鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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何かとGWは忙しくちょっと日が空いてしまいました。設定鍵も遅れ気味。


『龍』の少女、図書館の一員となる

「ご、ごめんなさい大丈夫ですか磐斎さん!?」

 

「はは、大丈夫ですよ。伊達にヒーラーやってないので、すぐに全快です」

 

 目前の光景、それにキョージュ達は目を見開いていた。それは、【ライブラリ】における重鎮。毘猩々磐斎が模擬戦といえど敗北したのである。それも、NPC相手にである。

 

 磐斎は戦闘系のビルドではない。見た目こそ聖騎士と言った装いだが、武器はメイス系統、片手には大盾という言わばタンクヒーラーという役割の人間だ。故に、攻撃力はあってないようなものに等しい。

 

 だが。彼の真髄はその天才的なヒールワークとタンクという役割に対しての理解力と才能にある。まず彼はトップランカー達から袋叩きにされても落とされない。それどころか、先に相手が音を上げるだろう。いくら攻撃しても、完璧と言っていいヒールワークで体力が減らない、その上、並大抵の攻撃は片手に持つ大盾でジャストガードされ攻撃が通らない。

 

 単体でこれなのだ。複数戦ともなれば、味方としては心強いが敵からすれば地獄のような相手である。幾ら磐斎以外を削ってもすぐに回復されて戻されてしまう。かといってタンクを兼任しているため前に出てくる磐斎を狙っても無駄だ。落とせない。むしろ磐斎へとヘイトを集中しすぎたことにより、他のプレイヤーから袋叩きにされる。それは、相手がモンスターだろうとプレイヤーだろうと同じことなのだ。とにかく、彼を落とすにはそれこそ相当な瞬間火力。最大火力(アタックホルダー)でも連れてこない限り不可能とまで言われていた。

 

 

 

 そんな彼が、負けた。

 それも、NPC。見た目が完全に中学生くらいのNPCにである。

 

 

 

 そのNPCというのがリューネだ。ジークヴルムから保護して欲しい、と頼まれてから数日。現在、リューネの身柄は【ライブラリ】の預かりとなっていた。いつぞやのシグリンデよろしく、とりあえず見た目を隠すために現在使用しているペンシルゴンから貰ったフード付き灰色のコートを装備する前に使っていた似たデザインのものをリューネに着てもらう。シグリンデが身長160台なのに対して、リューネは150台。少しぶかぶかではあったが、フードで顔を隠して【ライブラリ】のホームまで連れ帰った。

 

 その時点でのリューネはシグリンデがちゃんとした食べ物を持っていっていたこともあって、元気にはなっていたが見た目はボロボロのままだった。白い長髪は手入れされておらずボサボサ、身体は汚れていたし逃げているときから使っていたというツギハギの服装は破れている部分もあった。

 

 そんな状態の、それも見た目が完全に子供という相手を見てすぐさま行動を起こしたのがセートである。伊達に彼女はリアルで女子大学生をやっていない。勉学が主体である彼女でも見た目や服装と言った身だしなみには気を遣っている。事実、シグリンデも今の状態のリューネの状態は気になっていたのでまずは着替えと身だしなみと装備を整えることから始まるのだった。

 

 その結果、現在のリューネは見違えていた。ボサボサだった白い髪は、元はやはり綺麗なものだった。透き通るような白さを持つその髪は現在ポニーテールにしてまとめられており、肌もちゃんと手入れされて美しいアルビノの肌となっていた。

 

 難航したのは装備だった。彼女の事情についてシグリンデから報告された面々は、『ならば自衛のためにもまずは装備では?』という結論になった。そのため、様々な武器を試してもらい、本人からどんなことが得意なのかということをコミュニケーションも兼ねて話をして、とある装備にまとまった。

 

 シャンフロ内部で『スカウト系ビルド』と呼ばれるもの。現在の彼女は、シャツや黒のショートパンツといった装いの上に、茶色基調のレザー装備と、緑色のスカウトジャケットを装備している。それら全ては【ライブラリ】に所属する、シャンフロでも高名なクラフターの手により作成された逸品。最前線で使用しても問題はなく、性能もお墨付きの上に、スカウト系列ということで動きやすさも重視した素材の採用なども行われている。

 

 防具と装いについてはなんとかなった。だが、武器については少し厄介だった。

 

 リューネの適性は遠隔武器ということが判明した。しかし、並大抵の武器では彼女の才能に負けてしまい、破損したり性能が追いつかないという事態が発生。試用の為に用意された武器を壊してしまうたびにそれはもう彼女は必死に謝っていた。そして『気にしなくていい、君にあった武器を用意できないこちらが悪い』と担当していたクラフターが返すまでがお決まりだった。

 

 それはもうその担当するクラフターは悩んだ。武器や防具だけではなくアイテムなど様々なものにおいてシャンフロ内部でトップクラスに名高いクラフターと言われて、現実でも名声を得ては居たが、少女ひとりの装備すら満足に用意できないのかと不甲斐なく思ったという。そこで、その担当者はある素材を使うことにした。それが、先日キョージュとシグリンデにより進入路が確保された『神代の鐵遺跡』の新区画。明らかに適正レベルではない、高レベルモンスター、しかも未確認種も跋扈する区画で発見された希少鉱物。それを用いた武器の作成だった。

 

 その真っ黒で、黒い艶のある鉱物は僅かな量のみが現在産出されている。恐らく武器を作れて一本だろう。だが、並大抵の武器では彼女に適合しない以上、これを用いて最高の武器を作ってやることこそが職人としても。そしていくらNPCといえど、一人の少女に対する『大人』のしてやれることだろうと思い、武器を作った。

 

 そうして完成したのが、頑丈でありながら軽く、しなやかさも兼ね備えた特殊金属でできた大弓だった。性能も、そのクラフターが今まで作った中でもトップレベルに高いものといっていい傑作だった。

 

 

 今のリューネは、魔法に対する適性もあったことから補助魔法と簡単な初級から中級に該当する魔法、そして大弓を取り回す形の戦い方だ。メイン武器がない状態、その状態でも磐斎は負けたのだ。

 

 とにかくリューネは応用力が高かった。自分の持てる今の手持ちから、魔法を応用してそれにより予想もしないような手を打って磐斎の鉄壁を崩したのだ。もっとも、一度見られた以上もう対策されるだろう。だが、負けは負けであるし、そもそもその応用の仕方というのが磐斎や見ていた他のメンバーも想定しないような手だったのだ。

 

 恐らく空間認識能力が恐ろしく高いのだろう。瞬間的に跳弾のルートを弾き出して、あらゆる角度から飛んでくる魔法と弓を組み合わせた跳弾。そして跳弾する大矢の連射。属性魔法同士の組み合わせを応用した目くらましや行動阻害。とにかくテクニカルな戦い方なのだ。しかも次々と想定しないような手を使われて、流石の磐斎も対応しきれなかった。

 

 

「リューネ、君は随分と頭が良いな。あんな応用の仕方をされるとは思わなかった。こちらも勉強になったよ」

 

「そ、そんな!わたしなどまだ未熟で……あんな小手先の技で戦うことしか思いつきませんでした」

 

「いや、それは立派な『知識』だよ。知識とは武器である、うちのクラン【ライブラリ】の主とする思想の一つだ。知識を応用して新たな知識を生み出したのだ、素直に称賛を受け取ってくれると嬉しい」

 

「え、えへへ。ありがとうございます」

 

 まず正面から戦ったのでは磐斎には勝てない。ではどうするのか。そう考えて、リューネが取ったのは磐斎の攻撃性能の低さを利用して磐斎の回復行動を阻害し続けることだった。魔法を応用した大矢の連射と跳弾、それにより空間あらゆる角度、方向から物理と魔法両属性を持つ遠距離攻撃を絶え間なく放ち続け、そこに同時に目くらましや足止めなどを絡ませて削っていくという絶え間なく削っていくという戦い方だ。ただ跳弾を放ち続けるだけでは回復されてしまう。だからその最も厄介な回復を潰すために跳弾を利用し、同時に回復を妨害した時のダメージソースとして跳弾を利用した。

 

 その策は成功した。リューネの回復阻害のための奇策はどれもが嵌り、回復を阻害し、威力の高い跳弾の連射により磐斎の体力を削り取った。

 

「戦力としても申し分ないと思いますよ、キョージュ」

 

「ああ、見ていたとも。しかし本当に助かるね。シグリンデ君に続いてリューネ君もうちのクランに加わってくれるとは。何分、本当にアタッカーが少なくてね。優秀なアタッカーはすぐに他のトップクランに取られてしまうからね」

 

「しかも、シグリンデとは違ってスカウトタイプですからね。ぶっちゃけますけどあの大矢の跳弾、滅茶苦茶やられるとキツいですよ。大盾で弾いてもとんでもない衝撃来ますし」

 

「一発や二発なら動じなかったけど三発同時になると後ろ下がってたね、流石の君も」

 

「流石に体幹を崩されましたね。でもあれ、アタッカーが直撃もらうと一撃で体力飛びますよ。彼女、通常の射撃に跳弾混ぜてきてますから読みにくいですし、死角から来られるととんでもなく厄介です。弱点があるとすれば、折りたたみ式の特殊大矢を腰の専用弾倉から取り出して展開、番え、発射という工程を挟む関係から発射が少し遅いという点ですかね。といっても連射とか複数同時発射とかしてきますし、あの専用弾倉無限弾倉なんで弾幕張られると本当キツいですし距離のとり方もかなり上手い。後は護身用にサブ武器で短剣でも持たせてあげるといいんじゃないですかね」

 

「ふむ、なるほど。ではまた『彼』に頼んでなにか作ってもらうことにしよう」

 

 最初、ボロボロで最早命も風前の灯という状態だったリューネは、今はとんでもない逸材へと変貌していた。彼女の持つ特異な資質、最強種二体の因子を持つというそれもそうだが、元々逃げてる中で人間。NPC相手に一時期は過ごしていたこともあって、開拓者に対する順応力も高かった。結果、ガチ装備のスカウト系ビルドでワンオフな能力やスキル持ちのNPC、それも最強種絡みという存在が完成してしまった。

 

 彼女の保護者、という意味合いもあるが周囲も鉄壁だった。眷属としてその存在が何処に居るのかということや危機が迫ればすぐに察知可能なジークヴルム、大人として子供を助けるという認識がある【ライブラリ】のメンバー。そして、基本的に行動を共にするシグリンデ。実際にはまだ追加されることになるのだが、これだけの相手からの庇護を受けた状態ではいくらPKや頂点個体であるゴルドゥニーネであろうとも簡単には手出しできない状態だった。

 

 周辺関係者以外で言えば、保護されてから数日。その存在については【ライブラリ】の預かりで、よく王立図書館で手伝いをしている姿を見られていたことから話題にもなった。最強種絡み、というのはバレていないがそれでも人型NPC。そういった存在が特定のクランに対して実質的に所属という形で過ごしているのも極めて珍しいのだが、白髪の美少女が愛想よく図書館で楽しそうに手伝いをしている姿というのは、それはもう特に一部のプレイヤーの庇護欲を掻き立てた。噂では、そういった存在を愛でる廃人達で結成された非公式の集団なるものが設立されているとかなんとか。

 

 

 そうして過ごしているうちに、リューネが開拓者。【ライブラリ】へと馴染んだ頃、ジークヴルムから連絡が来た。

 

 

 『以前話していた相手と会って欲しい』、と。

 

 




■リューネの適正距離
 適正距離は遠距離。凄まじい精度と技能で制圧射撃してくる。【ライブラリ】含め、遠距離武器持ちが少ない中で後方からの威力制圧を担当する。狙撃と跳弾射撃を得意とし、とあるスカウト系のビルドの中で扱いが難しすぎて誰も使おうとせず、産廃とまで言われたスキルを使いこなす。彼女の『自在に曲がる矢』はこれに起因している。

■装備製作をしたとあるクラフター
 【ライブラリ】の一員であり、制作がメインのため前線に出てくることはあまりない。シャンフロの中でもトップレベルのクラフターであり、キョージュとほぼ同年齢にしてリアルの友人。なお、現実ではある分野の人間国宝。

■元気になって装備も整ったリューネ
 白髪ポニテに金眼アルビノで健気で頑張り屋という美少女になった。なお、サバさんは王立図書館に出禁となり保護者の皆様から最重要警戒対象になっているため話しかけることすら許されない。だいたい初動で不審者ムーブしたのが悪い。
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