ゼロの伝説LOM(ルイズが異世界から帰還後)   作:hobby32

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60話:才人の隠し事

さて、才人がキュルケたちと宝探しの旅をしている最中、ルイズは、授業に出たり、才人を元の世界に帰す方法を調べたり、詔づくりをしたりしていた。

 

なお、詩の才能は、ルイズには全くないので、ポキール来ないかなー、と思っていた。あの神出鬼没の鳥人なら、さっと歌ってくれそうだが、そんなことのためにハルケギニアまで来ないか、と苦笑する。

ところで、ルイズは才人がいなくなったことでけっこう寂しさを感じていた。

 

ああ、一人の部屋って久しぶりだな、と。

思えば、ファ・ディールでは、バドとコロナとチョコボが最初以外、ずっと同じ家にいたから、寂しさとはほぼ無縁であった。

 

この世界に戻ってからも、同じ部屋にほとんどずっと才人がいた。特に、夜に離れるなんてことは決してなかった。

 

そう考えると、自分はけっこう賑やかな存在に囲まれていたんだなぁと思う。

逆に言えば、ルイズは一人ということに慣れていなかった。あの使い魔召喚の儀式の日から、周りにはほぼ常時、人がいた。

 

さて、夜も更けてきた。いつもなら、才人に異世界譚をする時間だが、才人がいないので、着替えてベッドに直行するだけである。

 

才人がいないので、即席のカーテンをつくる必要もない。いつものネグリジェに着替えて、才人のベッドを足場にして、ピョンと奥の自分のベッドにダイブするのが習慣である。

 

しかし、今日は何だか才人のベッドが目に入ってしまった。

ルイズは、イタズラっぽく笑う。

 

ーーちょっと、お邪魔してみようかしら。

 

だいぶ才人の匂いの染みついた枕に頭を乗せて、同じく才人の匂いでいっぱいの布団をかぶる。

 

あ、いい匂い。気持ちいい。

 

ふわっと全身の力が抜けて、快い温かさに包まれる。枕が絶えず才人の匂いをルイズの鼻に供給してくれる。ルイズは、鏡を見たとすれば自分でもびっくりするほど、安心しきった笑顔を浮かべてしまった。使い魔の主人は、使い魔のことが好きになるのが自然だが、だからこんなにも才人の匂いが心地良く感じられるのだろうか。

 

でも、そんなことはいいか、とルイズは考えるのをやめて、実に安らかな眠りについた。

 

 

 

一方、タルブの村近郊の寺院にて、才人は、愕然としながら、『竜の羽衣』を見つめていた。『竜の羽衣』を見る前にシエスタから、曾祖父のものであること、『竜の羽衣』に乗って、シエスタの故郷の村まで来たこと、もう飛べなくて、『竜の羽衣』に『固定化』の呪文をかけてもらっていたことを聞いていた。

 

『固定化』の呪文のおかげで、どこにも錆は見受けられない。

 

才人は、「何が『竜の羽衣』だと罵る」キュルケとギーシュの言葉を聞き流しながら、シエスタに強い視線を向ける。

 

そんな目線を向けられて照れるシエスタに才人は、「お前のひいおじいちゃんの残したものは他にないか?」と訊ねた。

 

すると、シエスタは、曾祖父の墓まで案内してくれた。

そこの墓碑銘を才人が読み上げる。

「海軍少尉佐々木武雄、異界二眠ル」

シエスタは驚愕する。

「サイトさん、読めるんですか? ひいおじいちゃんが自ら書いた墓碑銘で誰も読めなかったのに!」

 

才人は、それには答えず、今度はまじまじとシエスタを見つめる。シエスタが照れて赤くなるくらい。

「シエスタ、君の黒い髪と黒い目、ひいおじいちゃんに似ているって言われたことは?」

「あ、ありますけど」

 

やっぱり、と才人は思う。どことなく懐かしいと思えたのはそのためか、と思う。

 

それから、才人は寺院の中に入り、『竜の羽衣』に触れてみた。すると、左手のルーンが光り出す。すると、機関砲を見ながら、武器と定義されていることを思う。内部の構造、操縦法などがみんな才人の頭の中に入ってきた。

 

そして、飛ばせない理由も。燃料タンクが空っぽだったのだ。

 

シエスタは、ひいおじいちゃんの遺品を持ってきてくれた。それは、古くなったゴーグルであった。

モノはこれだけ。しかし、遺言があった。シエスタが言う。

「あの墓碑銘を読める者がいたら、『竜の羽衣』を渡すように、とお父さんが言っていました」

「なら、俺がもらっても良いってことか」

「はい。管理も大変ですし、今では村のお荷物扱いですから。それで、才人さん、この『竜の羽衣』って何なんですか?」

「これは、ゼロ戦。俺の国の昔の飛行機だよ」

「ひこうき? 前に才人さんごおっしゃっていた?」

ああ、と才人は頷く。

 

その後、才人たちは、シエスタの家族から大変な歓迎を受けたが、笑顔で家族を紹介するシエスタを見て、才人は、ただただ羨ましくなった。

 

それから、シエスタは、才人に見せたかったと言う草原まで案内してくれた。

才人は、感慨深げに問いかける。

「ひいおじいちゃんは、どこからやって来たんだ?」

「東の、ロバ・アル・カリイエの方からいらしたと聞きました」

「そうか。でも、このことは、ルイズには言わないでくれ」

 

シエスタは、目を丸くする。

「それは、もちろん構いませんが……どうして?」

「はっきり言うが、俺もひいおじいちゃんも、この世界の人間じゃないんだ」

「また、そんなことを……」

と言って、シエスタは笑おうとしたが、才人の目は真剣そのものだったので、笑うのをやめた。

才人は、続ける。

「俺はいつか帰れるかもしれない。でも、そのタイミングは、自分で決めたいんだ」

 

才人としては、もちろん元の世界に帰りたい気持ちはある。帰って、家族に顔を見せたい想いが当然あった。照り焼きバーガーを食べたい、という思いもある。ネットサーフィンをしてみたい欲求も膨らんでいた。

 

ただ、この世界にも愛着が湧いてきたのもまた事実である。伝説の使い魔ガンダールヴの力のおかげとはいえ、いろいろと地球にいた頃では考えられない活躍をすることができた。

 

ずっと近くにルイズという可愛い女の子がいてくれて、こうしてシエスタからもチヤホヤされ、からかい混じりとはいえキュルケからも好かれている。こんなことは、地球にいた頃には考えられなかったことである。地球に帰ったらこんな活躍はできず、ただの凡人・平賀才人に戻ってしまう。もちろん、女の子たちが自分の近くにいるということもない。

 

才人としては、かなり悩ましかった。ふるさとに帰って、両親と会いたい、まずは顔を見せて安心させたい、という思いはある。

でも、それと引き換えにこの世界に戻れないとしたらーーそれはそれで面白くない。

 

やはりルイズが、異世界同士を自由に行き来できる魔法が一番望ましいと思った。それができれば……。

 

とりあえず、ルイズには、シエスタのひいおじいちゃんが東のロバなんとやらから来た話は伏せることにした。アイツのことだから、すぐにでも俺を元の世界に戻すために東に行くとか言い出しかねない。そこに行き来できる所があるなら良いが……。

 

ひとまず悩む時間が欲しかった。どのタイミングで帰るにしても、俺自身が決めたい、と才人は思っていた。

 

さて、そうこうしているうちに、学院から伝書フクロウが飛来して、教師陣がおかんむりだということで、キュルケとギーシュが青ざめた顔となったこと、シエスタは姫さまの結婚式に合わせてそのまま休暇を伸ばしても構わないという旨、書かれていた。

 

さて、才人としては、東に行くかどうか決めるにせよ、とにかくこのゼロ戦が飛ばなければ話にならない、と思った。

 

才人は、ギーシュに頼み込んで、彼の父のコネで、ゼロ戦をロープで作った巨大な網に載せて、竜騎士隊とドラゴンたちにゼロ戦を運んでもらった。

 

そして、学院の中庭に、ゼロ戦を鎮座させた。

才人が帰ってきて喜ぶルイズであったが、運送費用を聞いて、顔が凍りついた。もちろん、才人だって払えるはずがない。

 

しかし、そこに興奮気味のミスタ・コルベールが、気前よく運搬費用を払ってくれた。

 

 

 

 

 

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