ゼロの伝説LOM(ルイズが異世界から帰還後)   作:hobby32

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48話:ワルドの醜聞の拡散(まだ裏切ってないのに)

馬に乗っているルイズは、困惑しきりであった。

やたらと真剣な眼差しを前方に見据える少年2人に両隣を囲まれて。

 

右手側に才人、左手側にギーシュが馬で並走する。2人とも、とてもやる気に満ちあふれていた。

 

どうしてこうなったのか? まあ、間違いなく、前方を疾走するグリフォンに乗る男のせいであろう。ワルド子爵は、自らが16歳の時に6歳のルイズに惚れたと、変態発言をしてしまったがためにである。

 

百歩譲ってそれは置いておくにしても、やはりルイズに10年間一通も手紙を送らず、連絡を絶っていたのに、ルイズが6歳の頃に互いの父親同士が戯れに交わした婚約を盾に、急に婚約者ヅラをするのは、とても異常な話だろう。とてつもなく怪しい。

 

さりとて、魔法衛士隊隊長として、女王直々に、ルイズたちとの旅に同行するように命令されたのだから、怪しすぎるロリコンを理由に追い返すわけにもいかない。

 

そうして、なぜかこの才人とギーシュの2人がやたらと意気投合して、男二人でルイズの馬を挟むという馬の配置で行こうとなったのである。ルイズを守護する形態に。

 

まあ、ギーシュはわかる。女好きの延長線上で、わたしに戦いの経験がなく、か弱そうに見えるからだろう。

 

でも、才人、あなたには、いっぱいわたしが戦えるってことを教えたつもりなんだけれど。ワルドがわたしを襲おうとしたところで、どうにかできるってわかっているでしょ。

 

まだ、ダナエと二度目のジャングルに行った辺りまでしか話してないけどさ。その段階でも、あなたよりは、ずっと戦闘経験が多いことはわかっているはずでしょ。なのにどうして、そこまでわたしを守ろうと必死になるの?

 

そりゃ、わたしがあなたを召還した以上、わたしの魔法が元の世界への帰還のカギになりそうなのは、わかるけど、はっきり言って、わたしが万が一あのワルド子爵から奪われても、あなたには関係ないでしょう。

 

まあ、あんな性癖を暴露されたし、10年間連絡なしで突然婚約者を名乗ってきた以上、怪しすぎてこっちからあんなの願い下げだけどさ。

 

けどねぇ、まだあなたには、話していないけど、どうしてこのわたしを真珠姫よろしく守ろうとするのかしら? はっきり言ってあなたたちよりずっとずっと戦闘経験は、多いんだけど。

 

そんなことを思いながら、ルイズは馬を走らせていた。

ついでに、出発する前に才人から、肩に手を置かれて、ルイズはこう言われた。

 

「何があっても、お前を守る」と。

さっきは、ギーシュの巨大モグラから守ってくれなかったくせに、とルイズは内心思ったが、才人の何だかやたらと覚悟の込められた目線と、強烈な気持ちのこもった誓いの言葉に圧倒されて、思わず「は、はあ……」と頷いてしまった。その勇ましさの根源がわからないけど。

 

さて、途中で馬を何度も替えて、ルイズたちは、夜中に港町ラ・ロシェールの入り口に辿り着いた。港町と言ってもゴツゴツとした岩山の並ぶ山道にしか見えない。

 

才人が何で港町なんだろうな、と思っていると、突然目の前を小型の竜巻が舞い上がった。すると、武装していた連中が吹き飛ばされた。明らかにワルドの魔法である。

 

 

「山賊かしらね」

ルイズは、つぶやく。

「うぅ……ロリコンに先に越されるなんて」

才人は、大いに悔しがった。もはやルイズだって、才人がワルドを侮辱しても、庇うことはしないが。

 

さらに、弓を持っていた男たちが、別の竜巻で舞い上がり、地面に叩き落とされた。

 

すると月を背景に、タバサの使い魔の風竜がやって来た。シルフィードである。風竜が地面に着地すると、キュルケが降り立った。タバサは、風竜の上で読書をしている。

 

キュルケが言う。

「朝に窓を開けたら、ギャーギャーうるさくわめいた後、馬に乗って出かけるあんたたちを見たのよ。まあ、感謝しなさい。あなたたちを襲おうとした連中を捕まえたんだから」

 

キュルケは、倒れた男たちを指差す。怪我で動けない彼らはわめきながら、ギーシュから尋問を受けていた。

 

その間に、キュルケがグリフォンに乗るワルドに近づこうとすると、才人が鋭い声で叫ぶ。

「キュルケ、そいつに近づくな!」

 

ビクッと、キュルケは、肩を揺らして、不思議そうな表情で才人の方を振り返る。

「どうして、サイト?」

 

「そいつは、6歳の頃のルイズに惚れたロリコン、もとい変態だからだよ」

 

さらに男たちを尋問していたギーシュも振り返って叫ぶ。

「しかも、ルイズと10年も連絡を取らなかったくせに、急に婚約者だと名乗り出してきたんだ。怪しすぎる。重々気をつけたまえ!」

 

すると、おヒゲが素敵と思っていたキュルケが思いきり後ずさった。

ルイズの方を見ると、コクリと頷いた。ウソではないようだ。ついでに、ワルドも険しい顔つきのまま、しかし反論しようとしない。

 

キュルケも、うわぁ、という顔つきとなる。

「ま、まあ、あんまり小さい子を見ない方がいいわよ、あなた!」

と慌てて叫んで、脱兎のごとく、タバサの風竜へと走る。そして、ルイズよりもさらに小柄なタバサに注意喚起をする。読書していたタバサの肩がかなりピクッとした。

 

ワルドは失墜した名誉とはいかなるものなのかを存分に味わわされた。

 

ギーシュが、男たちの尋問を終えてルイズたちに報告する。

「ただの物取りだそうだ」

一応、ワルドにも聞こえるように大きめの声で叫ぶ。

 

ワルドは、なら放置しておこう、と言ってから、形式的に一行に叫ぶ。

 

「今日はラ・ロシェールに宿泊して、明朝、朝一番の便で、アルビオンに向かおう」

 

キュルケは、「それなら、なんであんな変態男と一緒に行くのよ」と訊くと、ギーシュは、「あんなんでも、魔法衛士隊隊長だそうだ。姫さまのご命令とあれば逆らえない」と顔をしかめながら言った。

 

それから、キュルケは、心配そうに、この少女にしては本当に珍しく心配そうに、ルイズに訊ねる。

「ルイズ、あんなのにつけ狙われて、あなた大丈夫?」

「……正直、もうどうしていいのかわからないわ」

 

ルイズは、ワルドと、ついでに自分を囲おうとする才人とギーシュを困惑げに見ながら言った。

 

「あなただけでも帰ればいいじゃない」

「わたし、姫さまから密命を授けられた以上、戻れないのよ」

「ああ、だから、あんな朝早くから」

一行は出発する。ルイズの馬を才人とギーシュの馬が左右から守護するのは変わらないが、タバサの風竜もルイズたちの真上を守護するように飛んでいる。キュルケの頼みなのか、タバサの判断なのかはわからないが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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