ?んだと?こいつの態度が生意気なのが悪いんだろうが!女のくせによ!」

「女のくせに。時代錯誤もいいところね。彼とは友達にならない事をお勧めするわ」

 

そう言い、堀北は最後まで須藤と会話することなく背を向けた。

 

「待てよおい!クソ女!」

「落ち着けって」

 

本気で堀北に掴みかかろうとした須藤をオレは慌てて制止する。当の本人は立ち止まることも振り返ることもせず寮へと帰っていった。

 

「何なんだよあいつは!くそっ!」

「人それぞれ、色んなタイプがいるものだからな」

「うっせぇよ。ああいう真面目ぶったヤツ、俺は嫌いなんだよ」

 

何故オレを睨む。止めてやったのに。

さっきレジ前で揉めてた事といい、須藤は怒りの沸点が低いのかもしれない。

 

(お疲れ様でーす)

(浅羽、お前・・・・・・)

 

口パクでそう言い、更にウインクまでかましてくる。くそ、顔がいいから余計に腹がたってくるな。

 

「おい、お前ら一年か?そこは俺らの場所だぞ。さっさとどけ」

 

須藤がラーメンをすするのをみていると、コンビニから同じようにカップ麺を持って出てきた三人組に声をかけられた。

 

「あぁ?んだお前ら。ここは俺が先に使ってんだよ。邪魔だから失せろ」

「おいおい、聞いたか?失せろだってよ。こりゃまた随分と小生意気な一年が入ってきたもんだ」

 

ケラケラと須藤の噛みつきに笑いを返す。その様子を見ていた須藤は、突如立ち上がると、手にしていた食べかけのカップ麺を地面に叩きつけた。辺りに汁と麺が散乱する。

 

「ちょっ・・・・あっつ!」

 

運が悪い事に近くにいた浅羽にも上手く被弾したようだ。

初めて見る慌てた様子にオレの溜飲が下がる。

 

「一年だからって舐めてんじゃねぇ!あぁ!?」

(またか・・・・・・)

 

ちょっと所ではない。須藤は相当怒りの沸点が低い。

 

「二年の俺たちに対して随分な口の利き方だなぁオイ。ここに荷物置いてんだろ?」

「いい度胸じゃねぇか、クソ共が」

 

須藤は人数差に怯まず食ってかかった。今にも殴り合いが始まりそうな様相だ。

 

「おー怖い怖い。お前クラスは何だよ・・・・・・なんてな。当ててやるよ、Dクラスだろ?」

「だったらなんだってんだ!」

 

須藤がそう答えた途端、上級生たち全員が顔を見合せ、ドッと笑う。

 

「聞いたか?Dクラスだってよ。やっぱりな!お里が知れるってもんだ」

「あ?そりゃどういう意味だよオイ」

 

食ってかかる須藤だったが、逆に男たちはニヤニヤと一歩後退した。

 

「可哀想なお前ら『不良品』に今日だけはここを使わせてやるよ。行こうぜ」

「逃げんなオラ!」

「吠えてろ吠えてろ。どうせすぐ、お前らは地獄を見るんだからな」

(地獄を見る?)

 

彼らからは明らかな余裕の色が見て取れた。

どういう事だ?

 

「あークソが!女といい二年といい、うぜぇ連中ばっかりだぜ!」

 

須藤は散乱した具材の後始末をせず、ポケットに手を突っ込んで帰っていった。

すると視界の隅で浅羽が手を振っている。そして、上を指差した。

オレはコンビニの外壁を見上げる。そこには二台の監視カメラが設置されていた。

 

「後で問題になる可能性あり、か」

 

仕方なくしゃがみこみカップを拾い上げると、オレたち二人で後片付けを始める。それにしても須藤がDクラスと知った途端二年生は急に態度を変えた。

 

(やっぱり、何かあるな。この学校は)

 

気になると言えば気になるが、今その答えを導き出せるはずもない。

 

「カップ麺・・・・もったいない・・・・・」

 

まるで肉親が死んだかのようなショックを受ける浅羽を見て、優しく肩を叩いた。

 

やはり、この浅羽という男は面白い。




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一之瀬ちゃん、巷では筋繊維の擬人化だの女郎蜘蛛だの散々な言われようで草です。

一之瀬ちゃん推しの方すみません

新しく主人公くんの経過観察をやってみました
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