鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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仮想世界(シャングリラ・フロンティア)の理に触れる者達

「これから話すのは、あくまで私見。それから、これはクラン宛じゃなくてモモ宛への言葉。そのつもりで聞いて」

 

「……わかった。聞かせてくれ」

 

 当然、シグリンデからすればジークヴルムとのことやリューネのことについては話せない。だが、それらの経験をウェザエモンの時のものに当てはめて考えたことについては、話してもいいと思っていた。

 

「ウェザエモンとの戦いで、私もサンラクと同じことを感じた。ユニークモンスターには物語がある。それらは全て、『神代』の文明につながっていて、そこに大きく関わるものだと思う。そのあたりについては、モモも予想をつけてたことじゃない?」

 

「そうだな。シャンフロの所々で確認される神代の遺物、そして今回公開されたウェザエモンの装い。それだけじゃない、ユニークモンスターとは最近生まれたものではなく、シャンフロで言えば昔から存在していたと考えられることから、そうなのではと思っていたが」

 

「サンラクも言ってたことだけど、ユニークモンスターと関わるにはまずシャンフロという世界に対する理解と考察が必要。そして中核になるのは、『神代』という過去。それらからそれぞれに該当する過去とクエストを見つけ出して、解き明かし、踏破する。恐らくこれが流れだと思う」

 

「過去に対する理解に、そして恐らく設定されている発生時用件のクリアか。確かに、武力だけでは解決しないな……」

 

「ここからは私の私見なんだけどね。……このゲームが、本当に『ただそれだけ』なのかな?って思って」

 

「……どういうことだ?」

 

 サイガ-100は真剣な眼になった。付き合いが長いからこそわかる、確かにシグリンデとは姉のペンシルゴンのように知略謀略が働くタイプではない。だが、直感や何かに対しての気付き。それは、普通の考え方では到達しないようなことも時には考え出しているのを知っている。

 

「条件があって、全てが決められていて、プレイヤーはそれを探してクリアを目指す。 ……でもそれって、今までのゲームとあんまり変わらないよね?モモだって、学生の頃少しゲームしてたよね。アーサーに誘われて、『森の妖精伝説』や『最終幻想物語』、色々やってたよね」

 

「やっていたな。……例えばああいったゲームの隠し要素には全てが決められていたり、アイテムの取得やクエストクリアには条件がある。それが定められている? おい、まさか……!」

 

 気がついた。言われ、自分は。恐らくほぼすべてのプレイヤーが見落としているそれに。

 『世界に対する誤った理解』に気がついた。

 

 定石通りのシステムにフラグといったよくあること。

 自分達はその認識こそが『当たり前』だと認識して疑わなかったのだ。

 

「神ゲーとまで言われる、間違いなく歴史に残るほど傑作のゲームが、今までのゲームとおなじシステムだと本当に思う?」

 

「ッ……まさか。だが、そうなると全てが覆るぞ!?」

 

 そう。すべてが変わってしまう。大前提としての、このシャンフロというゲームに対しての認識が変わる。

 

「ごめんね、モモ。詳しくは話せないけど、私は今までのこととウェザエモンのことで『違う』ような気がしたんだ。ただ決められたフラグを探して、決められたルートを辿って、用意されたレールの上を歩いて。そうやって進めるのが、本当に神ゲーと言われたシャンフロなのかな?って」

 

「だが、全てそうすることは不可能だ。いくらこの開発元が天才といえど、『技術世代が、時代が追いついていない』。……とするなら、限定的にそうしている?そうか。最強種、ユニーク、そしてこの世界の物語に関わる本筋、ワールドストーリーか!」

 

 サイガ-100も気がついた。そして明確な焦りを見せる彼女に対して、シグリンデは真剣な表情で頷きを返した。

 

 

 シグリンデが推測したのは、ジークヴルムとの出会いや関わり、そしてウェザエモンとの戦いやリューネ、ヴァイスアッシュとの出会い。そこから、『この世界はいわば別の世界そのものと考えるべきではないのか』ということだった。

 

 それはVRという世界に全く新しい世界を創造するに等しい。それはまさに、ゲーム業界において神に等しい御業だろう。しかし、不可能なのだ。そんなことは今の時代では絶対にできない。いくら開発元、ユートピア社や開発者である人物達が天才であったとしても、時代が追いついていない。まだ今の現代の技術では、『全てが現実世界と同じで不確定で変化し続ける別の世界』を作ることは出来ない。

 

 だが、今までのゲームと同じで、用意したレールの上をプレイヤーが歩く。それが本当に神ゲーだろうか。ただゲーム体験が素晴らしく、グラフィックが美しく、リアルさを体感できる。それでは、ただの出来の良いだけの最新ゲームだ。シャンフロという世界を創造した人間が、本当にそれだけしか考えないだろうか。そうシグリンデは考えた。

 

 

 だとするなら。諦めてはないはずだ。

 

 

 技術的に不可能かもしれない。だが、『限定的にそういった部分を作り出す』ことはできるのではないだろうか。世界全てを現実と変わりのないものとして作り出すことは不可能でも、限定的にそういった部分は作れるとしたら。そう考えて、現状の『敷かれたレール』と『変化する道筋』を考えてみると。ある答えへと行き着いた。

 

 敷かれたレールとは即ち一般クエストだ。配置されているエリアボスや一般クエスト、フィールドモンスターの挙動など大半がそうだ。そして変化する道筋とは、世界と物語に関わるもの。つまり、最強種とユニーククエスト、そしてワールドクエストだ。シャンフロという世界と最も重用な部分だけを現実世界と変わらないものにした。そう考えれば、多くに対して納得がゆく。

 

 可能性を考えだしたらキリはない。例えば、自分がジークヴルムと出会っておらず今のような関係になっていなかったら。リューネという少女が、そもそも今の状態のジークヴルムと出会わずそのまま斃されていたら。そんなあったかもしれない可能性の場合の結末も、恐らくはあり得たのだろう。

 

 キョージュから聞いた話ではあったが、シャンフロの一部のモンスターやNPCなどには極めて高度なAIが搭載されているという。その中でも、最強種やユニーク、ワールドストーリーに関わるものに対して特別高度なAIが搭載されているとしたら。完全ではないにしても、擬似的にこのシャングリラ・フロンティアという世界は、現実と変わりないものに近くなる。

 

 

「あくまで私見だよ、そうじゃないかもしれない。 ……でも、私はその可能性は高いと思ってる。この私見はキョージュさん達にも話したけど、『なかなか面白く、奥が深い議論になりそうだ』って言われたよ」

 

「……なんというか、お前の直感というか発想にはいつも驚かされるよ。ウェザエモンの話を少しでも聞ければと思っていたがとんでもない情報を手に入れてしまった。 ――ああ、これは誰にも言えないさ」

 

 言えるわけがない、そうサイガ-100は思った。仮定として、今のシグリンデの仮説がそうだったとして、それに気がついている人間がどれだけ居るだろうか。かつ、気がついていてユニークやワールドストーリーに関わっている人間がどれだけ居るのか。それを考えると、今の話がどれだけとんでもない情報なのか理解できる。そうして、それを聞いた自分は意識を変えられる。固定化されたゲーマーや今までのゲームどおりの考えから、まったく別の考え方に。

 

「これでは釣り合わないな。といっても、私が対価として釣り合うものでやれる情報はないんだ、すまないな」

 

「いいよ、あくまで仮説だし。なんの根拠もない妄言だよ」

 

「……だとしても、それは正解に近いものだと私も思う。ああ、くそ。こんなことに気がついてしまったら……やりたいと思うことも、考えることも沢山あるというのに。どうしてうちのクランはこう面倒ばかりなんだ」

 

「聞いていいのかわからないけど、【黒狼】って今大変なことになってるの?アーサーとかからはちらっとだけ話聞いてるけど」

 

「……まあ、大変だな。頭痛の種だよ」

 

 疲れたようにサイガ-100はため息を付いた。

 

「……少し愚痴になるが」

 

「いいよ、というかよくバーで聞いてるでしょ。私はアルコール飲まないけど」

 

「アレルギーだしな、お前は。……じゃあ、いつもの感じでちょっと聞いてくれ」

 

「ゲーム内で飲んでるのは、カフェの飲み物だけどね。うん、それで?」

 

「実はな、ウチのクランはいま派閥割れしているんだ。簡単に言うと、新大陸への進出やユニークのことを含めて慎重に行うべきだという穏健派。そして、多少手荒なことをしてでも新しい情報やユニーク関係の情報を手に入れてしまえという過激派だ。この過激派には困っていてな……あまりこうは言いたくないが、品性は今やPK界隈のトップクラン、【阿修羅会】にも劣ると思っている。いや、認めたくはないがあそこは最近手腕よくクラン運営をしているらしいが……」

 

 連合同士での大戦争、『連合戦争』。そこからいち早く立て直しを図りつつあるのは、今やPK界隈のトップクラン【阿修羅会】だった。現リーダーのオルスロットは、まるでエンジンがかかったようにその手腕をふるい、クランを立て直し、連合戦争によって盛り上がった対人界隈が冷めないうちに新しいPKも取り込んだ。その手腕は見事なもので、最近のクラン運営をするその姿には、本人が聴けば嫌がるだろうが好きではない方の姉、ペンシルゴンの影が見え隠れしていた。確実に二人の姉の才覚を受け継いだ未完成の天才、獅子たる彼は目を覚ましつつあった。しかも聞けば、所属はしていないもののPK界隈でも有名な人物、『京極』はよくオルスロットや【阿修羅会】とつるんでいるという。

 

「トップクランゆえのプライドの高さというか、驕りというか。自分はトップクランの人間だから強いんだ、とか自分達に逆らえるクランは少いんだし相手が小さいクランや個人なら脅してしまえ、なんて言う者も居る。そんな調子づいた者達を纏めている過激派のトップもそれと同じような考えのようでな。 ……まあ、そいつらは全員調子と勢いだけはよく『連合戦争』に参加して全滅、かなりのアイテムや資産のロストで痛手を負っているんだがな。だから焦っているのかも知れないが」

 

 ひどいものなのだ。過激派のリーダー、『リベリオス』を筆頭とした連中は連合戦争で負った痛手を取り返すために最近はPKKのようなことをしているらしいが、手を出した先は【阿修羅会】の関係者。結果は負の連鎖のごとく悲惨なもので、オルスロットが張った罠に引っかかり全滅。更に資産をロストした。しかも一度や二度ではない。何度も痛い目にあわされているのに、自分達は強いんだ、トップクランだから偉いんだという認識を変えようとしない。サイガ-100からすれば、ハッキリ言ってしまえばクランにとっての害でしかないと思っていた。

 

「ここだけの話なんだがな、シグリンデ。 ……まあ、今のうちにお前や【ライブラリ】に伝手と根回しという理由もあるんだが」

 

「大変そうだね……まあ、力になれそうなことならキョージュさん通して力になるよ。連盟も組んだんだし」

 

「はは、助かるぞ。 実はな、私は穏健派の者達を連れて【黒狼】を脱退しようと思っているんだ。それにあたってなんだが……妹を、ペンシルゴンのところに行かせようと考えている」

 

 

 

 そんなとんでもないことを、サイガ-100は言った。

 

 

 

 




■モニタリングしていた創造主
『素晴らしい。ようこそプレイヤー、私の世界に。君は私の世界の住人足り得る』
『……ま。実は創造主の私ですら理解できないことが起こっているんだけどね。それとも、私が知らない何かがあるのか』

 シャンフロのシステムの根幹にある、シャンフロを神ゲーたらしめるための部分に感づいた悠乃を称賛している。なお、シグリンデの中身が悠乃だということはデバイスからの登録情報で知っている。

 実は、運営側も想定していないどころか理解のできない事態が起こっている。原因は原初と未来の世界(サーバー)。プロトサーバーと実現するかも不確定のセカンドサーバーから『現在』、つまりシャンフロのサーバーに介入が発生。それにより創造主ですら制御できない、知らない事態が起こっている。

 彼女にとって一番理解できないのはリューネという存在。
 何故なら。シャンフロという世界において、その少女は存在していないはずなのだから。

■オルスロット

 二人の姉と同じ才覚が徐々に覚醒、獅子が目覚めようとしている。

 ユニーククエスト関係には全くと言っていいほど興味を示さず、対人界隈を盛り上げることを第一に考えている。『阿修羅会』を即座に立て直し、PK界隈に対するイメージの改善や商業クランと組んで盛り上げるための対人イベントに協賛したりと色々やっている。シャンフロエンジン搭載ゲームで対人をしたいという人間は大勢居るため、実はこういった活動がまとめサイトなどで話題となりプレイヤー数がそこそこ増えたり、各ゲームの対人界隈からシャンフロに移住してきた人間が増えたりといったことが起こっている。

 『PKはシステム上禁止されていないのだから好きに戦って好きにPKKされろ』、『身体は闘争を求める』、『界隈が盛り上がれば対人も賑やかになる。盛り上がればもっと愉しい戦いができる』といったのがメインのモットー。最近はよく京極とつるんでいる。
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