ゼーリエに彼氏をはやしてみた。   作:宵闇蓮

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一級試験とか書くことないじゃん→何書こう、せや! 主人公の惚気を書こう! の勢いで出来ました。
全体的に出来が粗いかも。ゆるして


閑話 恋人自慢

 今日から一級試験が始まる。

 ゼーリエさんもそれの影響で暫くは支部に拘束されてしまうらしい。今朝、迎えに来たというゲナウさんとゼンゼさんが駄々を捏ね続けるゼーリエさんを連れて行った。

 去り際、彼女は

 

「会いに来い」

 

 と言っていたが、すぐさま二人に「来るな」と釘を刺されてしまった。しょぼんと沈んだ顔で首根っこを捕まれ、ゼンゼさんの伸び縮みする髪の毛で担がれて行った。

 

「静かだ……」

 

 いつもよりも静かになった自宅のベッドでダラダラと寝転ぶ。

 そんなわけで、僕は手持ち無沙汰になってしまったわけだが、あいにくと今日から試験後まで予定が無い。

 

 圧倒的な手持ち無沙汰……!!

 

 もういっその事魔法協会に突撃してやろうかしら、と邪な考えを抱いてはそれを振り払い、引き続き寝転びグータラと過ごしている。

 コンコン、とリズム良くドアを叩かれた。

 

「はい」

 

 部屋着のまま来客に対応する。しかし、僕はその来客に驚いてしまった――

 

「あぁ……今、時間あるか? 少し、その、なんだ? 俺とお茶でもしない……?」

 

「え……ナンパ?」

 

「違うよぉ、俺はただフリーレンがここへ行けって言うから来ただけで……」

 

 ――なぜなら、どこかで見た赤髪の彼が立っていて、しかも「フリーレン」という単語を口にしていたからだ。

 僕は好奇心を覚え、彼――シュタルクを家に招いた。

 

 これが、あんな悲劇に繋がるだなんて思いもせずに。

 

 

 オイサースト街中、一角にあるカフェにて。

 シュタルクはオレンジジュース、僕はミルクティーを注文し、会話に花を咲かせていた。

 彼の冒険譚は面白い。藤色の髪の乙女――フェルンが俺にだけ当たりが強いとか、フリーレンは勇者一行の魔法使いだとか。ザインという僧侶はお姉さんと旅をしたいらしい。

 色々なことを聞いた。

 

「そういや、あんたは確かエルフと一緒に住んでるんだよな。ぶっちゃけどうだ? 寝起き悪かったりしないか?」

 

「あぁ……悪い時もあるよ。この前なんか、食べたかった料理が売り切れだったことが引き金で拗ねちゃってさ。代わりを作ってもなかなか機嫌直してくれなくて」

 

 ショックのあまり三日三晩泣き続けられたことがあったっけ。何年もともに生活しているが、さすがに応えた。

 シュタルクはでも、と前置きして言った。

 

「そのエルフの彼女さんを愛してるんだな」

 

「もちろん」

 

 シュタルクが思い出したような仕草をとる。そういえば、と言葉を置き、

 

「エルフには感情の起伏が殆どないとフリーレンが言っていた。お前の恋人も、やっぱり例外では無いのか?」

 

「……その通りだよ。彼女はその場の雰囲気を読み取って、それに似合う表情を作っているようだし。でも、二人きりだとその限りでは無いかな」

 

「そうか。……これは個人的な質問だが、エルフを恋人に持って辛かったこととかはあったりしたか?」

 

 ミルクティーのカップに手を添え、持ち上げる。それを揺らしながら、その問いに対する答えを模索した。

 ふう、と一息吐き、空を見上げる。どこまでも続く快晴がこちらを見下ろすばかりである。

 カッブの五分目まで減ったミルクティーの水面に自分の顔が反射する。揺らしたことにより発生した波に乗っかるように、記憶は思い起こされる。

 

 

 

 

 

 ……恋人と呼べるようになって数か月の頃。

 森を抜けた先にあった、見晴らしの良い峠で、その先は水平線が広がる。夕日も暮れかけで、案内のために先頭に立つゼーリエさんの髪が沈む太陽に重っていた。

 亜麻色の長髪が海風によりなびく。そのまま海を見つめる彼女の背へ一言、問いかけた。

 

「エルフには、感情の起伏――主に愛に乏しいと聞きます。なぜ、私を選んでくださったのですか?」

 

「………私のように、原始時代から生きるエルフには有り得ることだ」

 

 表情に笑みを浮かばせ、答えた。

 ただ冷たい顔で夕暮れを見守るのみの背中へ手を伸ばそうとして、しかし止める。

 

 果たして、僕は――彼女に相応しいと言えるだろうか。

 

 僕と彼女の間を冷たい海風が抜けていく。それは冷たく、家に帰らねばならない時間を告げるようだった。

 彼女と共に帰路に着く。

 身分が違い、歳が違い、才能が違い、知識が違い、種族が違う。何もかもが違う。それこそ――生物としての格すらも違う。

 魔法を扱う才能がある人々からすれば、彼女は――ゼーリエ様は、畏敬の念を抱かれる存在だ――今更、彼女との違いを自覚する。

 どこからか、僕のことを刺すような声が聞こえる。

 

『神聖なゼーリエ様に近づくな』『無礼者』『神に等しき存在を穢すなど』『あってはならない』『お前は不適合だ』『彼女に相応しくない』

『相応しく』『ない』『相応しいわけが』『ない』

 

 それは夢幻だったかもしれないし、現実だったかもしれない。

 当時の僕に、その言葉たちは深く刺さり、抉られた。それこそ、夕食のスープのおかわりを一回で済ましてしまう程度には、僕の心はやられていた。

 一時は彼女と距離を取ろうとも思ったが、それはやめた。失礼だと思ったし、そんなことをしても損しかないと思ったからだ。

 だが、日に日に言葉は鋭さを増していった。

 

 二ヶ月ほど経ち、決心した僕は彼女にことを伝えた。話している最中、彼女は顔色を一切変えず、外の景色を眺めるばかりだった。

 話し終えると、開口一番彼女は、

 

「言い寄ったのはお前が初めだったがな。実にくだらん。その程度でなよってしまうほどの心だったとはな」

 

「……手厳しいですね。こういう場面では、慰めるときですよ」

 

「生憎と俗世の常識には疎い。頼りになると踏んだ人間がこんなものでは、先も思いやられる」

 

「先、とは?」

 

「今はいい。あとあとだ」

 

 僕の両頬に手を合わせ、そのまま彼女の柔らかな胸の中に押しやられた。後頭部に優しく手が置かれたのを感じる。

 

「……乗り越えろ。その自責の念を克服できたら、その時には」

 

「その時には?」

 

「いや、今ではなかったな。……もういいだろう。柄では無いことをすると疲れる」

 

 そっぽを向いたゼーリエの横顔はいつもと変わらない。

 しかし、一つだけ違うものがあった。

 亜麻色の髪の隙間から覗く尖り耳は、燃えるような赤色に染まっていたことだ。

 

 

 

 

 

「……どうしたんだ、そんなにティーカップを見つめて」

 

 シュタルクの声で記憶から戻る。

 こちらの顔を心配そうに覗き込む彼へ声をかけ、中に入っていた飲み物を一気に飲み干す。

 

「さて、質問は、エルフを恋人に持って辛かったこと、だったな。あるにはあるが……」

 

 それでもやっぱり、と口元が緩んだのが自分でも分かる。

 彼女自慢とは、楽しいものだ。

 

「そんなものは取るに足らない、有って無いようなものだ」

 

「――そうか」

 

 二人分の代金をテーブルの上に置いておく。釣り銭は取っておけ、とキザに(当社比)決めて、彼に背を向ける。

 そうだ、最後に言っておこう。

 

「有名人と恋人関係の有無関係なく、距離が近ければ……ファンから殺意の籠った目で見られるから、気をつけろよ」

 

 言うだけ言い残し、僕は彼女を迎えるために自宅へ走り出した。

 

 

 

「……え、何それ。怖い、超怖いんですけど?! どういうことなの? それってどういう意味なの!? おーーい、無視するなよ、おーーい!!」

 

 赤髪の少年の叫びは、昼の喧騒に消えていった。




生きてます。続きます。
次は何書こうかな。
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