鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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墓荒らしへの誘い

 神代の鐵遺跡からの帰り道、最寄りの町へと続く平原を暗闇の中歩きながら、キョージュはとても嬉しくも楽しそうにしていた。

 

「いやあ、君がいてくれて本当に大助かりだよシグリンデ君。想定以上の収穫が沢山あった」

 

 調査は順調に進み大収穫だった。未調査区画の入口周辺を確認することもでき、周囲の簡単なマッピングも出来た。そうして後日調査隊が組まれることも決まった。【ライブラリ】のメンバー達はそれはもう新しい区画の調査と聞いて狂喜乱舞していた。

 

「いえ、私がお役に立てることを証明できたのなら良かったのですが」

 

「そこまで固くならなくてもいい。我ら【ライブラリ】は、知識の輩というだけでも歓迎に値する理由になる。君の姉君、アーサー・ペンシルゴンとの約束もあるが、我々のことは気軽に頼ってほしい」

 

「では、そうさせてもらいます。私も今日のキョージュさんの活動を見て、【ライブラリ】の活動は面白いなと思ったので」

 

「同好の輩が増えるのは嬉しいことだ。……それに、ゲーム的な側面で言えば君のような前衛が加わってくれたのは本当に助かる」

 

 シグリンデがフロントアタッカーだとはキョージュはペンシルゴンから聞いていた。だが、その実は想定を遥かに上回っていた。

 

 一撃。恐らく、何かしらの強化が入っていたとはいえ彼女は先の戦闘で襲いかかってきた三体の内一体を斬り飛ばし、そのまま壁へとめり込ませるようにして叩きつけたのだ。そうして続けざまに、残った二体を文字通り、叩き潰した。

 

 一体はビームのようなもので構築された刃で襲いかかったが、彼女の巨大な剣槍に弾かれると同時。そのまま胴体を串刺しにされ、横払いにされて地面へと叩きつけられた。

 

 一体は距離を取ろうとした。恐らく接近戦は不利だと判断したのだろう。機械だとしたら賢い判断だ、とも思ったが。下がった瞬間に勝負は決まっていた。両手で剣槍を刺突の構えにしていた彼女は、そのまま凄まじい速度で接近。相手の遠距離攻撃の発射を許す暇も与えず、刺突の勢いで串刺しにした後、深々と突き刺した獲物を引き抜き、横薙ぎに一閃。真っ二つにした。

 

 そうして最後に、彼女は『鎮まれ、黄金の円環(ニーベルング)』と口にすると武器を降ろした。動じず、真正面から相手を圧倒する。その姿に竜種の姿を幻視した。

 

 キョージュは、あのふたつのキーワードは何かを発動するトリガーだと判断した。可能性としては、強化系。彼女の体力が減少し続けていたのを考えると、デメリットつきの強化効果ではないのかと思われる。そして恐らく、それぞれのキーワードが効果を持つのではないのかとも。

 

「私は見ての通り魔法職でね、戦闘も不得手だ。だから君のような優秀な前衛職がいればとても助かる。安心して魔法を打つことに専念できるのだからね」

 

「調査の護衛や戦闘の前衛であればいつでも言ってください。私、戦闘も大好きなので」

 

「はっはっは!これは頼もしい」

 

 逸材だ。素直にキョージュは称賛した。

 

 探究心もあり、本人が知識の輩でもある。加えて戦闘能力については、超一級ときた。

 

 そしてジークヴルムと関わりを持ち、前例のない武器を携え竜王からの呪い、いや。祝福を受けた。この先の歴史において、特に竜種と関わることにおいては間違いなくその中心に居るだろうという存在。人当たりもよく、キョージュからしても他人を惹きつける何かを持っていると感じさせた。

 

 最初は、多くがすでに解明されてしまった現実世界に退屈さを覚えいたところに、妻から勧められるがままに始めたシャンフロだった。だが、シャンフロという未知で溢れている世界を解明することに心が踊った。そうして、心を同じくする輩と出会い【ライブラリ】を設立した。

 

 この世界は未知で溢れているだけではない。妻も言っていた、新たなる誰かとの出会いにも満ち溢れているのだ。なんて素晴らしいのだろうか、この世界は。思わずそう思い、自然と笑みが溢れた。

 

 

 

 

「――待ってくださいキョージュさん。私の後ろに」

 

 

 

 

 突然、シグリンデが足を止めた。静止を促す声は、真剣さを帯びていた。

 

 

「出てきたらどうですか。居るの、わかってますよ」

 

 

 すると、突然暗闇から姿を表したのは数名のプレイヤーだ。

 それぞれが武器を構えており、下卑た笑みを浮かべてこちらを視ている。

 だが。その笑みには焦りも見えていた。

 

 

「……なんでわかった。隠密スキルでハイドしていた筈だ。チートか?」

 

「武器へのバフ時に発生するフラッシュエフェクトの発光や足音、環境音までは消せませんよ?……変な音と足音の数がおかしい、とは思ったので」

 

「話が違うぞ。ルーキーじゃなかったのか?」

 

 キョージュもこの集団を見れば察する。このプレイヤー達は、PKだ。

 それも自分達狙いの、彼女を『ルーキー』と侮ったPKだ。

 

「まあいい。トップクランのクランリーダー様が、見たことのない自分のクランのルーキーを連れて調査に出たって話を聞いてな。随分と長い事潜ってたようじゃないか、ドロップアイテムもあるんだろ?それに」

 

 そうして、続けてPKの一人。リーダー格の男はシグリンデを見た。

 

「ひたすらに追い回されてリスキルされたくなかったら、そのオッドアイの情報も吐いてもらおうか。間違いなくとんでもない大金になる」

 

 嫌な笑いがPK達から漏れている。気持ちの悪い笑みだ。

 だが、彼女の力を見た今ではそれは、キョージュには滑稽なものにしか見えなかった。

 

 

「キョージュさん」

 

「ふむ、何かね」

 

「【ライブラリ】ではPKの扱いはどうなっていますか」

 

「変わり者はまあ居るが、基本的には敵対対象だ。正当防衛を行使しても構わない」

 

 自分達を完全に放置して何やら話し込む二人にPKの男は気分を害したようで、舌打ちをした。

 

「こっちは10人、そっちは2人。しかも知識はあるみたいだがルーキーと魔法職、それも戦闘は不得手なクランリーダーだぞ?勝てると思ってんのか」

 

「アーサーからも、PKは歩く宝箱だから狩りなさいって言われているので。正当防衛ということでお願いします」

 

「アーサーァ……?アーサー・ペンシルゴンか!?お前、あの『廃人狩り』の知り合いか!?」

 

 答えず、そのままシグリンデは自分の獲物である剣槍。『ファフニール』を呼び出すと、PK集団を見据えた。

 

 

 錆ついた、だが巨大な黄金の刃が月光に照らされた。それはまるで、断頭台の刃のようだった。

 

 

「ごめんなさいキョージュさん、相手がモンスターならまだ良かったんですが。プレイヤーなので多分騒がれます」

 

「なに、気にしなくていい。諸々の対応と面倒は任せ給え。存分にやるといい」

 

「ご迷惑をおかけします。 それでは――」

 

 

 

  『謳え、黄金の円環(ニーベルング)

 

 

 

 小声で。恐らくは近くに居た自分にしか聴こえないような声で呟かれたその死刑宣告をキョージュは聞いた。

 

 その日、有名な悪名高いPK集団が全滅したという報告とともに、様々な情報がシャンフロ内部に激震を奔らせた。

 

 

 

            ◆     ◆     ◆

 

 

 

「やりすぎだよ、悠乃」

 

「……正当防衛だよ」

 

 数日後の週末。現実世界のとある隠れ家的カフェには二人の姿があった。端から見れば、髪型が違うだけでよく似ている二人。双子と思われるだろう。そうしてそれは、世間的にもよく話題にもなる双子だった。 

 

 一人は腰ほどまである紺色の長髪に、赤色の瞳。整ったスタイルと容姿。大人びた雰囲気を持つ本人の自信の有り様を感じさせる眼が現在呆れたようにジト目になっているのは、天音永遠。カリスマモデルとして有名であり、雑誌やテレビにもよく出演している有名人である。

 

 もう一人は、同じ紺色のセミロングの髪に、同様に赤色の瞳と整ったスタイルに容姿。永遠と比べると落ち着いた雰囲気を感じさせ、姉である永遠を大人びたと称するならば彼女はかわいい系のお姉さんといった雰囲気の人物は天音悠乃。現在人気声優としても様々な案件配信でも有名な永遠の双子の妹である。

 

 世間ではこの二人は天音姉妹などと呼ばれている。それぞれジャンルは違うが、永遠はモデルとして。悠乃は声優として高い人気があり、二人が姉妹だというのも世間では認知されていた。悠乃はモデル方面の仕事があまり得意ではないというのもあって回数こそ少ないが、姉妹揃って写真を撮り雑誌に掲載されたこともある。

 

 そうして、この二人の影になってあまり話題にならないが、二人の弟。天音久遠もまた、ある意味では有名な人物だった。シャンフロの中のオルスロットよろしく、面倒くさがりで自己中心的な側面がある彼だがそのルックスは姉二人と同様いい。イケメンと呼んで差し支えのないのだが、本人の性格に難がある。雑誌などのモデルの仕事をしてみないか、と町中で声をかけられたこともあるが『面倒だから嫌だ』『あんまり好きじゃないほうの姉貴と同じことは嫌だ』と言って断る始末。

 

 ただ、好きな方の姉である悠乃には頭が上がらず。むしろ、『悠乃姉に恥かかせないようにしないと』と言ってなんだかんだいいつつも様々な分野で努力は惜しんでいない。そのせいで、性格は拗れているし問題ありなのだが、多方面で多才の努力家という人間が出来上がってしまったのだが。

 

 なお、性格が面倒だが多才でルックスもいい、というせいで姉達以外のことでも割と絡まれる。特にその面倒くささと努力家なところがいいという女子からは熱い視線を向けられているのだが、本人の中での異性のラインが良くも悪くも姉二人基準である。特に、昔から自分を大事にしてくれている好きな方の姉の悠乃を基準としている部分が大きいせいで、異性からのアプローチにはほぼ無反応。しかも、『どんなタイプが好きなんだよ』と友人から言われた際には『悠乃姉みたいな感じかな』と迷いなく言い切る始末である。

 

「シャンフロじゃ大騒ぎだよ、有名なPKクランが【ライブラリ】に返り討ちにされて全滅。それをやったのは見たこともない巨大な武器を持つオッドアイのプレイヤーだって話題は持ちきり。 ……ま、おじいちゃんや【ライブラリ】のメンバーがすぐに諸々対応したみたいだけど。正直騒がれるのが、悠乃が【ライブラリ】に所属してからで本当に良かったと思ってる」

 

「本当、キョージュさんやメンバーの人達には迷惑かけたなとは思ってる。襲われた翌日とかにも、もう諸々バレてたみたいで結構声かけられたり質問攻めされたりされそうになったし。でも、出来るだけキョージュさんやメンバーの人が一緒に出歩いてくれるようにしてくれたから、面倒なことにはならなかった」

 

「まあ、無理な言及とか絡みってのは下手したらマナー違反、最悪ハラスメント行為に抵触するからね。無断のスクショで騒ぎにされたらハラスメント案件で撮った側がアウトって事例もあるし、【ライブラリ】のメンバーが抑止力になったら下手なことはではないよ」

 

 今回騒がれているのは、悠乃。つまりシグリンデというキャラクターの持つ珍しい武器。そしてオッドアイということだ。有名PKを全滅させた、というのは一部の界隈ではざわついてはいるものの、今回の騒ぎは元々町中などで見られていたオッドアイなどの件へ火付けをした、というくらいのものだ。

 

 ユニーク関係のことについては一切バレていない。というより、恐らくはオッドアイということだけでユニークと結びつけるのは不可能だろう。PKを壊滅させた際も、悠乃は起点となる言葉は相手に聞かせていないし殆ど手札を見せていないそうだ。

 

「でも本当にデラックスパフェ奢ってくれるとは思わなかった。 ……おいしいよ、これ。はい、あーん」

 

「あむ。ほんとだおいしい……。まあ、色々【ライブラリ】との件でおいしい思いさせてもらったし。後、ちょっと頼みたいことがあって」

 

「もしかして私事前に退路絶たれてる?悪巧みが上手いなあ私のお姉ちゃんは」

 

 もし雑誌カメラマンなどがこの光景を見れば卒倒するだろう。天音姉妹のツーショット。それも、妹が姉に対してパフェを俗に言う『あーん』している絵である。しかし、ここは知る人間しか知らないカフェ。今の光景を知るのは姉妹だけである。

 

「いやそういうつもりはないよ。ちょっと切実な頼みと言うか、なんというか。でも、私がそれを悠乃に頼むってことは……その。間違いなく愚弟と悠乃が敵対するってことにもなるからなんというか」

 

「……シャンフロのことだよね?永遠がそこまで思いつめるってことは、相当だよね。言ってみて、私が出来ることなら力になるよ?」

 

 少しの間、永遠は考え込むようにして。

 

「今夜、私の知り合い二人と会って話をして欲しい。そしてもし話が会えば、ちょっと付き合って欲しい場所があって。 ……後は、最終的にだけど」

 

 姉の永遠がここまで真剣に話すことは珍しい。そう思い、悠乃が言葉を待っていると。

 

 

「【墓守】のウェザエモン。その打倒に悠乃の力を貸して欲しい」

 




■黄金の円環
切り替え式効果を3つ持つアクセサリー装備。ジークヴルムの『刻願』によって固定装備となっているため、アクセサリースロットを1つ埋めている。

・『謳え、黄金の円環(ニーベルング)
1秒毎に体力の1%を消費し、全ての回復効果を無効化する。効果中、全てのステータスに大幅な強化効果を発生させ、クリティカル攻撃及びカウンター攻撃、パリィ時の致命攻撃に対して補正効果を発生させる。これらの強化効果は、体力が30%以下の時大幅に強化され、体力が低ければ低いほど強化・補正効果が高くなる。発生する体力減少コストで体力が0にはならず、発動中は『ジークヴルムの刻願』の性能が変化する。

・『鎮まれ、黄金の円環(ニーベルング)
『黄金の円環』の効果を発動していない状態。1秒毎に体力の最大値1%を回復する。体力が50%未満の時、全ての回復効果を無効化するが、体力が50%以上の時、回復効果及び使用する回復アイテムの効果+30%し受けるダメージ-30%、戦闘状態のモンスターからの敵視が大幅に上昇する。

・『???、?????』
 効果不明。

■PKしようとして襲撃した集団
 全滅して資産を回収された。その資産はシグリンデから【ライブラリ】へと全て献上された。かなりの金額にレア物まであったため、キョージュが『とりあえず君への使い道を考えさせてもらうよ』と言って保留した。クランホームにお金のあるメンバーなら作ってるマイルームでも作ってあげようかなとか考えてる。そんな話をメンバーにしたら、リアル建築関係のメンバーが『建築ヨシ!』とか言い出して張り切りだした。

■天音久遠
 拙作で魔改造された弟くん。大体優しい方の姉である悠乃のせいなのだが、彼女に『悠乃姉も一緒にゲームやろうよ』と言ってゲームの楽しさに気が付かせてその才能と戦闘狂染みた側面を覚醒させたのは大体彼である。

 天音家は一般家庭としては裕福な部類。両親は子供達を大切に思っているが仕事柄多忙な時期は家に帰ってこないということもよくあった。久遠が小学校高学年くらいの時期にはもう永遠や悠乃は独り立ちしており、家には一人で居ることもあった。それを寂しくないように、と実家に顔を出していたのが悠乃だった。

 結果、性格が拗れているオレ様系イケメンで負けず嫌いの腹黒系努力家シスコンという弟が出来上がった。実は二人ほどではないが策略系はあまり好きではない姉、戦闘系は大好きな姉から一部受け継いでいる。

 悪態付きながら頼まれたことはやるし、友達付き合いも悪くなく、成績優秀で多才で顔だけなら永遠レベルのイケメンで長身。滅茶苦茶モテるが大の問題は本人の異性の基準が『姉達』であるのが問題。
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