鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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未知と踏破せぬ頂に立ち向かうために:後編

「いやはや、早めに帰ってきて正解だったよ。私も君とは話がしたいと思っていたのだ」

 

 突然会議室を訪れたのは、恐らく今日いっぱいは不在予定だったキョージュだった。彼は現実世界では名前通りの有名大学の教授であり、専門は考古学。名前もかなり知名度があるほど有名な人物であり、本も出しているその分野においては偉人と称される人物だった。

 

 元々はその職業の関係で数日空ける予定だったのだが、それが前倒しになった。なので彼は急ぎ帰宅することを選んだのだ。今の彼にとっては、現実世界は地球におけるほとんどの未知が解明され、宇宙の未知を調べるにはまだ技術世代が不足しているという認識だ。言ってしまえば、現実世界は彼にとって少々『退屈』なものだった。

 

 生活に不満があるわけではないし、結婚している妻や独り立ちしている子供を愛してもいる。だが、自分の根本は『未知』を解明し、研究し、考察すること。そう考えた時あまりにも今の現実世界は多くが解明されてしまっていた。そんな世界に多少の不満と物足りなさを抱いている中で、妻であるマッシブダイナマイトが息抜きに、と勧めてきたのがシャンフロだった。

 

 最初は妻が言うのだし、暇つぶし位にはなるだろう。最近の若者のやっていることや流行りに乗るのもたまにはいいか、という考えだった。だが、そうして足を踏み入れたシャンフロという世界はキョージュ、燐堂 報ノ介(りんどう ほうのすけ)という人間にとっては追い求めていた楽園だった。

 

 物語はお決まりのゲームのように決められた過程で進行しない。プレイヤー、開拓者が自ら見つけ出し、解き明かすことで物語は進む。そしてその物語もまた、その過程によって如何様にも表情を変化させる。それは、現実世界とかわりのない、新たな別世界そのものだった。同時に、シャンフロという世界には未知が溢れていた。

 

 解明されていない過去の文明、多くの物語、最強種や世界そのものの謎。それだけにと留まらず、ゲーム特有の武器や装備、製作やフィールドの開拓、考え出せばきりがないほどの未知で溢れていた。気がつけば、シャンフロというゲームに熱中していた。そうして大学の教え子であるセートに勧められ、シャンフロという世界を考察し、研究し、解明するためのクラン【ライブラリ】を設立もした。今では、多くの知識の輩や同好の士が集まる場所となっている。

 

 そんな彼にとって、最近は驚くべきことの連続だった。キッカケはペンシルゴンであり、そこから出会ったのは彼女の妹という人物。人物も当然評価しており好感の持てる上に素晴らしい逸材だとも思ったが、姉であるペンシルゴンと本人から聞かされた事実に腰を抜かした。彼女、今や己のクランの一員であるシグリンデは最強種と関わりを持つ存在だった。

 

 自分達は歴史の立会人、目撃者となるだろう。そう感じてからはまさに目まぐるしく出来事は起こった。今まで未発見だった最強種、墓守のウェザエモンの踏破。そして最近シグリンデが連れ帰った、リューネというNPCの少女の生い立ち。黄金の竜王の眷属にして、またもや未判明だった最強種、無尽のゴルドゥニーネという存在に関わりを持つ存在。その少女も今ではクランで保護され、ホームとなっている王立図書館の看板娘のような存在として日々のクラン活動を手伝ってくれている。

 

 キョージュにとって今最も熱いのはシャンフロだったのだ。クランには様々な分野の専門家たちが集い、日々多くを研究し、考察し、解明する。そうしてもしかすると、帰ったら新たな報告があるのではないのか?そう考えてしまい、それはもう物凄い勢いで彼は自宅へと帰宅したのだ。そうして、今に至る。

 

「おじいちゃんナイスタイミング!いやー、実は私からも色々と話があってね」

 

「ほう、それは奇遇だね。私からも君へと話があったところだ」

 

 なお、この時オイカッツォとシグリンデはといえばリューネの話し相手兼遊び相手になっている。恐らく話の主軸になるのはこの二人だろう、そう察したためだ。

 

「じゃあ、コホン。 ……ウェザエモンの件でのご助力、加えて私の妹の件について本当に感謝しています。お会いしたい、と思っていたのはそれについてのお礼を申し上げたかったのと、別件。この度、クランを設立しましたのでそのご挨拶に伺いました」

 

 思わずオイカッツォは首をものすごい速度でペンシルゴンへと向けて信じられないものを見たような眼をしていた。対してシグリンデは慣れたようなものだったが。

 

 ペンシルゴンはしっかりする時はしっかりしている。ちゃんとした場においては礼儀を弁えているし、今回のような件。特に彼女としてはウェザエモンのことでの資金援助やクランの幹部を動員してまでの助力、そして約束と契約を守り。それどころかそれ以上に妹のことについて味方してくれていることに対して、礼を尽くさなければならないと考えていたのだ。

 

「ご丁寧に痛み入る。その礼は受け取らせてもらうが、そこまで真面目になる必要はないと思うがね、アーサー・ペンシルゴン。私とて、確かにシグリンデ君や君達に肩入れする意志だけではなく、クランとしての打算あっての意志としても動いていたのだから」

 

「それでも礼儀は尽くさないといけないと思いましたので。本当に、ありがとうございます」

 

「……頭を上げ給え、確かにその礼は受け取った。どうにも真面目な君は違和感が凄くてね、いつもどおりにしてくれると助かるのだが」

 

「あはは、ならそうさせてもらおっかな。でも感謝してるのは本当に本当なんだよ、おじいちゃん」

 

「伝わったとも、実を言えばなのだがね……私の用件、というのも君達に関係してのことだったのだよ。ある意味、君達がクランを結成してくれて良かったと想っている」

 

 どういうことか、とペンシルゴンは思う。

「今回、ウェザエモンの件で我々も協力させてもらって理解したのだよ。最強種とは世界を紐解く重要な存在だと再認識してね。既に報告として上がっている、バハムートなる存在やウェザエモンとの激戦の中で見られた、明らかにシャンフロの文明レベルではない武装や、機械の獣。最近発見された神代の鐵遺跡の深部区画でもそのウェザエモンと似たような、機械の敵が確認された。やはり、神代にこそ大きな謎があり、最強種とはそこに繋がるものではないのかと考えた」

 

 しかし、とキョージュは続けた。まるで悔しそうに。

 

「正直に言おう、うちの幹部陣とも話し合ったが我々【ライブラリ】もまた最強種に立ち向かっていくことを決めた。だが、悔しいが我々には君達のような力はない。確かにシグリンデ君や、リューネ君という特記戦力は居る。防御面や回復役という意味では磐斎君、生産面では私の友人も所属しているが、クラン全体で見れば主とするのは裏方仕事のようなものだ。だが、最強種と関わることは謎を解き明かすことだけではなく歴史の目撃者になれること他ならない。 ……そこでアーサー・ペンシルゴン。いや、君達のクラン、【旅狼】と言ったか。君達に提案がある」

 

 いつか、ペンシルゴンはキョージュを絶対に逃さないというような目で見た。そのうえで、妹のことを明かし、託し、契約を結んだ。だが今度はまるで逆のようだった。キョージュが『君達を逃すつもりはない』というように、そんな鋭い眼で提案を持ちかけたのだ。

 

「我々は我々の武器と得意なことで最強種へ立ち向かおうと思うのだよ。どうかね、私達【ライブラリ】が君達【旅狼】の後援者になるというのは」

 

 思わずペンシルゴンはガタッ、という音を立てて立ち上がった。驚きを隠すこともなく。

 

「それは……願ってもないことだけど。いつかの言葉をそのまま返そうか、どういうつもり?」

 

 以前、妹を任せるにあたってそれが望みだと取引を持ちかけた時キョージュはペンシルゴンに『どういうつもりか』と聞いた。今回は逆の立場だ。あまりにも話がおいしすぎる。今の【ライブラリ】が後援者となる、それはシャンフロ内部でも最大レベルの後ろ盾を得ることに他ならない。シグリンデが【ライブラリ】の名のもとに庇護下にあるように、後援者になる。つまり、クラン同士での協力関係になるということは、クラン単位でその庇護を受けることほかならない。当然、それは無償ではないだろう。クラン同士での取り決めとなるのだから、お互いにとってメリットや承諾がなくてはならない。

 

 

「君がこうしてうちに挨拶に来ている時点で、なんとなく察しているのだよ。君達は今後も最強種に関わるつもりなのだろう?ならば、私達もその共犯者にして欲しいということさ。ウェザエモンを踏破したことで、君達には最強種との縁ができた。そして、縁があるのはシグリンデ君も同じだ。我々の目的は未知を解明すること、その中には当然最強種や神代のことも含まれている。その謎を追い求めるために、最も近くに居る存在と手を結ぶのは当然ではないかね?」

 

「はぁー……。ちゃっかりしてるなぁおじいちゃんは」

 

「もちろん、以前の君との約束も守ろう。我々は何があってもシグリンデ君、そしてリューネ君の味方だ。そしてこれからは、君達の味方でもある。できる限り物資の支援や情報の提供、そして我々の最大の武器とも言える『知識』を君達に提供しよう。どうかね?」

 

 願ってもないことだたった。ペンシルゴン個人としては、サンラク達の前では『最強種は金になる』などということを言ったが、本音は違う。絆を交わしたセツナの言葉、そしてなによりも自分が最強種という存在に、シャンフロという世界に踊らされているようで我慢ならなかった。だから、全てを白日の元に晒すと決めたのだ。セツナの言っていた世界の真実とやらも、最強種や神代の謎とやらも。全て貪り尽くして、白日の元に晒す。そういった点では、ペンシルゴンもまた【ライブラリ】と同じだった。

 

 それに。大切な妹は、自らの意思で最強種とともに歩むことを選択した。その行く末を見たい、というのもある。そして、妹とこの世界を楽しみたい、冒険したい。そう望む己も居たのだ。

 

「ウチから提供できるものなんて、殆どないよ?なんたって出来立てのクランだし。それに、最強種と関わっていくつもりでもその情報がいつ手に入るかもわからない」

 

「はは、私の勘では君達は最強種だけではなく多くの世界の謎、未知と遭遇する気がしているのだよ。例えば、未だ判明していないユニーククエストや、強大な敵などにね。私の直感はよく当たるのだ」

 

「そのための先行投資と後ろ盾、ってことかな。……カッツォくん、どう?」

 

 突然話を振られたオイカッツォは、それまで話を聞きながらリューネとボードゲームに興じていたが、ふむ。と考えるような仕草を見せて。

 

「どうせお前の考えは決まってんだろ、ペンシルゴン。俺は賛成だよ、後ろ盾が出来てあのうっとおしい追いかけとか諸々がマシになるならこれ以上のことはないよ。あいつらのせいでまともにレベリングや探索も出来やしない。それに、俺達だけじゃ知識や情報関係のことはどうにもならないことあるでしょ、そのあたりが改善されるのはこいいことだしね。後ぶっちゃけ、クラン同士で協力関係になるってことは戦力借りられるってことでしょ?なら、今後も合法的にシグリンデやリューネを借りられるってことだし、場合によっては他の戦力も借りられる。これ、かなりデカいよ」

 

 事実そうなのだ。そしてそれは、ペンシルゴンも理解していた。ここで手を結んでおけば、今後協力関係ということでシグリンデややリューネを戦力として借りられる。特に、この二人は間違いなく最強種に関わってくることから【ライブラリ】としても自由な行動を許可したうえで他のことも協力してくれるだろう。

 

 ペンシルゴンの答えは、決まっていた。

 

 

「わかったよおじいちゃん、約一名行方をくらませてるから事後承諾させるけど私達と【ライブラリ】の協定を結ぼう」

 

 そして、と付け加えて。

 

 

「早速で悪いんだけど、ちょっとおじいちゃんには協力してほしいんだよね。ちょっとした悪巧みの、ね。 ――他のトップクランを巻き込んだ、私達とそっちは談合済みの会談の話をしよう」

 

 そうしてペンシルゴンが早速持ち出したのは、【ライブラリ】と【旅狼】のり協定とは別、このふたつのクランが裏で結託していることを極力秘めた状態で、他のトップクランを巻き込んで同盟を結ぶという悪巧みだった。

 

 




■ペンシルゴン
 腹黒策略家の外道にして妹溺愛系の姉。最近妹が増えて「私こそがお姉ちゃんだ」という状態になっている。普段の外道っぷりのせいであまり知られていないが、礼儀には厳しい。リアルでもそれは同じで、仕事関係の挨拶回りやお礼などはちゃんとしている。人の上に立つということに関しては天才という他なく、更には人を惹きつけるカリスマ性も持ち合わせている。といっても、本人はそういうのは柄ではないと言っており、どこまでも刹那主義の享楽主義者である。

■キョージュ
 リアルでは本物の天才。拙作ではマッシブダイナマイトこと、桜さんとの間に息子が一人いる。年齢はカローシスとヤシロバードの中間くらい。この時点ではまだ未登場だが、某ミホヨワールドの草の国の書記官みたいな見た目をしているリアル学者。未婚。

■あとがき
 原作より勢力を大きくした【ライブラリ】が正式に【旅狼】の後援者になりました。なのでサンラク達はサポート面でかなり強固な状態になりました。キョージュの息子さんはそのうち出てくる。
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