鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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竜騎士、小龍の少女と邂逅す

『ごめん王様、これどういう状況……?』

 

『ぬう、話せば長くなるのだが……。結論だけ言うと、あの者は我の眷属となった。実は、あの者のことで相談をしたくてな』

 

『と、とりあえず食べるのにまだ時間かかりそうだし説明してもらえるかな』

 

 ジークヴルムの休息地。『気宇蒼大の天聖地』に存在する禁足地。通常のプレイヤー、開拓者は侵入不可能となっているそのエリアに訪れてシグリンデが見た光景は、それはもう驚くべきものだった。

 

 頼まれた通り、出来るだけ多くの食料を買い込んで購入した食料をしまい込んでそのまま現地へと出発。禁足地への入口である山の間にある裂け目に存在する道を通り、霧のかかった洞窟を抜けると禁足地に到着。

 

 そこでシグリンデが見たのは、地面に足をついて『少女』の話し相手になっているジークヴルムだった。

 

 そしてそこに存在したのは、汚れたアルビノの肌に手入れのされていない長い白髪に『黄金の両目』を持つ、幼い。中学生ほどにも見える少女だった。まさか、世界の守護者たる竜王がどこかからこんな小さな少女を拉致してきて眷属にしたのだろうか。思わずジト目を向けると、何かを察したのか『まずは我の話を聞いてくれ』と弁明してきた。

 

 そうしてジークヴルムから話されたのは、昨日の夜のことだった。どうやら、現在相当空腹だったのか、自分が持ってきた食べ物をおいしそうに食べている少女がジークヴルムの縄張りのひとつである『霊峰』へと迷い込んだという。そして偶然、ジークヴルムはその霊峰を訪れており、妙な気配を察知。山の麓にある平原でボロボロで倒れている少女をを見つけ、保護したという。

 

 正確には、ジークヴルムはこの少女に対して何かを感じ取ったらしく、それをえらく気に入り。問答と試練を与えた結果、それを乗り越えたのだという。彼の言う試練とはつまり、『眷属』としてふさわしいかどうかの試練であり、彼が気に入った開拓者に対して行うものとは違うようで。どうやらもし耐えることができなければ、命を落としてもおかしくないものを乗り越えたようだ。

 

 詳しくシグリンデが問い詰めると、要するに『適性がある相手に自分の因子を埋め込んで耐えられるかどうか』ということらしい。じゃあ自分も因子を埋め込まれているがどうなのかと聞けば、『お主は開拓者としての能力も関係して、適合というよりは共生や昇華と言うべきものだ。なので今回の事例とは違うな』と言われた。

 

『実はな、あの者には元々適正が強くあったのだ。種族適性、とでも言うのか』

 

『種族適性って、つまりあの子が竜種としての適性を持っているってこと?どう見てもただの子供だけど……』

 

『……そのあたりについては、あの者が話すと言っているので我からは言わぬが、特殊な存在でな』

 

『事情がありそうだね。あー……少しだけ読めた。あの子は人で王様は竜。しかも王様は食事する必要が基本的にないけどあの子はそうもいかない。でも、自分が調達できそうなものはモンスターの生肉とかそんなものくらいだから私に連絡した、そんなところ?』

 

『察しの通りだ。我はどうにも人の営みには疎くてなあ……。なにか食べたいものはあるか、と聞いても我が持ってくるものなら例え土だろうがなんだろうが食べると言って聞かんのだ』

 

『それはちょっと……。うん、私を呼んでくれてよかったよ……まともなもの食べさせてあげられてよかった。それで、事情は本人が話してくれるってことでわかったけどあの子の名前くらいは教えてくれるんでしょ?』

 

『……ぬう。それがな、ないのだ』

 

『ないって……なにが?』

 

『名がないのだ。正確にはあの者の事情が関係してない、というのが正しいか』

 

 どうやら、ジークヴルムの相談事とは相当な事態かもしれないとシグリンデは察した。

 

 

       ◆     ◆     ◆

 

 

「あ、あの……本当にありがとうございました、その、なんとお呼びすれば……?」

 

「ふふ、気にしないで。おいしそうに食べてるの見て私もなんか嬉しかったから」

 

 持ってきた食料系のアイテム。道中の街で買ったものも含めるとかなりの量だったものは、全てがこの小さな少女。長い白髪と黄金の両目を持つ相手の胃の中に収まっていた。無我夢中で食べていたところを見ると、相当に空腹だったのかも思う。

 

「この者が我が話していた、我が盟友だ。小さき者よ」

 

「あなたが竜王様の!?こ、厚顔にも挨拶もせず申し訳ありません!」

 

 『そんなに固くならなくてもいいのになあ』と思いつつ再度シグリンデはその小さな少女に別にいい、むしろちゃんと食べて元気になってくれて嬉しいと伝えた。

 

「では……竜王様の盟友の方ですし、私にとってはお仕えすべき方です!マスター、とお呼びさせてもらっても?」

 

「う、うーん。別にいいんだけどちょっと硬すぎるかなあ。主従関係って訳でもないし……」

 

「我ももっと『ふらんく』に接しろと言っておるのだがなあ……」

 

 とにかくこの少女は礼儀正しく頑張り屋、という印象を受けるのだがどうにも自分やジークヴルムに対する態度が硬すぎる。眷属と言っていたし、もし眷属化したことが原因でこうなるのだとしたらもしかしてそうなるにあたり意識改変的なものがあったのではないのか。こんな小さい子に何をしているんだ世界の守護者、と再度シグリンデはジークヴルムへとジト目を送る。すると『待ってくれ、誤解だ。本当に誤解だ我はそんなことしていない』と返された。

 

「なら、その。……お、お姉ちゃんと呼んでも?」

 

「お姉ちゃん……妹が居たらこんな感じなのかなあ……ふふ、なんか嬉しいな。アーサーの気持ちがちょっとわかったかも。いいよ、それでも」

 

 表面上は笑顔を作っているが内心ではシグリンデにはクリティカルヒットだった。彼女は上に姉であるペンシルゴン、下には弟であるオルスロットという姉と弟が居る。なので妹というものがどんなものかわからなかったのだが、今なんとなく理解した。あまりのかわいさと庇護欲を掻き立てる姿、これが妹かと。私がお姉ちゃんだ、そう思った。

 

「さて、そろそろあなたのことを教えてくれると嬉しいな。何か事情があるんだよね?」

 

 その言葉に対して少女はそれまでの嬉しそうな笑顔を一変させると、少し悩んだようにした。

 

「安心せよ、お主は既に我が眷属。つまり、お主の敵は我の敵でもある。それに、シグリンデは強いぞ。何せ、神代の英雄を友と力を合わせ踏破したのだからな」

 

「それは……!わかり、ました。 では、わたしが何者だったのかというのをお話します」

 

「わたしは……名前はありません。以前のわたしは、あの存在の分け身。分身体のようなものでした。その存在の名は、『無尽のゴルドゥニーネ』。わたしはその分身体だった存在です」

 

 

 言われた言葉に対して内心で首を傾げた。分身体、というのはつまりその本体化に生み出されたものだろうか、というところまでは予想したが。

 

「無尽のゴルドゥニーネ……?なにかのモンスターの名前、かな?」

 

 聞いたことのない名前だと思った。

 強いて言うなら、名前のニュアンスがどことなく覚えのあるような。

 

 少し考えて、まさか。と思った。

 

 自分の関わった【墓守】、【天覇】。そしてキョージュから聞いたことがあったが、現時点で判明している他の存在。リュカオーン、クターニッド、オルケストラ。つまるところ最強種には二つ名のようなものがついている。もしこの【無尽】という相手がそうなのだとしたら。

 

「まさか、最強種……。王様達風に言うなら、神代の残滓やその時代の存在、ウェザエモンと同じ存在……?」

 

「その、わたしは……正確にはお姉ちゃんの言うその神代の存在ではあるんですが、ちょっと違うんです」

 

「そういえば、分身体がどうのって言ってたね」

 

「はい。わたしは、無尽のゴルドゥニーネから生まれた分身体でした。そして、生まれながらにその記憶を継承していました。……それに蝕まれて、でも否定して。わたしが自分の自我というものを確立してからは、一番強い個体。現在の頂点の個体に目をつけられるようになりました。それで、ずっと逃げ続けていて。昨日、竜王様の領地で倒れていた所を目をかけていただき、今に至ります」

 

「なるほど。でも、今回は王様が助けてなんとか命は助かったけど、狙われているってことは今後も狙われるの?だとするなら、迂闊に王様の拠点からも出られないけど。もしくは、ここくらいに安全な場所に匿ってもらうとか、移り住むかとかだけど……」

 

 『気宇蒼大の天聖地』はジークヴルムの主要拠点のひとつだ。特に現在いる禁足地と呼ばれる場所の周辺には、ジークヴルムと、おそらく自分の受けた『刻願』に関係しているのだと思われるが、自分に対して友好的かつ意思疎通が可能なモンスターが多く配置されている。その上、プレイヤーは侵入不可能で、ジークヴルム曰く禁足地には自分に認められたものしか入れないという誓約に近いものも働いているという。

 

 そこよりも安全な場所、と言われるとかなり難しい気もする。しかも、今後生活していくとなると尚更だ。

 

「何度も言うが、小さき者よ。お主は我が試練を乗り越え、我が力の一端を自らのものとし、我の庇護も受けたのだ。先程も言ったがお主の敵は我の敵、そもそもあの時の追跡者の気配は気に食わぬ。遠ざかりながらも敵意ぶつけてきておったし、なんなのだあやつは」

 

 どうやらジークヴルムは相当にその追跡者。話からするに、無尽のゴルドゥニーネ本人が好きではないらしい。事実、もしあの場でゴルドゥニーネがジークヴルムの警告を無視して追撃してきた場合、とんでもないこととなっていたのだがそれは回避された。

 

「正直、わたしもわからないんです。そもそも、わたしは個体としては特殊というか、不完全な存在だったので……」

 

 どういうことだろうか、と思っていると。

 

「わたしは、持っていた記憶が不完全で。それでいて、『一番の上の個体が持っていない記憶』も持っていたんです」

 

 

 そんなことを言った。

 




■『強欲』のゴルドゥニーネ
 正確には『元』強欲ニーネ。現在の頂点個体から危険視されて排除されそうになっていたが、ジークヴルムに保護されて眷属になった。分身体としてはかなり特異であり、本人曰く不完全な存在でもある。本来蝕むはずの『憎悪』感情を完全否定して克服、己という個を確立した上に現文明の人の営みに順応できるほど適応能力が高い。が、どうやら他の分身体と共通して持っているはずの記憶に相違点があるようだ。

■姉を名乗る不審者

 ――『どいて!私はお姉ちゃんだよ!』

 姉を名乗る不審者(シグリンデ)と読む。強欲ニーネにお姉ちゃんと言われた瞬間クリティカル判定で電流が奔った、同時に存在しない記憶も呼び起こされたかも知れない。

 実際、シグリンデは上にペンシルゴン、下にオルスロットという状態だったので妹が居ない。なので、『きっと永遠はこんな気持ちだったのかなあ』と少し気持ちが理解できたという。

■あとがき

 ――『私、理解できない私。貴女ハ、一体何者?』

 記憶に相違点がある?妙だな……。
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