鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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図書館(ライブラリ)の新戦力

「なるほど……確かに、これはそう安々と話せることではない。正直私も、全て話を聞いて驚きの連続だった。これは、今夜は考え事に熱中して寝られないかも知れないな」

 

「奥さんにまた叱られるよおじいちゃん」

 

「今回ばかりは妻を説得して無理を通すさ。それほどに、とんでもないことだ。『討論会の資料に不備があったから作り直す』とでも言えばきっと妻も理解してくれる。 ……しかし、かの最強種が我々開拓者に興味を示す、か」

 

 キョージュとしては、聞かされた話はどれもが信じられないものばかりだった。ジークヴルムからの例のない呪い、極めて特殊な武器に異なる色の瞳。そして、これはペンシルゴンも追加で聞かされる形となったことだが新しい情報もあった。

 

 彼女、シグリンデはあの天覇のジークヴルムと意思疎通が出来る。正確には、彼女の中にかの天を統べる龍王の意識が存在している。

 

 恐らくシグリンデはすべてを語ったわけではないのだろうとキョージュは推測していた。彼女はペンシルゴンほど自分を隠すのが上手くなく、純粋だ。話の途中、言葉を濁したり視線を泳がせていたのは、まだなにかあるということだろう。

 

「君のその左目、黄金の瞳を通してかの存在はこちらを視ている。つまりは、そういうことだね」

 

「はい。その……私が王様。ジークヴルムが言ったことに反論して、ちょっと喧嘩したり色々あって。結局仲直りはしたんですけど『ならば、シグリンデ。我が因子を刻んだその黄金の眼を通してお前の歩む道と世界を見せてもらう』って言ってて」

 

「恐らくだが、その喧嘩とやらでフラグを折ったが、逆に別のフラグが発生したと考えるべきか。しかし、ジークヴルムの言葉を真っ向から否定するとはなんとも気の強い妹君だ。最強種にこのような形で認められたプレイヤーなど、前例がないぞ……。待て、今『因子』と言ったかね?」

 

「あっ」

 

「……今は聞かないことにしよう。なるほど、言わば君はかの竜王と共に在る、言わばその職業(ジョブ)の如く竜騎士といったところか。とんでもないプレイヤーが現れたものだ」

 

 キョージュのその例えは間違っていない。それは、自らが望んだことなのだから。竜を狩るのではなく、竜を駆る者。すなわち、共に在る者。それこそ、自分がかの強者に対してそうありたいと望んだことなのだ。

 

「正直整理しきれていないのが実情だが、大体は理解した。故に、言わせてもらおう。――私は今の話をすべて真っ向から受け止めよう。これらの情報は、多くが秘匿すべきであると同時に計り知れない価値を持つものでもある。私が望むものは貰った。さあ、アーサー・ペンシルゴン。今度はそちらの番だ。そちらは私に、何を望む」

 

「私の望みはひとつだよ。妹を【ライブラリ】に加入させてシグリンデの後ろ盾になって欲しい。今後何があろうと、絶対に妹の味方になると約束して欲しい。それが私の望み」

 

 迷いなく言い切ったその言葉に対してキョージュは驚いた。それは、【ライブラリ】にとって。そして自分自身にとってメリットでしかないのだから。

 

「どういうつもりかね、アーサー・ペンシルゴン」

 

「どうも何も、それが全て。悔しいけど、今の私じゃ妹の後ろ盾にはなれない。私の悪名にクランの悪名は知ってるでしょ?逆に、私が後ろ盾になればシグリンデがより多くの相手から狙われる。だから考えた、妹を託せるに値する相手を。そうして、諸々の情報を渡したとしてもそれを理性的に受け止めて妹の味方になってくれそうなクランは最終的に2つだけだった。その中から、情報を活かせてかつ力のある方と考えたら、【ライブラリ】しかなかった。それだけの話だよ」

 

「……打算も当然あっただろう」

 

「まあ、あるね。ユニーク絡みの情報は貴重だ。だから、その方面の情報について私に流して欲しいのと、妹の自由意志の尊重。もっとも、クランメンバーとしてクランの活動を手伝わせるのは別にいいよ。最優先は……言ったでしょ。何があろうと妹の味方であり続けろって。今後、どんなことが起こっても。『例えユニーク絡みで何が起きようと』、妹の味方をする。それだけは絶対だ」

 

 キョージュはペンシルゴンと視線がぶつかった。そして同時、何かに魅入られたように感じた。

 それは、逃げられない。逃さないという何かだ。

 

「悪いけど、おじいちゃんを逃がすつもりはないんだ。絶対に逃さない、地獄の底まで付き合ってもらうよ。 ――だから私も、きっとそっちが欲しいものを対価として差し出そう」

 

 これ以上何を、と思う。

 

 既にジークヴルムに関してのことで、今後間違いなくその中核となるプレイヤーと情報というものをキョージュは渡すと言われているのだ。

 

 

「ユニークモンスター、【墓守】のウェザエモン。それについて私が知る限りの全ての情報を渡す。対価は、今話したシグリンデに関することを全て呑むこと。そして、この情報を可能な限り秘匿した上でかの最強種を討ち倒すために【ライブラリ】とあなたの知識を貸してもらうことだ」

 

 

 魔王は、悪魔染みた提案を持ちかけた。

 そうして彼は。その提案に手を伸ばした。

 

 

 

             ◆     ◆     ◆

 

 

 

「――なんとか上手くいった、か」

 

 現在ペンシルゴンは【ライブラリ】の拠点を出て、別の場所に向かっている。サードレマにひっそりと存在するNPCカフェ、「蛇の林檎」。今度はそこに外道仲間であるサンラクとオイカッツォを呼び出してある。話すべき内容は、ウェザエモン踏破に向けた話し合い。そして、シグリンデの件だ。

 

 キョージュとの話し合いは上手くいった。むしろ、想定以上の結果が得られたと言っていい。まず、ペンシルゴンの最も危惧していたシグリンデの身柄について。これは、キョージュがクランリーダーとして。そして個人としてもその後ろ盾となることを約束した。

 

 今後、シグリンデの身柄は自由意志が尊重されるが【ライブラリ】の所属となる。これで、妹にとって強力な後ろ盾が出来た。【ライブラリ】は年齢層が比較的高く、常識のある大人で構成されるクランだ。向こうのクランメンバーやキョージュの人間性を見ても、恐らく妹を利用することはないだろうと思う。

 

 それに、クランとしての方針や在り方も妹とはあっているとも思った。妹は読書が好きでもある、そうして数々の物語を考察するのが好きだった。だからこそ、『人と竜が紡ぐ物語』などという考えが出てきたのだろう。活動方針としても、後ろ盾という意味合いでも最高の場所を手に入れさせることができたのはとにかく大きい。

 

 向こうのクランとしても、シグリンデを迎え入れたメリットは大きいだろうと思った。ジークヴルムに関する情報に今後の進展。前例のない存在を引き入れられた言うのは大きいだろう。そして、【ライブラリ】には比較的少ない超高火力の前衛アタッカーというのもある。キョージュを含めて、【ライブラリ】は戦闘に寄ったクランではない。メンバーの多くも魔法職やサポーター、タンクが多く前衛職も居るには居るが戦闘に特化しているというわけではない。そんなプレイヤーはといえば、比較的PKに狙われやすい傾向にある。

 

 現在は運営からの締付けが厳しくなったとはいえ、PKはまだまだ存在している。正々堂々と勝負を挑んだり、戦いそのものを楽しむ変わり者のPKも居るには居るが、悪質な者も居る。そしてそういった悪質なPKは、自分より弱い存在を狙う傾向にある。

 

 考察、学術に特化している【ライブラリ】は比較的狙われやすい。だが、あの妹が【ライブラリ】へと加入した。間違いなく、妹はあのクランの矛となるだろう。かのクランを襲うPK達はもう、獲物を狙う立場では居られない。

 

 その竜の爪や牙の如き矛で狩られる立場になるだろう。

 

 シグリンデのバトルセンスは、姉の自分からしても自分より高い。集中力を持続させながら流れを作り出し、瞬時に戦略を組み立て。そして、圧倒的な火力で制圧する。言わば、サンラクとオイカッツォをハイブリッドにして火力重視にしたという形が最も近い。特に凄まじいのは、パリィやカウンター、ガードのセンス。最善のタイミングで回避か返しかを見極めて、次の一手へとすぐに繋げる。流れに乗せるとどうしようもないし、情報を与えれば与えるほど不利になる。

 

 サンラクやオイカッツォのように手数で攻めるタイプではない。自分のように、事前に策を巡らせて計略を仕掛けるタイプでもない。力強く構えて、真正面から相手を迎撃して叩き潰す。それが、妹の戦闘の本質だ。其れはまるで、絶対強者である幻想種。竜をも思わせる。

 

「……なんとか二人を説得しないとね。シグリンデは、ウェザエモンとの戦いで絶対に強力な味方になる」

 

 味方に引き入れたい。そのために、二人を説得することは必須。だが、問題がまだ残っている。それは、現在自分の所属する【阿修羅会】、そしてそのクランリーダーである愚弟。オルスロットの件だ。

 

 そもそもの話。【墓守】のウェザエモンの情報を秘匿して独占していたのは【阿修羅会】だ。今サンラクやオイカッツォ、そして秘密裏に協力を取り付けた【ライブラリ】にその情報が漏れているのは、自分が漏洩させたからだ。

 

 漏洩させたこと。それをまだ【阿修羅会】は知らないし、愚弟。オルスロットも知らない。だが何れは知ることになるだろう。少なくとも、ウェザエモン討伐の決行日にはほぼ確実にかち合う可能性が高い。

 

 その対応をどうするか決めかねていた。現在最有力候補なのは、情報屋を通してクラン拠点の場所をリーク。トップクラン達に襲撃させることだ。当初はこの手段で行こうと考えていたが、少し雲行きが変わってきた。

 

 ペンシルゴンは妹に甘い。そして、その妹もまた弟に甘い。シグリンデは弟であるオルスロットをそれはもう大切にしており、オルスロットもまたシグリンデのことは『優しい姉』として慕っている。自分と愚弟の間だけでのことならば、容赦なく最有力プランを実行しただろう。だが、妹であるシグリンデがシャンフロを始めて、ウェザエモン戦にも関わろうとしている。そうなってくると、果たして妹はどう感じるのか。

 

「愚弟の件については、やっぱりシグリンデと話し合わないとかなあ」

 

 どちらにしても、恐らくウェザエモンと戦う以上衝突は避けられない。そして恐らくだが、オルスロットはシャンフロでの悪逆非道を妹には伝えていない。きっと、思うことがあったのだと思う。事実、オルスロットは妹のキャラクターネームが判明すると、クラン内部に『シグリンデというプレイヤーには絶対に手を出すな』と命じていた。

 

 シグリンデとの相談次第ではもしかすると。愚弟にはかなりきつい未来が待っているかもしれない。ペンシルゴンはそう思った。 

   

 




 ペンシルゴンにとっての最優先目的は、妹の後ろ盾。時点で、キョージュが絶対に食いつく状況を作り出したうえで、共犯者として逃げられなくして対ウェザエモンの情報を手に入れる。あくまでサンラクやオイカッツォは、戦闘方面で強力な助っ人というだけで、情報という方面にはあまり強くない。ペンシルゴンとしてはセツナの件もあったので、絶対に勝つために可能な限りの手段と情報が欲しかったため自分の持つ最大の餌を提示した。

 オルスロットくんはシスコン。そのせいで色々と面倒というかマニアックな異性に人気ありそうな人になってる。後々描く予定。

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