鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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竜王と共に在る者

 街の中を歩く二人の姿がある。一人は周囲から時折注目を集めており、もう一人もそのある意味では有名人と歩いているからか。それともその装いからか、注目を集めていた。

 

 一人は永遠、ペンシルゴンだ。いつもの装備で何食わぬ顔で歩いているが、彼女は廃人狩り(ジャイアントキリング)として名高いPKでもある。加えて現在は悪名高いクラン【阿修羅会】の幹部でもある。そんな人物が歩いていれば、注目するプレイヤーは居る。

 

 そうしてもう一人は悠乃、シグリンデ。だが、彼女はペンシルゴンが用意した、以前使用しているものと同じ色の新しいコート。フード付きのコートに身を包んでおり、現在は顔が見えないようにそのフードを深く被っている。しかもペンシルゴンの用意したコートは性能が高く、最前線でも使用できるほどの性能を備えた逸品である。曰く、クランの倉庫を漁っていたら珍しい特殊装備を見つけて、丁度シグリンデの着ていたコートと似たような色だったので拝借したとのこと。仮に弟にバレても、シグリンデにあげたといえば文句も言わないだろうと考えて渡したのだという。

 

 端から見ればおかしな光景だと思うだろう。片や有名なPKであり、片やそのPKと一緒にいる顔を隠したプレイヤー。周囲からの視線はあれど、今の段階で知られてはならないものについては隠せている。それは、シグリンデの左目だった。

 

 武器は収納状態にすれば隠せる。しかし、アバターの容姿に直接関わってくる眼の色ばかりは隠せない。眼帯も考えたが、それだといかにも怪しさ満点である。ペンシルゴンとしては今回の話がうまくいくまでは顔も全て隠せるものが理想と考えていた。だから、深いフードによってシグリンデに顔をすべて隠させた。こうすれば顔も、フードの中に髪を隠していることから髪の色もバレない。

 

 

「ごめんね、シグリンデ。……だめな姉でごめん。これじゃ愚弟のこと言えないわ」

 

「アーサーが謝ることじゃないよ。それに、相談をしたのは私。今の私の状況を考えて、最善の手を考えてくれたんでしょ。感謝してるんだよ、私。流石私の姉だなって」

 

「その最善の手の中に、私の打算とかが含まれてても?それは、シグリンデ。あなたを利用するってことなんだよ?」

 

「いいよ、利用してくれても。それでも、最優先に私のことを考えてくれているのは知っている。その打算で少しでもアーサーに恩を返せるなら、それでもいいよ」

 

「ああ、もう。本当にこの子は……。じゃあ、存分に利用するから覚悟しときなさい」

 

「ふふ、行き過ぎたら今度の休みに前に話してたカフェのデラックスパフェでも奢ってもらおうかな?」

 

「あれ結構高いんだけどなあ……そうならないように善処するよ」

 

 できた妹だ、と思う。きっと妹は、自分が必死に考えたそんな打算すらも無意識のうちに。周囲すらもあっと驚かすようなことで覆して見せるだろう。昔から双子ということもあって、比較されることもあった。仮面を被らなくとも人受けのいい妹、独特の感性とコミュニケーション能力で妹の周囲には人が集まっていった。

 

 一時期はそれが羨ましくて、妬ましかったこともあった。でも、いつも自分の名前を呼んで。絶対の信頼を向けてくれる妹を。『永遠は私にとっての最高の姉だし、私に出来ないことをやれるすごい姉なんだよ』という言葉を向ける妹を見てそんな羨望も妬ましさもどうでもよくなった。なら、自分は自分にできることで妹を。悠乃を守り通して見せる、力になって見せる。そう己に誓いを立てて、もう何年も経過した。その誓いは今も、そしてこれからも変わらない。

 

「……それに。ちょっとアーサーに謝らないといけないことも出来たし」

 

「え?なになにどうしたの。大丈夫よ、今更大抵のことが起こってももーまんたいよ。諸々の話聞かされた今、大抵のことじゃないとビクともしないって」

 

「あー……」

 

「え、どしたの」

 

 すると、本当にいいにくいことなのか。シグリンデはメッセージコンソールを操作して、フレンドメッセージをその相互でのみ見える設定にして送ってきた。なんだ、口にできないということは今回の件絡みか。と、ペンシルゴンは思っていると。

 

 

『今日、ログインした時にちょっとあって。その時にわかったことなんだけど。 ……私、王様(ジークヴルム)と喧嘩したって言ってたでしょ』

 

『言ってたね。腹がたったから反論して、そのせいでフラグが折れたかもって話だよね?』

 

『実は、お互い話し合って和解したの……うん』

 

『それって、またジークヴルムと会ったってこと!?でも、あなた今日のログイン先って町中だしそこから時間になったら私と合流してたよね?』

 

 

 

 

 

 

            ――『いるの』

 

 

 

 

 

 

 ゾクッ、と。何かが奔った。

 その言葉をメッセージウィンドウで見た瞬間、思わずすぐ隣の妹を。シグリンデを見た。

 

 彼女の左目。すぐ近くだからか、僅かに上げたフードの中。黄金色の瞳が見えた。

 

 

『私の中に、王様(ジークヴルム)が居る』

 

 

 大声を上げそうになる己を押さえつけて、ただ驚愕の表情でペンシルゴンはシグリンデを見た。

 そんなもの想定すらしていない、と思いながら。

 

 

 

             ◆     ◆     ◆

 

 

 

「よく来てくれたね。さあ、かけてくれ」

 

 想定外のことが起こり、それについての結論が出ないまま二人は目的地へと到着した。

 

 クラン【ライブラリ】の拠点でもあり、数多くの考察データをまとめた書物やシャンフロに存在する書物を集めている、フィールドに存在する本屋や首都にある図書館などが霞むレベルでの図書館。日々ホームに存在する本棚には、集められた情報が整理されて作られた本達が蓄積されている、まさに進化し続ける知識の集合体とも言える場所。

 

 そんな特殊なクランをまとめ、シャンフロについての公開可能な考察をデータベースで公開し続けているのは、クランリーダーである人物。『キョージュ』の働きが大きい。そしてその本人が、現在二人の前に座っていた。

 

 これだけ特殊かつトップクラスのクランをまとあげている人物。その人物を見て、思わず初見だったシグリンデはフードの下で唖然として言葉を失っていた。その見た目と、声について頭の理解が一瞬追いつかなかったからだ。

 

 年齢10歳くらいのピンク髪ツインテールの魔法少女といった姿に、それに対しての声は年季と知性が積み重なった大人の声。唖然とする妹を見て、姉であるペンシルゴンは『まあ、そうなるよね』と思った。

 

「……え?あの、え? ア、アーサー?」

 

「その反応はすごくわかるよ。私も最初頭が理解を拒んだ。その後落ち着いたら大爆笑したけど」

 

「私は唖然とはしたけど、人のアバターを笑うのはよくないと思うなあ……」

 

 ペンシルゴンは思った。多分妹なら外道仲間のサンラクを見ても『か、変わったご趣味ですね』くらいで抑えるだろうと。恐らくそれがサンラクに対してはクリティカルヒットするだろうが。そうなった時のことを考えると、心の中でゲラゲラと大爆笑してしまった。

 

「この姿は妻の力作でね。私も最初は驚いたが、今はもう慣れた」

 

「ちなみに、この人の奥さんはゴリッゴリマッチョで劇画調フェイスのアバターで最前線元気に走ってる人だよ」

 

「シャンフロってすごいなあ」

 

 あはは、と苦笑いしていると。『さて』とキョージュが前置いた。

 

 

「メールは読ませてもらったよ、アーサー・ペンシルゴン。まずは自己紹介と行こうか、私は考察クラン【ライブラリ】のクランリーダーをしているキョージュと言う。よろしく頼む」

 

「あ、ええと。これはご丁寧に。私はシグリンデと言います。今日はアーサーの紹介で来ました、よろしくお願いします」

 

「ちなみに知らない仲じゃないから言っておくけど、私の。わ・た・し・の!大事な妹なんで、変なことしたら本気で怒るからねおじいちゃん?」

 

「……本当に君はあのアーサー・ペンシルゴンの妹君かね?随分となんというか、そう。純粋に見えるが」

 

「それは私が純粋じゃないと言いたいのかなー?」

 

「む?違うのかね?」

 

「このっ……ふーっ、ふーっ!まあいいわ。妹が真っ白なのは事実だし。それより本題」

 

「わかった。では、本題に入らせてもらう。 メールには、『天覇のジークヴルム』についての情報を渡す代わりに頼みたいことがある、ということだったが。具体的に伺おうか」

 

「その前に。……ここでの話は絶対に外部に漏らさないと確約しなさい。そして、これだけは言っておかないといけないのよね。もし聞いたら、おじいちゃん。あなたは後戻りできなくなる。戻ることなんて許さない。真実に目を背けることなど私が許さない。それでもなお、話を聞く?今なら無かったことに出来るよ」

 

 ペンシルゴンの目はキョージュから見ても本気だった。それも、ただならぬ気迫を感じさせた。その様子から、今回の話はそれだけとんでもないことなのだと理解する。

 

 逃げることは許さない。目を背けることは許さない。その言葉に対してキョージュは笑った。逃げる?目を背ける?世界を考察し、探求することをこのゲームでの生きがいとしてる自分が?そんなこと、天地がひっくり返ってもありえない。

 

 

「くっ、くくっ。ははは!それこそありえない!そこにまだ知らぬ未知が。真実が。知識があるのなら、どんな対価でも払ってそれを私は手に入れよう。例えそれが、悪魔や魔王との契約だったとしても」

 

「なら、契約先は魔王。この私だ。いいの?本当に逃げることは許さない、目を背けることは許さない。そして……私の大事な妹を傷つけたら、絶対に許さない。地獄の果てまで追いかけてやる」

 

「いいだろう、結ぼうではないかその契約。妹君についても、約束する。私の行使できる全てを使ってでも、力になると約束しよう」

 

「――わかった。もう逃げられない。逃さないから。 ……シグリンデ」

 

 そうして、ペンシルゴンは妹を見た。

 後は、妹次第だというように。

 

 

「……キョージュさんは、信用できる人に思えます。だから、」

 

 

 そうして、シグリンデは深く被っていたフードを脱いだ。そこから現れたのは、空色の長髪。

 そして。黄金と蒼色の、異なる二色の眼。

 

 キョージュは、目を見開いて言葉を失った。

 

 




 シグリンデとジークヴルムが滅茶苦茶口論して喧嘩した結果、色々とジークヴルムも感じるものがあった模様。詳しくは後の話で描くんですが、心境に変化があった。とりあえずシグリンデに因子的なものを刻んでいたので、それ通して今の世界見てみるかってくらいの感覚で視覚借りたりしている。本人がシグリンデの中に居るわけではないが、体の一部を因子として刻んでいるので間違っていない。


 
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