鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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ユニーク所持同盟、結成

 本当にただ純粋な疑問を聞いてみただけだった。もしそれが彼女にとって答えにくいことなら、自分は一言謝罪してそれ以上聞かないつもりで居た。少なくとも、外道仲間二人と違ってサンラクから見て彼女はかなり『まとも』だ。自分にも礼節を尽くしてくれるし、ならそれを返さないのは失礼だろうと思っていた。

 

 だが。まさか返された言葉が言葉を失うレベルのとんでもないものだとは誰が予測しただろうか。

 

「無尽のゴルドゥニーネ……?おい、おいおいおい……!まさか、名前的にそいつは……」

 

 嘘だろう、と頭の中で思った。だが、同時に元々かなり高いサンラクの頭の情報処理能力と、クソゲーで鍛えられた判断力や直感は告げていた。『間違いなくそうだ』と。

 

「判明していた最強種はリュカオーン、ジークヴルム、クターニッド、オルケストラ、ウェザエモンの5体だった筈だ。だが、最強種は7体居るとされている。そのゴルドゥニーネってのは、つまり――!」

 

「……察してる通りだよ。6体目の最強種、それが無尽のゴルドゥニーネ。ただ、私もリューネや王様からの話を聞いただけで姿を見たわけじゃないし、持っている情報はすべて口伝て。でも、明確なことがわかってる」

 

「明確なこと?」

 

「ゴルドゥニーネは明確な敵だよ。王様が敵と判断した、っていうのもある。でも、あの子。リューネから多くのものを奪い、王様が助けたから助かったけど命を奪われる一歩手前まで行ってた。これは推測だけど、無尽のゴルドゥニーネは蛇に関係する最強種。そして、極めて凶暴性が高い。更に言うなら、私達が今いるこのラビッツ、そしてヴァイスアッシュの敵だよ」

 

「――詳しく聞かせてくれ。どうやら、本当に俺も無関係じゃなさそうだ」

 

 ラビッツとヴァイスアッシュに関わる。そう言われた瞬間、サンラクは更に真剣さが増した。それはそうだろう、ゲーマーという視点で言えば現在自分が保持しているラビッツ関係のユニーク関係に関わってくる可能性がある相手で、しかも凶暴性の高い最強種ときた。感情でも言えば、散々世話になっているエムル達やヴァイスアッシュ、それどころかこの国自体の敵と聞いて黙っていられるはずがなかった。

 

 シグリンデもサンラクを信用している、察しても居るが彼なりに事情があってここにいるのだということも理解している。それを踏まえて、ペンシルゴンやオイカッツォ、クランのキョージュ達へと伝えてあることをサンラクへと話した。

 

 リューネがどんな存在なのか、何故ゴルドゥニーネと敵対しているのか。そして、その存在は既にジークヴルムとも関わりを持ち、彼女の中には複数の最強種の因子を保有しているということも。

 

「ちょっと頭が追いつかないが、大体は理解した。いや、インベントリア持ちのNPCって……しかもビルド的にマジで歩く決戦兵器じゃねぇか……あんなちっちゃい見た目してとんでもなくエグいことできるのな…… ――最強種二体、下手するとそれ以上と関わりのあるNPCか。しかも、これは俺の勘だが、それだけじゃ済まない気がするな。なんつーか……凄い重要な存在だと思うんだよ、あのリューネって子は」

 

 二体の最強種の因子を持っている。ここにサンラクは引っかかった。それは話を聞いたペンシルゴンやキョージュも同じことを考えたのだが、そんな存在は前例がないのだ。

 

「……よしわかった。シグリンデ、提案がある」

 

「提案?えっと、何?」

 

「察してると思うが、俺は自分が持っているユニーク関係のことや情報を全てペンシルゴンやカッツォに明かしてるわけじゃない。正直言うと、ラビッツに居ることがお前にバレたのも、事故みたいなもんだしな」

 

「私だってここにサンラクが居るとは思わなかったよ。そもそも、ヴァイスアッシュと繋がりがあるとも思ってなかった」

 

「お互いそんな感じで想定外だった、ってことだ。俺から提案したいのは……俺と協力関係を結ばないか、シグリンデ」

 

 どういうことか、そう思いシグリンデは続きを待った。

 

「俺が今関わってるユニーク関係の情報については、そっちに知らせる。その中にはリューネにとって有用な情報もあるかもしれないし、その正体が未だによくわからんゴルドゥニーネってやつのこともわかるかもしれない。とにかく、ユニーク絡みの情報は出来るだけそっちに提供する。そのかわり、俺から聞いた情報。少なくとも個人間で共有されるユニークの情報については、秘匿して欲しい。ペンシルゴンやカッツォ、悪いが【ライブラリ】への報告もしないでほしい。もし今後手に入れた情報を報告する場合、一度俺に相談とかして欲しい。そして、そっちが手に入れたユニーク関係のこと、特に『ラビッツ』とヴァイスアッシュ、後は……可能ならリュカオーンに関する情報を提供して欲しい」

 

「私は別にいいけど、でも私には【ライブラリ】への報告義務があるから、サンラクがまあ、言っちゃえば独占しているもの以外の情報は報告するよ?」

 

「それについては好きにしてくれ。後はそうだな、戦力が必要な時、手を貸してほしいんだ」

 

 サンラクとしては、ここで彼女と手を結んでおくのは大きいと思ったのだ。オイカッツォやペンシルゴンにはそんなことはおいそれとは言えない。というのも、下手なことを言ってしまえば情報を根こそぎ取られる可能性があったからだ。

 

 だが、シグリンデの場合は違う。お互いにユニーククエスト保持者、しかもラビッツやヴァイスアッシュという共通の繋がりを持っている。いわば、取引をするならば対等の相手だ。しかも、彼女の実力をサンラクはよく理解していた。ウェザエモンとの戦いでは背中を預け、共にあの【天晴】に打ち勝ったのだから。

 

 シグリンデという強力な戦力を取引相手として引き入れ、そして聞くだけでもかなりの強さを持っていると思われるリューネというジークヴルムの眷属の少女。二人を戦力として迎えられるのは大きい。何より、サンラクとしては対等な取引相手という以外では、リューネの身の上を聞いて、少しでも力になってやれれば。という気持ちもあった。それに彼女は、どうやらジークヴルムやヴァイスアッシュという存在にとっても目をかけられているし、エムルやビィラックにとっても親しい友人になりえる存在だろう。だから、感情的な面で見ても力になりたいと思ったのだ。

 

「……まるで、共犯者。二人だけの秘密みたいだね」

 

 悪戯に成功したような。小悪魔とでも言うべきか、魅惑的な笑みでそんなことを言われて思わずサンラクは動揺してしまった。

 

「おいおい、今のセリフペンシルゴンに聞かれたら俺吊るされちまうよ」

 

「ふふ、でも事実そうじゃないかな? ――いいよ、サンラクの提案に乗る。共有しているユニーク、それに関係することについては情報の共有と有事の際は手を貸すよ」

 

 

「心強いぜ。よろしく頼む、シグリンデ」

 

 

      ◆     ◆     ◆

 

 

「ところで、サンラク」

 

「ん?どうしたんだよ」

 

「ちょっと聞きたいことがあるんだけどいいかな」

 

「おう、いいぜ」

 

「さっきビィラックに水晶群蠍の素材見せてたよね。あれ、インベントリアに突っ込んだ?あの素材、リューネが倉庫整理してる時に見たって言うんだよね」

 

「ああ、確かに入れたが……どうかしたのか?」

 

「……多分墓穴掘ったと思う」

 

 思わずサンラクかは固まった。どういうことかと。シグリンデの表情は真面目そのものであり、恐らくこの話も善意で何か言おうとしているような、そんな感じがした。

 

「私も書物で見たことあるけど、水晶群蠍って水晶巣崖って場所に居るんだよね。それで、モンスター生息についての本では、現状水晶群蠍って水晶巣崖でしか確認されてない。 ……本当は中立で何も言わないべきなんだけどまあサンラクはこうして協力関係になったし、考えすぎかも知れないけどあることを考えてね」

 

 嫌な予感がした。そう、とても嫌な予感だ。

 恐らく、自分はとんでもない取り返しのつかないミスをしたのだ。

 

「インベントリアって、所有者で共通のアイテムインベントリだよね。……つまり、アーサーやオイカッツォも格納空間に入れる。実際、私は入れないけどリューネは中で何度か二人に会ってるんだよね。つまり」

 

「素材から、俺のいる場所とルートが特定された……?」

 

「多分というか、間違いなく。アーサー凄く頭が良いから、特定されてると思う」

 

 不味い、とてつもなく不味いとサンラクは思った。しかも最悪なのは、今更計画やルートを変えてどうこうできることではないということだ。

 

「これも一応教えておくけど……昨日、クラン関係のことで二人に会ってるんだよね。そのクランのことのあと、二人はすぐ足早にどこか向かったんだよね。『ちょっとやることがあるから』と言って」

 

「――詰んだかも知れない」

 

 間違いなく二人は自分を探している。そして、インベントリアに入れた素材から場所まで特定されている。加えて言うなら、『規格外エーテルリアクター』の修理のために自分が動いているのも知っている。

 

 本来、別に知られるのはいい。だが今は状況が違う。自分は二人から来ていた、明らかに面倒事の気配がするメールを無視していたのだ。そんなことをして、二人がどういった行動に移すのかというのは想像に容易い。伊達に付き合いの長い外道仲間ではないのだから。

 

 二人には破損している『規格外エーテルリアクター』の件は任せて欲しいと言ったのもあり、その修復を放置して逃げに走るのは論外。そちらのほうが恐らく何を言われるかわからない。しかし、逆に事を迅速に終わらせても駄目だ。最終的に二人には報告をあげないといけない。

 

 つまり、最初から詰んでいるのだ。嫌な予感がするから、という理由で二人からの連絡を無視した時点でどうやっても結末は決まっている。サンラクはここで選択を誤ったことを悔いた。こんなことなら、あの時素直に自分優先ではなく二人への対応をしておけばよかったと。

 

「シ、シグリンデ……なにか方法は……ここから入れる保険は……!」

 

「ごめん、無いかな。もう言っちゃうけど、二人が怒ってる理由もなんとなく予想はつくんだけど、多分サンラクが今回は悪いと思う」

 

「……覚悟だけはしておくかぁ」

 

 間違いなく訪れる未来、それも遠くないそれを考えてサンラクは悔いるとともに疲れたようにしてため息をついた。

 

 

 




■サンラク
 共犯者、もといユニーク保持仲間を確保。『二人だけの秘密がある』なんてことをペンシルゴンに聞かれた日には、ハイライトの消えた瞳に笑顔も消えてるマジモードのペンシルゴンに吊し上げにされる。プロット時点では幾つかルートを検討していたが、その中にはサンラクルートは存在した。なおボツ案。

 リューネについては、身の上を聞いてプレイヤーとしてだけではなく一人の人間としても何かしてあげたいと思ったのだが、なにかとてつもないものを感じ取った。『ただのユニーク関係のNPC』というだけではなく、もっと深い何かの根幹に関わるのではないのか、という確証のない直感を感じた。

■あとがき

 ――根源覚醒、【強欲】(グリード)覚醒率 15%
    始源覚醒、【■■】、未覚醒 0%


 サンラクくん、君の直感は大体当たっているよ。

 
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