ただ煌々と   作:一般擬人化天然痘

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今回は比較的早く投げられたな!


中編

 

 少し離れた場所からだろう轟音や発砲音が不定期に響く街中で建物内から脱出した八尋が目指すのは他の第八班員との合流だった。

 界異の気配が一切なくとも占術班が界異の出現を予測した以上何かがあるはず。そう結論付けて散開して各自探索にあたって……そして先ほど、日向直毘人という天狗面の男と邂逅した。

 ひとまず建物の影に身を寄せ、装着していたヘッドセットのマイクを入れて上司である第八班長との連絡を試みる。

 

『八尋ちゃん。何かあったっすか?』

 

「班長、ミワシ部隊の第四隊長を名乗る呪詛犯罪者と接触しました」

 

『うーん、八尋ちゃんの方もっすか』

 

「も?」

 

『陽斗君や雅人君とかからも同じ報告が来てっ、僕の方は同じ名乗りを上げたのが()()。この分だと供花ちゃんとかも同じような状況と見るべきっすね。っと!』

 

「それは」

 

 通信機越しに硬い物体が衝突する音が頻繁に伝わってくる。

 他の班員達がそれぞれ交戦しているから街に響いている音は止まないのだろう、ということを自然と悟った。

 

『単純に他人の身体を操って僕らに差し向けているのか、それとも……いや、どちらにせよ外法の類か。兎も角、僕の方をぱぱっとどうにかするっす。それまでどうにか……』

 

 班長がその言葉を言い終わることはなく、通信機が破壊されたのかそこから先はノイズ音に塗り替わった。

 こうなった以上は隠れていても仕方がない、音を頼りにすればある程度仲間の位置は掴める。そして集まっていけば……

 

「見つけましたよ」

 

 まとまりかけた思考に割り込むのは、第八班長とは別の声と煌々と輝く炎弾。

彼女の懐に投げ込まれたそれは爆裂し、熱と火花をまき散らして一つの命を奪うだろう。

 そう、たった一つだけ。

 祓魔師は装備した形代により自身の破滅を七度だけ肩代わりさせることが出来る。

 

「っぅ、はぁッ!」

 

 一本の矢が熱の渦から飛び出す。

 不意打ちに対応したそれは視界が炎に遮られた中でも正確に飛ぶ、が。

 

「そして、見えています」

 

 その場に現れていた天狗面の男の持つ剣にあっけなく叩き落とされる。

 矢竹に儀術的加工を施して作られたそれは、剛性と速度は単に加護を矢として放つよりも優れていた筈だ。

 叩き落とされた矢が白い灰となって崩れるのと同時に両者の視線が再び交わる。

 

「……良いんですか? あたしを攫うつもりなら、殺したら意味がねーでしょう」

 

「死ななければいくらでも治せますから」

 

 会話はそれで充分だった。

 ここからは文字通り、殺し合うだけだ。

 

 先手を取ったのは第四隊長の方、先ほどの炎弾と同じ輝きを秘めた剣を振り上げればそこから炎の波が吹き出し、八尋に襲い掛かる。

 横跳びでそれの直撃を避けるも、確かに直感的に理解した。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 

「くぅっ! 地に満ちし繁栄の根源よ──────」

 

 やられてばかりでもなく弓に番えられた矢が放たれ、そこから生命の滾る植物が芽生える。

 再び叩き落とされるより速く彼の足元に突き刺さり、そこから急成長した蔦が男を拘束するように絡みついた。

 

「これを貴方にも教授出来れば良いのですが」

 

 しかし第四隊長の姿が揺らめいたと思えば、全身から噴き出した炎が一瞬で蔦ごとその姿を包む。元の姿を取り戻した時には彼の動きを妨げる物が焼け落ちてしまっていた。

 上機嫌な様子で第四隊長は言う。

 

「日炎祓術、我が日向家に伝えられる術式です。もっとも我が一族の血が高い親和性を示すというだけですから、貴方なら容易に習得できるでしょう」

 

「生憎、あんたに教わることはねーですから」

 

「舞い散る御方の”加護”、確かにそれは最大出力で言えばこの術のそれを簡単に上回るでしょうね」

 

「……!」

 

 彼は立場上、与えられた役割上それが何かを知っていた。

 それは”花と咲う神”などとも同一視される”舞い散る神”から市倉八尋に与えられたものであり、植物を生み出しそれに不浄を燃やし尽くす火をつける業を振るうことを許されるものである。

 彼女の生命力を代償とするそれは理論上、どのような界異であれ一瞬で焼き祓うだろう。

 

「ですがそれを使い続ければ貴方の命が危うい、私達の術であれば少なくとも貴方の生命を削ることは無くなる。如何ですか?」

 

「あたしが命惜しさに祓魔師をやってる、と?」

 

「そうは言いません。貴方は寧ろその逆、道理があればいくらでもその身を捧げられる」

 

 少女が後退りをすれば、じりじりと天狗が少女に迫る

 

「……それが出来る人間は少ない。だから言ったでしょう、貴方は私の同類だと」

 

 天狗が屈み、そして飛べばビル内の時のように瞬時に距離を詰められる。

 彼女の肉体はそれに追いつくことはないが、その目は確かに剣が自らの首を刈り取る刹那を見た。

 

「これで三つ、形代はあと四つでしょう……そうだ、提案があります」

 

 変わらぬ男の様子を見ていて八尋はある二つの事実に気づく。

 この男は相手と話をしているわけではなく、ただ言いたいことを一方的に垂れ流す壊れたラジオのようなモノだと、もう一つは……

 

「貴方は七枚の形代全てを失ってもそう簡単に私を受け入れてはくれないでしょう。ですから貴方と私の間で決め事をしませんか?」

 

 現状この男への勝ち目は薄い、ということである。

 

「簡単なことです。私があと四枚の形代を削れば貴方は私と共に来る、それが出来なければ私は貴方のことをきっぱり諦めましょう、貴方の身辺を調べたり追い回すことも二度としないと約束します」

 

「──────良いでしょう、やってやろうじゃねーですか」

 

 それでも、市倉八尋という少女はその提案に乗った。

 ここですっぱり悪縁を切るために。

 





スペシャルサンクス
クサリさん(市倉八尋)
マキアンさん(第八班長)
鷲型さん(九条雅人)
大石太樹さん(田中陽斗)
浜地さん(鵠別供花)

次は期間がそこまで空かないと思います
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