ゼロの伝説LOM(ルイズが異世界から帰還後) 作:hobby32
一行は、ラ・ロシェールで最も上等な宿に一行は辿り着き、休息をとることにした。
ワルドと才人とギーシュが、乗船の交渉に向かっている間、ルイズたち女性陣は1階のバーでくつろいでいた。
男性陣が帰ってくると、まずギーシュが口火を切る。
「アルビオンに渡る船は、明後日じゃないと出ないそうだ」
キュルケが「どうして?」と訊くと、ギーシュは答えた。
「明日の夜は月が重なる『スヴェル』の月夜だ。その次の日の朝に、アルビオンがもっとも、ラ・ロシェールに近づくんだ」
それで、今日はこの宿で寝ることとなったが、まず部屋割りをどうするかを一行は決めた。
まず変態ワルドを一人にするのは確定として、その近くの部屋にもルイズはおけず、キュルケとタバサも厭った。それで、ワルドから離れた部屋に女性陣が三人部屋で、才人とギーシュが同室という割り振りとなった。
それから、才人とギーシュが仲良く、女性陣の部屋の入り口を守る寝ずの番を、交代交代でおこなうと言いだした。
ルイズは、「そこまでしなくても」と呆れながらつぶやくと、即座に猛反発に遭った。
才人「何言ってんだ。お前が一番狙われてるんだから、ここは任せておけ」
ギーシュ「そうだ。君を守ることがなければ、僕らは紳士として失格だ」
キュルケ「そうよ、ルイズ。ここは大人しく甘えなさいな」
タバサ「合理的」
ルイズは、ファ・ディールでは、基本的にほったらかしにされて、他人を守ることの方が多かったので、ガチガチに自由なく守られる立場に慣れていなかった。
まあ、とはいえ、寝込みを襲われたら対処できるわけではないのだが、かと言ってこんな過剰な守護を受けるほど弱いわけではない、と言いたくなってきた。もちろん、魔法楽器のことは、ずっと内緒にするつもりなのだが。
女性陣のベッドまで、入り口に近い順にタバサ、キュルケ、ルイズとなった。つまり、入り口から最も遠いベッドにルイズは寝かされたのである。
みんなどうしてこうも、わたしに過保護になるのだろう? ルイズは真珠姫の気持ちを考えたことがなかったが、守られ続けるというのも、辛いんだな、と思えてきた。
食事などで廊下に出るときも、必ずキュルケが付き添い、廊下には才人かギーシュが必ずいた。何でも二時間おきの交代制らしい。もはや、王族か囚人のような扱いである。ルイズは、辟易してきた。
まあ、それだけが理由ではないが、
「外に買い物に行くわ」
とルイズが言うと、タバサを含めて全員が同行を申し出た。タバサもロリコンの変態と一緒の2人の宿は嫌なんだろう。
ルイズは、ため息をついてから言う。
「街を歩くのに、全員はいなくていいわ。警戒すべきワルドは、上の階にいるんだから。使い魔として、サイトだけでいい」
そうして、なぜか指名されて喜ぶ才人と共に宿を出た。
「何を買いに行くんだ?」
「水の魔法薬。怪我したときに備えて」
ルイズと才人は、フラスコの看板を掲げている店に入り、けっこうな量の水の魔法薬を購入した。いくつかは、瑠璃からもらった何でも入るふくろに入れて。後は、ルイズと才人が袋に入れて、手分けして持った。
しかし、真っ直ぐ帰るのではなく公園のベンチに袋を置いてルイズは腰かけた。ルイズがポンポンと隣を叩くと、才人も同じように隣に座る。
ルイズは、才人が座るやいなや、その耳元にささやきかける。
「どこに目があり耳があるか、わからないからこうするけどね」
「あ、ああ……」
才人は、ルイズに密着されるとやっぱりドキドキとする。
「さっきこの町に着く前に襲ってきた盗賊たち、ワルドの魔法による撃退が、早過ぎたように思えたわ」
ルイズは才人から体を離し、自分の耳元に触れる。それを見て、才人は、ルイズの耳にささやく。
「そういえば、そうだな。俺からは全然見えない位置だった」
ルイズは、才人にささやく。
「いくらわたしたちより、少し先行していたからといっても、ワルドの魔法の詠唱が早過ぎる。盗賊たちだって命がけなんだから、通行者が、魔法を使えるメイジだったとしても、ちゃんと見えない位置を確かめてから、襲いかかってくるはずよ」
才人は、ルイズにささやき返す。
「確かに。……つまり、お前の言いたいことはアレか。アイツがそもそも、盗賊があの位置にいることを知っていた、って言いたいのか?」
「そうよ。自分のことだから、恥ずかしくて言いづらいんだけど、10年分の埋め合わせとして、わたしに対して強さを見せつけて、自分に惚れさせようとか、考えていたんじゃないかと思う」
才人は、全くどうしようもないと言わんばかりに頭を振る。
「ところが、俺たちがアイツを変態呼ばわりしちまって、誘ってもルイズがアイツのグリフォンに乗らなかったから、演出で用意していた盗賊を先に片づけちまったってわけか」
「そう。わたしがアイツに惚れなければ、この演出も意味が無い。だから、余計な被害が出る前に片付けたかったんじゃないかしら? 特にわたしは、姫さまからウェールズ皇太子に宛てられた手紙を持っているし」
もはやこうなったら、ルイズでさえ、ワルドをアイツ呼ばわりすることをためらわない。
「でも、それだとアイツ、ヤバイ奴らとつるんでるってことか? 変態なだけじゃねえじゃん!」
「そこが問題なのよ。単に下劣な性癖が暴露されても、味方ならまだいい。でも、アイツが敵なら、もの凄く厄介なことになる」
なお、ルイズはワルドが幼女趣味の変態ではないことを見抜いていた。本当にそうだったら、むしろ幼い頃の自分に恋文や面会にくることを頻繁におこなっていただろうから。
でも、ワルド自身が認めたことであるし、もはや裏切り者の匂いがしてきた以上、わざわざ庇おうという気も起こらなかった。
才人が言う。
「今のうちにとっちめるか?」
ルイズは、首を振る。
「それはさすがに早過ぎる。確たる証拠がないわ。けど、用心して」
「他の奴らに知らせなくても良いのか?」
ルイズは、苦笑する。
「同じよ。今と扱いが変わらないわ。むしろ、警戒し過ぎると、アイツが尻尾を出さないかもしれない。それで、なんであなたにだけ、知らせたかなんだけど」
才人は、真剣な表情でうなずく。
「わたしは、ファ・ディールで、実は強大な魔力を持っているって、何回か言われたことがあるからなの。そのせいで狙われたこともね」
実際には悪いドラゴンに食われかけたのであるが、その話は今は伏せる。ルイズは、続ける。
「アイツの狙いが、わたしの持つ強大な魔力だと仮定すれば、何もかも辻褄が合うの。アイツは、わたしが10年前から魔法の失敗で爆発するのを見ていた。だから、アイツがあれだけ変態だとプライドが壊されても、怒って離れなかったり、10年間も連絡をしなかったのに、突然昔の戯れの婚約を盾に、わたしを婚約者呼ばわりしたりね」
才人は、うんうんと大きくうなずいた。
「だから、他の人はともかくとして、あなたは、ワルドを完全に敵だと思って警戒して。でも、やみくもに剣を振るんじゃなくて、アイツがボロを出しそうなときに、剣を振るいなさい。
特に、アイツが敵だとすれば、アルビオンの貴族派、レコン・キスタと繫がっていると思うから、ウェールズ皇太子から手紙を受け取る時なんかが、特に危ないと思うわ。さすがに魔法衛士隊の隊長だけあって、実力は相当あるはずだから、あなただけだと荷が重いと判断したら、わたしも援護する」
すると、才人は、ルイズの手を両手でがっちりと握り、何度も頭を下げた。才人としては、『信頼してくれてありがとう。必ずやり遂げるよ』という意味を込めた。