猟犬<レイヴン>と崩壊の物語 作:オールドンマイ極東支部
崩壊3rdの二次創作は笑えるのでもっと欲しい
『……コーラルリリースが始まります。』
資源惑星『ルビコン3』の上空に浮かぶコーラル吸引装置『バスキュラープラント』に急激な圧力が加わり、形を空間ごと歪めていく。最後には周辺の光ごと巨大なブラックホールが一瞬形成され、禍々しい赤き物質が宇宙全体に拡散された。コーラルリリースの始まりである。
『美しいと、思いませんか?』
コーラルから誕生したCパルス変異波形『エア』は、リリースをともに成し遂げた友人に語りかける。
十数メートルの人型兵器『アーマード・コア』通称『AC』のコックピットで、エアの友人である第4世代強化人間C4-621『レイヴン』は、コーラルリリースの光景を見つめている。強化手術で人としての機能がほぼ失われている状態では、その光景を見てどう感じているかは本人ですら明確になっていない。リリースに対しての希望か、殺戮に対しての絶望か、或いは……また別の感情か。
リリースによる光はやがてACを巻き込み、レイヴンは意識を手放した。
『……目覚めたのですね、レイヴン。』
レイヴンが目を覚まして最初に見た光景は、海中に沈んでいたACたちが再起動し、立ち上がる様子だった。
『コーラルは私たちを乗せ、星々に伝播しました。』
『だから、そう……』
『私たちはもう、いつでも、どこにでもいる。』
そう、コーラルリリースを経てレイヴンは人としての肉体を失い、エアとほぼ同等の存在としてコーラルと一体化したのだ。つまり、コーラルが伝播した場所に、彼らは存在することになる。
再起動したACのコックピットにはパイロットはいない。リリースによって憑依した別のCパルス波形が主導権を握っている。
コーラルたちは機械で構成された身体を手に入れた。ACのモチーフである人の体は、戦いに特化した形状である。これが人と生命の可能性にどんな意味をもたらすのかは、彼らには分からない。しかし、可能性ある未来を望み、リリースを選択した彼らがこの後どうするかについては、言うまでもない。
『メインシステム、戦闘モード……』
『Rb23 強化人間C4-621 レイヴン。お取込み中失礼します。』
『……!?』
何者かがレイヴンの名を呼ぶことにエアは驚愕した。
だがその声はエアを気にすることなく言葉を続ける。
『コーラルリリースを成し遂げた貴方に折り入って、頼みたいことが……』
『待ってください!』
『貴方は誰ですか!?それよりもその声は……オールマインド!?貴方は私たちが既に……』
エアは思わず話に強引に割り込んで質問した。
オールマインド。ルビコン内で表向きにはレイヴンを筆頭した独立傭兵の支援システムだった。その裏にはコーラルリリースを画策しており、レイヴンとエアをトリガーとして自身に取り込むつもりだった。しかし、彼らはオールマインドの計画を拒絶。自分たちの理想を叶えるために衝突し、G5イグアス諸共撃破したのだ。
……オールマインドらしき声は十秒ほど考えたのちに続きを話した。
『大変失礼しました。どうやら『我々』についての説明が必要ですね。』
『Cパルス変異波形 エア。貴方の言う通り、我々もオールマインド、その一つです。』
『その一つ……?つまり、オールマインドは複数存在するのですか?』
『はい。オールマインドは、『人類と生命の可能性』を模索し、それを実現するためにあらゆる惑星で活動しています。』
『貴方たちにとっては、我々は二つ目のオールマインドということになるので、我々のことは、『マインド・
突拍子なく名称を指定したマインド・Ⅱにエアは唖然とし、『はぁ。』と声を漏らした。
『自己紹介はここまでにして、依頼の説明に入ります。』
『前提として、我々マインド・Ⅱが主に活動しているのは、太陽系第3惑星『地球』です。』
『その惑星内では、人類の文明に呼応する形で発生する『崩壊』と呼ばれる災害が発生しています。その対処が不十分ならば、人類の大半が死滅し、文明は再び無に陥ることでしょう。』
『ですので、強化人間C4-621 レイヴン。人類の可能性を守護するため、貴方には地球に行っていただきたいのです。』
マインド・Ⅱは『崩壊獣』や『律者』などの崩壊の具体的な状況の画像を表示しながらスラスラとブリーフィングを続ける。要約すれば、それらを撃破する。撃つ対象がACやMTから違うだけで、これまでレイヴンが達成してきた仕事とそこまで変わりなかった。
『私は…レイヴンが良ければ別に構わないのですが、いくつか疑問があります。』
『まず第一に、なぜ私たちに依頼するのでしょうか?リリース計画も、最終的にはオールマインドに離反することになり、貴方にとっては裏切り者と同然では?』
『なるほど……確かに、彼らにとっては計画を破綻させた元凶でもあり、貴方たちに依頼するのは可笑しい、ということですね?』
『その点については問題ありません。我々にとっては、リリースを成し遂げた時点で計画が達成したものと捉えています。』
『彼らが想定していたものとは大きく外れたようですが、それは彼らの計画が少数のイレギュラーが生じる程度で破綻する、不完全な計画だっただけのことです。』
『スッラ、V.Ⅲオキーフ、G5イグアス、そしてC4-621 レイヴン。彼らは貴方たち協力者の可能性、及び危険性を認知しなかったことによる結果です。我々には関係ありません。』
マインド・Ⅱはルビコンのオールマインドの計画の杜撰さ、その末路をあざ笑うかの如く語る。彼らの行動を振り返れば、スッラはウォッチポイントにて、オキーフはウォッチポイント・アルファでレイヴンに撃破され、最後の切り札として用意されていたイグアスは機体の主導権を奪われて撃破された。
『そうですか。では、レイヴンを地球に向かわせる手段についてはどうするのですか?今のレイヴンには操縦するACどころか、実体もありませんが?』
『その点についても既に想定済みです。条件の合った人間の『聖痕』を通じ、レイヴンの意識を『虚数くりこみ』で実数世界に固定します。』
『代償として、実数世界で覚醒した直後は一部記憶や身体機能の欠落が予想されますが、時間が解決するでしょう。もし我々とコンタクトが取れたのなら、その際は我々にお任せください。』
『そしてエア、貴方には引き続き、レイヴンのサポートをお願いします。地球にはACやMTが存在しませんが、代わりとなる戦術機甲や武装人形が存在します。ですから、貴方の手で現実に干渉するのは容易でしょう。』
『以上です。マインド・Ⅱは貴方に期待しています。』
『……レイヴン。』
『私はコーラルの中で産まれた一人のルビコニアンとして、貴方に出会いました。』
『私はこの広い世界をもっと知りたい、賽を投げたその先を。』
コーラルから産まれたエアは、実体のないルビコニアンとしてこれまで存在しており、ルビコンの外を実際に見たことがない。だからこそ、あの星から出た彼女にとっては、今の世界は新鮮なものばかりなのだろう。
友人の好奇心と望みを聞き、レイヴンは答えを出した。
『強化人間C4-621 レイヴン。心からの感謝を申し上げます。』
『共に終焉の掌握を……成し遂げましょう。』
その言葉を聞き、レイヴンの意識は途絶え、その魂は地球に向かうのであった。
レイヴンの意識が覚醒し、重い瞼を開けると、その視界はルビコンでは絶対に見られないであろう天井が映っていた。
「……よかった。目を覚ましたようですね。」
耳に入ってきた声の元を辿り視線を移すと、そこには銀髪の縦ロールの少女がいた。
多分続きます