鉛筆騎士王に寄り添うは、黄金の竜騎士   作:無名のカヤ推し

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想定していない援軍

「頭がパンクしそう」

 

「奇遇だなカッツォ、俺もだ」

 

 一通りの話を聞いて最初に出た二人の言葉がそれだった。それを見てペンシルゴンは『まあ、そうなるよね』と頷いていた。既に彼女からすれば、詳細について話すのは二回目である。最初のキョージュの時でさえあの博識な人物が唖然として言葉を失っていたのだ。自分だって、最初聞いた時は同じ状態になった。それほどの内容なのだ。

 

「俺はいいと思うぜ、妹さん……シグリンデを仲間にするのは」

 

「俺もサンラクと同意見。プロゲーマーとしての視点からも言わせてもらうけど、大賛成だ。あの実力者が味方になってくれるのはありがたい」

 

「STR軸のフルフロントアタッカー。つまり、殆ど常時最前線ラインに張り付いて火力とタンクを両方やってくれる戦士職だろ?俺は防具が殆どないから機動力混ぜて誤魔化すタイプだし、カッツォもタンクってより体力と耐久値寄りの軽戦士だ。居るのと居ないのではそもそも根本から戦い方が変わる。大助かりだぜ」

 

「タンクが居るのと居ないのでは動きやすさが天と地だもんなあ。トップクラスの火力の出せるタンクとか心強すぎでしょ」

 

 ジークヴルムとシグリンデの関係、それについて一番頭を悩ませたのはサンラクだ。自分の保有しているユニーククエスト関係であるラビッツやリュカオーンとの関係性。それに関わってくる可能性があったからだ。

 

 だが、それらを考えててもシグリンデという援軍は破格だ。戦闘スキル面については、当人の保有するユニークの関係もあるのかペンシルゴンもシグリンデもあまり話そうとしなかったが、あのペンシルゴンが絶対の信頼を置いているという時点で信用できる。そして、彼女の中身はサンラク。楽郎も知るゲーマーだ。自分も配信で見たことのあるが、彼女の技量は素直に驚嘆したのだ。

 

「じゃあダメ押しだけど、一応これも情報として話しておくね。 ……シグリンデ、私がまとめた参考資料は読んだ?」

 

「見たよ、率直な感想としては中々に凄まじいとは思ったけど」

 

「――あいつの攻撃、捌いて弾ける?」

 

「うん、覚えたよ。冷静に考えてみたら……糸口はあった」

 

 その言葉に対してサンラクとオイカッツォは唖然とした。自分達も確かにペンシルゴンからウェザエモンに関しての資料は見せてもらった。だが、どれもが頭を抱えそうになる攻撃のオンパレード。ワンミスで戦闘不能当たり前という鬼畜仕様だった。

 

「視る時間は必要そう?」

 

「欲しいかな。流石に初見で完全対応はきついと思う。実際に視て理解するのが一番いいんだけど」

 

「オーケー、ならサンラクくんの蘇生の余裕は追加で作るよ」

 

 可能なのか、そんなことが。そう二人は思った。が、今回の打倒に全てを賭けようとしているペンシルゴンが、迷いなく信じるという選択を取っている。つまり、それは可能ということなのだ。

 

「信じられない、って顔してるね二人共。そう、まともな戦い方ではそれは不可能。そもそも相手は恐らく倒すことが不可能に設定されている相手。だから勝利条件は、前にも話した時間経過。けど、相手はそれを簡単に許してくれる相手じゃない。 ……そこで、こちらも対抗手段を用意した」

 

 

 そう。まともに戦えば勝ち目はない。

 だが、あるのだ。ここに来て、切り札と呼べるものが。

 

 ペンシルゴンがキョージュとの契約により掴んだ、ウェザエモンの弱点と特性。秘密裏に、個人的に渡した情報から【ライブラリ】の最高の頭脳が導き出した、攻略への糸口。だが、それだけではない。

 

 シグリンデがサンラクとオイカッツォを見た。

 そして、言ったのだ。

 

 

「――王様。ジークヴルムが、もし私がウェザエモンと戦うなら手を貸してくれるって、そう言ってた」

 

 

 対ウェザエモンの新たなる切り札。

 それは、同じ存在。最強種だった。

 

 

 

            ◆     ◆     ◆

 

 

 

『シグリンデよ』

 

 

 シグリンデがサンラク達と会う数日前。宿屋でログインした彼女を迎えたのは、頭の中に響く声だった。

 

 ジークヴルム。天を統べる黄金の竜王は、己の因子を自分に刻んだのだという。それにより、左目は彼の能力の影響を受けたらしい。

 

 ゲーム的に言えば『刻願』による効果はそれなのだと理解した。だが、同時にジークヴルムは自分との戦い、そしてその後の言い争いや話し合いを経て、どうやら自分に刻まれた因子を通して今の世界へと目を向けることにしたらしい。

 

 ジークヴルムは言葉を濁したが、『危機が遅かれ早かれ迫ってくる』『その危機に対抗するために、人が生きるために力が。英雄が必要だ』とシグリンデへと伝えた。そして、だから自分を斃せと。

 

 対して彼女はその言葉に対して猛反論した。

 

『どうして王様は人と一緒に立ち向かおうとしないの』

 

『どうして世界を知ろうともしないで生き急ぐの?』

 

『そんなに今の世界の人は、開拓者は信用できない?だから自分のお眼鏡にかなった英雄とやらを選別するの?』

 

『そうやって英雄を見つけて、自分は満足して斃されて。相手が何なのかは知らないけど、黄金の竜王が逃げるの?』

 

『じゃあ私に刻んだ因子とかで、私の目を通して世界を見ればいい!そうやって諦めるのは、それからでも遅くないでしょ!』

 

 他にも、多くの言葉を彼女はぶつけた。対して竜王もまた反論した。お互い時には低俗な罵倒をしあって、言いたいことを叩きつけて。それは、ただのどこにでもある喧嘩だった。人と竜の喧嘩だった。

 

 ただ。言えるとすれば、変化があったのはジークヴルムだった。神代で敗残兵。使命を果たせなかった負け犬として生き恥をさらし、ずっと一人で生き続けてきた。一人で考えて、そうやって出したのが『英雄を見つけ出して託す』ということだった。

 

 見つけたと思った。今まで出会った中で最も気高く、美しく、強い英雄の資格を持つ者に。ああ、きっとこの開拓者なら自分を斃してくれる。厄災を超えて、未来へと進んでくれると思った。

 

 しかし、己が見定めた相手はそれを否定した。『英雄になどなるつもりはない』と。ならば英雄にしてしまおうと考えて、因子を刻み込んで力を与えた。それでもなお、彼女は英雄となることを否定した。それどころか怒り、数々の言葉をぶつけてきたのだ。そうして、気がつけば自分も反論していた。

 

 こうしてまともに、いや。ここまで激しい言葉を交わす相手はいつぶりだろうか。遠く昔。もう遥か彼方の昔。神代の時代、ああ。そうだ――あの時代に、多くの言葉を交わしていた。

 

 ひどく遠く、懐かしい。だが、覚えている。

 彼が聞かせてくれた、『英雄譚』を。

 

 そうだ。自分は守りたかったのだ。あの時代に生きていた、多くの人々を。

 楽しそうに英雄譚を聞かせてくれた彼を。

 

 あの時代の笑顔を、守りたかったのだ。

 

 忘れていた気がした。過去に囚われて、ただ英雄を見つけ出すことばかりに固執していた。

 そう、ずっと己は。あの日、敗北した日からずっと孤独だったのだ。

 

 そんな自分の前に現れた、自分が見定めた相手は一人ではないと言った。一人にはさせないと。

 手を取り合おう、一緒に戦おうと。そう、言ってくれた。

 

 世界にも目を向けていなかった。英雄たる者を探さなければならないという使命感に囚われて、確かに今の世界を見ていなかった。思えば自分は、今のこの世界のことを空を飛び回って見渡すくらいしか知らない。

 

 

 言い争って、そうしてジークヴルムは決めたのだ。 

 

 『彼女』(シグリンデ)のような人間が居るのだ。ならば、この世界は捨てたものではないかもしれない、と。

 

 

 この世界が。人々が抗うことを選択するのならば。

 未来を望み、進もうとするのなら。

 

 

 

 ――次こそは、失いはしない。

 

 

 ――天を統べる黄金の竜王として、世界を守護しよう。

 

 

 

 

 ああ、そうか。彼は自分に生きて欲しかったのか。だからあの時、命を捨てることを許さなかったのかと思う。生きて、生き続けてほしいと彼は願っていたのか。

 

 ならば世界を『永久』に見守ろう。人々が世界に絶望しない限り育まれる生命を見守り、去りゆく生命を見送ろう。それが、世界を守護する者である己の使命であり、彼と己の望みなのだ。

 

 

 そうして。そう考え始め、決めたジークヴルムの元に彼女。シグリンデの左目を通してもたらされた情報は無視できないものだった。ウェザエモン。それは、己と同じ神代の残滓だ。そして己の見定めた英雄。否、己と共にあると宣言した『竜騎士』は、かの存在に挑むというのだ。

 

 それを聞いて、彼は黙っていられなかった。

 神代の残滓。それと相対するならば、同じ残滓"だった"己とも無関係ではないのだと思って。

 

 

『ウェザエモンと戦う、そう言っていたな』

 

「……聞いてたの?」 

 

『うむ。我もかの者については詳しくは知らぬ。……だが、昔。そう、遠い昔だ。ウェザエモンの『英雄譚』を聞いたことがある』

 

「それって……まさか、当時のウェザエモンを知る人からってこと!?」

 

 宿屋の中で他人はおらず、聞こえることもない。だからシグリンデは驚きの声をそのまま隠すことなくあげた。

 

『あくまで語られていた『英雄譚』だ。だが、その中にはお主の欲する何かがあるかもしれぬ』

 

「それは、教えてもらえることなの? アーサーからはウェザエモンは王様、あなたと同じ時代に生きていた人とは聞いてるけど」

 

『我は残滓だった。だが、最早今は残滓ではない。新たな道を見つけたからだ。だが――奴はきっと、残滓のままなのだろう』

 

 もし、彼女と出会わなければきっと残滓のままだった己もまた終わることのない停滞か、終わりを待つ存在に過ぎなかったのかもしれない。

 

 そして己が聞かされた英雄譚。正確にはその末路を想えば、最早既に残滓のままなのだろうと。

 彼は休息地である己の根城で静かに黄金の瞳を閉じた。過去を、想うように。

 

 

『終わらせてやろう。最早ここは、我達の生きた過去ではない。見守るべき未来なのだ』

 

 

 故に、と続けて。

 

 

『我が知る英雄譚を知る限り教えよう。そして……その戦い、我も力を貸そう』

 

 

 




■ジークヴルムの今の状態
 神代では不可能だった完全体。嘗ての時代で制御に難があり、不完全だったものは今の世代の開拓者。シグリンデという相手により解消された。要するにマナを完全に制御できるようになった上に当時使用不可能だったりしたものが完全なものになっていたり、新しい権能を得たりしている。マナの活性化や再構築、打ち消したり不安定化させることもできるようになり、最新世代により完全体となった世界の守護者。

 完全体ジークヴルムのコンセプトは太古の昔に存在したゲームであるロードオブヴァーミリオンより『蒼天の守護龍』。ぬわ龍と言って伝わる貴方、さてはオメー昔は紅蓮の王だったな?

 心境に変化があってからはウッキウキで竜生を謳歌している。最早日課となった世界の放浪は続けており、自分が気に入った相手には呪いを付与している。だが、その頻度は激減しており祝福クラスを与えたのはシグリンデ唯一人だけ。『我あの本読みたい』『我もあれ食べたい』とか割とそんな話も良くしている。

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