鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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ちょっと作者多忙のため、不定期投稿になります。


竜騎士と龍の少女、兎の国へ行く

「またもや足労をかけさせてしまいすまぬな、しかし……うむ。最後に会った時より随分と元気になったようだな、リューネよ。それに強くもなった」

 

「ありがとうございます、竜王様。すべてお姉ちゃんと開拓者さん達のおかげです。新しい環境はとてもいい場所で、それに装備までいただいて感謝しています」

 

「うむ、よく似合っておるぞ。我としては元気な姿で開拓者達の中で多くを学び取ってくれることが嬉しいのだ。 ……さて、実はお前達二人に客人が訪れておる。以前話していた、『ラビッツ』という国からの使者だ」

 

 

 と、いうよりは。と、ジークヴルムは言葉を置いた。

 

「――今は隠居しているが、その国の頂点にして、我の友人でもある者。そやつが直々に訪れている」

 

 

 その言葉の後、近くの大きな岩陰から姿を表したのは、和装に隻眼の、いかにもといった装いの獣人種。

 

 サンラクは既に面識があったが、シグリンデにとっては初めての邂逅となる相手。ヴァイスアッシュがそこに居た。

 

 

「驚かせちまってすまねぇな、嬢ちゃん達。俺等ぁヴァイスアッシュってモンだ。元々は迎えを寄越すつもりだったんだが、どうにも居ても立っても居られなくなってな。思わず俺等が直接来ちまった」

 

 強い、それもとんでもなく。底が見えないほどに強い、そうシグリンデは感じ取った。もしかすれば、今のジークヴルムと同等くらいには強いのでないのか、そう思うほどの隠しきれない強者の気配に思わず身を強張らせた。

 

 だが、それはすぐ別のことへと意識が向けられることになる。隣りにいたリューネが、震えていたのだ。

 

 目を見開いて、何かを言おうとするが言葉にできず。だがとにかく『恐ろしい』というようにして、自分の背中に隠れていたのだ。

 

 

「リ、リューネ?どうしたの?確かに兎の組長さんみたいな見た目だけど、多分悪い人じゃないよ?」

 

「あ、お姉ちゃん……その、あの……わ、わたし……」

 

「あー……そうであった。我が友、ヴァイスアッシュ。ちょっと色々誤解されておるみたいだから、ちゃんと説明してやってくれんか。多分、リューネがお前の国に迷惑かけているあやつのことで勘違いしておるぞ」

 

 そんなことをジークヴルムから言われ、一度視線をリューネへと投げるとまたシグリンデの背中へと隠れられてしまう。それで色々と察したヴァイスアッシュは、『ああ、なるほどなァ』と言った。

 

 

「そこまで怖がられると、俺等も色々感じるもんはあるんだが……。俺等は別にそこの小さなお嬢ちゃんに何かしようって訳じゃねえんだ。ジークヴルムから聞いてるがよ、お前さんはもう『あいつ』とは無関係だそうじゃねぇか。それどころか、ジークヴルムの眷属にもなってるんだろう?なら、俺等としちゃあ敵対する理由もないし、そもそもお前さんはウチを襲撃していた奴等や『あいつ』じゃねぇんだ。あー、むしろ俺等はお前さんと、そこのジークヴルムの盟友と話がしたいのよ。……どうか怖がるのを辞めてくれねえかい。ほら、ウチで最近作り出したニンジン味の飴やるからよ」

 

「ほ、ほんとですか……?わたし、生きてていいの……?」

 

「むしろ手を出したらそこの盟友と、やたら強者の気配を漂わせてる嬢ちゃんが黙ってないだろうよ。俺等も長年の付き合いのある大事なダチを敵にはしたくねぇ。ほれ、甘くて美味いぞ?」

 

「……はむっ。 ――ほんとだ、おいしい」

 

 恐る恐るシグリンデの背中から隠れるのをやめて出てきたリューネは、そのままじっとヴァイスアッシュを見た後差し出された飴を口へと運んだ、どうやらおいしかったようで、そのまま警戒を解いて飴を食べていた。

 

「ほいじゃあ、色々と話したいこともあるんで場所を変えようか。おう、ジークヴルム。それじゃあちょいとこのお二人のお嬢ちゃん、借りてくぜ?」

 

「我はこの身体ゆえ、そちらの国へは足を運べないのでな。シグリンデの左目を借りてその国とやらを見させてもらおう。 ――ところで、そのニンジン味の飴のように他にも特産品があったりするのか?我が友よ」

 

「お前さん、本当アクティブになったというかなんというか……。まあ、前と比べたらいいことだろうがよ。ああ、最近色々な特産品みたいなのを作る取り組みをしてるらしくてな、色々とある。どうせお前さんが欲しいのは食い物だろ?今度持ってきてやるから今は我慢してくれや」

 

「……ふむ、それは楽しみにしているぞ。最近は『かんみ』なるものが好きでな」

 

「いいことなんだけどよ、大分俗世に染まってないかい?」

 

 呆れつつもそんな事を言うヴァイスアッシュの口元には、友へと向ける安堵のような笑みが浮かんでいた。

 

 

       ◆     ◆     ◆

 

 

「どうだい、俺等の国は気に入ってもらえたかい」

 

「はい、とても。獣人の国がある、とはクラン……開拓者仲間から聞いたことはあったんですが、実際に訪れるのは初めてで。これだけ治安や国力がいいのは組長さんの統治のおかげなのかなと」

 

「人参の特産物、どれもおいしかったです……!」

 

「はは、そうかいそうかい!まあ、今この国を統治してるのは俺等じゃなく、俺等の子供なんだがなァ。よくできた子供だよ。ラビッツの特産品を色々作って、国の外に外商に出てる奴等に宣伝させたり、売ったりしようって案をすぐ形にしやがった。もし俺等なら、凝り性なところもあってもっと時間がかかってたろうよ」

 

 シグリンデとリューネは現在、『ラビッツ』に存在する城。兎御殿へと訪れていた。現在は兎御殿にある謁見の間のような場所でヴァイスアッシュと座りながら話をしているが、ここに来る前はラビッツを暫く観光させてもらった。

 

 といっても、ヴァイスアッシュは国の関係の政があるから、ということで自分の子供の一人。主に鍛冶関係を担当しているという、ビィラックという茶色の毛をしたヴォーパルバニーに案内をしてもらった。

 

「さて、実はな。嬢ちゃん達を呼んだのには理由があってな。まずは……開拓者の嬢ちゃん」

 

「ええと、私ですか?」

 

「ああ。お前さんには礼を言いたいと思ってたんだ。ジークヴルムの奴から委細は聞いている。 ……ありがとうよ、あの大馬鹿野郎。ウェザエモンを眠らせてくれてよ」

 

 どうしてヴァイスアッシュがウェザエモンのことを知っているのか、思わず驚くが、彼はそのまま言葉を続けた。

 

「俺等はな、こう見えて結構長いこと生きてるんだ。あのジークヴルムとも長い付き合いだ。終わりを求め、死に場所を探していたあいつが新しく生きる希望と目的を見つけて。そんで世界の守護者として開拓者の側に立つ、なんて聞いた時は驚いたがよ。そんなあいつと、そしてあいつが選んだ盟友たる嬢ちゃんの最初にやり遂げたことが、ウェザエモンを終わらせてやることだった。 ……本当は、俺等がやるべきことだったのかも知れねぇ。だが、どうしても出来なかった。だから礼を言わせてくれ、ありがとうよ」

 

「……ウェザエモンに打ち勝てたのは、仲間が居たからです。その、ウェザエモンとはお知り合い、だったんですか?」

 

 その言葉を聞いて、ヴァイスアッシュはキセルを吹かして空を見上げた。

 過去を懐かしむようにして。

 

「そうさなぁ、知り合いだったといえば知り合いだった。あいつは、本当に不器用なやつでよ。嘘も下手くそで、その下手糞な嘘と無茶のせいで嫁さんを失っちまった。それであいつの心は折れちまったのよ。そうして行き着いたのが、嬢ちゃんも見たあの姿だ。鎧という防衛機構に己を組み込み、己に定めた誓いと贖罪のために永劫の時間彷徨い続ける、死に損ないになっちまった。自分で自分を終わらせることも出来ねぇ、ただの残滓になっちまった。 ……そんなあいつを眠らせてやれたこと。それは、俺等としても、悲しくもいいことだと思ってる」

 

 シグリンデの中には疑問があった。だが、それは明確な確証のない疑問だ。

 

 最強種とは、即ち神代の存在の中でも特異な存在と認識している。事実、現時点で判明していて、己のよく知るジークヴルムや資料に存在している『オルケストラ』『クターニッド』『リュカオーン』についても、大きな力を持っていたり伝承に語られる存在であるのだ。

 

 リューネの話から発覚した、『ゴルドゥニーネ』。それを含めると、現時点で発覚している最強種は全7体の内6体。とすれば、最後の一体は何者なのかという疑問は当然出てくる。

 

 この疑問は、シグリンデが多くの最強種と関わるからこそ出る疑問だ。ウェザエモンとは死闘を繰り広げ、ジークヴルムとは盟友となり共に歩む存在となった。そして、ゴルドゥニーネについてはその存在の分身体の中でも極めて特殊と思われるリューネがこちら側について、しかもジークヴルムの眷属にもなった。

 

 可能性として、考えてしまうのだ。このヴァイスアッシュという相手は、明らかに強い相手だ。気配だけで理解できる。そして、ジークヴルムにとっても親しい間柄の相手でもある。ウェザエモンの昔のことを知っていて、ジークヴルムの友でもあり、そして話し程度に聞いたが敵対関係ではあるもののゴルドゥニーネの頂点個体とも関わりがある。

 

 

 

 まさか。このヴァイスアッシュこそが、最後の一体ではないのかと。

 

 

 

 何を考えているんだ、とシグリンデはすぐにその考えを否定した。ただの神代より関わりのある存在なだけで、最強種と断定するのは早計だと考えて。そもそも、最強種と呼べる存在がプレイヤーの間でもそこそこに有名な『ラビッツ』を統治している存在だろうか?もし彼が最強種ならば、ラビッツ関係の情報で発覚していそうなものだ。

 

 そんな確証のない推論より、自分は神代を知る存在に聞いてみたいことがあった。それを答えてもらえるかは別として、だ。

 

「っと、すまねぇ。とにかく嬢ちゃんには感謝してるんだ。それに、こうして会ってみてわかったが、見ただけでわかる。中々いいヴォーパル魂を持ってるじゃねぇか。あのジークヴルムが盟友に選ぶのも納得ってもんだ」

 

「ヴォーパル魂……?ええと、ありがとうございます?」

 

「はっはっは!まあ、中々見どころがある、とでも思ってくれや!」

 

 とても機嫌よさそうにしているヴァイスアッシュ。そんな相手に、今からある質問をしようとしているのだ。少し、気が引けた。大抵この質問は、神代の相手。セツナにしてもジークヴルムにしても、あまり答えたくなさそうな印象を受けたからだ。というよりは、『まだ識るべきではない』というのが正しいのか。

 

 だが、神代の存在。それも意思疎通が出来る相手はセツナが消えてしまった今では現状、ジークヴルムだけである。リューネももしかすると該当するかも知れないが、話を聞く限り保有している当時の記憶について『ぼやけている』らしい。

 

「組長さん、その。私からも聞きたいことがあるんですが、いいですか?」

 

「ん?おうよ。俺等ばかり質問したり話しちまったな、すまねぇ。それで、何が聞きたい?」

 

「組長さんは王様のご友人、なんですよね。それもかなり昔からの」

 

「まあ、そうだな。あいつとはなんだかんだ付き合いが長い。生まれは元々違ったが、それでも今はいい友人だと思ってる」

 

「……私は、ウェザエモンの一件を通して出会ったセツナという相手や王様から断片的にあることを聞いています。それは、私の推論でしかありませんが、世界の危機や滅亡、なにか大きな災厄のようなものが存在している、といったことです。それについて、組長さんはご存知ありませんか?」

 

 突然、ヴァイスアッシュの気配が変わった。

 真剣な眼へと一瞬で変わると、自分と。そしてリューネを見た。

 何かを定めるかのようにして。

 

「『セツナ』、か。また懐かしい名前が出てきたもんだ。……ああ、本当に懐かしい名前だ」

 

 少しの間、考えるようにして。ヴァイスアッシュを再びキセルを吹かせる、そして。

 

 

 

「……ジークヴルムの奴はまだ話してないんだろう?なら、俺等も話すことは出来ない」

 

 『だけどな』と、彼は続けた。

 

「そうさな。これは俺等からの、お前さんへの礼だ。ウェザエモンを眠らせてくれたことに対して、と言っても些細なことかもしれねぇがな。これぐらいじゃあの馬鹿野郎を眠らせてくれたことへの恩を返せるとも思えないが、ひとまず ――少しだけ、昔話をしようかい」

 

 

 




■ヴァイスアッシュ
 シグリンデとリューネ、二人にとても注目している。『竜』の友と『龍』たる才覚を持つ少女、二人に対して興味を持つと同時に期待しているし感謝もしている。

 本来、彼の子供である誰かがプレイヤーの元を訪れるはずが本人が現れたのは、それだけ二人が異例な存在だったため。最初に接触したのがヴァイスアッシュだった、というだけで二人にとっての担当のような相手はビィラック。ただ、彼女はサンラクとのやり取りや諸々もある。つまり……。
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