機動戦士ガンダムSEED 虹の向こうから来てしまった男 作:サンバガラス
スカイグラスパーが発進してから少ししてタッシルの街が見えたが、すでに炎に包まれていた。
「・・・酷ぇな。全滅だな、こりゃ・・・」
ムウは口調が重くなる。無事に残っている区画は殆ど無く、残ったそこも、じきに炎にのまれ灰になるだろう。生存者はいないと確信した時だ。
「ムウさん、全滅じゃねぇぞ。生存者がいる」
ゴロウは街から少し離れた小高い丘に大勢の生存者達を発見する。
「こちらゴロウ。生存者多数発見・・・ていうか街の人達がほぼほぼ無事だ」
ゴロウは通信回線を開きマリューに連絡を取る。
『え?・・・殆ど?」
「殆ど」
『敵は?』
「いない」
その報告にマリューは困惑した。ゴロウ、ムウは着陸し、レジスタンスが来るのを待つ。約10分後、レジスタンス達のバギーが着く。彼等はバギーから飛び降り、家族の姿を見つけて駆け出し、彼方此方で妻や子供を抱きしめる者達や家族の無事を確認する者達の姿が見られた。それから少し遅れてアークエンジェルのバギーが到着し、ナタルが降り、マウとゴロウに状況を聞く。
「少佐これは?」
「なんか殆どの人が生きてるよ」
サイーブは街の人々の状態を確認し、長老と呼ばれる老人に声を掛けた。
「どのくらいやられた?」
「・・・死んだ者はおらん」
その言葉にサイーブとカガリは驚く。ムウ達も事情を聞く為近づく。
「最初に警告があったわ。今から街を焼く逃げろと。・・・そして焼かれた。食料、弾薬、燃料・・・全てをな」
静かな怒りを込めて長老は続ける。
「確かに死んだ者はおらん・・・じゃが、これではもう生きてはいけぬ」
「ふざけた真似を!!どういうつもりだ虎め!!」
サイーブが拳を握り締めて怒りを露わにする。するとムウが淡々とした声で割り込む。
「だが、手立てはあるだろ?生きてさえいりゃさ」
「何だと!?」
サイーブ達が険悪な表情で、言葉を発したムウを見る。
「こいつは昨夜の一件に対する報復ってかお仕置きだな。本気だったらここの人達は皆殺しだ。こんな事で済ませてくれて、随分と優しい人じゃあの、彼?」
「ムウさん、これは全然優しくは無いからな!!」
ムウの発言にゴロウはツッコむ。だが、ムウの言葉にカガリが飛び出す。
「街が焼かれたのがこんな事だと!?こんな事する奴の何処が優しい!?あいつは卑怯な臆病者だ!!我々が留守の街を焼いて、それで勝ったつもりか!?我々はいつだって勇敢に戦ってきた!!昨日だってバクゥを倒したんだ!!」
「昨日のは事前の準備があったのと、俺達に気を取られて油断したから出来たんだよ。敵は2度同じ手には引っかからんぞ」
ゴロウの言葉にカガリは睨むが、ゴロウは無視する。突如サイーブの鋭い声が響く。
「馬鹿な事を言うな!!」
声のした方へ向くとレジスタンスのメンバー達が武器を持ち、バギーに乗り込もうとしていた。
「奴等が街を出て、そうたってない!!今なら追いつける!!」
「街を襲った今なら、弾薬も底をついてるはずだ!!」
「俺達は追うぞ!!こんな目に遭わされて黙っていられるか!!」
男達は口々に言いつのり、再び、サイーブの声が響く。
「やめやがれ!!そんな暇があったら、怪我人の手当てをしろ!!女房や子供についててやれ!!そっちの方が先だ!!」
だが、男達は倍の勢いで怒鳴り返す。
「それでどうなるってんだ!?見ろ!!タッシルはもう終わりだ!!家も食料も皆焼かれて女房や子供と一緒に泣いてろって言うのか!?」
「まさか俺達に虎の飼い犬にでもなれって言うんじゃ無いだろうな!?サイーブ!!」
その言葉にサイーブは黙ってしまうが、ゴロウが止めに入る。
「アンタら落ち着けって!!そんな状態で行ったって無駄死にするのが目に見えるって!!冷静になれ!!」
「五月蝿え!!こんな事をされて黙っていられるか!!」
ゴロウの言葉は逆に男達の怒りを増大させた。男達はバギーを走らせる。サイーブも彼等を放っておく事が出来ず、バギーに乗り追いかける。カガリも乗ろうとしたが、払い落とされるが、目の前でアフメドのバギーが停まる。
「乗れ!!」
その言葉にカガリは頷き、乗り込んで走らせようとしたが、ゴロウに止められる。
「待て、待て、待て!!お前らも行くのかよ!?死ぬから辞めとけって!!」
その姿にカガリは鼻で笑う。
「私達はバクゥを倒したんだ!!恐れるに足らない!!」
「恐れろ!!それは勇敢じゃ無くて無謀だから!!モビルスーツを倒す仕掛けも無いんだろ!!」
するとカガリはランチャーを持ち上げて見せる。
「仕掛けが無くとも、戦い方は幾らでもある!!」
「・・・ランチャーで?馬鹿!!馬鹿!!っておい!?」
ゴロウの言葉を無視し、カガリ乗り込み乗るバギーは行った。ゴロウは怒りを露わにする。
「あぁぁもう!!少しは人の忠告を聞けよ!!」
その姿にムウとナタルは同情の目を向けた。しばらくしてマリューに連絡を取り、さっきまでの事を報告する。
『何ですって!?追って行ったなんて・・・なんて馬鹿な事を!?』
「でしょうね」
マリューの困惑した言葉にそう返すゴロウ。
『どうして止め無かったの!?』
「止めたけど、アイツら人の忠告を無視して行ったんだよ!!何の準備もせずに感情のまま行動して行って・・・100%全滅ですね!!」
ゴロウの怒りの姿にマリューは色々とあったんだなと思い黙ってしまう。少し考え溜め息をつく。
『ハァ・・・・ヤマト少尉に行ってもらいます。見殺しには出来ないわ』
「・・・了解・・・俺もちょっと行って来るぜ」
「あいよ」
ゴロウとの通信を切り、スカイグラスパーに乗り込み、発進する。しばらくして地上でストライクとバクゥとの戦闘を目撃する。
「あそこか・・・全滅はしてないけど、やられているな・・・ハァ・・・」
全滅はしていなかったが、三分の一は死んでいた。ゴロウはストライクの戦闘に目をやるとバクゥ2機から放たれたミサイルを砂煙を上げて爆発させて、爆煙が上がり、それを飛び越えたバクゥと爆煙の中から同じ速度で並行して低空で滑るように飛ぶストライクが現れ、無防備になったバクゥのコックピットにビームライフルを放つ。
「昨日の俺のやつに似ているな・・・やるなキラ」
もう1機襲って来たバクゥと交錯し、バクゥは前脚を斬られ、退却していく。
「引いたか・・・」
少ししてゴロウは止まっているストライクの横にスカイグラスパーを着陸させる。ゴロウは降りて、キラを褒める。
「遠くから見てたが、だいぶ操縦が上手くなったな、上出来」
「あ、ありがとう」
ゴロウはキラから、カガリ達の方を向き、低い声で言った。
「はーぁ・・・いい勉強になったな」
「何だと?」
「怒りに任せて、何の準備もせずに、無謀に挑んで無意味に死んで、色々と学んだじゃねえか?」
皮肉を込めて言うとカガリはゴロウの胸ぐらを掴む。
「よくもそんな事を!!見ろ!!」
そこには何人かの死体が横にたえられていた。少し前まで見た、ゴロウとそう歳の変わらない少年の変わり果てた姿もある。カガリは涙を溜め、ヒステリックに喚く。
「皆、必死で戦った!!戦っているんだ!!大事な人や大事な物を守る為に必死でな!!」
「俺は言ったはずだ。これは勇敢では無く無謀だと。その結果が無駄に命を失っただけだ」
「貴様!!」
カガリは怒りに任せてゴロウを殴ろうとしたが、止められ逆にカガリは胸ぐらを掴まれて引っ叩かれ、尻餅をつく。
「な、殴ったな」
「殴って何故悪いか!!貴様はいい!!そうやって喚いていれば気が済むんだからな!!だが、いくら喚いた所で死んだ者は蘇らない!!お前はどうしようもない怒りを俺にぶつけているだけの甘ったれなんだよ!!」
その言葉にカガリは怒りを募らせる。
「・・・私がそんなに安っぽい人間に見えるのか!?」
「それが甘ったれって言うんだよ!!少なくともそこの少年を死なせたのはお前の選択であり行動した結果なんだよ!!それを肝に銘じておけ!!」
「くっ・・・」
ゴロウの放つ気迫と力強い目にカガリは何も言えずにただ立ち尽くしてしまう。
次回 あんのブルカス共が!!