鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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第一章最終話。次回より次章突入となります。


此処から始まるのは、人と竜と龍の物語

『シャングリラ・フロンティアをプレイされている全てのプレイヤーの皆様にお知らせ致します』

 

『現時刻を持ちまして、ユニークモンスター「墓守のウェザエモン」の討伐を確認いたしました。討伐者はプレイヤー名、サンラク。オイカッツォ。アーサー・ペンシルゴン。シグリンデ4名です。さらにユニークモンスターの討伐に伴い、ワールドストーリー「シャングリラ・フロンティア」の進行を報告させていただきます』

 

 

 シャンフロ内部全ての人間に告知されるアナウンス、それを聞いて告知された四人の関係者達は沸き立っていた。それは【ライブラリ】も例外ではない、拠点とする『王立図書館』の中では、あちこちから称賛の声が聞こえていた。

 

 

「本当に。本当に成し遂げたのだな……シグリンデ君」

 

 

 その日、あの手この手で妻に言い訳をして夜遅くまでログインして、『終わったら必ず戻ってきます』と言ってウェザエモンとの決戦に赴いた彼女の帰りを待っていると、告知されたのはワールドアナウンス。それを聞いてキョージュは感無量となった。とんでもない、このシャンフロにおいて過去に例のない偉業を成し遂げたと。

 

 喜びを隠せないのは彼だけではない。ウェザエモンの情報のリークを受け、その情報からあらゆる方向からアプローチを掛けて分析と考察を行った者達。セート、毘猩々 磐斎、ラインハイトもその表情に嬉々としたものを浮かべていた。特に、普段ぶっきらぼうで信頼しているもの以外に対しては毒舌家でもあるラインハイトがこうして喜びをあらわにしているのは珍しいものだった。

 

「キョージュ!やりましたよ、やってのけましたよシグリンデさん!すごい、凄すぎます!」

 

「さっきからそればかりですねセート。語彙力が消えてますよ」

 

「知能なんてぶっ飛ぶくらい凄いことですよ!磐斎さんもそう思いませんか!?」

 

「まあ、否定はしませんよ。戻ってきたら、盛大に祝ってあげないといけませんね。 ……ですが、【ライブラリ】としては他に気にすることがあるのでは?」

 

「このワールドストーリー、って奴ですか?確かに始めて聞きますね……何なんでしょうかこれ」

 

 そう。今回、ウェザエモンの踏破に伴いワールドアナウンスで告知されたワールドストーリーという単語。これは、【ライブラリ】でも今まで確認していなかった存在だ。

 

「普通のストーリーがプレイヤーがNPCと協力して物語を進めるのだとしたら……ワールドストーリーは、世界そのものが次の段階に移行した、とか?」

 

「ありえますね。世界そのものが変化するのだとしたら様々な所に変化が出ているかも知れません。キョージュ、ある程度落ち着いたら調査隊の編成を行いましょう」

 

「そうだね、各地を再調査することで新たな遺物や生き物、もしかすると場所も増えているかも知れない。それに……我々は覚悟をしなければならないかも知れないのだ」

 

 その言葉に対して、首を傾げるセートと磐斎。ラインハイトはといえば、喜びをそのまま身体で表現しながら早口で称賛の言葉を延々と叫んでおり、周囲のメンバーからドン引きされていた。

 

「墓守のウェザエモンの踏破、それはまぎれもない偉業だ。だが、ユニークモンスターの情報とは多くのプレイヤーが求めるものでもある。先程のワールドアナウンスでシグリンデ君がウェザエモンの踏破者だということが告知されてしまった。彼女は【ライブラリ】の所属であり、その存在は既に例のオッドアイや剣槍の件で知られてしまっている。つまり、ユニーク関係の情報やリソースを求めるプレイヤーが今後更に彼女に対して接触を試みたり。我がクランに対して行動を起こすだろうということだ」

 

 ここに居る幹部陣が知るだけで、今回のウェザエモンの踏破、オッドアイの瞳、剣槍という類のない武器に最大レベルでの秘匿が課せられているがシグリンデとジークヴルムの関係についての情報も知らされていた。少なくとも、公になっていないジークヴルム以外のことで今後騒がれるのは間違いないだろう。

 

 だが。キョージュは約束を。契約をした。それだけが理由というわけではなく、個人的にもシグリンデというプレイヤーは逸材であり、自分達のクランにとっても好ましい存在であるという理由もあるからだが、今後どんなことがあろうとも【ライブラリ】は彼女の味方という姿勢を貫くつもりだった。そしてそれは、ここに居る幹部陣や他のメンバーの総意でもある。

 

「さてさて、やることは山積みだ。外部クランとの話し合いやクランとしての対応については私の方でなんとかしよう。世界に変化が出ていることも考えて、調査活動も急務だ。セート君と磐斎君、それからラインハイト君は調査と新しい遺物や情報が持ち帰られた場合の対応を頼みたい。外部から君達やメンバーに接触してきた場合は強気に対応して構わない。我々は、これから戻って来るシグリンデくんから齎される情報を含めて慎重な精査をしたうえでそれを取り扱う。一般公開可能なものは公開するし、できないものは秘匿する。 ――そしてここからが重要だ」

 

 歴史は、物語は動き出した。その中核となるのは恐らく今回アナウンスされた彼女、彼らであるだろうとキョージュは考えていた。ならばこそ、シャンフロという世界の未知を追求する自分達としても黙っては居られない。

 

「我々【ライブラリ】は、今後全面的にシグリンデ君と、恐らく今後最強種との関わりで中核をなす者達の協力者となる。全ての最強種の謎を解き明かし歴史の立会人となる。これ以上面白そうなことが、他にあるかね?」

 

 それは、今まで傍観者としての姿勢を貫いてきた【ライブラリ】としての方針を一変させる宣言だった。

 

 傍観者から歴史の立会人に。そして協力者としてその未知に立ち向かう。

 

 知識の輩達が、最強種という未知の解明へと動き出した。

 

 

 

       ◆     ◆     ◆

 

 

 ウェザエモンを踏破した後も、慌ただしい出来事は続いた。『千紫万紅の樹海窟』へと戻ると。『最後にやってもらいたいことがある』と言ってペンシルゴンがシグリンデへと介錯。つまるところPKを辞めるためにキルして欲しい、そのために自分と本気の勝負をして欲しいと頼んだり。その一件が片付いた後、サードレマの街でシグリンデと再度合流したペンシルゴンがかなり溜まっていたメッセージの山を二人で確認して頭を抱えたりした。

 

 嫌な予感はしていた。だがウェザエモンの件で邪魔が入らないならそれでいい、と思って気にしないことにしていたのだが事態はとんでもないことになっていたのだ。ここに来てペンシルゴンは妹に再度問うた。『一体愚弟に何をアドバイスしたのか』と。

 

 もう事態が起こってしまっているので、シグリンデも素直に白状した。『オル君にはアーサーの差し向けた策を利用すればいいんじゃないの?』と伝えたと。確かにシンプルだ、難しいことは何も言っていない。だが、伝える相手が悪すぎた。ほんの小さなアドバイスが、大きな火種になり全てを焼き尽くすほどの大火となったのだ。といっても、自分達は無関係だが。

 

 まず、ペンシルゴンは匿名で【阿修羅会】の根城の場所を情報屋へとリークした。元々はそのままトップクラン連合に襲撃させ、【阿修羅会】を足止め、壊滅させることが目的だった。だが、そこにシグリンデが介入。ペンシルゴンにその襲撃情報を弟に伝える代わりに、ウェザエモンの件についての説得をすると話があった。

 

 ペンシルゴンはそれを承諾した。彼女の中での最優先目的はウェザエモンとの戦いを邪魔されないことだった。仮に襲撃情報をシグリンデが弟に教えたとしても、弟は『大好きな姉』には絶対手を出せない。それがわかっていたからこそ、シグリンデの説得は成功すると思っていたからだ。この時点でペンシルゴンの目的は達成される。

 

 だが。ペンシルゴンの想定外はここからだった。

 

 シグリンデは弟に小さなアドバイスをしたのだ。そして、今回の襲撃に関しては情報屋も誰が根城の情報を流したのかわからない。そんな状態でトップクラン連合は【阿修羅会】を襲撃したのだが、そこで待っていたのはもぬけの殻となった根城と最初の突入部隊を襲った大爆発。大打撃を受けたクラン連合に対する、闇の中からの大量のPKの襲撃だった。

 

 そこに居たのは【阿修羅会】だけではない。かつて所属していた『京極』や『サバイバアル』を初めとして、有名なPK達が勢揃い。そうして始まったのが、クラン連合とPK連合の大戦争。シャンフロにおいてかつてないほどの規模の大規模PVPだ。その戦いは長時間に及び、深夜手前に開始された戦いは結局朝まで続いた。最終的に、想定以上の大打撃を受けたクラン連合が撤退。PK連合側も生き残りは歴戦の猛者たちだけ、という結末だったが結果的に勝利を収めたのはPK連合だった。

 

 サードレマに戻った時点でペンシルゴンが確認したのは、『連合同士の戦争が起きている』というPKの知り合いからの連絡と情報。それを顔がひきつった状態で見たのだ。愚弟がとんでもないことをやったのだと思って。

 

 最早自分はPKを辞めた身だ。なのでこの件については一切関与しないことを決めたペンシルゴンだが、少しくらいは愚弟を評価してやってもいいだろうとも思った。『想像以上に面白いことをやるじゃないの』と。

 

「はい、じゃあ天秤と持ってたもの全部返すよ、アーサー」

 

「いや、天秤だけでいいよ。他はあなたが受け取っておきなさい、シグリンデ。PVPで勝った勝者の戦利品だよ」

 

「え?でも、元々これはアーサーの持ち物で。あのPVPだってPKを辞めるためのものじゃ」

 

「まーそうだけど、勝負は勝負。全力でやって負けたんだし戦利品は受け取っておきなさい。いやー、やっぱり純粋な実力じゃ無理だわ。あの手この手で策に嵌めてとかだったらいけそうなのに」

 

「アーサーはそういうの上手いもんね、私はそういうの苦手だしやられるとどうしようも……。えっと、じゃあ貰っておくよ?本当にいいの?」

 

「いいのいいの、それにPK辞めるために身内に協力してもらって資産を全部ロンダリングとかなんとも締まらないでしょ。それに、課されてる借金とかは返せない額じゃないし」

 

 サードレマの宿屋。その一室には二人の姿がある。ペンシルゴンとシグリンデだ。既にサンラクとオイカッツォは疲れていたようでログアウトしており、シグリンデもこの後【ライブラリ】へと顔を出してログアウトする予定だった。なので、その前に姉と合流して資産を返そうと思っていたのだが、天秤以外のものについては受取を拒否されてしまった。

 

「ねえ、悠乃」

 

「……?どうしたの?」

 

ここはプライベートエリアだ。だから、会話が外に漏れることもない。だが、ゲーム内部で自分のリアルの名前を呼ぶなど、姉にはとても珍しいことだった。

 

「シャンフロさ、楽しい?」

 

「うん、楽しいよ。最初は色々驚いたけど、今では【ライブラリ】の人達と話したり、王様と一緒に世界を歩いたりして。まだ知らない景色とか冒険はとても心を踊らせてくれる。 ――きっとこの冒険は、どこまでだって続いていくんだと思える」

 

「……そう。あなたのここまでの旅はいいものだったのね。良かった。 ……そしてそれは、これからも続いていく。私ね、ウェザエモンの件が終わったらシャンフロを辞めるつもりで居たんだ」

 

 驚いた。だが、なんとなくそうではないのかな、という気もしていた。ペンシルゴンが自身のリソースを全てウェザエモンとの戦いに注ぎ込んでいたのは知っていた。その姿は『何かを成したい時の全力の姉の姿』だ。自分とジークヴルムの関係のように、きっと姉とセツナの間にも己の想いを賭すだけのなにかがあったのだろうと思った。

 

「辞めるの?シャンフロ」

 

「そのつもり、だったんだけどね。……気が変わった。だから、悠乃に頼んでキルしてもらったんだ。セッちゃん、セツナは多くの課題を残した。バハムートという存在、神代文明の謎。それに、私も気になったし解き明かしたいと思ったんだ。そもそも最強種とは何なのか。一体、この世界に何が隠されているのかって」

 

「なるほど、で……私のお姉ちゃんの本音は?」

 

「世界の真実だろうが最強種の謎だろうがバハムートだろうが、骨の髄まで白日の元に晒してやろうと思って。プレイヤーという存在、正確には私が世界そのものに踊らされている感じがしてとても癪だったのでそうすることにした」

 

「うん、いつものアーサーだね?」

 

「ということで引退は取り消し。それに……」

 

「それに?」

 

「愚弟はまあ好きにやらせておくとして、シグリンデ。あなたとこの世界を歩いて、色んな冒険をするのはきっと面白いと思った。だから、これからもよろしく、私の最高の妹」

 

「――うん、これからもよろしくね、私の最高のお姉ちゃん」

 

 かくして、新たなる冒険への歩みを共にと誓い、二人は笑った。

 

 

 

 




■『冒険はどこまでだって続いていく』『あなたの旅は、いいものでしたか?』
 これでピンときたあなた、さてはヒカセンだな?エオルゼアで作者と握手。

■姉妹の本気PVP
 ペンシルゴンとしては、どうやっても真っ向勝負では勝てないことは理解していました。それでも、挑むことに意味があった。対してシグリンデも姉が本気で挑みに来ているのは理解していたので、本気で相対した。その介錯というよりは『頂点』への挑戦を、サンラクもオイカッツォもしっかりと見届けた。

■【ライブラリ】動き出す
 シグリンデの加入から始まったジークヴルムやウェザエモンとの関わり。そして神代文明の謎に触れ始めたことで、キョージュを筆頭に本気で動き始めた。ただ、純粋な戦力として動けるのは数人のため、自分達の持つ最大の武器で今後中枢となっていく者達を支援することを決めた。【旅狼】の最大の後援者になる。

■あとがき
 ということで、第一章完結です。シャンフロという物語としては、最強種やゲームそのものに対して関わっていく触りの部分というか、重用な部分だったので作者としてはこのあたりを書いていた時は『うーん、うーん』などと言いながらプロットを作り、物語を作っていました。

 何故主人公である悠乃、シグリンデが関わっていくのがジークヴルムとなったのかなど諸々については書くと長くなるので、別枠で投稿予定の設定鍵インベントリアにでも書こうかなと思っています。このあとの章で登場予定のエムル枠の存在、そしてジークヴルムは拙作において中核をなす存在と言って過言ではありません。物語のコンセプト自体は、シグリンデとペンシルゴンにジークヴルム、そしてエムル枠の存在という面々が、多くの仲間とシャンフロという世界を旅して、様々なプレイヤーやNPC、世界の謎など多くに関わっていくものとして描いています。今後とも、彼女達の旅を楽しんでいただければ作者としては嬉しい限りです。最後に、ちらりと書き殴って第一章完結の言葉とさせていただきます。


 ――ここから始まるのは開拓者達、そして『竜』と『龍』の旅路、物語である。

 ――頂に立つ竜は世界の守護者となり、小さな龍は旅路を経て次世代の頂きへと至るだろう。
 
 
 それでは、次は次章でお会いしましょう。
 
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