機動戦士ガンダムSEED 虹の向こうから来てしまった男 作:サンバガラス
しばらく投稿お休みします。
「アンディ」
アイシャの声と控えめなノックの音にゴロウは振り向く。ドアが開き、アイシャが入って来る。キラとカガリは彼女の背後に隠れている。
「ほら、恥ずかしいがる事無いじゃない」
「「あっ!!」」
アイシャが笑って彼女達を前に押し出す。
「!!」
「ゴ、ゴロウ!!あ、あんまり見ないで・・・」
キラは顔を赤くしながらゴロウの前に立つ。キラは髪を結い、薄く化粧を施された上、青色のドレスに身を包んでいた。そばに寄るとほんのりと良い匂いがする。それは異国の姫の様であり、ゴロウは固まってしまう。
「・・・・」
「ほら、少年。彼女に何か言ってあげたらどうだい?」
バルトフェルドに肩を叩かれてゴロウは正気に戻る。ゴロウは少し顔を赤ながらキラを褒める。
「す、すまん・・・キラが綺麗で見惚れた」
「き、綺麗・・・」
その言葉にキラは喜ぶ。
「その・・・いつも魅力的なんだが、より一層魅力的で、まるで姫様みたいだ・・・なんて・・・うん、凄く綺麗だ」
「あ・・・あぅ・・・」
2人は顔を赤くし、照れてしまう。そんな2人をバルトフェルドとアイシャは微笑ましく見ている。ゴロウは視線を逸らしにカガリの方を見る。
「こ、こっち見んな・・・」
カガリも薄く化粧を施され、緑のドレスに身を包んでいた。
「お前・・・本当に女なんだな」
「てんめぇ!!」
ゴロウの言葉にカガリはかっとなって喚く。
「すまん、すまん。女だったなって言うつもりだったんだ」
「同じだろうが!!それじゃあ!!」
その様子にバルトフェルドとアイシャは腹を抱えて笑っていた。その後、ゴロウ、キラ、カガリを並べて座らせて、珈琲をすすめる。
「ドレスもよく似合うね。と言うか、そういう姿も実に板についている感じだ」
「勝手に言ってろ」
「喋らなきゃ完璧」
「うん、うん」
「お前は黙ってろ!!」
カガリはゴロウを睨み付ける。そしてバルトフェルドの方を向く。
「そう言うお前こそ、本当に砂漠の虎か?何で人にこんなドレスを着せたりする。これも毎度のお遊びの1つか?」
カガリが鋭い目で相手を見つめながら、尋ねる。バルトフェルドは軽く首を傾げる。
「ドレスを選んだのはアイシャだし・・・毎度のお遊びとは?」
「変装して街でヘラヘラと笑って遊んでみたり、住民は逃がして街d痛っ!?何するんだ!!」
余計な事を言い掛けたカガリの後頭部をゴロウは引っ叩く。
「・・・感情に任せて動くな・・・本当に・・・」
ゴロウは溜め息を吐く。
「良い目だね。真っ直ぐで良い目だ・・・君も死んだ方がマシな口かね」
バルトフェルドはさっきまでの人の好さが夢の様に感じられる程の冷たく鋭い目でゴロウ達を見上げる。キラとカガリはその視線と威圧に立ちすくむが、ゴロウだけはバルトフェルドを鋭い目で見ている。
「そして君達はどう思っている。どうやったらこの戦争が終わると思う。モビルスーツのパイロットとしては」
「お前どうしてそれを!?」
「馬鹿!!」
バルトフェルドのはったりにカガリが乗ってしまうのをゴロウがツッコむ。
「ワハハハハ・・・あまり真っ直ぐ過ぎるのも問題だぞ」
その様子にバルトフェルドは笑いながら立ち上がる。
「戦争には制限時間も得点も無い。スポーツの試合の様なね」
ゴロウはキラとカガリを引き寄せて、珈琲カップを手に持ちながら、身構えた。
「どうやって勝ち負けを決める?何処で終わりにすればいい?」
その問いにゴロウは答える。
「両方が戦いに疲れたりすれば終わるぜ。それか両方の陣営の最高司令が巨大兵器によって消え去れば終わるぜ」
「・・・・・まあ、彼の話は無視するとして、敵である者を全て滅ぼしてかね」
バルトフェルドは拳銃を取り出し、ゴロウ達に構える。ゴロウはいつでも銃口を逸らせる様に珈琲カップを投げれる様に自然な形になり、キラは頭の中でこの状態から脱出、出来るか可能性を見出そうとしていた。キラの視線に気付き、バルトフェルドが言う。
「やめた方が賢明だな。いくら君が
「
バルトフェルドはキラの方に銃口を見せる。そんなキラの表情を見てふと笑う。
「此処にいるのは皆、君達と同じコーディネイターなんだからね」
「え?」
カガリは驚いた目でゴロウとキラを見る。
「すまんけど、俺は違うぞ」
こんな緊迫した状態でゴロウは否定する。少し微妙な空気が漂ったが、バルトフェルドはゴロウの言葉を無視してキラに言う。
「・・・君の戦闘を2回見た。砂漠の接地圧、熱対流のパラメータ。君は同胞の中でもかなり優秀な方らしいな」
「くっ」
その言葉にキラはこの男に最初から気づかれていた事を知る。
「そして君があの灰色のパイロットかな?」
「さあ、どうだろうな」
今度はバルトフェルドがゴロウにかまかけようとする。
「君の方も1回しか見てないが、コックピットを直で狙う正確さ、見えない位置での狙撃・・・ナチュラルでは出来ぬ芸当だ。なあ、灰色の悪魔君?」
「誰が悪魔じゃい!!」
ゴロウは大きな声を出し、ツッコみ、それからグチグチと呟く。
「全く人の事を黒き悪魔だの、慈悲なき死神だの好き勝手に言いやがって・・・」
そんなゴロウを再び無視して続ける。
「・・・あのパイロット達をナチュラルだと言われて素直に信じる程、私は呑気では無い。君達が何故同胞と敵対する道を選んだのかは知らんが、あのモビルスーツのパイロットである以上、私と君達は敵同士と言う事だ」
バルトフェルドは初めからゴロウ達を排除する為に此処に誘い込んだのだ。全神経が張り詰めているキラの前でバルトフェルドはふっと笑った。
「やっぱり、どちらかが滅びなくてはならんのかねぇ?」
そう言って銃を下ろす。
「まぁ、今日の君は命の恩人だし、此処は戦場では無い」
バルトフェルドは背を向けて、銃をしまう。
「帰りたまえ、話せて楽しかったよ。良かったかどうかは分からんがね」
語尾に苦いものが漂うのを感じる。ゴロウ達は相手の気が変わらぬ内に部屋を出ようとすると、バルトフェルドは背中を向けたまま、声を掛けた。
「・・・また戦場でな」
その言葉にゴロウも返す。
「ああ、戦場でな、砂漠の虎・・・珈琲ご馳走になったぜ」
「・・・それは良かった」
数時間後、ゴロウ達はアークエンジェルへと戻る事が出来た。