ゼロの伝説LOM(ルイズが異世界から帰還後)   作:hobby32

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53話:姫さまへの報告

トリステインの王宮の門の前は魔法衛士隊の隊員たちによって、厳重な警備が敷かれていた。戦争間近という話が数日前から流れていたからである。隣国アルビオンを制圧した貴族派『レコン・キスタ』がトリステインに侵攻するのではないか、という噂であった。

 

故に王宮を守る衛士隊の緊張感は強かった。王宮の上空は、幻獣、船を問わず、飛行禁止令が出され、門をくぐる人物のチェックも厳しかった。

 

顔なじみの職人や料理人でさえ、逐一、身体検査とディテクトマジックでメイジになりすましていないかなどを強くチェックされた。

 

そんな折、風竜が王宮の門前に降り立った。その内の4人が降り立ち、1人の少年が大柄な男を見張っている。

 

桃色の髪の少女が、門番の衛士に代表して告げる。

「わたしは、ラ・ヴァリエール公爵家の三女、ルイズ・フランソワーズです。姫殿下にお取り次ぎを願います」

「用件は?」

ルイズは、ポケットから、ウェールズ皇太子の持っていた風のルビーと自分の嵌めている水のルビーを取り出し、2つの指輪を近づけて虹を見つけた。

 

衛士は目を丸くする。

「アルビオン王国ウェールズ皇太子の件について、そして、裏切り者を捕縛したと、申し上げてください」

「裏切り者? 誰のことだ?」

ルイズ、今度は胸ポケットから、ウェールズ皇太子の手紙を取り出すも、衛士には渡さない。

 

「これはウェールズ皇太子がアンリエッタ姫殿下に宛てられたものです。しかしながら、これは姫殿下に宛てられたものですので、姫殿下以外にはお渡しできかねます。ですが、この書簡には確かにウェールズ皇太子が裏切り者ーーワルド子爵の悪行を目撃された旨、記されております」

 

門番の衛士が驚愕を露わにする。

「ワルド隊長が裏切り者とな!?」

ルイズは、冷静に続ける。

「はい。にわかには信じがたいことと思われますが、姫殿下がこの書簡を読まれた際には、すべての真実が明らかとなるでしょう」

 

衛士は、王宮へと走って入っていく。

しばらくして、ルイズと才人がアンリエッタの居室へと通され、衛士隊が、生乾きの臭い匂いのする、がんじがらめに縛られているワルドを運んでいった。

キュルケとタバサとギーシュは、謁見待合室に通されて、待機となる。

 

「まさか、ワルド子爵が裏切り者だったなんて、ルイズ、わたくしの一番のお友だち、あなたには本当に申し訳ないことをしましたわ」

アンリエッタは、頭を垂れる。

「いいえ。もう捕縛された以上、終わった話ですわ。姫さま、どうか頭をお上げください」

 

それから、ルイズは胸ポケットから二通の手紙をたてまつる。一通はかつて、アンリエッタがウェールズに宛てた手紙、もう一通はウェールズ皇太子がワルドの罪状と自らの遺言をしたためた手紙。

 

アンリエッタは、二通の手紙をしかと読了し、憂鬱げにため息をついた。それから、悲しさ隠せぬ笑顔をルイズたちに向ける。

 

「こうして、トリステインとゲルマニアの同盟は守られましたわね、ルイズ。あの方はわたくしの手紙をすべて読んでくれましたか?」

「はい、姫さま。確かに、最初から最後まで」

 

「結局、あの方が亡命されることはなかったのですね」

「……やはり、姫さまはあの手紙で亡命を勧められたのですね」

そのようなことは「一行も書かれていない」とウェールズは言ったが、やはりそれはウソだったのだ。

 

才人が言う。

「自分が亡命したら、反乱軍が攻め入る格好の口実を与えてしまうと、王子様はおっしゃっていました」

 

アンリエッタは、首を振る。

「ウェールズさまが亡命されようがされまいが、攻めるときは攻めてくるし、攻めないときは攻めませんわ。個人の存在だけで、戦争は発生しません」

「それでも、迷惑をかけたくなかったんですよ」

 

そうは言っても、アンリエッタの曇った表情は晴れない。

ルイズは、いくら言葉を尽くしても、あの皇太子を亡命させることはできなかっただろうと考えていた。それもまた、愛の形なのだろうと。

 

しかし、そんな言葉が悲しみに沈む目の前の姫さまの慰めになるとは思えなかった。

 

アンリエッタは、しばらくしてから、無理やり笑顔をつくって、2人に告げた。

「さあ! 裏切り者1人が捕縛されたわけですし、これでわたくしの婚姻の妨げとなるものはなくなったのです。わが国は、無事ゲルマニアと同盟を結んで、アルビオンも容易には攻め入ることはなくなるでしょう」

ルイズは、水のルビーをポケットから取り出して、返却しようとしたが、アンリエッタは、首を振った。

「あなたが持っていなさいな。今回の旅のお礼です」

「しかし……」

「いいのですよ、ルイズ。とっておいてください」

ルイズは、頷いて、指に嵌める。

 

それから、ルイズは、風のルビーをアンリエッタに奉った。

アンリエッタは、感嘆の声を上げる。

「風のルビーですか。ウェールズ皇太子から預かったのですね」

「はい」

ルイズは、小さくうなずいた。

 

アンリエッタは、風のルビーに指を通す。ウェールズが嵌めていたものだから、アンリエッタの指には合わなかった。アンリエッタが杖を向けて呪文を唱えると、指輪が縮まっていき、アンリエッタの薬指にピタリと収まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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