鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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人と竜が紡ぎし、彼岸へと贈る希望の詩 其の八

 最終フェーズ開始とともに、召喚されていた『騏麟』もまた姿を変えていた。それまでは機械の大きな馬、といった見た目だったものが変形し、二足歩行。まるで本来はウェザエモンがそこに乗り込む形なのだろうと推測できるような搭乗部が存在するロボットとなっていた。

 

 武装はミサイルにレーザー、変形したことにより機械の巨大な手足を用いた格闘戦もしてくるようになった。そして恐らく、これもまたウェザエモンに近づければ即終了。合体されて全滅技が飛んでくるだろう。

 

 それを阻止しながら、『騏麟』を担当するのはオイカッツォとペンシルゴンだ。そして、ウェザエモンを担当するのはサンラクとシグリンデである。

 

 最終フェーズは未知だった。だが、それ以前の既知だったフェーズと、今まで【ライブラリ】に記録されてきた神代文明の記録からどうなるかは可能性として推測されていた。それが、『限界駆動による自壊』である。ウェザエモンが機械とシステムに己自身を組み込んだ存在で、機械とアンデッドという両方の属性を持つのではないのかというのは【ライブラリ】により推測されていた。アンデッドだとするなら、対アンデッドのアイテムは通用する。だが、通用した場合どうなるのか。

 

 死者への特大のダメージを処理できなくなった外装。つまり、ウェザエモンの鎧はオーバーフローする。そうなれば、破損は免れないだろう。問題はその後だ。防衛機構というシステムが停止した場合、その代わりとして何が出てくるのか。予想されたのは、組み込まれた存在。ウェザエモンの魂そのものだろうと。

 

 そうしてその推測は的中していた。最終フェーズで出てきたのは、恐らく永い永い時を経て擦り減っているものの、ウェザエモンの魂。鎧は既にひび割れ、炎のようなエネルギーも吹き出ている。自壊が進んでいるのは明白であり、推測するにダメージが今なら通る。

 

 ペンシルゴンが推測したのは、時間経過による特殊勝利。だが、ウェザエモンと相対する二人は違っていた。サンラクはゲーマーとしてのプライドから。そしてシグリンデは、サンラクと似た部分はあるが『約束』のため。

 

 ウェザエモンを終わらせて休ませる。そのためには、敗北が必要なのだ。

 彼が納得できるだけの敗北が。

 

 そうして。彼を終わらせることは、かの竜王の望みでもあるのだ。

 ならば、竜王と共に在る者としてそれを叶えなければならないと思ったのだ。

 

 

 それぞれの最終フェーズ。激闘が開始された。

 

 

          ◆     ◆     ◆

 

 

 明らかに今までのフェーズより早い、サンラクが感じたのはそれだった。

 

 今までにあった機械じみた動き方が全て消えている。それだけではない、今のウェザエモンは明確に相手の弱点を突くように攻撃してきており、その攻撃にはフェイントすら混ぜてきている。最早、今までのフェーズとは別物と判断していいほどだ。

 

 だが。それを全て捌き切っている仲間も半端ではない。体力は1、そんな本来ならば冷静では居られないような状態で今のウェザエモンの猛攻を全て捌いている。しかも、ヘイトの殆どを自らへと向けた状態でだ。

 

 むしろ攻勢にさえ出ている。ウェザエモンの攻撃を弾き、その隙に巨大な剣槍での追撃をかけている。ウェザエモンも直撃を回避するように動いているが、避けきれていない。ダメージエフェクトが発生している。何よりも、今まで攻撃一辺倒だったウェザエモンが回避という動作を見せているのだ。それは、つまりウェザエモンがシグリンデの攻撃を直撃すると不味いと判断して動いたということだ。

 

 

「――【断風】!」

 

 今までより遥かに早い発生速度。予備動作もなく、打ち合っている中で流れるようにしてほぼノーモーションで放たれた超高速の居合。不味い、とサンラクは思った。

 

 

「封じさせてもらうよ……!【狂騒竜牙】!」

 

 シグリンデがスキルを使用した。ウェザエモンとの戦いが始まってから今まで、彼女が使用したのは装備している指輪のスキルだけだ。ここに来て、攻撃スキルの使用にサンラクは驚くが、それだけが理由ではない。彼女の持つ巨大な剣槍。黄金の守護竜の名を冠するその武器の黄金の刀身が赤色のオーラを纏っているのだ。

 

 そして、その刀身がウェザエモンの放った居合。断風に触れた瞬間、信じられないことが起きた。ウェザエモンが下がったのである。それだけではない、本来発生するはずの副次効果であるはずの不可視の鎌鼬、それが起こらない。

 

「サンラク行って!今なら撃てない!」

 

 叫ばれる言葉、それを理解する。今のウェザエモンには明確な隙が出来た。回避行動を取った先へとサンラクはスキルを使用して加速して

 

「【アサシンピアス】!からの追撃だ!【ドリルピアッサー】!」

 

 回避後の硬直。そこをサンラクは逃さなかった。今はヘイトが完全にシグリンデへと向いていた。そしてウェザエモンは、シグリンデから距離を取るようにバックステップで退いた。つまり、背後はがら空き。そこへと容赦なく追撃を叩き込んだ。

 

 流石にウェザエモンもサンラクを無視できなかったのか、再び【絶風】で迎撃するがそれをサンラクは回避。

 

 ダメージエフェクトにクリティカル判定。間違いない、今のウェザエモンにはダメージが確実に通るのだとサンラクは確信した。だが、疑問も残る。どうしてウェザエモンは下がったのか、それにもしスキルを使用されれば追撃は難しかったかも知れないのに使用してこなかったのか。

 

 封じさせてもらう、というシグリンデの言葉も気になった。

 そして、まさか。と思った。

 

「シグリンデ!何秒止められる!」

 

「5秒!リキャストは15秒!」

 

「最高だぜ!引き続き頼む!」

 

 ビンゴだ、そう思うと同時になんてものを持っているのだとサンラクは思った。

 

 【狂騒竜牙】。今まで使わなかったところを見ると、あれは今のシグリンデの状態でのみ使えるスキルだろうと推測できた。それはまだいい、とんでもないのはその効果の方だ。恐らくだが、ウェザエモンは先程【断風】で発生する鎌鼬や、本来自分に対して使ってきてもおかしくないスキルでの反撃を使用しなかったのではない。できなかったのだ。

 

 詳細は不明だが、とにかくあの赤いオーラを纏った刀身に触れると『スキルを封じられる』。反則もいいところだ、相手が最強種だろうと容赦なくスキルを封じ、何もできなくなったところに連撃の追撃が入る。ましてやそんな状態で『黄金の円環』の強化効果と、恐らく【竜王顕現】により発生している強化効果が入っているシグリンデと近接戦を行うなど無理ゲーだろう。

 

 スキルが使用可能になったウェザエモンが立て直し、再度構えを取る。

 刀を構え、雷のエフェクトを纏わせたのが見えた。発動するのは、【雷鐘】だ。

 

 だが、シグリンデは引かない。サンラクに言わせれば、スキル殺しのスキルはまだリキャストが戻っていないはずだ。

 

 そうして【雷鐘】の刀身側の判定は防御出来ても追撃として落雷が連続で襲う。

 

 

「【光輝竜爪】ッ!」

 

 今度は刀身が青いオーラを纏った。そのままその刀身はウェザエモンの繰り出した【雷鐘】の刀身部分と衝突。そして、ウェザエモンの刀が纏っていた雷が霧散した。

 

 【光輝竜爪】。【狂騒竜牙】がスキルを封じるものだとするなら、こちらは魔法に定義される全てを容赦なく封じ打ち消す。しかも、それはただの魔法だけに留まらない。スキルによって発生した事象、つまり炎や雷など魔法的な副次効果を伴うならばそれも魔法の判定として打ち消してしまう。

 

 

 

「ははっ……マジかよ。シグリンデがレイドボスとか最強種って言われても疑わないぞこれ」

 

 

 サンラクのそれはあながち間違ってはいない。今のシグリンデは、その一部といえど神代において克服不可能だった弱点を克服した竜王、ジークヴルムの権能を行使できる。つまり、ジークヴルムとシグリンデというプレイヤー、開拓者を相手にしているのに等しいのだ。

 

 【雷鐘】の能力が霧散し、刃が弾かれる。それは決定的な隙だ。先ほどと同じならば、5秒間ウェザエモンは魔法。今回の場合、スキルに魔法が伴うため副次効果のあるスキルは使用できない。そこにシグリンデとサンラクからの追撃が入る。

 

「私を見たね。 ……サンラク!」

 

「おうよ!本当に完璧なまでのタンクっぷりに頭が下がるぜ!」

 

 背面。彼の持つ『兎月【上弦】【下弦】』による奇襲判定かつクリティカルの二連続の斬撃がウェザエモンを襲った。追撃はしない、もしスキル無効の時間が5秒間だとしたら確実に攻撃が入るタイミングで攻撃を入れて、撤退するまでで丁度それぐらいの時間だからだ。だから欲張らず、再度下がり武器を構え直した。

 

 

 

「我が、誓いを……踏み躙る…であれ、ば……我が、『晴天大征』にて……潰えよ」

 

 

 突然、ウェザエモンがその言葉の後動きを変えた。それまで対峙していたシグリンデを無視して、ターゲットしたのは。

 

 

 

「ッ……なんで敵視が!?」

 

「狙いは俺か!?」

 

 狙われたのはサンラクだ。どうして突然敵視が外れたのかはわからない。確かに今までも時折ターゲットが無理矢理剥がされて、ランタゲとなりサンラクに攻撃が飛ぶことはあった。だが、すぐにシグリンデへとヘイトはすぐ戻っていた。

 

 今は違う。一度剥がれてサンラクへとターゲットを固定されて、そのままシグリンデへとは戻らない。

 

「ごめん、サンラク!」

 

「気にすんな!でもなんで突然タゲが暴れたんだ……?とにかく避ける、そしたら立て直して反撃――」

 

 サンラクの言葉は最後まで続かない。そのままウェザエモンは、【断風】を連続発動、そして続けざまに【雷鐘】を発動した。ターゲットはサンラク。ならば、その背後をついて攻撃を叩き込みつつ相手のスキルか魔法を封じて、再度ターゲットを自分に向ける。そう考えたシグリンデは行動に移した。

 

 

 

 移してしまった。

 

 

 

『いかん!今の奴を封じてはならん!』

 

『――え?』

 

 

 咄嗟にシグリンデの左目を通して何かに気がついたジークヴルムは、静止を呼びかけた。だが、一足遅かった。ジークヴルムが静止を促した時には、既に背面を取っていたシグリンデの攻撃はウェザエモンへと直撃。それをものともせずサンラクへの攻撃を継続したため、【断風】のタイミングに合わせて、【狂騒竜牙】を背後から叩き込んだ。

 

 防ごうともしなかったウェザエモンからは莫大なダメージエフェクトが発生した。だが、動じない。そして同時に、【狂騒竜牙】によるスキル封じも効果を発揮して【断風】はその力を失う。

 

 

 だが。

 

 

 

 

「――【天晴】ッ!」

 

 

 それは、突然起こった。スキルを封じられたはずのウェザエモンは、サンラクの前に瞬間移動して。

 

 そのまま、上段からの振り下ろしで真っ二にした。

 

 

 




■【狂騒竜牙】
 元々の権能は【狂騒領域】、そのプレイヤースキル版。スキル発動後、一定時間剣槍の刀身に赤色のオーラを纏い、それに触れたもの全てのスキルに定義される能力を打ち消すと同時に一定時間使用不可能にする。遠距離攻撃の場合もそれがスキルであれば打ち消し、使用者にデバフを付与する。また、攻撃スキルのみならず、対象のバフなどの能力もスキルに定義されるものなら打ち消し、バフの場合打ち消しの処理が先に入るためかかっていたスキル定義のバフが全て消される。


■【光輝竜爪】
 元々の権能は【輝ける龍王】、そのプレイヤースキル版。スキル発動後、一定時間剣槍の刀身に青色のオーラを纏い、それに触れたもの全ての魔法に定義される能力を打ち消すと同時に一定時間使用不可能にする。狂騒龍牙と同様、魔法を打ち消した場合使用者に対してデバフを発生させるほか、デバフが発生した時魔法で発動されたバフ関係の効果はすべて打消される。また、スキル使用で魔法効果を伴うものについても魔法の判定となり、打消効果とデバフが発生する。

 これらのスキルは【竜王顕現】発動中のみ使用可能。スキル・魔法それぞれの使用不可能の特殊デバフの持続時間は5秒、リキャストは刀身にオーラを纏ってから15秒。このデバフをレジストすることは出来ない。


■あとがき
 ちょっと色々と溜まってきたので放出しようか考えています。とりあえずウェザエモン戦後までは駆け抜けようかなあとか、そこまで行ったら設定鍵とか投稿しようか思案中。作者は現在竜災あたりを執筆中。
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