ゼロの伝説LOM(ルイズが異世界から帰還後)   作:hobby32

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ワルドよ、ご愁傷様です。


47話:「ギーシュ、あなた、ワルド子爵と婚約したの?」

 

明朝、ルイズと才人とギーシュは、馬の用意をしていた。

 

ルイズと才人は、ギーシュの存在で旅の難易度がグッと上がることを覚悟していた。ルイズの魔法楽器が使えなくなるが故に。

 

そのギーシュが、お願いがあるんだが、と切り出すと、2人ともジロリとした目でギーシュを睨んだ。

 

ギーシュは、意に介さずに言う。

「ぼくの使い魔を連れていきたいんだ」

才人が訊く。

「お前の使い魔? どこにいるんだよ?」

 

ギーシュが地面を踏みつけると、急にモコモコと地面が盛り上がって、茶色く大きな生き物が顔を覗かせた。

ギーシュは、その巨大なモグラに抱きついた。

「ヴェルダンデ! ぼくの可愛いヴェルダンデ!」

才人は、呆れたようにそんな光景を見ていた。その巨大モグラは、子熊ほどの大きさはあった。

 

「ああ、ヴェルダンデ! 君はいつだって可愛いね! いっぱいどばどばミミズを食べてきたかい!」

巨大モグラは、ヒクヒクと鼻を鳴らした。

「そうか! それはよかった!」

ギーシュは、巨大モグラに頬ずりする。

 

ルイズは、呆れたような声を上げる。

「わたしたち、これからアルビオンに行くのよ。モグラなんて連れて行けないわよ」

ギーシュは、ハッとした表情と共に膝をついた。

「そんな……お別れなんて辛すぎるよ、ヴェルダンデ」

その時、巨大モグラが鼻をヒクヒクとさせる。そして、ルイズへと素早く近づいてくる。

 

「な、なに?」

異世界の経験を経てもなお、接近戦なんかできず、普通よりも小柄な女の子でしかないルイズは、大きなモグラにたちまち押し倒された。

 

「きゃあ!」

この世界に帰ってきてから、初めて上げた悲鳴である。

そして、ルイズは、巨大モグラに体のあちこちを鼻でつつき回される。

 

「ちょ、ちょっと、変なところ触らないで!」

才人は、そんな光景を見て巨大モグラにズルいと思った。しかし、体の大部分が、モグラに覆いつくされそうになってもがいているルイズを見ても、助けようとはしない。ジタバタしている間に、ルイズのスカートの中がよく見えたから。

 

ギーシュも突っ立ったまま訊く。

「ルイズ、君は何か宝石か何か持っているんじゃないかね? ヴェルダンデは、宝石が大好きだからな」

 

「ひ、姫さまから頂いたルビーが! ちょっと!」

実際、巨大モグラは、ルイズの右手の薬指のルビーの匂いを盛んに嗅いでいた。

 

「なるほど、指輪か」ギーシュは納得しながら解説する。「ヴェルダンデは、貴重な鉱物や宝石をぼくのために見つけてくれるんだ。土系統のメイジのぼくにとって、最高の協力者なんだ」

 

「しゃべってないで、助けてよ!」

そろそろルイズを憐れんで才人が助けに動こうとしたとき……。

 

強風がルイズを押し倒すモグラを吹き飛ばした。

解放されたルイズは、異世界での経験から即座に立ち上がり、土ぼこりを払う。

 

「誰だっ!」

ギーシュは、ドサッと地面に落ちたヴェルダンテを気遣いながら叫ぶ。

 

すると、朝もやの中から、背の高い、羽根帽子をかぶった貴族が現れた。

 

ルイズはすぐに反応する。

「ワルド子爵!」

するとワルド子爵と呼ばれた男は、すぐに笑顔となる。

「やあ、久しぶりだね、ルイズ。僕の婚約者」

 

「婚約者?」

ルイズは、はてな、と首をかしげる。それから、周囲を見回す。こんな朝早くだから当たり前だが、人通りは皆無で、周りには、なぜかこの世の終わりのような顔をしている才人と、使い魔を吹き飛ばされて怒り心頭のギーシュしかいない。

 

ワルド子爵は、誰に対して、婚約者と言ったのだろうか?

すると、ルイズの見事な頭脳が答えを弾き出し、驚きの声を上げさせる。

 

「ギーシュ、あなた、ワルド子爵と婚約したの?」

 

「いきなり何を言い出すんだね、君は!」

ギーシュが、慌てて大声で叫び、

「お、おい、ルイズ! 何を言ってるんだい?」

ワルド子爵も大いに慌てふためく。

才人はぎょっとして飛び跳ねて、ギーシュから大きく距離を取る。

 

ルイズは、愕然とした表情のまま続ける。

「だって、それしか考えられないもの。サイトが、ワルド子爵と面識があるはずがないし、わたしがワルド子爵と最後に会ったのは10年前よ。6歳の小娘と戯れに婚約するって、お互いのお父様同士で決められたけど、それ以来、わたしに対して、子爵は1通の手紙もくださらないもの。あの婚約は冗談だと捉えて当たり前なのよ。もちろん、わたしの親から子爵と結婚するように、なんて手紙は届いていないわ。そう考えると、ギーシュ、あなたが子爵とこっそり婚約していたと考えるのが自然だわ」

 

ギーシュは、激昂する。

「どう考えても不自然な推理だろう! それなら、君がそのワルド子爵とやらの婚約者だと考えるのが自然じゃないか!」

 

今度はルイズが怒る。

「まあ! 子爵様を愚弄しないで! 子爵様は立派な貴族なのよ! 当時16歳だった子爵様が、6歳の小娘との婚約を本気にするはずないじゃない! ワルド子爵は、そこまで変態じゃないわよ!」

このあたりで、才人は腹を抱えて笑い転げた。

 

ワルドは、ポカンと口を開けたまま、何も言えない。あまりのことに、頭が追いついていないようである。

 

ルイズは、天使の笑顔で続ける。

「大丈夫よ、ギーシュ。わたし、世の中にはそういう形の愛があるって、知っている。わたしは、きちんと祝福するわ。おめでとう」

「何がおめでとうなんだね! 僕にはモンモランシーという女の子が、」

 

ここで才人が横やりを入れる。

「ギーシュ、俺はお前が何股かけようと驚かないぜ」

「君まで、何を言い出すんだね!」

ギーシュは、混乱の極みに達した。

 

ここでようやく、ワルドがルイズに声をかける。

「あの、ちょっと、いいかな、ルイズ」

ルイズは、慌ててワルドに向き直る。

「ああ、ごめんなさい、ワルド子爵! おめでとうございます! お二人の門出を、わたしは、盛大に祝福しますわ!」

「………………君は、甚だしく誤解しているが、僕の言っている婚約者はそのギーシュ君ではなくて、君だよ」

 

「ええっ!?」 

ルイズはもの凄い勢いで後ずさる。

 

「ワルド子爵! あなたは6歳の頃のわたしに惚れて、成長した今でも愛していると言うことですか?」

「……ああ」

ワルドは、覚悟を決めて小さくうなずく。

才人とギーシュは、ギョッとして飛び上がった。

 

「それなのに、手紙を10年間、ただの一通も送ってこなかったんですか?」

「それに関しては、あまりにも色々なことがありすぎて、申し訳ないと思っている」

 

すると、ルイズは、ブンブンと激しく首を振る。

「あり得ません! あり得ませんわ! あなたのような方が16歳で、6歳のわたしに惚れて、その愛がずっと続いているだなんて!」

「しかし、僕たちの父上同士が決めた婚約は、まだ有効だろう」

 

「ですが、ずっと関係が続いているならともかく、今日こうして10年ぶりにお会いして、いきなり婚約者というのは、さすがに……というより、ワルド子爵は、何歳から何歳まで受け入れられるんですか? 幼児のわたしを愛して、本当に今のわたしを愛するなんてことができるのですか? 

子爵の嗜好がわたしには、理解できかねます。それに、わたしが成人になったら、わたしのことなんか、すぐに飽きて捨てるんじゃないですか?」

 

才人の世界風に言えば、ワルドは、ルイズからゲイかロリコンかを選ぶことを余儀なくされて、仕方なくロリコンを選んだあげく、当の本人からドン引きされている、という状態であった。

 

ワルドは、もはや自分の計画の達成の一つが、もの凄く困難になったことを受け入れざるを得なかった。

 

もはや、失地回復は困難だと思い、仕方なく話を切り替える。力の無い声で。

 

「姫殿下から、君たちのお忍びの任務に同行することを命じられた。やはり君たちだけでは、不安らしい。そこで、魔法衛士隊、グリフォン隊隊長たる僕が指名されたわけだ」

 

魔法衛士隊と言えば、全貴族憧れの存在であるが、その部隊の一つの隊長の一人がロリコンだとわかってしまえば、もはやギーシュでさえ、権威を感じない。お偉いさんの嗜好がアレだと、余計にマイナスイメージが大きくなってしまうものである。

 

才人ももはや、逞しい体つきのワルドを見ても、でも、6歳のルイズに惚れたロリコンなんだよなぁ、と思わざるを得ず、嫉妬どころかアブナイ奴だから気をつけないととしか思わなかった。

 

これも、ルイズのファ・ディールでの成長の表れである。全身毛むくじゃらの獣人や、カブト虫のような角の生えた人や、タマネギ頭の人やパズル人間など、あまりにも多種多様な人たちを見てきたルイズは、もはや外見で人を判断することはなくなったのだ。

 

キュルケでさえ顔を赤らめるイケメンのワルドの外見に惑わされることなく、その内面を暴露してしまった。まあ、こんな成長の結果をもたらすことになるとは、マナの女神も予想していなかっただろうが。

 

その後、ワルドは、ルイズに「10年分の埋め合わせをしたいから」と自分の使い魔グリフォンに一緒に乗ることを提案したが、才人とギーシュから強硬な反対を受けて、ルイズ自身も、「馬で行きますわ」と、両隣の2人の反応に驚きながら、馬に跨がった。

 

なお、才人とギーシュは、互いの馬に乗る前に、お互いの目線を交わして、力強く頷きあった。

ーー絶対に、あの変態(ロリコン)から、ルイズを守ろう、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




作者より。私は原作の設定を面白おかしく再整理しただけです。
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