鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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人と竜が紡ぎし、彼岸へと贈る希望の詩 其の二

「我々は、歴史の目撃者となるだろう。どうかね、諸君」

 

 ウェザエモンとの決戦まで後2日となった。その日、シグリンデの姿は所属クラン。【ライブラリ】の拠点、会議室にある。

 

 そこには複数人が集まっていた。クランリーダーであるキョージュをはじめとして、クラン内の精鋭が集っていた。

 

「墓守のウェザエモンを、討ち倒す!?ユニークモンスターの踏破など前人未到ですよ……!」

 

 興奮気味に立ち上がり、その直後テンパりながらもズレた眼鏡を直したふわりとした茶髪のプレイヤーはセート。【ライブラリ】のサブリーダーであり、キョージュの弟子のような存在として。そしてクランの総合的な統括も行っている極めて優秀な人物である。

 

「セート、落ち着いてください。ですが……もしユニークモンスターを踏破することができれば、確かに謎の多い神代文明について迫れるかもしれない」

 

 思わず立ち上がって慌てふためいたセートを注意したのは毘猩々 磐斎。【ライブラリ】の幹部であり、攻略検証と遺物調査の指揮を取っている人物である。趣味は考古学、リアルでは超一流大学の医学部の人間である。

 

「とんでもない案件を持ってきてくれましたね。キョージュ、シグリンデ嬢。しかし、最強種の行動パターンを解析しそれを応用すれば新たなるスキルの可能性が?唯一無二の思考ルーチンを解明することでこのシャンフロのシステムを謎解くことに近づくと考えれば……そもそも最強種はそれぞれが独立した固有のAIを保有している可能性が高い、だが分類上のベースシステムは同じはず、ウェザエモンを分析できれば最強種そのものを構成するベースプログラムについて何かが――」

 

「分析ヲタク、うるさい!思考の海から戻ってきなさい!」

「ラインハイトさん、そういうのは後にしてくれませんか」

 

「いいところだったのに何故邪魔をするんだ君たちは。 ……失礼、キョージュにシグリンデ嬢。少し興奮してしまいました」

 

 セートと磐斎には文句を。そしてキョージュとシグリンデには謝罪を返した、金髪をオールバックにした学者風の装いに、早口で気難しそうな印象をもたせる男性はラインハイト。セート達と同様【ライブラリ】の幹部であり、磐斎と同じく攻略と検証を主としている人物なのだが、その他にシャンフロというゲームの根幹について解明すること。つまり、システムや仕様、バグやAIなどのルーチンといった根幹部分についてゲームを通して分析考察する、といったことをやっている。

 

 あくまで本人のモットーは、『いちプレイヤーとしてゲームをプレイして、その世界の体験を元に根幹部分に迫ること』である。本人からすれば、『生データを見てしまえばすぐに理解できる、そんなもの答えを見せられているクイズのようなものでつまらない。娯楽なのだから、楽しまなければ』とのこと。リアルを知っているのはキョージュだけだが、とある天才に匹敵するほどの人物でありながら職業は公務員、趣味でエンジニア関係のことをしているという。

 

 

 現在、会議室のテーブルの上にはある資料が置かれている。それは、永遠。ペンシルゴンがまとめあげ、そしてシグリンデの件の時に、取引として渡したウェザエモンの資料をキョージュが写したものである。分厚い表表紙には『極秘』と印が打たれており、本来はキョージュのクランリーダー室の隠し部屋にある禁書庫と呼ばれる部屋に厳重に保管されている資料だ。

 

 そうして。現在それは、ペンシルゴンの了承のもとここにいるメンバーにのみ開示されていた。加えて、キョージュは自分が、シグリンデやペンシルゴンと何を企んでいるのかをも明かした。

 

 少なくとも、ここに集うこの三人は信用に値した。何より、飛びつくと確信していた。計画を己の内にだけ秘め、このとてつもない計画に力を貸すと。新たなる歴史の目撃者、前人未到の偉業への到達。そんなことを言われてしまえば、知識の輩としてはもう逃れられない。無視できない、飛びつきたくなるのだ。

 

「判明しているウェザエモンの挙動、そこからの明確な動作の算出と行動パターンの解析、ルーチンの予測。プログラムである以上行動と行動の間のダウンタイムも存在しているはずだ。実際に戦闘を行うメンバー、確定でわかっているのはシグリンデ嬢となるのだから彼女に最適化してのデータの収束、くっ……考えることが山ほどある。だが……フハハハハ!愉しい、愉しいですよ!」

 

「また始まった……それで、教授。私達は何を? こんなもの見せられては、いえ。魅せられてしまったからにはもう止められませんよ」

 

「あの人は本当……天才って、変な人しか居ないんでしょうかね。丁度少しの間予定は空いていたんですよ。大型アップデートまで後2日、寝ずにでも調べ尽くしてやります」

 

 やる気を見せて闘志を燃やすセートと磐斎。それを見てキョージュもまた不敵に笑った。

 

「かの最強種を討ち倒すのは、シグリンデ君とその仲間達だ。我々はあくまで目撃者、立会人に過ぎない。戦闘で力になれることはないが……我々の武器で力になることは出来る。言いたいことはわかるかね?」

 

「……シャンフロにおいては、世界観考察と設定が攻略の鍵となる。なるほど」

 

「わかりました。挙動や実際の戦闘関係についてはラインハイトに任せましょう。最も適任です。セート、我々はウェザエモンの特徴を基にして今までうちのクランで蓄積されたデータから関係ありそうなものを見つけ出して当てはめて考察しましょう」

 

「わかった。最強種である以上、間違いなく世界観に関わるものがあるはず。このファイルの内容にも気になることはいくつかあったしね。……ふふ、楽しくなってきた。これは今日は寝られないですね」

 

 すぐさま二人は書庫へと駆け出し、情報を集め始めた。そうして、その日は休みということもあって殆どシャンフロにログインしていたシグリンデは、同じくずっとクランホームに籠り分析考察を繰り返していたキョージュ達4人と共に対ウェザエモンについて話し合いを行った。その結果は、大いにあった。ウェザエモンのある特性について、【ライブラリ】のお墨付きが出たというのもあるが、判明している行動パターンについてかなり細かく、正確に分析され。そして戦闘メンバーの編成にフッティングされたモーションに対しての処理法まで考え出されたのだ。

 

 

 ウェザエモンとの決戦は近い。

 

 

            ◆     ◆     ◆

 

 

 ウェザエモンとの決戦に向けてそれぞれが準備を進める中、シャンフロ内に点々と存在する主要の町よりはるかに離れた僻地。周辺モンスターのレベルは高く、ここを訪れるプレイヤーはほぼ居ない。加えて、そのエリアに存在する霊峰。シャンフロの現在確認されている霊峰とつく山々の中でも特にレベルの高いモンスターが生息しており、環境も過酷。加えて、最高峰の標高を持つその山の山頂。

 

 そこを訪れる姿があった。それは、プレイヤーではない。

 和装、いかにもその道の人間と言った装いと雰囲気に隻眼。加えて言うならば、獣人。

 

 そうして。山頂に降り立ち、その人物と対峙するのは、黄金の竜王。ジークヴルムだった。

 

 

「久しいな、 我が友ヴァイスアッシュ。こうしてゆっくりと話すのは……いつぶりか」

 

「ああ、そうだなァ。しかも、こんな絶景を眺めながら話すのはなんとも乙なもんだ」

 

 山頂から見えるのは、満点の星空と月、見渡す地平線は全てが雲であり、月光がそれを照らしている。山頂とは思えないほど、穏やかな風が吹いていた。そしてその風によって草木が揺れている。

 

「それで、俺等を突然呼んでどうしたんだい。何か面倒事でも起こったか?」

 

「いや、面倒事ではない。むしろ……起こったのは。ああ、とても愉快で、面白いことと言うべきか」

 

「ほお……?」

 

 予想外のことにヴァイスアッシュは驚いた。友であるこの竜王。ジークヴルムは、最後に会った時は。いや、全てが終わってしまったあの時からずっと焦っているようにも見えたからだ。生き急いでいる、そう見えた。

 

 だが今はどうだろうか。生き生きとしており、楽しそうにしている。生き急いでいるようにも、焦っているようにも見えない。もし彼の言う面白いことが彼を変えたのだとしたら、それは一体何なのだろうかと、ヴァイスアッシュは興味が湧いた。

 

「呼んだのは、ただ語らいたかっただけだなのだ。……昔のことを。そして、最近出会った、我にとっての。我の隣に立つ開拓者の盟友のことについて」

 

「……!そいつは、面白そうだ」

 

 彼は今、盟友と言った。隣に立つ者とも。

 

 今の世界。世代に生きるの開拓者は、二号計画の末裔だ。つまりこの竜王は、その二号計画の末裔から盟友。隣に立つ相棒を見つけ出したというのだ。生き急いで、使命に束縛され、ただ終わりを求め続けていたこの竜王がだ。

 

「まあ、なんだ。我も少し……心境に変化があったのだ。開拓者に『臆病者』『逃げるな負け犬』『急ぐ前に周りを見ろ』……他にも色々言われたが、そんな言葉を言われるとは思っていなかったのだ。だが、一番我の心に突き刺さったのは」

 

 そう、己が新たな道を見つけ出したキッカケとなった言葉は。

 

「『未来に共に征こう』。そう言われ、手を伸ばされたのだ」

 

「くくっ、ははは!なんだその開拓者は!黄金の竜王に山程の罵詈雑言を叩きつけて、真正面から対峙して手を伸ばした?なんてぇ『強さ』を持ってんだそいつは!」

 

 なんだ、なんなのだその開拓者は。

 

 面白い、あまりにも面白く強い。自分も俄然と興味が湧いた、ヴァイスアッシュは内心でそう思った。

 

 

「友よ、我が友よ。……我は、決めたぞ」

 

「……何を決めた、友よ」

 

「――我は、この世界を守ろう。人が絶望しない限り、開拓者と手を取り合って災厄と戦おう。もう我は負けぬ。かつては守れなかった、だが……今度は失わぬ。我は黄金の竜王ジークヴルム。人の世の栄光と繁栄、笑顔と未来のためならば神すらも敵としようぞ」

 

 それは、あまりにも力強い言葉だった。同時に、神と世界への理、そして何れ来る災厄への宣戦布告だった。

 

 だがヴァイスアッシュは感じた。今のこの竜王は、もう昔とは違う。その黄金の輝きは、人々が希望を持つ限り。誰かの笑顔がある限り絶対に消えはしないだろうと。

 

 絶望の底へと落ちた竜は新生した。

 黄金の輝きは太陽となり、開拓者(だれか)の明日と笑顔を見守るだろう。

 

 人が折れぬ限り、黄金の竜王は負けはしない。

 故に明日を奪う悲劇よ、絶望よ。お前達の出番はもう二度とないのだ。

 

 

 神よ、厄災よ恐れよ。お前達を討ち倒す神始鏖殺(ラグナロク)はここに在るのだ。

 

 

「――我は開拓者と共に征く。我が盟友と共に世界を歩き、新たな歴史を。人と竜の竜詩を紡ごう」

 

 

 

 力強く黄金の竜王は、友へとそう言った。

 

 




■セート
 原作登場者。容姿は捏造した。キョージュガチ勢でリアル女子大学生、滅茶苦茶優秀。自分とほぼ同年代のシグリンデが加入してくれてとても喜んでいた。対ウェザエモンでは世界観からの分析と提供されたデータの総まとめ担当。

毘猩々 磐斎(びしょうじょう ばんざい)
 原作登場者。尋常じゃなく優秀な医学部の人。ゲーム内部では、生物や人体の構造からの行動パターンの解析や考察、攻略や検証を担当している。対ウェザエモンでは、文献からの考察と判明しているモーションからの動作解析を行っている。

■ラインハイト
 オリキャラ。モチーフは某ガンダムシードなフリーダムに出てた人。ギアスのルルーシュみたいな声をしている。常に早口で気難しい性格をしている。【ライブラリ】所属のリアル公務員の人なのだが、本当にそうなのか怪しまれている。『データさえ見てしまえば世界を一瞬で紐解けるが、そんなものはつまらない』と言っており、俗に言うあえての縛りプレイに近いもので未知を楽しんでいる。シャンフロをプレイしているのはそういった未知と、そもそも紐解くことが出来ない他のプレイヤーとの関係を楽しむためだという。とある天才に匹敵するほどの人物。

■ジークヴルム
 開拓者(だれか)の未来と笑顔を守る世界の守護者。完全体になってとんでもないことになっているが、窮地に追い込まれても『まだ終わらぬ!』とか言って強化されてリスポーン(存在再構成)する。神始鏖殺(ラグナロク)を己が胸に悪を滅する。某シルヴァリオなサーガの閣下のドラゴンバージョン。

 シグリンデのことを話したらヴァイスアッシュに滅茶苦茶興味を持たれた。
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