ゼロの伝説LOM(ルイズが異世界から帰還後)   作:hobby32

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57話:ルイズ、才人にドラゴンキラー編を語る 後編

5日目――

奈落の巨大な墓石の前で、あまりにも強い罪悪感に苦しむルイズの前に、シエラが現れて、共に奈落を降りて欲しいと言われ、即座に了承した。

 

奈落に入ってすぐに、ルイズは、ティアマットの手先の甲冑型のモンスターの集団に取り囲まれた。シエラがすぐさま助けてくれて、完全にティアマットが敵だと判明した。

 

そのまま奈落の下層をどんどん降りてゆき、ルイズたちは、奈落の底でティアマットとラルクに出会った。

 

ラルクは、シエラに対して、自分はティアマットと対決し、勝者のみが地上への復活を果たすと述べた。しかし、ティアマットはそれに応じるフリをして、ラルクに血をコウモリに吸い続けられるような呪いを放った。

 

シエラは、必死になって止めようとしたが、ティアマットが聞く耳を持つはずもなく、「お前が憧れていた、強い戦士である姉を倒せ」とラルクに指示をして、姿を消した。

ルイズは、あまりの光景に、呆然と立ち尽くす他なかった。

 

それから、ラルクは、ケンタウロス型の巨大なモンスターに変身してしまった。腕を分離して殴りつけてきたり、脚部を奇妙な形に変形させて、爆撃を放ってきたりと、もはや元のラルクの戦い方ではなかった。

 

シエラは、弟と必死になって戦ったが、本気になれそうもなかったので、自分が大量の水の魔法で代わりに罪を背負うことにした。

 

そうして、元の姿に戻って倒れたラルクの側にシエラはしゃがみ込んだ。ラルクは、純粋に姉ともう一度、生き返りたかったことと、謝罪の言葉を口にしたあと、儚く姿を消した。その直後、ティアマットの城が浮上して、自分たちは吹き飛ばされてしまった。

 

6日目――

気が付いたら、ティアマットの城の前で目が覚めた。竜姫ヴァディスの幻影がルイズたちを守ってくれたのだ。

ルイズは、愕然としながら、その禍々しい巨大な城を見つめた。そして、シエラとヴァディスの話し合いも。

 

ヴァディス曰く、ティアマットの目的は、地上の生命を全て取り込むこと。しかし、弱点は、自分以外の何者をも認めないこと。故に絆こそが重要である。この大地から生まれる生命は、すべて絆で結ばれている。その命の呼び合い、支え合う力、それがルイズ達の助けになる、とのこと。

 

ヴァディスから大地の絆を託され、シエラから共に戦おうと言われても、ルイズは、にわかには動けなかった。

 

これまでの罪悪感の重さがあまり、大粒の涙が止まらなかったのだ。

メガロードを殺した! ジャジャラを殺した! そして、シエラの弟のラルクをも殺した! 自分一人の命を守るために、あまりにも大勢の犠牲を出してしまった! わたしが消滅することを選んでいれば、こんなことにはならなかった! わたしがいなければ!

 

そうして、ルイズはしばらくの間、地面に突っ伏して泣き崩れた。

それをシエラが励まし、ヴァディスが優しく諭したことで、ルイズは、何とか立ち上がることができた。

 

とりわけ、ティアマットを打倒すれば、メガロードもジャジャラもラルクも取り戻せるという言葉を聞き、ルイズは、このティアマットの城を自らの罪の贖罪の場所として定めて、必ずティアマットを打倒してみせると決意したのである。

 

ティアマットの城は、火のドラゴンの居城らしく、窓から見える景色は炎で覆われ、猛烈に暑くて常に全身から汗が噴き出るようなところであったが、ルイズたちは、全く気にせず、ひたすら、モンスターを蹴散らしながら、進んでいった。

 

大量の落とし穴があって、容易には先に進めなかったが、城の中を彷徨っている内に解除できて、ティアマットのいる最上階にまで至った。

 

ティアマットに怨嗟の言葉を、ルイズとシエラが叩きつけたあと、ティアマットによって、異次元空間に移動させられた。

 

狭い所で、ドラゴン形態のティアマットの巨体と距離を離すこともできず、さらにもの凄く速い飛び道具まで持っているものだから、ルイズにとっては最悪の相性と言ってもよかった。

 

それでも、力の続くかぎり戦い続けたけど、ティアマットのブレスをみんなまとめて浴びてしまい、体勢が完全に崩されたところーーわたしは、ティアマットの口に丸呑みされてしまった。

 

「はあっ!?」

才人は、大きく目を見開き、思わず叫んでしまう。それでどうやってそれで生き残ったんだ、という顔つきであった。

 

ルイズは、続ける。

たぶん、ティアマットはわたしの持っている『強大な魔力』を求めていたんだと思う。ティアマットの口や食道は猛烈に熱くて、あちこち火傷したけど、わたしはわりと落ち着いていて、むしろチャンスだと思えた。

 

わたしは胸ポケットから、杖を取り出して、短い詠唱の後、『ファイヤーボール』を放った。ええ、あなたも知っているとおり、わたしの呪文は常に失敗して爆発する。でも、それが狙いだった。

 

ティアマットのお腹の中を爆発魔法で以て柔らかい内側を完全に粉砕した。

 

わたしは、そうして、破れたティアマットの体の内側から、脱出できた。

 

その後、お腹を粉砕されてロクに動けないティアマットの首を、シエラが切って、それがとどめとなった。

 

ティアマットは、炎上する空間へと消えていった。

 

それからわたしたちは、崩れるティアマットの城の中を急いで脱出した。

 

出てみると、外は完全に奈落の巨大墓石の前に戻っていた。

そして、生き返ったラルクの姿があった。

 

シエラは、ラルクに触れようとした。けど、ヴァディスによって止められた。ラルクにはティアマットの血の呪いが付いていて、触れれば奈落から離れて長く生きられなくなる、と。そして、ラルクは1000年、奈落から離れて生きられないと。

 

シエラはそれでもラルクに触れようとしたが、ラルクは突っぱねた。

 

それから、わたしも同罪だから、ラルクに触れようとしたのだけれど、同じように突っぱねられた。そして、わたしとシエラにとっとと帰れ、と言い放った。

 

シエラは、そんなラルクに「今度は私から会いに行くよ」と言うと、ラルクとシエラは、触れない位置からお互いの指を付き合わせた。

わたしは、そんな二人の光景に、涙が止まらなかった。

 

その後、もう一回ノルン山脈の頂上と骨の城に行って、わたしは復活したメガロードとジャジャラに土下座した。

今以てシエラの取りなしが大きかったと思うのだけれど、メガロードは笑って、ジャジャラは厳しくも、わたしを許してくれた。

 

それから、ヴァディスに感謝の言葉を述べてーードラゴンを巡る事件は一応の区切りはついた。

 

 

 

それから、ルイズはグラスに入った

ワインを一気に飲んだ。そして、イスに腰かけ、天井を放心状態のまま見つめた。自らの罪を告白するという語り疲れと、才人にどう思われるかの不安で、しばらくのあいだ、天井をじっと見つめていた。

 

才人は、ルイズの話を頭の中で整理するまで多少の時間が必要であった。

 

才人としては、まあ、自分の知らない異世界というのもあるが、結局ルイズが倒したドラゴンたちは復活して、ルイズは謝罪し、巨悪のティアマットは滅ぼされたんだから、それで終わった話じゃないか、と率直に思えたのだが。

 

そこで、才人は、微笑みながら、うつむく姿勢となったルイズの頭を、ゆっくりと撫でた。そして、なるべく優しい口調で語りかける。

 

「お疲れさん。すごく辛いことなのに、話してくれてありがとな」

「何してるのよ、この罪人に。わたしはどこまでも軽蔑されても仕方のないことをしたのよ」

 

ルイズは、頭を撫でられるとは全く思わず、拍子抜けした。

 

「いや、まあ、軽々しくは言えないけど、結局ルイズたちが全部解決したじゃねえか。ティアマットって奴に脅迫されたって言っても、お前の命が人質に取られてやったんだろ。

なら、どうしようもねぇじゃん。俺だって、お前と同じ立場なら、ティアマットって奴の指示に、嫌々でも従ったと思うぜ。俺だって死にたくねぇからな」

 

「………………」

ルイズは、ただじっと、目を丸くして、才人の顔を見つめる他なかった。

 

才人は、ルイズの頭を撫でながら続ける。

「少なくとも、お前が好き好んで、悪さしたわけじゃねぇのはわかったし、お前の言う『罪』だって、全部自分でケリをつけたんだろ。ティアマットを倒して、復活したドラゴンたちに土下座までしてさ。

 

これ以上、あと何ができるんだよ? 俺には思いつかねぇぞ。だから、俺はお前にお疲れさん、って言うしかねぇよ」

 

この言葉を聞いた途端、ルイズは、ふわっと、羽のように心が軽くなる感じがした。

 

ルイズの心に重たくのしかかっていたティアマットの呪いが、別の異世界からやってきた少年の手と言葉によって、解呪されつつあった。

 

誰にも話せないが故に、軽蔑を恐れるがあまりに話せなかった罪を、異世界から来た少年ということで、ルイズは話すことができて、ようやく自分が過度な罪悪感と贖罪意識を抱えていたことに気が付いた。

 

彼女ほど聡明であっても、他人に話さなければ自分のことに気付かないものなのだ。

 

それまでずっと、根深く黒い罪の意識がはびこっていたというのに、あっさりとこの少年の言葉と手によって浄められていくように思えた。

 

ルイズは、才人に頭を撫でられる気持ちよさにしばらくひたっていた。それから、この使い魔となった優しい少年にどういう目を向ければいいのか、ずいぶんと悩んだ。

 

ルイズにとってのドラゴンキラー編は、別の区切りがついたように思われた。

 

 

 

 

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