鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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軈て『強欲』へと至る龍

「沢山品質の良いのがあってよかったね、リューネ」

 

「うん!ラビッツの人参を使わないと、おいしいのが作れないから……」

 

 【ライブラリ】と【旅狼】の協力関係が決まった翌日、シグリンデとリューネはラビッツを訪れていた。目的は、ラビッツ産の食材の調達と、ビィラックへの顔見せである。特別用があった訳では無いが、以前訪れた時はヴァイスアッシュとの話や弓の件もあって『兎御殿』をしっかりと見ることは出来なかった。なので、何やらペンシルゴンが企んでいる企みまでの待ち時間に見て回ろうとと考えたのだ。

 

 因みに。シグリンデはすっかり失念していたウェザエモンの報酬のことをちゃんとキョージュへと報告している。防具は自分が、そしてインベントリアはリューネが使用することも報告しておりその詳細についても伝えている。特にインベントリアについての情報は機密扱いで、幹部陣までしか公開されないこととなったが。

 

 そして『世界の真理書【墓守編】』だが、これを取り出してキョージュへと手渡した時は、それはもうその場で飛び上がってアワアワと震えていた。シグリンデとしては、報酬についての報告が遅れ、この書物について渡すのが遅くなったことを申し訳なく思い謝罪したのだが、キョージュからは気にしなくていいという言葉とともに

 

 

 ――『シグリンデ君……い、いくらかね。いくら払えばその書物の権利を譲ってくれるかね……!』

 

 

 と、懇願するように迫られた。あまりの迫力、しかもどう見ても魔法少女の見た目の相手がハスキーボイスで血気迫るようにしてそんなことを言ってくるのだ、流石のシグリンデも引いた。困ってるところに丁度セートと磐斎が通りかかり助けを求めたところなんとか助かった。

 

 二人にもその書物と整理品について説明を行い、それはもう驚かれたが書物に関してはキョージュのように発狂はしなかった。だが『まあキョージュですし……』と二人共呆れていたが。ともあれ、二人でなんとか興奮するキョージュを宥めていた。しかも、セートに至っては『奥さんに若い女の子に旦那さんが迫ってるって連絡しますよ?いいんですか?』と割とガチ目に言われた。流石にキョージュも冷静になった。

 

 別にシグリンデとしてはマーニを取るつもりはなかった。そもそもこれは所属する【ライブラリ】にとっては情報の塊であることは明確だったし、自分はそのクランに所属している。その上、ウェザエモンの件だけではなく自分のことやリューネのことでも骨を折ってもらい、世話にもなっている。そしてこれからもなるだろう。ならばこれは、クランへと献上するのが筋だろうと考えてその旨も伝えた。

 

 とにかくキョージュからは礼を言われた。今後似たようなものや別の文献を見つけたら今度はすぐ届けると伝えたら雄叫びを上げてガッツポーズをしていた。ハスキーボイスの現実では高名な考古学者が、魔法少女姿でである。

 

「それにしてもリューネ、料理上手だよね。どこで覚えたの?」

 

「……わたしが竜王様の眷属になる前、ずっと逃げている時によくしてくれた人間さん達が居たの。古くて、ボロボロのおうちで。でもとてもあったかい場所だったんだ。そこの人達から教わったの、『旅をするなら、ご飯くらい自分で作れないとね』って言われて」

 

 悔しそうで、悲しげににそう言った。まるで、泣くのを我慢するようにして。

 

「わたしは欲張りだから、色んな物が作れるようになりたくて沢山教わって。そしたら、いろんなものが作れるようになってた。 ――でも、わたしはあの人達を守れなかった。逃がしてもらうだけで、恩を返せなかった」

 

「まさか、追手だった頂点個体に?」

 

「うん……その人達も、わたしとずっと一緒だった眷属も、みんなあいつに奪われた。だから、わたしはあいつが許せない。わたしの大事なものを奪っていくあいつを、許せない」

 

 ただ生きたいだけだった。ただ知りたいだけだった。ただ自分のそんな欲求に忠実に、歩いていきたいだけだった。なのに光を奪われ、踏み躙られ、傷つけられた。狂ったように笑う、嗤う、嘲笑うあの声をよく覚えている。かつては無力で、ただ逃げるだけだったが今は違う。許さない、これ以上は奪わせない、そんな勇猛果敢なる想いの炎が心の中に燃え盛っている。

 

「わたしは、あいつに立ち向かうよお姉ちゃん。だから……お姉ちゃんやみんなの力を貸して欲しい」

 

 最早奪われるだけの少女は居ない。ここに居るのは凛とした気高い意思を持つ存在。

 

 

 

 多くの旅路を経て。軈て、『龍』へと至るであろう少女なのだ。

 

 

 

    ――『ユニーククエストEX『龍孵邁進、昇龍の如し』を開始しますか?』

 

 

 

 思わず目を見開いた。ユニーククエストEX、それは最強種の中核へと進むためのものだ。そしてそれが今出たということは、これは恐らく。無尽のゴルドゥニーネへと続くものだろう。

 

 

「リューネがそう望むなら、私は、私達は力を貸すよ。それに王様だって、あなたの味方だよ」

 

『うむ、無論だ。リューネがあやつへと立ち向かうと言うならば、それは即ちあやつは我の敵ということだ。 ――嗚呼、奪わせぬとも。我も奪わせるつもりはない、我が眷属を傷つけることなど、絶対に許さぬ』

 

 ジークヴルムの考えもまた決まっている。ゴルドゥニーネは自身と同じく神代の存在かも知れない。自身の明確な敵と定義する存在達ではないかもしれない。だが、己の眷属を傷つけ、悲しませ、奪おうとするならば。それは等しく自身にとっての敵なのだ。同時に、ジークヴルムは確信もしていた。この少女こそ、何れは己と同じ頂点とへ至る、言わば『次世代の頂点』となる存在なのだと。蛇は小龍となりて、軈ては龍となる。そう確信していた。

 

 迷わずシグリンデは承諾のボタンを押した。少なくとも、リューネを傷つけようとする以上無尽のゴルドゥニーネ、その頂点個体は明確な敵だ。ヴァイスアッシュからも聞いていたが、その存在はラビッツにとっての敵でもあるのだという。

 

「ビィラックへの顔出しついでに、何か話を聞けるといいんだけどね」

 

 ひとまず、当初の目的通りビィラックへ顔を見せに行こう。そう考えて足を進め、兎御殿にある鍛冶場へと到着。足を踏み入れると。

 

 

「ふはははは!どうだこの水晶群蠍の素材の山は!  え?あれ、え。なんでここに……?」

 

「……サンラク?」

 

 

 想定外の人物が目的地に居た。そして、その人物は完全に動きを固まらせて。油の切れた機械のようにただですら蒼い鳥面を真っ青にして向けてきた。

 

 

      ◆     ◆     ◆

 

 

「あの、これには深い訳が」

 

「あー……うん、詳しくは聞かないよ。でもアーサーとかオイカッツォがサンラクを探してたよ?多分怒ってるような感じだったけど、なにかした?」

 

「心当たりがありすぎて……!あの、シグリンデさんお願いが」

 

「さんはいらないよ?予想はつくけど、何?」

 

「ここにいたことは黙っておいていただけると……」

 

「事情がありそうだね、いいよ」

 

「あの二人と比べると本当シグリンデが神に見える。なんて慈悲深い良心の塊なんだ。あいつらなら骨の髄までしゃぶりつくしてくるぞ……」

 

 大変なそうだなあと思う。しかしシグリンデも言っていないことがある。それは、ペンシルゴンの企みであり、そして、サンラクが居ない場所で色々とあったということだ。それについては本人が二人から聞いたほうがいいだろうと判断したからだ。

 

「えっと、色々聞きたいんだけどいいか?あー……まあ、秘密にしてくれるなら俺もなんで居るのかとか諸々話すぞ」

 

「うん、聞きたいことがあるならどうぞ。わたしもなんでサンラクがここに居るのか気になったし。そっちからでいいよ?」

 

「情報の略奪や恐喝もされずまともに話や取引が成立している……バグか……?いや、これが正常なんだよなあ、あいつらがおかしいだけで。 ――っと、悪い。じゃあ聞いてもいいか?なんでラビッツ、『兎御殿』に?ここってその、ほら。特殊な相手通さないと入れない筈だろ?例えば……ほらエムル、挨拶してくれ。前に話してた、ウェザエモンを一緒に倒したって仲間だよ。まだシグリンデとは顔を合わせてなかっただろ」

 

 言われ、前に出てくるのは白い毛並みにシルクハットを被った兎。ヴォーパルバニーだった。

 

「はじめまして!サンラクさんからお話だけは聞いていましたが、お会いできて光栄ですわ!私はおとうちゃ……カシラの娘のエムルですわ!」

 

「娘ってことは……ビィラックの妹さんか。よろしくね、私はシグリンデ、サンラクの仲間だよ。それでこっちが」

 

「はじめまして、リューネです。よろしくね、エムルちゃん」

 

 挨拶も程々に、リューネには当初の目的通り暫くビィラックと話をしてもらうことにした。一緒にエムルとの交流も深められるしいい機会だろうと思い、『ちょっとサンラクと話があるから、二人とお話してて』と伝えるとサンラクへと手招きして鍛冶場の外へと出る。

 

「どこから話したもんかな……その、俺がここに居るのはユニーククエスト絡みでさ。ラビッツにもエムルを通して来てるんだ。ここに居るってことは、シグリンデも会ったのか?その、ほら、とんでもない気迫を持つNPCというか」

 

「組長さん……ヴァイスアッシュのこと?うん、会ったよ。私の場合は王様関係で会ったんだけどね。それで色々あって、こっちには自由に来れるようになってる」

 

「ジークヴルム絡みってことはユニーククエストか?」

 

「ううん、組長さんのことでクエストは発生してないよ。ただ会って、今後とも是非子供達と仲良くしてほしいし国を見ていってくれると嬉しいって言われて」

 

「なるほどなあ……。あーっと、気になってることがあるんだけどいいか?」

 

「うん、何?」

 

「話しにくいことなら別にいいんだが……。あのリューネって子は、何者なんだ?少なくともプレイヤーではないし、人型NPCを連れてるのは珍しいと思ってさ」

 

 サンラクとしては、何気ない質問だった。もしユニーク関係で答えにくいことなら別に話して貰う必要もないし、無理に聞こうとも思わないという考えだった。だが、彼のそんな考えは別方向に裏切られることになる。

 

 

「サンラクにも話しておこうかな。可能性として、今後色々関わってくるかも知れないし……ラビッツに居るならなおのこと、かな?」

 

「んん?どういうことだ? 別に無理に聞こうとは思ってないから、言いにくいことなら本当にいいぞ」

 

「いや、話しておくよ。 ――リューネは、王様の眷属の子なんだよ。そして、未確認だった最強種、『無尽のゴルドゥニーネ』に関わる存在でもある」

 

 

 

 サンラクは想定すらしていないとんでもない言葉に、言葉を失った。

 

 

 

 




■リューネ
 料理や生活能力は逃げている途中、人間の営みの中で教わった。自分の眷属や人の営みを知る切っ掛けとなった人間達をなぶり殺しにされて頂点個体に対しては完全敵対を示している。黄金の竜王の加護に権能保有、本人の成長素質◎に加えてNPC側で言うとラビッツやヴァイスアッシュも味方側なので現在の頂点個体はほぼ詰んでいる。

 『強欲(グリード)』に関する特大のトンデモスキルが鼓動を始めている。

■ジークヴルム
 現在の無尽のゴルドゥニーネの頂点個体に対しては敵対意志を示している。眷属のリューネへの仕打ちに加えて、自分の縄張りに踏み入り放置できないレベルで暴れたこと、加えて現在の守護対象である人間や開拓者の敵になりかねないという判断から敵対対象として認識している。

 特にリューネへの仕打ちは完全にブチギレモードのようで、本人が直接世界飛び回って頂点個体を殲滅しようかと思ったらしいが思いとどまった。あまりにも世界に対する負荷が大きいと判断した模様。ただし、自分の味方の竜族や龍族には『殲滅対象』として本人直々の大咆哮により勅令を出している。なので現在の頂点個体は大半の竜種や龍種から敵対認定されることになる。

■サンラク
 見つかってしまったがまだ見つかってもいい相手だったのでセーフ。言い訳考えてたらとんでもない爆弾(新しい最強種関係)を投げつけられてフリーズした。

■あとがき
 ちらりとリューネちゃんの根源と言うか、本質の能力が垣間見えました。複数の最強種の因子を保有しても問題のない存在で、本質が『強欲』、頂点個体のゴルドゥニーネとは記憶が相違しており、分身体にしては存在が異質。一体何者なんでしょうね。

 正直現在のゴルドゥニーネの頂点個体がとてつもなく不味いのは、覚醒に進んでいるリューネとサンラク達一行を敵にしたということもそうですが、ジークヴルムとヴァイスアッシュ、なんならそれとは別でとある最強種も敵にしているのがとても不味い。色んなところに喧嘩吹っかけた結果とんでもないことになってる。
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