ゼロの伝説LOM(ルイズが異世界から帰還後) 作:hobby32
アルビオンから魔法学院に突然の宣戦布告の報せが入ったのは、平和条約がむざむざと破られた翌日のことであった。
ーーアルビオンがトリステインに宣戦布告
ーーアンリエッタ姫殿下の結婚式は無期延期
ーーアルビオン軍はタルブの草原に陣を張り、ラ・ロシェール近辺に展開したトリステイン軍とにらみ合っている
ーー突然の開戦にトリステイン軍は壊滅的な被害。手勢で凌いでいるものの、多勢に無勢。
ーータルブの村は炎上中。同盟に基づいてゲルマニアに軍の派遣を要請するも、第一陣が到着するのは3週間後。
と、魔法学院に禁足令を伝えに来た特使は、次々と、絶望的な報せをもたらした。
魔法学院の門の前でルイズと才人は、馬車でゲルマニアに向かう馬車を待っていた。すると、血相を変えた使者が学院長室に向かったのを目撃し、その後を追いかけ、扉越しに良く通る声の特使の声を聞いたのである。
才人は、タルブという言葉を聞いて、急いで走り出した。今シエスタがいる村ではないか、と。それから、才人は中庭のゼロ戦のあるところに向かった。
ルイズもかなり急いで才人を追い掛けた。そして、微笑みながら言う。
「行く気なのね、タルブの村に」
「ああ、コイツならなんとか何とかなるかもしれねぇからな」
ルイズは、厳格な口調で言う。
「たぶん、無理よ。アルビオンの巨大戦艦相手にこれじゃ小さすぎる」
「でも、可能性がゼロじゃないなら、俺は行くさ」
ルイズは、あっそ、と言って、ゼロ戦に乗り込んだ。座席の後方、もともと巨大な無線機が取り付けられていた場所に。
才人は、あまり驚くことなく確認した。
「お前も来るのかよ」
「むしろ、行かないとでも思った?」
笑顔のルイズの言葉に、才人は、いいや、と軽くため息をつきながら首を振った。
「今、コルベール先生からガソリンをもらってくるから」
と、才人は言い残して、彼の研究室へと走る。
それから、大量のガソリンが流しこまれたゼロ戦は、離陸した。
タルブの村はもはや戦場に変わっていた。草原にはアルビオン軍が集結している。その上空では、アルビオン軍の巨艦『レキシントン号』から出てきた竜騎士隊が、トリステインの竜騎士隊を蹴散らしていた。
才人はつい最近訪れたばかりの、シエスタが賞賛していた草原が無残な状態となり、たくさんの家が黒く焼け落ちている光景に、激怒した。また、一機の竜騎士が森を燃やし、炎が広がってゆく。
「蹴散らしてやる!」
才人は憎悪の表情で叫ぶ。
ルイズが優しく叱咤する。
「サイト、戦場では冷静に」
その戦い慣れた者の涼しい声で、才人の肩の力が少し抜けた。
ルイズは、空中戦で使い勝手の良い魔法楽器を取り出していたが、思った以上にドラゴンたちが近づいて来られなかったので驚いた。
ゼロ戦の両翼下に備え付けられていた機関砲が次々とドラゴンを撃墜していったからだ。猛烈な射撃によって、竜たちは、体をズタズタになるほど穴を開けられたり、あるいは体が爆発したりした。
しゃべる剣のデルフリンガーも感嘆する。
「大した威力だな相棒」
しかし、それでも、敵が束になって後方から10騎ほど近づいてくることがある。
そこを、ルイズはハープを弾き、巨大な暗黒魔球ダークスフィアを発生させ、まとめて吸い込んで、地面にグルグルと回しながら落としてゆく。
その光景を見て才人は頼もしげに言う。
「前方は俺がやる。後方は頼んだぜ、ルイズ!」
「うん! 任せて!」
ルイズは笑顔で応えた。
こうして、二人で竜騎士たちを全滅させていった。
次に才人は、以前宿泊したラ・ロシェールの町の上空で巨大戦艦『レキシントン号』率いるアルビオン艦隊と相対する。
しかし、ハリネズミのように巡らされた大砲から発射される砲撃に近づくことすらままならない。仮に近づけても、撃墜するには機関砲では火力不足である。
才人は、ルイズに向かって叫ぶ。
「ルイズ! あのデカい戦艦を撃ち落とすような方法はないか?」
ルイズは呆れたように答える。
「だから言ったでしょ。あんなデカっいのを落とせるような魔法楽器はーー」
ここでルイズの口は急に止まった。あれと思い、『始祖の祈祷書』を見つめる。半信半疑であったが、『エクスプロージョン』の呪文の詠唱が書いてあったことを思い出す。
読んだ時は、いつ使うのやら、と才人と二人で呆れたものだが、今ならーー
ルイズは、ふぅーと息を吐いてから言う。
「サイト、ひょっとしたら、あるかもしれない。ほら、『始祖の祈祷書』に書かれていた爆発の呪文」
「え、マジで? あれ使えるの?」
「威力は試したことはないけど、でも、この飛行機でも魔法楽器でも打開策がないなら、やってみる価値はあると思う」
「……わかった。お前の魔法に賭けてみよう」
とは言っても、巨大戦艦からの砲撃が激しくてなかなか近づけない。
すると、デルフリンガーがアドバイスを送る。
「相棒、戦艦の上に向かいな。そこなら、大砲が向けられねぇ」
才人は『レキシントン号』の真上にゼロ戦を移動させた。
ルイズは、才人の肩の上に跨がって、風防を開く。強烈な風が吹き付けてくる。
「わたしが言うまで、ひこうきを旋回させて」
才人は言われた通りにした。
なお、本来の史実であればワルドが妨害しに来るのであるが、今現在の彼は城の牢屋に監禁されているために、来ることはなかった。
ルイズは、覚えている詠唱を開始する。生まれて初めて、体の中がうねって、行き場を求めて激しく動いてゆく感覚がした。
自らの系統を唱えるとこんな感じがすると言われている。
詠唱は続く。ルイズは開眼し、足を動かして、才人にゼロ戦を急降下させる。
ルイズは、己の視界に映るもので、破壊するか、しないか、殺すか、殺さないかをすべて瞬時に判断した。
そして、自らの激しく動く体のうねりの行き先に杖を向けた。
すると、小さな太陽のような光が放出され、膨らんでゆく。それから、『レキシントン号』を中心とする艦隊を包み込んだ。
光が晴れると、艦隊は燃え上がっていた。『レキシントン号』も漏れなく、すべての艦が炎上し、落下してゆく。次々と艦隊は、地面へと落ちてゆく。
すると、すぐさま地上のトリステイン軍がタルブの草原を陣取るアルビオン軍に突撃した。敵艦隊がすべて消滅したトリステイン軍の勢いと、アルビオン軍の差は素人目でもいからであった。
ルイズは魔法楽器で援護しようかと思ったが、体中にのしかかる激しい疲労感と、トリステイン軍優勢の状況を秤にかけて、才人の体にもたれかかることにした。
才人は優しく微笑みながら、ルイズの頭を撫でた。
「やっぱすげぇんだな、お前は」
「わたしの魔法は、世界を貫通するくらいだもの。このくらいは当然よ」
そして、夕方。
『竜の羽衣』ことゼロ戦がタルブの草原に降りたつと、途端にシエスタが駆けつけてきた。
才人がゼロ戦から飛び出てくるーーよりも先に、ルイズがゼロ戦から飛び出た。
そして、才人しか目に入っていなかったシエスタの胸に、ルイズは飛び込んでくる。
「大丈夫、シエスタ? ケガはない? 無事でよかったわ!」
そう叫んで、ルイズはシエスタをひしと抱きしめた。
シエスタは、一瞬ルイズが貴族ということも忘れ、『お前じゃねぇよ!』という目つきで自分の体に抱きつくルイズを睨みつけた。
しかし、鬱陶しくも心配しているし、強く抱き締められていて、振り解けそうもなかった。
本来の目当ての少年はそんな少女2人が抱き合う光景を微笑ましそうに見つめている。
いえ、サイトさん、違うんですけど、ミス・ヴァリエールとはほとんど初対面なんですけど。なんでこの高貴な貴族の娘が抱きついてきているのか、ハッキリ言ってわかりませんが。
そんな想いを瞳に込めてシエスタは、才人に訴えていた。