鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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クラン連盟会議:後編

「ありがとねサンラク君、貴重なリュカオーンの情報を提供してもらって」

 

「まあいいってことよ。見返りももらったんだしな。それに、俺が一番欲しかったのは確証だ。それが手に入ったのは大きい」

 

 クランが集まっての会談、その最初に行われたのはサンラクに対する質疑応答だった。クラン【SF-Zoo】からはラビッツへの滞在方法について、と言われたがそれはエムルに丸投げをした。エムルとしてもクランリーダーであるAnimaliaが相当に怖かったのか、サンラクから『確認取れるか?』と言われると大義名分を得たと言わんばかりに脱兎のごとくラビッツへと逃げた。無論、ちゃんと確認は行ったのだが。

 

 そして。【黒狼】から打診されたのは、夜襲のリュカオーンに関する情報だった。これについては、事前にペンシルゴンや【ライブラリ】側と打ち合わせ通り、リューネへの集中を回避するために一種の撒き餌のような形でリュカオーンの情報を提供する手筈になっていたが、サンラクには相手側。つまり、【黒狼】側に対して要求するものの裁量権が与えられていた。

 そうして彼が【黒狼】へと要求したのは、呪いの解除方法とその融通、そして先立つもの。つまり、多額のマーニだ。サンラクとしても貴重な情報を渡すのだ、ただ呪いを解除するだけの融通だけでは割に合っていないと思ったのだ。そこで要求したのが、マーニだった。

 

 これからの活動においても先立つものは必要だ。それに、何かと入り用でもある。だからサンラクは呪いの解呪の他にマーニを要求したのだ。そうして、『誠意としてはこれくらいか』と言われ渡された金額で思わず飛び上がることになるのだが。

 

 そして最後に。これがサンラクにとっては最も重用なことだった。それは、あることについての確証を得るためだ。

 

 サンラクはリュカオーンと戦った時、とある行動により戦闘不能に追い込まれている。だが、戦いの中で自分は一切ミスをしていないという自信があった。にも関わらず倒されたのは、理解できないモーションのせいだった。

 

 突然、リュカオーンが消えたと思ったら目の前に現れていた。それが何らかのギミックなのか、それとも理由があったのか不明だった。だからこそ、サンラクは情報を提供すると同時に、その謎についての確証を得るために問うたのだ。

 

 この場にいるのは、【黒狼】と【ライブラリ】、そして【SF-Zoo】だ。サンラクの問いに対してそれぞれのクランは考え込んだ。生物についての謎、ということで【SF-Zoo】のAnimaliaの表情も真剣なものだった。そうして、有益な情報はなかったもののトップクランからの意見である確証を得ることはできた。

 

 まず、【SF-Zoo】から。シャンフロのモンスターの多くは、その体格に応じたモーションを忠実に再現されている。よって、明らかにその体格からあり得ないモーションや行動というのは考えにくいということ。次に【黒狼】、事例としてその戦闘不能に決め手になった攻撃の前後がなにかのトリガー、もしくはギミックである可能性が高いということ。少なくとも、何の前兆もなし目の前にモンスターが湧くことはシステム上ありえない、ということからそのあたりの何かが怪しいということ。

 

 そして【ライブラリ】からの意見。それが、サンラクにとっては何かをつかめるかも知れない、と考えられた決め手だった。ユニークモンスターとは、ウェザエモンの事例から考えるとその名前に関する何かを持つ、という可能性が高い。つまり、【夜襲】という名前に関係してくるなにかではないのかという意見が出た。夜から連想されるもの、例えば闇であったり、星であったり、月であったり。先に【黒狼】や【SF-Zoo】から出た意見と同時に、『その名が存在を示す』と考えるのもひとつかもしれない、と。

 

 サンラクは提供された情報を瞬時につなぎ合わせた。つまり、あの自分が敗北する決定打になった何かは咆哮や、足を止めるような動作などがトリガーとなっている可能性があり、それは恐らく『夜』に関係するなにかだ。

 

 明確な何かを掴めたわけではない。だが、確証は得た。

 あれは、恐らく名に関係するギミックだと。

 

「さて。サンラクくんへの質疑応答はほぼ終わりかな?じゃあ次の議題に移ろうか ……対象は、此処に居るクラン全員」

 

 全員の視線が、ペンシルゴンへと向いた。

 

「ここに集まってるクラン全員で、クラン連盟を組もう」

 

 

     ◆     ◆     ◆

 

 

「なんとも今日は驚かされてばかりだな……しかし、本当に驚いたぞ。いつから始めたんだ?」

 

「ほんの少し前だよ。二ヶ月くらい前かな?知り合いのゲーマー……といってもツ担さんだけど。あの人との話で話題になって、それで」

 

「昨日あったときもやっている素振りなんて一切なかったのにな……むしろ、GGCへの話の関係のほうが気にしているようにも見えたぞ」

 

「GGCの話は本当突然だったし、私も驚いてたんだよ?事務所なんてスケジュール調整とか大変だったらしいし。まあ、今ここには私とモモしか居ないから言うけど、予定してた収録とかラジオ番組、後案件配信とかイベント関係、全部GGC関係の諸々でズレて再調整になった」

 

「……うわあ」

 

 エイドルトのとあるカフェ。個室を借りられるそこで二人並んで座りながら話し込んでいるのは、シグリンデ。そして、サイガ-100だった。会議は問題なく終わり、クラン連盟についても全員が同意した。終了後、ペンシルゴンはサイガ-100に『いい?妹に変なこと聞いたり探り入れようとしたらひどいからね?』と言い残してログアウト、どうやら明日は早いらしい。オイカッツォもそのままログアウトしており、サンラクはやることがあるからと言って解散となった。

 

 そうして、シグリンデから聞かされた少なくとも自分も無関係ではないその話を聞いて、サイガ-100は顔を引き攣らせてため息を付いた。ほぼ全てのスケジュールの再調整、それは地獄そのものなのだ。全ては、無理矢理食い込んできたGGC関係の仕事のせいだった。

 

 本来、そんなことは彼女の場合あまりないのだが、今回はGGC側が強引だった。なんとしても当日にシークレットゲストとして出て欲しい、と食い下がってきたのだ。その結果、かなり忙しいスケジュールとなってしまった。

 

「私が言えたことではないが、お前は大丈夫なのか?そのスケジュールでちゃんと休息は取れるのか?」

 

「一応ちゃんと取れるようにはなってるよ。暫くは合間に余裕があったからシャンフロ楽しもうかなとか思ってたんだけど、かなり時間減っちゃった」

 

「ウチの出版社にも流れてる情報だが、今回の件でお前の関係者のプロゲーマー達から結構苦情殺到してるらしいな、GGC運営側に。まあ確かに、やり口が強引過ぎるのは確かなんだがな……。既に予定されてるスケジュールに横入りする形だ、各方面から苦情は出るだろう」

 

「私もなんで今回の、なんていうのかな?GGCのオフィシャルゲストみたいな形でオファー来たのかよく分かってないんだよね。事務所も知らないみたいだし」

 

「……でもゲーマー界隈では有名だものな、お前。だからサプライズゲスト、という形なのかも知れないしな。一般にゲストとして公開されるのも、確か当日でシークレットゲスト扱いだろ?」

 

「まあ正確には、私と『ツ担々辛麺』さんなんだけどね。出版社にはもう情報行ってるんじゃないの?記事とか特集の関係あるでしょ?GGC終わった後の」

 

「まあ、来てるな。ともかく、他の特集でも取り上げるから知ってるが、本当に結構な多忙になそうなんだから身体は大切にしろ。なにかあったらペンシルゴンのやつが暴れるぞ」

 

「アーサーのほうはGGCのあたりあんまり忙しくないらしいんだけどね……」

 

「ちなみに、ゲストの話あいつには?」

 

「言ってないよ。モモは出版関係者だしGGC開催側にも関与するから別に話せるけど、アーサーは今回無関係だし。流石に関係者以外にシークレットゲストの話はできないでしょ」

 

「まあそうだな。ふふ……あいつが当日シークレットゲストがお前だと知った時の顔が楽しみだ」

 

「またモモが悪い顔してる」

 

 ははは、とサイガ-100は笑った後コホン、と咳払いした。

 

「リアルの話はこれくらいにしておこう。 ……こっちのほうでのことを幾つか聞きたいんだが、いいか?」

 

「まあ、答えられないことは沢山あるけど話せることなら」

 

「なら、殆ど駄目かも知れないな。だがそれでもいい、どうせ聞こうと思っていたことの大半はギルド内部からの要望や声だからな。聞きにくいことでも聞いてこい、と言ってくる面倒な者達が居るから困る。はぁ……頭が痛い。どうしてリアルでもこちらでもこう頭を悩ませないといけないんだ」

 

 相当にサイガ-100は参っているようだった。リアルでも付き合いがあるからこそよくわかる。今の彼女は、とにかく疲れている時の彼女だ。そういえば、会談前にキョージュと何やら話していたことを思い出す。その時にも、『元気をもらいながらなんとかやっている』というようなことを言っていた。

 

「じゃあまずダメ元だが、あのNPCの少女についてはどうだ?クラン専属NPCというのは例がないから、うちでも注目されている」

 

「話せないかな。後、友人としての個人的な忠告だけど無理になにかしようとすると『怖い人達』に粛清されるよ、忍者とか、任侠の人とか、騎士団とか」

 

「わかっているさ……私だって無理なことしてあの人達に目をつけられたくはない……!最悪、ゲーム内の経済面でまで圧力かけられて詰むぞ。後はお前のことについても聞いてこいと言われているが、それも無理だろう?」

 

「まあ無理かな。オッドアイとか剣槍のことでしょ?ちょっと話せないかな。オフレコで、話せない事情があるってだけ言っておくね」

 

「わかった、それ以上は聞かないさ。……とするなら、聞けそうなのはウェザエモンについて、くらいか。それならばクラン連盟だからということで多少は教えてもらえないか?」

 

 サイガ-100としても、クランリーダーとしての立場や面子がある。何も情報なし、というのは正直今面倒なことになっている自分のクランでは更に面倒なことになりかねない。最悪、勝手に動き出しそうな奴等が動いて、【ライブラリ】と主にそこに居る少女を守る通称『保護者会』に目をつけられかねない。そうなれば詰みだ。シャンフロでもう陽の下を歩けないだろう。

「んー……なら、あくまで私見だけどいい?」

 

「おお……!構わない、それだけでも十分だ……!」

 

 なら、とシグリンデは前置いて。

 

「サンラクも言ってた、『ユニークモンスターは戦うだけでは倒せない。物語があり、前提をクリアしてこそ倒すための段階に到れる』ということについて、私見だけど補足をしよう」

 

 

 とんでもない爆弾を投下した。

 

 




■GGCへのゲスト招待
 シークレットゲスト扱いで悠乃は招待されている。百は仕事の関係で知っているが当然部外秘。永遠は妹がGGCに仕事で参加することは全く知らない。無理にゲストとして招待したのはGGC運営だが、そのキッカケになったのは今回のGGCのおいて最も注目されているあるゲームのエキシビションに参加予定の、全米最強の少女だったりする。『通るかわからないけどゲストオファーしていいの?んー……ならニホンの声優のユノ・アマネ!彼女と会いたい!』なんてことを言った。

■永遠
 まさか妹がGGCに仕事で出演してくるとは思ってない。GGCあたりの時期は案件や収録関係でかなり多忙ということくらいしか知らない。

■悠乃
 『マヤわかっちゃった』ではなく、『悠乃わかっちゃった』が発動。シャンフロにおけるあること、もといある根幹に確信めいたものを持った様子。


■とある創造神
 『へえ、やるね。気がついちゃったんだ』
 『有象無象ではないと認めよう。 ――ようこそ『開拓者』、わたしの世界に』


■ちょっとだけあとがき
 物語の根幹に関わる部分の触りとして、どうしても開発側の事情を外せなかったのでそのうち投下予定。ちらりとだけ言うなら、開発側はジークヴルムの開拓者達への味方化は可能性の一つとして想定されていたもののありえないと考えていたてため驚いている。だがそれ以上に意味がわからないのは、リューネという存在の出現。

 創造主もまさか原初の世界(サーバー)と可能性の未来であるはずの第三の世界(サーバー)が介入してくるとは思ってもいなかったのだから。

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