ゼロの伝説LOM(ルイズが異世界から帰還後)   作:hobby32

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55話:デルフのサビ取りと、シエスタとのお風呂

さて、才人がルイズの部屋に戻ると、ルイズが床で抜き身のデルフリンガーを見つめていた。

 

帰ってきた才人に、ルイズは笑顔を向ける。

「サイト、お帰りー!」

「ただいま。何してるんだ?」

ここで、デルフリンガーが答える。

 

「サビ取りだよ。嬢ちゃんの魔法楽器でな。俺、思い出したんだぜ、相棒!」

「サイト、ちゃんとドアを閉めて」

才人は、すぐに扉を閉めた。

 

それから、ルイズは、フルートに唇を当てて吹いた。

すると、金色のリングと星がデルフリンガーを包み込むーーかと思われたら、錆び付いたデルフリンガーの刀身に金色のリングと星がスルスルと吸い込まれていく。

 

すると、急にデルフリンガーの刀身が生まれ変わったかのように、美しく輝きだした。

 

才人が驚愕する。

「デルフ! お前……」

 

ルイズは、満足げにうなずく。

「魔法吸収能力。大したものね。たいていのメイジなら、これで手も足も出なくなるわ」

デルフリンガーが満足げに言う。

「そう、これが本来の俺なんだよ」

 

才人が、呆然としながら訊く。

「どうして気付いたんだ?」

ルイズが、ふくろの中にフルートを入れながら、答える。

 

「デルフリンガーのサビをどうにかできないかって、相談してね。わたしは剣のことなんてチンプンカンプンだから、訊いてみたら、こうなったの。まさか、こっちでもこんなに戦闘があると思わなくて、何とかしたいと思ってたら、突然デルフリンガーが思い出したって言って……あれ、どうしたの?」

 

才人が喜ぶかと思っていたら、沈んだ顔をしていて、ルイズは首をかしげた。

「……俺、ルイズに助けられっぱなしだ。全然恩返しできてない」

 

ルイズは、ファ・ディールでの最初の頃を思い出された。

「まあ、最初の頃なんて、こんなものよ。わたしだって、あっちに行って初めの頃は、瑠璃、チョコボ、バド、コロナ……彼らの助けがなければ、生きていられなかったんだから。とてもね。

だから、最初の内はこんなものなのよ。それにもう、あなたがいたおかげで、わたしは2回も魔法楽器を使わずに戦いを終わらせられたんだから、十分役に立ってるって」

ルイズは、それからデルフリンガーを鞘に頑張って入れた。そして、持ち上げようとしたが、できなかった。自分の身長より大きい剣だから当然であるが。

 

「サイト~、デルフリンガー重いよ~!」

「あ、ああ! ちょっと待ってろ」

サイトは、普段デルフリンガーをルイズの部屋の空いている壁に立てかけているため、ルイズが何とか床に置いて引きずることはできても、自力で持ち上げるのは、できないのだろうと思った。

 

才人は、軽々とデルフリンガーを持つと、左手のルーンが光り、ルイズが持ち上げられなかったデルフリンガーを羽根のように軽く感じながら、持ち上げた。

 

ルイズは、笑顔でホッとしたように感心する。

「いやあ、やっぱり、男の子の力は凄いねぇ」

才人は赤面したが、やはりルイズは魔法楽器の力が無ければ、非力な女の子に過ぎないのだと改めて実感した。この女の子にもできないことで埋め合わせようと思った。

 

 

 

さて、その翌日の授業では、火のトライアングルメイジのコルベールの発明した『愉快なヘビくん』がペコペコ挨拶するのに、教室中の生徒が白ける授業であったが、唯一才人だけは、強い興味を示した。ミスタ・コルベールが発明した『愉快なヘビくん』が、動く仕組みが『エンジン』であると見抜いて、称賛して叫んだのだ。

 

ミスタ・コルベールは、フーケの事件の際に目撃者の数に彼を入れなかったことをルイズに注意された教師であったが、この教室で唯一自分の発明品を評価してくれたことで、

「君は、どこの出身なんだい?」と興奮気味に訊ねてきた。

 

慌てたルイズがひとまず、

「サイトは、えっと、東のロバ・アル・カリイエの出身です」

と言って誤魔化した。

 

するとコルベールは、驚愕する。

「なんと! あの恐ろしいエルフの住まう土地ですって! なるほど、あの辺りは、学問や研究が盛んだと聞く」

と納得した。

 

 

夕方、才人は、外の広場の一角で、お風呂に入っていた。お風呂といっても、コック長からもらった古い大釜であったが、そこにたっぷりとお湯を張り、それを風呂にしたのだ。

 

ルイズは、才人のお風呂事情についてまではわからないらしく、召喚間もないころ、あれが男子用の風呂だよと指さして去って行ったが、それは平民用のサウナに過ぎなかった。ルイズとしては、才人が貴族用の風呂に入るのは気まずいだろうと思って、平民用の浴場を案内したつもりだっだが、才人にとってはダメだった。

 

現代日本人の才人にとっては、やっぱり、湯船にざぶんと入らないと、お風呂とは呼べない。それで、自らお風呂をどうにかしたのである。

 

それで、デルフリンガーとだべりながら、気持ちの良いお風呂を満喫していると、後ろから誰かが近づいてくる草を踏む音がした。

 

「誰だ?」

と才人が振り返ると、人影が激しく動いて、ガチャンと何かを落とした。

 

「ああ、やっちゃった~。また怒られちゃいます」

「シエスタ!?」

才人は、その声で正体に気付いた。

それは、学院の食堂に勤めるメイドのシエスタであった。メイド服姿である。

シエスタは、落とした何かを慌てて拾っていた。

 

才人が「どうしたの?」と声をかけると、シエスタは急いで立ち上がって説明する。

「あの! とっても珍しい物が手に入ったので、サイトさんにもごちそうしたいと思ったのですが、サイトさん、最近厨房になかなかいらっしゃらないので」

 

才人が、そういえば、と思い出す。召喚されて初めの頃は、けっこう通っていた。平民同士で居心地よく過ごせるし、ギーシュを負かしてからは、やたらとチヤホヤされて楽しかった。今でも、ルイズは、授業が退屈だったらいつでも行っていいよ、と言ってくれるのだが、授業はたいてい退屈でも、ルイズの横顔を見つめながら、どんなプレゼントが合うんだろうと思いながら過ごしていると、いつの間にか時間が過ぎてしまうのだ。

 

シエスタの持ってきたお盆には、ティーポットとカップが載っていた。シエスタは、声をかけられてびっくりして、カップを一個割ってしまったようだ。

シエスタは、風呂釜に入った才人が裸であることに気がついたようだ。少し目をそらしながら言う。

 

「はい。東方ロバ・アル・カリイエからの珍品で、『お茶』と言うんです」

「お茶?」

才人としては、そんな珍品でも何でもないと思ったが、シエスタは、ティーポットから、割れなかった方のカップにお茶を注ぐと、才人に差し出す。

 

才人は、お礼を言ってから受け取る。馴染んだ日本の緑茶とさして変わらぬ味が、口の中に広がった。

 

才人は突然懐かしさが湧き上がってきて、涙腺が刺激され、思わず涙ぐんでしまった。

シエスタが、慌てふためいて声をかける。

「どうしましたか! お気に召しませんでしたか?」

「いや、違うんだ。少し懐かしくて……」

才人は、もう一回、風呂釜の中でお茶を飲んだ。

 

「懐かしい? ということは、才人さんは、東方のご出身なんですね」

「そ、そうだな、うん」

よくわからないけど、昼間の授業でルイズがそう言っていたので、そういうことにしようと、才人は思う。

 

この時、少し歩いていたシエスタが湯船周りのお湯に足を滑らせてしまい、「きゃああ!」と悲鳴を上げて、顔から風呂の中へとバチャーンと勢いよく落ちていった。

 

「だ、大丈夫か?」

シエスタは、急いで顔を水から出して答える。

「は、はい。……ですが、ああ、ビショビショだわ」

 

「ええと、その……」

才人は、どうすればいいのやらと思った。このまま入っていいとも、早く出ていって欲しいとも言えず、視線をさまよわせた。

 

すると、突然、シエスタがクスクスと笑い出した。

ど、どうして笑うの? と才人は慌てて訊いた。

 

シエスタが笑顔で言う。

「これがサイトさんの国のお風呂なんですね」

「あ、ああ。服を着ては入らないけどな」

「そうですか。なら、わたしも脱ぎます」

「は? 今なんて?」

才人はお口あんぐりのまま訊ねる。

 

「脱ぐ、と言いました」

「いや、あの、その」

シエスタは、いったん風呂から出て、どんどんとメイド服や下着を脱ぎ始めた。それから濡れた服を薪の火の側に置くと、もう一度、お湯の中へと入ってくる。

 

その際に才人の目を釘付けにした、豊満な胸の膨らみは、ルイズが持っていないモノであった。

 

シエスタは、感嘆の声をあげる。

「わあ、気持ちいい! こうやってお湯の中に浸かるのは気持ちいいですね!」

 

才人は、そっぽを向いた。ルイズは、着替える時、いつも即席のカーテンをつくってくれるので、こうして仕切りも何もなく裸の女の子がいるのは、初めての状況であった。

 

「そこまで照れないでくださいよ。わたしだって恥ずかしくなっちゃいます。だいじょうぶですよ。ちゃんと胸は腕で隠してますから」

才人は、ドキマギしながら、シエスタの方を向く。暗いおかげで水面の下のシエスタの身体は見えない。なんか複雑な気分になる才人であった。

 

ほのかな光りの中で、シエスタの黒髪は、きれいに光っていた。こうして近くにきてみると、シエスタは、とても可愛らしいことに気がついた。どうしても貴族や戦士的な雰囲気がにじみ出るルイズとは違い、自分と同じふつうの庶民なんだということを感じさせられる。大きな黒い目も日本人の才人には見慣れたもので親近感が持てるし、郷愁の念を呼び起こされる。

 

それから、シエスタは、身体を近づけてきて、才人の国について聞いてきた。才人は、そんなことしたら見えるじゃないか、と思い、パニックになって、

「月が1つしかなくて、魔法なんてなくて……」

と言うと、シエスタは、笑ってしまった。

 

「そんな、からわないでくださいな。そんな田舎の娘だと思って………」

いや、本当のことなんだけどなぁ、と才人は思った。

しかし、異世界を冒険してきたルイズと、『破壊の杖』こと地球から来た兵士の持っていたロケットランチャーの破壊力を実際に目にしたオスマン以外は、にわかには信じられないのだろう。シエスタの反応はごくごく普通のことなのだ、と才人は思う。

 

「きちんと本当のことを話してくださいな」

シエスタは、微笑みながら上目遣いを才人に向ける。才人は、まじまじとシエスタの髪や顔を見つめた。黒い髪と目は、本当に日本人のそれとそっくりだ。顔のつくりは違うが、郷愁の念を呼び起こされる雰囲気に、才人は安心感を覚える。

 

才人は、当たり障りのない話として食文化などの日本の話をした。シエスタは、楽しそうに聞いていた。才人もまた、夢中になって話し続けた。

 

それから、シエスタは胸を押さえながら立ち上がる。才人はすぐにそっぽを向いたが、シエスタの乳房が目に入ってしまい、脳に焼き付いてしまった。

 

そんな才人を尻目にシエスタは、服を着て、才人に頭を下げた。

「ありがとうございました。とても面白かったです。お風呂も、サイトさんのお話も」

シエスタは、本当に楽しそうに言った。

「またお話ししてくださいますか?」

才人はためらいなく頷いた。

 

それから、シエスタは、頬を赤く染め、しばらく視線を宙にさまよわせながら、言う。

「えっと、その、話も、お風呂も楽しかったけれど、一番素晴らしかったのは……」

シエスタは、ここで言葉を区切って、それから思いきって言う。

 

「あなたかも……」

「なんですとっ!?」

シエスタは、ピューッと走り去った。

 

才人は、今の言葉をにわかには信じがたく思いつつも、思わずぐったりと大釜に寄りかかってしまった。

 

それから、ルイズの部屋に戻ると、

「あ、おかえりー、サイト!」

ルイズが椅子に座りながら、やっぱり極上の笑顔で手を上げて才人を迎えてくれた。相変わらず、自分を元の世界に返す手段を探すのに勤しんでいるらしい。

 

「ただいま、ルイズ」

才人もルイズの笑顔を見ると、自然と顔がほころぶ。けど、やっていることは、自分を元の世界に戻すことなのである。

 

確かに帰りたいには、帰りたいが、何だかルイズがやっているのを見ると、複雑な気分になる才人であった。

 

それから、しばらく待っていると、いつもの時間に、ルイズの異世界譚が始まる。

「今日は、わたしと真珠姫がかなり危なかった話なんだけどね」

そう言って、ルイズは、真珠姫とレイリスの塔を最上階まで登って、巨大なモンスターの踏みつぶしの攻撃を何度も避け、それから駆け下りた塔の下で宝石泥棒のジュエルビーストと戦った話を始めた。

 

才人は、この前、守る守ると連呼した相手が、本当に命からがら戦えない真珠姫を守り抜いた話に、やっぱりルイズって凄いんだなぁと思い、より彼女が遠くなったような気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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